FC2ブログ
読んだ本の感想をつづったブログです。





タイトル通り、日本人が定説として知っている世界史とは大きく異なる話を語っている作品。

著者は他の著作にも書いてきた帝国と属国からなるという歴史観の他に、食べさせてくれる指導者を求める「食べさせてくれ史観」、北方の遊牧民が襲来・支配する「ドドド史観」、ある種の思想や宗教に救いを求めて幻滅したり混乱する「熱狂史観」の3つを提示し、特に熱狂史観の例にパレスチナで起こったキリスト教、ユダヤ教、イスラム教という一神教が人類に不幸をもたらしてきたと語っている。

ここまではそこまで目新しくはないが、『ユダヤ人とは誰か』、『想像の共同体』、『ユダヤ人の起源』、『サピエンス全史』の4冊に書かれている内容を紹介している部分がインパクト十分なものとなっている。

例えばユダヤ教や整った形での『旧約聖書』はキリスト教の成立よりもかなり後で、モーセやダビデ、ソロモンといった旧約聖書の登場人物はまだ出現していなかったユダヤ人ではなくエジプト系であること、ユダヤ人とパレスチナ人は使う文字は異なるが会話をすることは問題なくて元は同じで一部がユダヤ人だと意識したからユダヤ人になっただけでそれ以上の根拠はあまりないことなど、確かに欧米の人々からすると都合が悪いであろう話が多く、ユダヤ人が嫌われてきた事情も少し分かる気がする。

ユダヤ人と意識すればユダヤ人になれることから、例えばコーカサスにあったカザール王国や西欧にいた商業民がユダヤ人になった説や、インド・ヨーロッパ語族のアーリア民族とは虚構とばっさり切り捨てている話、古代のギリシア人とフェニキア人は実は同一の集団でどちらもローマに攻められた話など、刺激的な説がいくつも書かれている。

根拠を明示せずに「・・・だったに違いない」みたいな表現が多かったり、自分だけが賢くて他の知識人はバカだとする上から目線の書き方には違和感を覚えるものの、興味深い内容の作品ではある。







副島隆彦の歴史再発掘
副島 隆彦
ビジネス社 2018/12/18


にほんブログ村 本ブログへ
スポンサーサイト







地形や史書から導き出された陣形図、気候や時間帯、当時の交通事情などさまざまな要素を用いた地政学の観点から、戦国時代の合戦の事情を考察している作品。

桶狭間、厳島、姉川、沖田畷、関ヶ原といった戦場の地形や交通事情や、北条氏にとっての関宿城や長宗我部元親にとっての白地城の戦略的な重要性、室町幕府最後の将軍・足利義昭が武田氏や上杉氏ではなく毛利氏を頼って鞆に移動した事情などが書かれていて興味深い。

監修者の乃至氏は『天下分け目の関ヶ原の合戦はなかった: 一次史料が伝える“通説を根底から覆す"真実とは』の著者ということもあってか1章を関ヶ原の合戦に使っている。

本やテレビ番組などで既に知っていた話もあるが、例えば明治時代にドイツの軍人のメッケルが布陣図を見て「西軍の勝ち」と語ったエピソードはありえない都市伝説みたいなものだとばっさり切り捨てているのは少し驚いた。

これに限らず、定説と考えられている陣形やエピソードで史実とつじつまが合わないものが多いことを知り、いろいろと考えさせられる。

人名や地名などでケアレスミスが散見されるのはマイナスポイントだが、書かれているテーマは面白かったのでこの手の作品がもっと出るといいなと思う。






にほんブログ村 本ブログへ




タイトル通り、日本史の事件などの背景を経済で読み解くシリーズの第1巻。

少し前に読んだ著者の『経済で読み解く織田信長 「貨幣量」の変化から宗教と戦争の関係を考察する』を元にしていて、大半が再読に近い形となったが、こうした本は少ないのでまた楽しむことができた。

『経済で読み解く織田信長』に収録されていた信長の事跡をチェックする話のところは入っていないが、これは続編の『経済で読み解く日本史② 安土・桃山時代』に入っているのではないかと思っている。

追加された話で面白かったのは信長から追放されて諸大名に手紙を送りまくっていた足利義昭のことを「政治評論家となった落選中の国会議員」と表現していたり、権力者だった細川政元がゲイと公言していたことからLGBTの運動で日本はこうした部分に不寛容だと認識不足なことを言う人々の欺瞞を指摘している部分などで、他の著書でも見られる著者らしさが出ている。

このシリーズは5巻まで出ていて、全部読むかどうかは分からないが第3巻くらいまでは読むことになると思う。






にほんブログ村 本ブログへ


30の「王」からよむ世界史 (日経ビジネス人文庫)
本村 凌二 (監修), 造事務所 (編集)
日本経済新聞出版社 2018/6/2



古代から近代にいたる30人の王、皇帝、スルタンなど呼び名はさまざまだがその時代を代表する君主たちの業績を紹介・解説している作品。

アッバース朝のハールーン・アッラシードのように多分初めて知る人物、アルフレッド大王やオットー大帝のように名前は読んだことがあるが具体的な業績を知らなかった人物、ロシアのニコライ2世のように亡国の君主など、選び方にそれなりの独自性があるのが興味深い。

ハールーンが『千夜一夜物語』で助さん格さんを従えた水戸黄門のような役で登場していたり、「ヨーロッパの祖母」と呼ばれていたのは『世界史の10人』で扱われていたアリエノールだけでなく大英帝国時代のヴィクトリア女王もだったなど、興味深いエピソードも多く扱われている。

戦争や外交、家臣の登用、他の王族との争いなど、王家につきものの出来事が多く書かれていて、単なる英雄の話とは異なることが伝わってくる。

題材としてはまずまずだと思うが、構成や書き方は少し特徴に欠けているような気がしないでもない。





「王室」で読み解く世界史
宇山 卓栄
日本実業出版社 2018/12/20


にほんブログ村 本ブログへ




オーストリア出身の心理学者であるアルフレッド・アドラーの言葉を77項目選び、見開き2ページで解説している作品。
分かりやすい言葉で前向きに行動するモチベーションを与えてくれる言葉が目立つのがいい。

頻出する言葉としては共同体感覚や勇気、恥ずかしがることの弊害などで、楽観主義(前向きに行動しよう)、楽天主義(何とかなるさ)、悲観主義(もうダメだ・・・)の違いなども印象に残る。

努力しないことは自らの能力不足に向き合うことから逃げることにつながることを指摘していて、堤真一主演の映画にもなった『俺はまだ本気出してないだけ』が解説で扱われていたのには笑ってしまった。

また、叱りつけることはモチベーションを下げて反抗的な心理状態に追い込むだけなので逆効果としていて、いかに適切に褒めるなどしてモチベーションを上げるかが書かれていて、教育や指導は難しいものだと再認識させられる。

フロイトとは一時期一緒に研究していたが袂を別ったとか、剽窃(パクリ)を多く受けたが自身のメッセージが伝わればいいと寛容だったらしいこと、分かりやすくて常識的すぎるとの批判に「それのどこがいけない?」と反論した話など、アドラーの飾らない人柄を示すエピソードも書かれていて、よりアドラーやアドラー心理学についての関心を高めることができる。






にほんブログ村 本ブログへ

関連タグ : 桑原晃弥,