村上 勉 (著)
講談社 (2015/12/16)
佐藤さとるによる『だれも知らない小さな国』から始まる、コロボックル物語シリーズの挿絵を一貫して描き続けてきた村上勉によるコロボックル物語の画集と、創作時のエピソードなどを語っている話で構成されている作品。
小人やフェアリーといった存在を日本的な感じにするにはどうしたらいいか?という悩みや、佐藤氏が蜂をイメージしていたのに対して村上氏がコオロギやバッタをイメージして描いた経緯、村上氏が18歳の頃に佐藤氏に出会った頃のエピソードなど、2人で多くのことを考えながらコロボックル物語を作り上げたことが伝わってきて興味深い。
『図書館戦争』などで知られる有川浩がコロボックル物語を引き継ぐことになり、原稿ができるまでの間に村上氏が本作を描いたことが書かれているのも面白い。
久しぶりに、コロボックル物語を読んでみたくなった。
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日付 | 記事タイトル |
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2023/09/19 | 『ワールドフラッグス 世界196カ国完全データ図鑑』 |
2023/09/16 | 『会計が動かす世界の歴史 なぜ「文字」より先に「簿記」が生まれたのか』 |
2023/09/11 | 『虚像の織田信長 覆された九つの定説』 |
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2023/09/08 | 『ローマ亡き後の地中海世界4: 海賊、そして海軍』 |
2023/09/06 | 『経済封鎖される中国 アジアの盟主になる日本 米中戦時に突入』 |
2023/09/05 | 『夜の訪問者』 |
2023/09/03 | 『ローマ亡き後の地中海世界3: 海賊、そして海軍』 |
2023/09/01 | 『徳川家の家紋はなぜ三つ葉葵なのか 家康のあっぱれな植物知識』 |

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宮崎 市定 (著)
中央公論新社 (2018/8/21)
後漢の衰亡から北宋の成立までを中国の中世と位置付け、歴史の流れを解説している作品。
後漢からしばらく低迷した感じの時代になっているとしていて、その原因を東西の交易で金が西アジアに流出して金つまり、つまりデフレ状態が続いていたと語っているのが、著者が本作を書いていた時代を考慮するとかなり本質を捉えていると感じた。
また、社会的な話として農村都市だった都市国家が、遊牧民の襲撃などを避けるために政治・軍事の都市と農村に分離した過程や、税金逃れやデフレ対策として豪族が自給自足する荘園が形成された話も印象に残る。
この時代は特に北方の遊牧民の活動が激しかったことも伝わってきて、北方の遊牧民の政権でも南方の晋の遺民の政権でも権力争いに伴う殺し合いが多く書かれていて、時代的なものだったのだろうとも感じた。
第二次世界大戦や冷戦の話題がちょくちょく出てくるところに時代を感じはするものの、この時代の大まかな流れを分かりやすく解説されており、かなり読みごたえがあった。
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伊地知 英信 (著)
草思社 (2023/7/28)
外来種を一義的に悪とする傾向がある中で、そんなに単純なものではないことを語っている作品。
以前読んだフレッド・ピアス著『外来種は本当に悪者か?: 新しい野生 THE NEW WILD』と同じ草思社から出ているので、その本を意識して企画されたのかもしれないと思った。
外来種だけを駆除することは難しくて効果があるかも怪しいこと、外来種を利用していて駆除されたら困る在来種もいること、そもそも外来種の範囲は?とか、外来種の問題が意識され始めたのはそれほど昔ではないことなど、このテーマに関する論点が書かれている。
これに加え、「池の水ぜんぶ抜く」で放送されないこと、外来種として悪者にされることが多いカミツキガメの撮影の仕方に悪意があることなど、メディアの問題も取り上げている。
『外来種は本当に悪者か?』や『なぜわれわれは外来生物を受け入れる必要があるのか』、『外来種のウソ・ホントを科学する』のような読みごたえのある本をもっと読みたいのだが、本書はその点では少し物足りなかった。
情緒的な話もいいが、豊富で具体的な事例が多く書かれていて、示唆に富む内容の本を読みたい(けど少ない)ということである。
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- 『なぜわれわれは外来生物を受け入れる必要があるのか』
- 『外来種のウソ・ホントを科学する』
- 『都市で進化する生物たち: ”ダーウィン”が街にやってくる』
- 『池の水ぜんぶ“は"抜くな!』

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昨日までの世界(上) 文明の源流と人類の未来 (日経ビジネス人文庫)
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ジャレド・ダイアモンド (著), 倉骨彰 (翻訳)
日本経済新聞出版社 2017/8/2
日本経済新聞出版社 2017/8/2
以前読んだ『銃・病原菌・鉄』の著者による、現代の先進国などでの社会と、ニューギニアなどで一部残っているかつて多くの地域に存在した小規模な社会を比較し、その違いやそれぞれの長所と短所、小規模な社会から学べる(かもしれない)ことなどについて、さまざまな事例を挙げて語っている作品。
上巻では、他の部族やそのメンバーとの関わり方、過失により死傷者が出た場合の補償や交渉の方法、戦争の流儀、子供や高齢者の扱われ方などがテーマとして書かれている。
国家が成立する前は平和な社会だったというのは単なる幻想で、戦争による死者の全体に占める割合は2度の世界大戦があった近現代よりも、それ以前の社会の方が多かったことや、欧米の支配を受けて政府が成立したことで部族間の抗争が激減して政府の必要性を住民が語る話などが印象に残る。
政治家や官僚、税金などの弊害があっても政府があるのは、こうした自力救済による個人対個人、集団隊集団の抗争が連鎖することを防ぐためという理由が大きいという話は分かりやすい。
システマチックな現代の社会のやり方、そして情緒や別の合理性があるそれ以前の社会のやり方と、いいところと悪いところを認識した上でより良い方法を考えるという趣旨になっている。
話自体は興味深いのだが、『銃・病原菌・鉄』でも見られた、事例に関する話が多くてなかなか次の話題に進まない部分があり、読むのに時間がかかった。
下巻を続けて読むかどうかは、考え中というところである。

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