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読んだ本の感想をつづったブログです。





室町時代から信長の出現に至る時代を、経済や金融の観点から解説している作品。
タイトルに信長とついているのに、4部構成のうちの第4部で初めて信長が登場するというのがなかなかすごい。

それでは何が書かれているかというと、信長が戦った既得権益層としての寺社勢力の経済力や軍事力と、それらと持ちつ持たれつの関係を持ってきた室町幕府、そして信長の先駆者に当たる足利義教や細川政元、三好長慶らの事跡などが書かれている。

この時代の背景にあるのは、日本で貨幣を発行しておらず明から銅銭を輸入して流通していたことであり、銅銭の輸入が減ったり途絶えたりするとすぐにデフレになるという問題である。
これと天候の問題により、冷静な判断が下せない人が増えて殺伐とした時代になったと語っている。

その中で力を得たのが
  • 大和の大名として振舞った興福寺(法相宗)
  • 多くの荘園や琵琶湖の物流を握って軍事力もあった「恐怖の山」こと比叡山延暦寺(天台宗)
  • 室町幕府と癒着して貿易利権や税の徴収などでのし上がってきた京都五山(臨済宗)
  • 商工業者としての町衆を支持者に多くの動員力を誇る法華一揆(日蓮宗)
  • 大衆の支持を集めて寺内町システムを構築した本願寺(浄土真宗)
といった大寺院であり、軍閥、商社、銀行、商工ファンド、地主と多くの機能を持つ強大な存在で、朝廷や幕府、大名たちが大変な目にあったことがよく分かる。

こうした大寺院は宗教の権威を背景にかなり暴力的なことをやらかしていて、例えば天文法華の乱で比叡山が法華を攻撃したことによる京都での被害は応仁の乱よりも大きかったというのはすさまじい。

そして権力を宗教から世俗に戻すことに成功した信長の実績は、考えられているよりも大きいものだったことが分かってくる。
これがなければ現在まで宗教勢力の政治への介入と、それに伴う内乱も大変なものだったと思われる。

近いテーマを書いている大村大次郎著『お金の流れで見る戦国時代 歴戦の武将も、そろばんには勝てない』では書かれていない京都五山や法華の話もあり、大変興味深く読むことができた。






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信長に仕える女忍者を主人公とする4コマ漫画の第2巻。
本作では墨俣築城や稲葉山上奪取、お市と浅井長政の縁組、足利義昭を擁しての上洛あたりが扱われていて、千鳥も多くの局面で活躍している。

本作では浅井長政、朝倉義景、六角承禎、三好三人衆などが新たに登場している。
なかでも、わがままでウザいキャラクターの足利義昭をはじめ、つっこみ役になった明智光秀、リーゼントヘアの蜂須賀小六などが印象に残る。

ただ面白いだけではなく、ところどころで千鳥が真面目なセリフを語っているところもまたこのシリーズの見所の一つではないかと思っている。
次は濃いオヤジキャラが多く登場するみたいなので、これもまた読んでみる。






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戦乱と民衆 (講談社現代新書)
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磯田 道史, 倉本 一宏, フレデリック・クレインス, 呉座 勇一
講談社


国際日本文化研究センターの歴史学者たちによるシンポジウムと、その後の座談会を収録している作品。

3部構成になっていて、1部は古代、中世、近世、近代それぞれの時代の戦乱から民衆のことを語っている。
  • 白村江の戦いでは豪族に船で連れてこられた農民が訳も分からずに戦わされたのではないかという推察
  • 応仁の乱では土一揆と足軽が同じ階層の人々によって担われていたこと
  • オランダ人やポルトガル人が見た大阪の陣では住人が疎開した町に豊臣方の浪人やその家族が入り込んだ話
  • 禁門の変では会津兵が長州兵のゲリラ戦を恐れて火をつけまくったことで京都の人々の恨みを買ったり、火災からの復興が遅れたことで明治政府の首都から脱落した説
などが扱われていて、あまり他の本で読んだことがない話が多い。

2部はシンポジウムでの討論、3部は日を改めての対談で、3部では『京都ぎらい』などの著書で知られる井上章一氏なども参加している。

戦乱と民衆というテーマだと家を焼かれたりして逃げ惑うイメージが出てきがちだが、宗教がらみの戦乱などでむしろ民衆の側が戦乱を起こす場合や、戦乱の中でも一儲けしようと活動するしたたかな民衆など、多面的な議論がなされている。
また、京都の町並みを破壊したのは米軍ではなくて町屋を壊してビルを建てた京都の民衆だったとか、京都も戦乱で大変だった話でも「伏見は京都やない!」という人がいるなど、井上氏による『京都ぎらい』ネタには他の学者たちもツッコミをいれるなど、楽しい雰囲気で話がなされている。

他にも古代史を専門とする倉本氏が、古代史は史料が限られているが誰でもある程度のところまでは似た結論になりやすいことや、後世になるほど資料が増えて研究が大変になることなど、時代によって研究の方法が異なってくるとの指摘も興味深かった。

読む前はテーマが少し地味だと感じていたが、気鋭の学者たちが担当していることや同じ所属ということで旧知の仲ということもあるのか、思っていた以上に楽しめる内容だった。






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習近平の真意: 異形の大国を操る
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長谷川 慶太郎
徳間書店 2018/6/12


長谷川慶太郎による、昨今の中国を中心とした政治情勢を解説している作品。

習近平が任期を撤廃して独裁を強め、共産主義一党独裁を維持しつつ経済的には資本主義化を進めるという、かなり難易度が高そうな国家実験をしているという文脈で書かれている。

独裁では反腐敗闘争による政敵の排除や後継者と目される人物を決めていないこと、そしてインターネットの監視や電子決済の管理などが挙げられていて、資本主義化では悪名高い都市戸籍と農村戸籍をなくす方向で進めていることやITやEVなどの技術への投資、国営企業や国有企業の形で生き残っているゾンビ企業の淘汰などが書かれている。

国際関係では習近平はトランプに東アジアの覇権をめぐる賭けに敗れて金正恩もアメリカに降伏に追い込まれたと見立てで書かれている。
そのため日本は中国の一帯一路や統一されるであろう朝鮮半島で設けることができると書かれているが、ちょっと楽観的すぎるような気もする。

著者の見立てには違和感が少しあるが、習近平の実験は成功しないであろうという部分は肯定できる。
興味深い話が多く書かれていて、参考になった。





2019 長谷川慶太郎の大局を読む
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長谷川慶太郎
徳間書店 2018/10/20

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NHKで放送されている教養バラエティ番組「ブラタモリ」を書籍化した作品の第14巻。
箱根、鹿児島、弘前、十和田湖の回を扱っている。

箱根では地獄や極楽に例えられる温泉の数々と、江戸時代にあった箱根の関所が紹介されている。
あえて谷底の歩きにくいところを通って関所に至るルート設定や関所が崖と芦ノ湖に挟まれた絶妙な立地、関所破りを防ぐために見張りの村が点在していたことなど、インフラの面では当時完璧に近い関門になっていたことを実感させられる。

鹿児島の回では大河ドラマ「西郷どん」で島津斉彬役を務めた渡辺謙がゲストで出演している。
そしてシラス台地の性質を生かした外城などの防御施設や、「たんたど石」や小野石といった火山活動によって形成された石を利用することで薩摩藩がいち早く近代化を図っていたことなどが紹介されているのが興味深い。

弘前では現存する天守を持つ弘前城のユニークさや禅宗の寺を集めた区画が防御を意図されて造られた話、リンゴ栽培が弘前藩士によって始められた経緯などが扱われている。
弘前城の桜の木に感謝をこめて肥料をあげることを「お礼肥」(おれいごえ)というが、クイズに出題されて近江アナが「穴掘り補給」と答えたのが広まった話が面白い。

本書の最後が青森県と秋田県の県境にある十和田湖と、十和田湖から流れる奥入瀬の渓流を訪れている。
ここは最も予備知識がなく、カルデラ湖で透明度が高いことや明治時代に始めたヒメマスの養殖に成功したこと、コケによって生まれた奥入瀬の森林など、地形が生んだ美しい景色や恵みについて書かれている。

十和田湖・奥入瀬の回以外は多分テレビで観ていた記憶があり、思い出しながら楽しく読むことができた。






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