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読んだ本の感想をつづったブログです。



金子信久
東京美術 2014年12月


江戸時代の絵師である長沢蘆雪の生涯と作品の解説を行っている作品。
先日、九州国立博物館「生誕270年 長沢芦雪 ― 若冲、応挙につづく天才画家」展を観に行ったこともあり読んでみた。

蘆雪は円山応挙の弟子でもあり、当時としては写実的な応挙の画風に倣った作品が多い一方、応挙の前に別の師についていたという説があったり、途中からは写実的なタッチだけでなくゆるさやユーモラスさが入った絵が多くなっている印象もある。

鍾馗とカエル、クジャクの周りにスズメやキジ、巨大な牛のお腹の近くに小さな犬など、複数のキャラクターの対比や細かく描き込むところと空白をうまく活かした絵が多いのも面白い。

和歌山県串本町の無量寺には串本応挙芦雪館があるほか、蘆雪が絵を収めた寺院が和歌山県南部に複数あるそうで、行ったことがない和歌山県に行くための理由になるかもしれない。





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ジョージ・フリードマン(著), 夏目 大(訳)
ハヤカワ文庫NF
2017年04月20日


以前読んだ近未来における紛争を予測した『100年予測―世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図』の著者による、ヨーロッパでの紛争の歴史と今後に紛争が再燃しうる地域などについて語っている作品。

現代が『FLASHPOINTS The Emerging Crisis in Europe』(発火点 ヨーロッパに潜在する危機)というもので、前作が売れたからと邦題に「新・100年予測」と入れているのはあまり内容に合っていない。

著者はハンガリー生まれのユダヤ系で、父親はハンガリー軍に枢軸国側としてソ連軍と戦ったことや、ユダヤ系ということで迫害を受けたこと、共産化しつつあった故国から一家で必死の逃亡を続けてアメリカに亡命したことなど、かなり重い過去が書かれている。

皆が平和に暮らしていた時期が一変する経験から、著者の父親はヨーロッパの人々の対立について「なくなることはない。なくなったことにするだけ」と痛烈なコメントをしていることが書かれている。
「なくなったことにする」というコメントからは、自らが不利になるとルールを改変してを他国に押し付けてきたことや、ローマ教会が販売した罪をなかったことにする免罪符(贖宥状)、現代の二酸化炭素を出さなかったことにする排出権取引、トヨタの自動車用エンジンに勝てないからとEVを推進して内燃機関をなかったことにしようとした話などを連想した。

1914年の第一次世界大戦勃発から1945年の第二次世界大戦終結までの一連の戦争によってヨーロッパはボロボロの状態となり、米ソの支配を受けてきた冷戦期、その後のEU統合の試みとその矛盾が出た話、各地域における対立の再燃などの話がなされている。

地域としてはEUにおけるドイツと他国の経済格差に伴うトラブル、国力と発言力が低下したことに焦るフランスと歴史的経緯から警戒されるドイツの事情、歴史的経緯から紛争解決の道が見えづらいバルカン半島とコーカサス地方、周囲を紛争地帯に囲まれてクルド人やアルメニア人との問題も抱えるトルコ、ヨーロッパの混乱に巻き込まれたくないイギリス、緩衝地帯をヨーロッパ側に取られていると感じるロシアなど、紛争の原因となる話がいくつも書かれている。

本書が書かれたのが2015年でその後にブレグジットやロシアによるウクライナ侵攻などがあり、本書で危惧されてきた話が現実にもなっている。
重い話が多いが、それだけに読みごたえもあった。





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昨日、九州国立博物館に「生誕270年 長沢芦雪 ― 若冲、応挙につづく天才画家」展を観に行った。

長沢芦雪(1754-1799)のことはあまり予備知識がなかったが、足のない幽霊を日本で最初に描いた円山応挙の弟子ということもあり、関心を持ったのが理由である。

入ってみると最初の方に応挙が描いた幽霊の絵と、芦雪がそれに倣って描いた幽霊の絵が展示されていて、既にテンションが上がった。

そこから、現代でもゆるかわと評価されそうな丸っこく描かれた犬の絵や、くねくねした感じのユーモラスな龍の絵、大きく描かれていながらよく見ると猫のような愛嬌が感じられる虎の絵など、多彩でダイナミックな画風が伝わってきて楽しめた。

芦雪は師の応挙の代理として、応挙の友人だった禅僧とともに南紀(和歌山県南部)を訪れて多くの寺院に絵を残していた時期が一つの転機だったことや、46歳で大阪で謎の死を遂げたことなども紹介されている。

芦雪の少し上の世代には師の円山応挙だけでなく、伊藤若冲、曽我蕭白、池大雅、与謝蕪村といった錚々たる絵師たちがいて、しかも京都の近いエリアに住んでいたというのがなかなかすごい。
彼らの絵も展示されていて、画風の違いも感じられた。

初めて目にする絵で楽しいもの、印象に残るものなども多く、大いに楽しむことができた。





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昨日、福岡市美術館に「永遠の都ローマ展」を観に行った。
塩野七生の『ローマ人の物語』を途中まで読んでいて、関心を持ったのが理由である。

ローマ建国神話のロムルスとレムスの像や、カエサル、アウグストゥス、トラヤヌス、ハドリアヌス(『テルマエ・ロマエ』に登場する皇帝)などの頭部の像など、『ローマ人の物語』で既に読んだローマ建国から賢帝の時代までを扱った像でテンションが上がった。
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また、コンスタンティヌス帝の巨大な像のレプリカ、トラヤヌス帝がダキア(ドナウ川北岸)を征服した記念で建てられた塔の絵、そしてローマ教皇や聖人の肖像画なども展示されていて、見ごたえのある特別展だった。





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本日、福岡市美術館で「オチ・オサム展」(2024年1月24日~3月24日)を観た。
「永遠の都ローマ展」のついでで・・・

オチ・オサム(1936-2015)は佐賀県出身の芸術家で、福岡を中心に活動していた芸術家のグループ「九州派」の中心メンバーとしてさまざまな活動を行ってきたという。
「九州派」については、福岡市美術館で以前開催されていた展示で、河原かどこかで焚火をしたりマネキンに釘を打ち付けようとしてできなかったなどの変な活動をしていたエピソードを覚えている。

この日はたまたま14:00から40分くらい、担当の学芸員さんによる本展示のギャラリートークを行うという話を聞き、時間もあったので展示を観ながら話を聞いた。

オチの一時期の代表作と思われる「出口ナシ」というオブジェは、ドアみたいな厚い板の中に向かい合って倒してあるワイングラスが入っているもので、これに対して日常で使用されるモノの美しさを重視したという話や、サンフランシスコでヒッピー文化に触れた後に精力的に描いた「球体シリーズ」という細かく描き込まれた球体と線で構成される絵画には「世の中は碁盤」というメッセージがあったこと、アルコール依存症で入院した際に医師からもらったレントゲン写真と脳波の図を組み合わせた絵の話など、専門家の話があるといかに観る際の気持ちが変わってくるのかが分かった。
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ギャラリートークのようなイベントは多分初めて参加したと思うので、これからもこうした機会があれば参加したいと思う。




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