読んだ本の感想をつづったブログです。


城壁なき都市文明 日本の世紀が始まる
城壁なき都市文明 日本の世紀が始まる
増田 悦佐
エヌティティ出版 2014-11-26

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日本が発展している理由の一因に、都市が城壁で囲まれておらず自由に拡大することができたがあったと解説している作品。

ヨーロッパなどでは城壁で都市と郊外をはっきり区切り、外敵からの侵入を防ぐとともに、城内にいる領民の支配を徹底させてきたことが書かれている。
それが都市住民からすると郊外の住民に対して差別意識を持つことにつながり、物理的な城壁がなくなった後も心理的な城壁が存在し続けてきたという。

その一つが鉄道が都心にまで来ていないことで、例えばパリでは(軽視している郊外の人が無制限に流入しないように)郊外の鉄道と都心の地下鉄との相互乗り入れをさせないために規格を違うものにするという底意地の悪い設計をしていたと知り驚く。

こうした城塞都市群の中で例外的に城壁で囲まれていなくて自由に拡大できた都市が時代ごとの経済覇権を握ってきたとし、ヴェネチア、アムステルダム、ロンドンを挙げている。
湿地帯や干拓地だったり川の南岸が開けていたなど事情はさまざまだが、日本やオランダのように都市のつながりができないのは、城壁や都市間の戦争などのなごりがあるからといったことが書かれている。

元々城壁がなかったアメリカは当初は自由に発展する都市だったのが、自動車の普及が鉄道を押しやったことで富裕層や中間層が郊外に逃げ出す現象が発生し、ヨーロッパとは逆に都心部がスラム化してしまった事情を語っている。

それでは中国はという話になり、中国の城壁は実用よりも権威を誇示する意味合いが大きかったらしく、孔子がけなすくらい田舎の賢人が有能だったと知られていたり、宋代に都心から郊外にかけて繁栄していた話が書かれている。
ただ、アヘン戦争によるショックで、欧米崇拝に近い状態となりその伝統が崩れてしまったのが残念というニュアンスで書かれている。
ここでは東アジアの人々が欧米に比べて平和的、かつ指導者の選び方が適当と思われることから、安倍晋三、習近平、パク・クネ、金正恩の指導者たちのことを(二世・三世であることから)太子党四人組と呼んでいるのに笑ってしまった。

そして日本の話に移る。
縄文時代から外から来た人を歓迎したり男性がふらっと旅に出かけたがる文化があったことや、江戸時代に幕府が大商人ではなく庶民寄りの裁定を下すことが多かったこと、女性や子供の盛り場が多かったことで都市が発展したことなど、著者の『奇跡の日本史―「花づな列島」の恵みを言祝ぐ』などとも一部重なる日本の美点が書かれている。
他国の都市と比較すると、日本はやはりいい国なのだろうと改めて感じる。

本作でも多くの論点から興味深い内容が書かれていて、読んでよかったと思う。
参考文献でも関心を持った作品があったので、そのうち読んでみたい。



[参考文献に挙げられていた作品]


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妖怪萬画 (第2巻 絵師たちの競演編)
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和田京子
青幻舎 2012-04-04

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妖怪画を文庫本サイズでカラーグラビアで掲載し、解説している作品の第2作。
本作では江戸時代に活躍した絵師たちの作品を多く扱っている。

鳥山石燕、葛飾北斎、歌川広重、歌川国芳、河鍋暁斎、月岡芳年などで、これまで本を読んだり、博物館や美術館で特別展を観た絵師の作品も多く、ユーモラスな妖怪の絵を楽しめる。
そしてや喜多川歌麿や伊藤若冲など、妖怪画のイメージがあまりない絵師たちによる妖怪画も入っていて驚く。

序文に「妖怪のビッグバン」という論考が収録されていて、以前作家の京極夏彦が目にして唸ったという、妖怪は「水木しげるがつくったもの」というフレーズが紹介されているのが面白い。
ここでは多種多様な妖怪たちが毎週放送されるテレビアニメという形式に合っていたことや、こうした多くのキャラクターを知ったりグッズを集めたりする嗜好が日本では古くからあったことが書かれている。
こうした傾向が、食玩やガチャガチャ、スポーツ選手やアニメのカードやシールを収集するブームに通じていると思うし、多くのメンバーが在籍していて公演で様々な魅力を見せるAKB48もその趣向に合ったのがヒットした要因にあるように思う。

昔から妖怪もネタとして親しまれていることがよく伝わる作品で、楽しむことができた。



妖怪ウォッチ DVD BOX 1妖怪ウォッチ DVD BOX 1

KADOKAWA メディアファクトリー 2014-10-29

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凍りついた空 エウロパ2113 (創元SF文庫)
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ジェフ・カールソン (著), 中原 尚哉 (翻訳)
東京創元社 2014-10-31

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木星の衛星であるエウロパを舞台としたファースト・コンタクトもののSF長編。

約100年後の未来、人類は木星圏へも進出し、資源の採掘や知的生命体の探査を始めていた。
主人公の女性科学者であるボニーが同僚のバフマンとラムの3人でエウロパでの探査を始めてすぐ、事故でバフマンとラムが亡くなってしまう。

ボニーはラムの意識をAI(人工知能)に転移させることで助けを借り、スカイフィッシュと呼ばれるエウロパの原住生物の攻撃を受けながらも氷の世界を必死で逃げ延びていく。
そしてこのラムのAIは物語の後になるまで影響を与え続けてく。

その後もボニーが属するEUの探査チームのクルーたちとの人間関係や、EUとブラジルや中国といった国家間の争い、エウロパの資源やスカイフィッシュの遺伝子情報などの利権を狙う大企業からの圧力など、多くの問題が発生し、ボニーはこうした問題に悩みながらも立ち向かっていく。

氷に覆われながらも火山活動が活発というエウロパの苛酷な環境や、人類に敵対的な行動をとるように見えたスカイフィッシュの行動、ロボットやクローン技術といった近未来の技術などがリアルに描かれていて読みごたえがある。

舞台が氷で覆われた場所ということで少し伝わりにくいところもありはしたが、かなり楽しめたと思う。




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プロ野球・横浜DeNAベイスターズの2014年シーズンにおける裏側を描いたドキュメンタリー映画。
一昨年から製作されていて評判がいいらしいと聞き、最寄の映画館へ観に行った。

試合中のブルペンの様子や試合後のロッカールームなど様々なところにカメラが入っていて、サヨナラ打を浴びた投手が戻ってきたシーンや試合中の怪我で選手が痛がっているところなど、外部の製作だと球団の指示でカットされた可能性が高いところも収録されている。

主な内容は下記のようなもので、どれも見ごたえがある。
  • 2度の二軍落ちをした三浦大輔の復活
  • 後藤武敏のムードメーカーぶり
  • 黒羽根利規による怪我や不調との戦い
  • リリーフ失格の烙印を押された山口俊の先発転向での復活
  • グリエル加入で外国人選手が3人となった内野陣でのショート・山崎憲晴の奮闘
  • 度重なる怪我の末に荒波翔が下した決断
  • 育成から昇格した萬谷康平のリリーフでの苦い経験
  • 梶谷隆幸と筒香嘉智の絆
  • 目の前で巨人に胴上げされた際の悔しさと羨望

中畑監督が選手たちに檄を飛ばしているシーンはもちろんのこと、投手コーチの川村丈夫やバッテリーコーチの新沼慎二が選手たちにアドバイスや励ましの言葉をかけているシーン、ベテランの三浦があえて声をかけないシーンなどが入っていて興味深い。

また、用具係の入来祐作やスコアラーの横山道哉など、球団職員になっている元選手たちが随所で映り込んでいるのも見逃せない。

中村紀洋の首脳陣批判による二軍落ち事件はさすがに扱われておらず、2年目で開幕投手を務めた三嶋一輝の不調や新人・三上朋也のクローザーとしての活躍なども入っていなかったが、それだけ盛り沢山な内容だったということでもある。
本作を見ると、1年間シーズンを過ごすと色々なことがあると改めて感じる。

このような作品を制作するなど、ファンサービスが充実して横浜スタジアムの入場者数が増えているとのニュースを知ると、ベイスターズの運営がやる気がなさそうだったTBSからDeNAに代わったのは成功だったと思う。

DeNAファンでなくても楽しめる内容で、観て良かったと思う。
本作に登場した選手たちが来年活躍する姿を早く見てみたくなった。




中畑ベイスターズ3年間の軌跡 横浜DeNAベイスターズ公式ドキュメンタリー「ダグアウトの向こう」 (講談社 Mook)中畑ベイスターズ3年間の軌跡 横浜DeNAベイスターズ公式ドキュメンタリー「ダグアウトの向こう」 (講談社 Mook)

アミューズメント出版部
講談社 2014-11-28

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日本人と日本文化 (中公新書 (285))
日本人と日本文化 (中公新書 (285))
司馬 遼太郎 ドナルド・キーン
中央公論新社 1972-05-25

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日本との出会い (中公文庫)
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司馬遼太郎とドナルド・キーンによる、タイトル通りの内容を語り合った対談本。
対談前は両者ともお互いに対して緊張していたようなことを書いていたが、やり取りを読む限りでは話が盛り上がっているように感じた。

内容としては、日本人が外圧が強かったり内乱が発生した時代は「ますらおぶり」が強く出て、落ち着いたら「たおやめぶり」の方に取って代わるという傾向や、日本人のモラルが神道、儒教、仏教などのどれに強く規定されているのか?という考察、江戸期の文化と言っても上方の武士文化と江戸の町人文化では大きく異なることなど、多岐にわたっている。

こうした話の中でも、応仁の乱が中世的な公家や寺社、幕府や守護といった権威を低下させ、この後民衆が活発に活動するようになったことを革命と表現していて、そういう側面があるのかと驚いた。

また、応仁の乱を招いた責任がある将軍・足利義政は一方で現代につながる東山文化を育てた功績もあるという話から、日本人が歴史上の人物に対する評価での特徴という話にもつながっていく。
義政もそうだが、豊臣秀吉や平清盛、徳川綱吉など、日本人は概して文化に貢献があったり派手さで人々を楽しませた人物に対しては、失政があっても人気があるという話も面白い。
逆に政治的に成功しても文化と縁がなさそうな人物、例えば北条氏の執権たちや徳川家康、徳川吉宗などはあまり人気がないということでもあり、もう少し評価されてもいいように思う。

40年以上前に出た作品だが、内容が古びていなくて興味深く読むことができた。



[本書の文庫版]
日本人と日本文化 (中公文庫)日本人と日本文化 (中公文庫)

司馬 遼太郎 ドナルド キーン
中央公論社 1996-08-18

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