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読んだ本の感想をつづったブログです。



出口 治明 (著)
朝日新聞出版 (2019/5/13)


日本生命→ライフネット生命創業者→APU(立命館アジア太平洋大学学長)の経歴を持つ出口氏による、自身の経験を踏まえた仕事や組織での動き方などを語っている作品。

上司の相性があったり、上層部の決めたことには逆らいづらいこと、合わない人がいるなど、企業などで働いていると必ず起こることを踏まえて話が語られていて、納得しやすいものが多い。

自分が能力を発揮できる仕事や先の見通しなんて分からないこと、上司のタイプ別に対応のしようはあること、読書と旅で引き出しを増やすことなど、著者の他の作品で書かれていたことと共通しているところも多い。

著者の『働く君に伝えたい「お金」の教養 - 人生を変える5つの特別講義』の仕事編みたいな感じがあり、ためになったと思う。




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出口治明 (著)
祥伝社 (2016/10/1)


ライフネット生命の創業者による、自身が多くの読書から得た世界史の理解を解説している『仕事に効く 教養としての「世界史」』の続編。

前作で語っていない、日本で教えられる世界史の中でも触れられる機会が少ないイスラム圏、インド、中南米、アフリカなどの歴史について多く書かれている。

インドが地政学的に西北のカイバル峠以外からは軍隊が侵入しづらいために独自の地域世界が続いてきたこと、そしてインダス川流域やガンジス川流域を支配する北部の政権と、デカン高原に割拠する南部の政権に分かれることが多くて統一王朝が続いた時期が短いことなど、他の地域と異なる部分が多いことが分かりやすかった。
ムガール帝国以外の諸王朝は全然覚えられないが、腰を据えて歴史書を読んだら覚えていくものなのかもしれない。

中南米ではナポレオンの登場で宗主国だったスペインとポルトガルが大変な目に遭ったことで独立運動が激化し、サン・マルティンとシモン・ボリバルという2人の英雄が登場したこと、既得権益層の保守派VS革新派と連邦派VS中央集権派などの対立やアメリカなどの干渉もあって政情が安定しない状況が続く背景などが書かれていて、解決の道は遠そうである。

そしてアフリカでは部族闘争で敗れた部族から奴隷の形で中南米に労働力が流出したこと、そして19世紀にイタリア軍がエリトリアに侵入したことをきっかけに牛痘が一気に広まって牛がほぼ絶滅して農業が壊滅状態になったことで、暗黒大陸と称されたり野生動物の楽園のような形になった経緯が書かれている。

他にも、16世紀の激動の時代にヨーロッパで広大な領土を支配した神聖ローマ皇帝のカール5世が諸外国との戦争で振り回されて次の代に国家破産に至った経緯や、ルネサンスに至った地中海の東・西・南を通ってのイスラムからの文化の伝来、プロイセンがドイツ帝国となって第一次世界大戦に至るまでの歴史なども書かれ、幅広い世界史の知識を得られる。

前作を読んでからかなり時間が経ってしまったが、本書も興味深く読むことができた。




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出口治明 (著)
日経BP (2021/2/25)


陸の地政学、海の地政学、日本の地政学、マハンとマッキンダーの紹介などが書かれている、地政学の入門書。
地政学はヒトラーに悪用された結果として少し前までイメージが悪かったらしいが、重要でもあることが書かれており、「国は引っ越しできないから」というキーワードが頻繁に出てくる。

陸の地政学ではいかに敵国から挟まれないか、そしていかに敵国を挟み撃ちにするかという観点で歴史上の事例が描かれている。
「敵の敵は味方」方式で、当面の敵を叩くためなら異なる宗派とも、異教徒とも、長年戦ってきたライバルとも手を組んだ事例が書かれていて、ハプスブルク・オーストリア(カトリック)に対するフランス(カトリック)とプロテスタント諸国やフランス(カトリック)とオスマン帝国(ムスリム)、フレグ・ウルスに対するマムルーク朝とジョチ・ウルス(フレグ・ウルスとジョチ・ウルスは兄弟国)などの同盟が面白い。

海の地政学ではシーレーンや制海権をめぐる争いが多く書かれていて、地中海をめぐるギリシア、フェニキア、ローマ、サラセン帝国、イタリア諸都市、オスマン帝国などの戦いや、バルト海や北海、大西洋などをめぐるハンザ、ポルトガル、スペイン、オランダ、イギリス、アメリカなどの覇権争いが書かれている。

ここまでで多く登場するハプスブルク家の話が面白く、結婚で勢力を拡大していった一方で、暗君が多くて名君がほとんど出てこないと語っている。
王室が続くことは非常に重要なことであり、名君を出した王家がしばしば断絶していることを考えると、名君が出ることと王室の寿命には逆相関関係があるのでは?と思ったりもした。
ドイツの諸侯が「大して強くも賢くもなさそう」という理由でハプスブルク家を神聖ローマ皇帝に選んだことも書かれていて、そうした意味では適切な選択だったのかもしれない。

日本の地政学では中国、ロシア、韓国、北朝鮮、台湾と、ほとんどの周辺国と領土問題を抱えていて、アメリカ頼みという不安定な部分を指摘している。
その一方で日本が理論的に同盟を結びうる国はアメリカ・中国・EUの三択で結局アメリカしか選べないことも書かれている。
そして沖縄の基地問題については、日本の他地域に米軍基地を分散することが望ましいのだが当然ながら難しいことを語っている。
そして著者が中国に対して少し厳しさが足りないように見えるのは、学長を務める立命館アジア太平洋大学に(中国のプロパガンダ機関としてアメリカから目をつけられている)孔子学院が付属していることも関係しているのかな?と思ったりもした。

終盤では地政学の代表とされるマハンとマッキンダーの著作の概略を紹介していて、ちょっと難しそうな感じもするものの、関心を持たせてくれる内容が書かれている。

地政学の観点から世界史上の事件や国際関係が分かりやすく解説されており、興味深く読んだ。




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出口 治明 (著)
文藝春秋 (2020/12/17)


80のQ&Aという形式で、著者が自身の歴史観を語っている作品。
マネー、失敗、リーダー、大逆転、女性、宗教、戦争、ライフスタイル、アメリカ、日本と世界と、10章で構成されている。

1項目当たり3~4ページで書かれていて区切りがよく、どこからでも読むことができる。

著者はグランドデザインを作った人を高く評価する傾向があることを自分でも認めていて、始皇帝、ダレイオス1世、織田信長、阿部正弘、フランクリン・ルーズベルト、平清盛、ナポレオンなどの評価が高くなっている。

また、インフラ、ロジスティック(兵站)、交易、交流などの重要性についての記載も多く、日本の鎖国や中国の海禁、トランプ大統領のアメリカ・ファースト、イギリスのブレグジットなどは愚策だと厳しい評価をしている。

阿部正弘やハンニバルのように日本で過少評価されていると思われる人物の評価や、ナポレオンがジャンヌダルクを宣伝して有名になったという逸話(坂本龍馬なども近いケースと思われる)、イスラム圏にもシャジャル・アッドドゥッル(マムルーク朝創始者)のような女傑がいたという話など、歴史の教科書に出てこなかったりあまり書かれていない話が随所に出てくるのが面白い。

著者の歴史観に賛同することばかりでもないが、他の人があまり書かない話を読むことができるのがいい。





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出口 治明 (著)
文藝春秋 (2020/10/14)


ライフネット生命の創業者による、日本史講義シリーズの近世篇。
信長の上洛から王政復古までを扱っている。

信長・秀吉・家康の時代では信長に先駆けた三好政権の役割や秀吉が実現した「武家関白」の衝撃、この時代のキリシタンの殉教事件が有名になったのは他の地域ではカトリックは強者・征服者だったために日本でしか殉教が発生しなかったからという理由などが印象に残る。
また、東南アジアの各地にできた日本人町の話を読むと、日本が鎖国せずに交易や進出を進めていたらスペインやポルトガル、オランダなどと衝突したような気がしてくる。

江戸時代では綱吉への再評価や、新井白石や松平定信のような理屈に走って現実を見れない政治家と荻原重秀、田沼意次、水野忠成(ただあきら)といった現実的な政治家が交互に出現した話などが面白い。

江戸幕府は大きな地方政権の財源しかないのに国政をやろうとした構造的な無理や、田沼時代に地方交付税に当たる拝借金制度を財政難のためにやめたことが各藩が自助努力することを促して雄藩の出現につながったことも印象に残る。

松平定信の時代に光格天皇と衝突した際に出した「皇室が将軍に大政を委任している」というロジックが明治維新につながったという話も、井沢元彦著『逆説の日本史 15 近世改革編 官僚政治と吉宗の謎』に書かれていた話にもつながっていて、もっと知られてもいいように感じる。

開国から幕末にかけては、阿部正弘を天才と評価していて川路聖謨、勝海舟、江川英龍、高島秋帆といったそうそうたる人物を取り立てるなど、安政の改革が大きな役割を果たしたことが書かれていて、これももっと評価されてもいいと感じた。

当時の国際情勢についても触れられていて、アヘン戦争で敗れた清の林則徐が西欧諸国について学習したものをまとめた『海国図誌』が日本に非常に役立ったことや、イギリス、フランス、ロシアがクリミア戦争を戦っていたために日本はアメリカとの交渉を比較的冷静に進めることができ、そのアメリカが南北戦争に突入したなど、日本にとってラッキーがいくつもあったことが分かる。

それから、士農工商や武士道、一揆、識字率の高さといった江戸時代にまつわる幻想を叩き壊す話が特に面白い。
中でも「江戸しぐさ」という90年代からゼロ年代にはやったらしいことは、『江戸しぐさの正体 教育をむしばむ偽りの伝統』という本で80年代に捏造されたというひどい話が書かれててショックを受けた。

「江戸時代は平和で戦争がなかった安定した時代」という幻想にも、現代の人口に当てはめると約400万人が飢饉で亡くなったり、身長の低さや人口増加率が頭打ちになっていたなどのデータを元に、むしろ中国の明朝に似た「最低の時代」と語っているのも強く印象に残った。

予想を上回る知らなかった話がいくつも書かれていて、興味深く読むことができた。





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