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読んだ本の感想をつづったブログです。



塩野 七生 (著)
新潮社 (2005/8/28)


『ローマ人の物語』シリーズの文庫版17巻で、アウグストゥスの後を継いでローマ第2代皇帝になったティベリウスの治世の前半を扱っている。

前作で血縁者を後継者にしたくて頑張ったアウグストゥスだったが諸事情でかなわず、連れ後の息子で実績・年齢ともに十分なティベリウスが第2代皇帝になったが、2代目の大変さだけでなく、甥に当たるゲルマニクスを次の皇帝に指名されていたこともあって中継ぎと見られたことで、かなり苦労せざるをえない状態で治世が始まっている。

そのティベリウスは、アウグストゥスが帝政を始めるために支出がかさんだことによる財政を健全化するための緊縮策や、アウグストゥスが始めたが少し無理があったかもしれないゲルマニアのライン川以東・エルベ川以西からの撤退など、皇帝が代わってもローマがある程度機能するための体制づくりに多大な貢献をしたことが書かれている。

ただしこの手の政策は地味で目立たないこと、緊縮策の1つとして剣闘士の試合を主催するなどの人気取り政策に消極的だったこと、あまり前線に出ずに大衆へのアピールをしなかったことなどで、ケチで陰気なイメージがついてしまったのは仕方がないことなのかもしれない。
もしかすると、どんなに人気取りをやってもカエサルやアウグストゥスには勝てないので、ハナから人気取りをあきらめていたのかもしれない。

それでもティベリウスは人材の抜擢や登用、情報収集や決断といった能力に優れていたため、例えばローマを不在にしてナポリにいた時期に有事が発生した際も的確な指示を出し、事態を収拾しているのは当時の情報伝達のスピードを考慮するとすごいことだと感じた。
まさに、人を使うことに長けた指導者だったのだろう。

政策は順調に見えたが、才気あふれ大衆からの期待も高かったゲルマニクスが病死、実子のドゥルーススも病死と、後継者に関してはティベリウスもアウグストゥスと同様に苦労することになる。

さらにゲルマニクスの未亡人との確執や、元老院議員たちの能力・意欲の不足にも悩まされる話が書かれていて、次の作品ではカプリ島に引きこもった後の話に続いていく。

ティベリウスは後世の史家たちからは前述の事情もあって評判が良くないようなのだが、本書を読んでいる限りでは現実主義者で堅実な人物だったことが分かる。
ただ、同時代にそのような指導者がいたとしたら、色々と叩かれただろうな・・・というのも分からないではない。






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『ローマ人の物語』シリーズの文庫版16巻で、アウグストゥスの治世の晩期を描いている。

冷静かつ慎重に多くの政策を実施してきたアウグストゥスだが、後継者には自身の血脈にあくまでこだわり、ただ1人の娘であるユリアから生まれた孫を後継者にしようとしてユリアをアグリッパやティベリウスなどに政略結婚で嫁がせたり、男孫のルキウスやガイウスを引き立てようとしたが、ことごとく失敗している。

ルキウスとガイウスは若くして亡くなり、娘のユリア、孫娘で娘と同名のユリア、もう1人の男孫であるポストゥムスの3人も素行不良が重なって皇帝という立場上から島流しにせざるを得なかった・・・と、結局は前作で衝突して引退していたティベリウスを呼び戻して後継者にしていて、かなり迷走している様子が描かれている。

養父のカエサルを越えようという野心から始めたかもしれないエルベ川以西のゲルマニア支配でも、一旦はローマで出世しつつあったゲルマン人のアルミニウスが反乱を起こしてローマの1軍団が壊滅する被害を受けたり、東方ではアルメニアとの外交でも人事ミスもあって失策を重ねるなど、司令官として現地に赴かないスタイルのアウグストゥスの弱点が出ていて、ここでも苦悩している。

後継者人事の混迷に前任者を越えようとしての外征の失敗という事例からは、秀吉を思い起こしてしまう。

それでも一時期は対立していたティベリウスと和解し、次の皇帝として引き継ぎを行えているのはさすがアウグストゥスだとも感じる。
アウグストゥスが亡くなったことで『パクス・ロマーナ』編は終わり、ネロやカリグラのような暴君の代名詞のような皇帝も含む『悪名高き皇帝たち』シリーズに続いていくので、ぼちぼち読んでいくつもりである。






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塩野七生による『ローマ人の物語』シリーズの文庫版15作目で、アウグストゥスの治世中盤を扱っている。

少子化対策として結婚への優遇や姦通への厳しい罰則、宗教政策、税制、行政区の再編成など、さまざまな分野で政策を打ち出す一方で、自身が苦手とする軍事面でも多くのことを成し遂げている。

まず、ローマの領土拡大が進んでカエサルが構想したライン川、ドナウ川、ユーフラテス川などを境界とした勢力範囲を区切って領土拡大ではなく防衛に適した軍団の配置を行ったり、軍制改革や近衛軍団を創設するなどの改革を実施し、既成事実を積み上げていることが書かれている。

ただ、カエサルの業績を上回ろうと考えたのか、カエサルがガリア人の居住地域までを区切ったライン川を越えてゲルマン人が活動するエルベ川まで軍事行動を起こしたのは、次の16巻で問題が発生することにつながっている。

そして、アウグストゥスが不得手とした軍事を担ったアグリッパや、外交使節や広報担当として活躍し「メセナ」活動の語源となったマエケナスの業績にも触れている。
2人ともアウグストゥスの信頼に応えてきたが、それぞれアウグストゥスが50代の頃に続けて亡くなってしまう。

さらには妻の連れ子で将来を嘱望していたドゥルーススも突然死んだ上、その兄で娘婿にしていたティベリウスもアウグストゥスとの衝突や妻との不仲もあって引退してしまうなど、長生きしたことで周囲から親しい人がいなくなっていく事情が語られているのはなかなかつらいものがある。

治世が中期から後期に入るにつれて重い話が目立つようになったところで、次の16巻に話が続いていく。






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塩野七生による『ローマ人の物語』シリーズの第14作で、アウグストゥス(オクタヴィアヌス)の業績と初期の治世について書かれている。

アウグストゥスは独裁制を目指して暗殺されたカエサルを教訓に、共和制への復帰を目指す政策を打ち出しながらも別に目立たない制度を作ったりすることで、着実に帝政を成立させていく過程が書かれているのが興味深い。

元老院議員たちがやりたがらないであろうこと、例えば辺境の防衛や統治をアウグストゥスが引き受けることで好評を得ながらも実権を握るやり方は、中国の『韓非子』などで家臣が君主から実権を奪っていく話を思い出させてくれる。

アウグストゥスがトップに立ったのが30代とかなり若く、約40年にわたってこのような変革を多くの分野で少しずつ目立たないようにやったため、著者はカエサルなどと比べて書きにくかったと語っている。

本作では統治エリアの編成、税制、通貨、選挙といった政策や、エジプトやアルメニア、パルティアといった周辺諸国との外交についても書かれていて、カエサル暗殺後の内乱で中断していたローマの変革がいかに多くの分野で必要と考えられていたかが伝わってくる。

アウグストゥス自身が軍事能力があまり高くない(自らが率いての戦いで勝率が悪い)ため、アグリッパやティベリウスなどの将軍に任せたケースが多いこともあって少し派手さには欠けるが、確実に手を打っていく話を興味深く読むことができた。






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塩野七生による『ローマ人の物語』シリーズのカエサル編第6作で、3.15のカエサル暗殺から、その後の主導権争い、そしてオクタヴィアヌスがアントニウスを破って覇権を握るまでが書かれている。

カエサルが暗殺された要因には、元老院議員と紳士協定を結んでゲルマン人の護衛をつけなくなったことが書かれているが、果たしてこれはパルティア遠征前にやらなければならなかったことなのか疑問が残る。
単に護衛をつけていれば防げていた可能性が高く、歴史上のIFとして印象に残る。

暗殺者グループには旧元老院派のカシウス、リーダーに担がれたことで有名なマルクス・ブルータスの他に、カエサルの側近のデキムス・ブルータスなども含まれていて、「ブルータスよ、お前もか」の対象は実はマルクスではなくデキムスの方だったのではないか?という話は少し驚いた。

カエサルが暗殺されたことで遺言が発表されるが、姪の子で養子としていた18歳のオクタヴィアヌスが指名されており、オクタヴィアヌスは暗殺者グループだけでなく、カエサルの副官だったが後継者に指名されなかったアントニウスとも権力闘争を繰り広げることになる。

暗殺後のプランも不明瞭で大衆の支持も得られなかった暗殺者グループがまず脱落し、アントニウス、レピドゥス、オクタヴィアヌスの第二次三頭政治を経て、オクタヴィアヌスとアントニウスの戦いに移行していく。

オクタヴィアヌスはまだ若いこと、体が弱いこと、軍事が不得手など複数の弱点を抱えていたが、軍事はカエサルからつけられていた同年代のアグリッパの補佐を受けたり、政治工作や大衆へのアピール、策略などで挽回していき、カエサルが後継者に指名したことの確かさを証明していく。

一方でオリエントを支配下に置いたアントニウスはエジプトのクレオパトラにたぶらかされ、カエサルの副官として活躍していた時期からすると「どうしてこうなった!?」と言いたくなるくらいの堕落を見せている。
クレオパトラの気を引くための数々の行いでローマ市民の支持を失った上、自国の力を過信したクレオパトラによる軍事への口出しで兵たちの士気も下がり、負けるべくして負けた感が強い。

オクタヴィアヌスが最終的な勝者となったことでカエサル編はこれで終わり、次からはオクタヴィアヌスがアウグストゥス(尊厳者)として帝政を樹立する話に続いていく。
さすがにこれまでのカエサル編ほど生き生きした話にはならないと思うので、このシリーズは少し休む。






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