『論語』、『孫子』、『韓非子』といった諸子百家から『史記』や『三国志』、『戦国策』といった史書や軍記ものに当たる書物など、中国古典の言葉を現代語訳して教訓を語っている作品。
著者の作品は10冊以上読んでいて、本書は少し前に読んだ『中国古典に学ぶ 人を惹きつけるリーダーの条件』などと同じくらい駄作に属するように感じた。
まず、幅広い作品から言葉を取ったのはいいが、既に知っているメジャーどころが多くて目新しさに欠けるために流し読みになった。
また、著者がしばしばやる中国人上げと現代の日本人下げが随所で出てきて、読む気をなくす。
この手の作品は他の書き手も書いているので、著者が改めて何冊も書いて晩節を汚す必要はないように感じる。
それよりも、本書に収録されていてあまりまとまった形で訳されていなさそうな『宋名臣言行録』あたりをまとめた作品でも書いてくれないかと考えている。
- 著者の作品について書いた記事
- 『中国古典「一日一話」-世界が学んだ人生の”参考書”』
- 『中国古典 逆境を生き抜くためのすごい言葉一○○』
- 『[新訳]荀子 性悪説を基に現代人にこそ必要な「礼」と「義」を説く』
- 『右手に「論語」左手に「韓非子」―現代をバランスよく生き抜くための方法』
- 『“中国古典”役に立つ兵法120』

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『史記』、『三国志』といった史書や演義もの、『論語』や『孫子』、『韓非子』といった思想書といった中国の古典から、リーダーが持つべき資質や心構えなどを解説している作品。
項羽と劉邦、劉備、曹操、孫権、諸葛孔明など、比較的有名な英雄たちのエピソードが多く扱われている。
その分、中国の古典に関する本を読んでいた場合、知らなかったマニアックな情報が少なくてつまらない。
著者の悪癖である、中国への礼賛が過ぎることや現在の日本への愚痴が多く出ていて、ハズレの方に転んでいた。
末尾には1986年に書いたものを加筆・修正したとあり、だから毛沢東や周恩来を褒める話が多かったのだと合点もいった。
(この時期は冷戦が継続していたこともあるので・・・)
読みやすくはあるが、あまりおすすめはできない。
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中国の戦国時代に、弁舌の力で活躍した人物を紹介している作品。
主に扱われているのは張儀、蘇秦、范雎(はんしょ)、呂不韋、呉起、田単ら9名で、この時代を舞台とした漫画である『キングダム』でも登場人物や過去の人物として登場している。
彼らの出身国を見ると趙、魏、斉のように中央に近い国の出身者が多く、楚や秦のような辺境の国の出身者が少ないように見える。
これは楚や秦が大国で他国との交流が比較的少ないこと、武力に訴えがちな傾向があるなどの理由から、知略に長けた人物が育ちにくかったのかもしれない。
単純に正攻法で説得を試みると王から反発される可能性が高く、例え話や婉曲な言い回し、相手の心理状況を読み取った上での言動など、さまざまなテクニックを用いたことが伝わってくる。
この点で同時代人だった孟子は正直すぎて、同僚の説客からからかわれているシーンも書かれている。
また、呉起のように仕事熱心すぎて周囲から孤立した人物の悲劇も書かれていて、組織で活動する上での課題と捉えることもできる。
興味深かったのは蘇秦の話で、彼は『史記』は合従策の提唱者として六カ国の宰相を兼任したように書かれているが、『戦国策』などによると燕の密命を受けて斉で謀略活動をしていただけとあり、かなりスケールが小さくなってしまっている。
これは陳舜臣の『中国の歴史(二) 』にも書かれていたように、合従策を推進した人が何人もいて、その業績が蘇秦に集約されたという説が妥当なようである。
本書の元ネタはおそらく『史記』と『戦国策』がほとんどだと思われ、この2冊の関連書を読んでいたので目新しい部分が少なかったが、予備知識があまりない状態で読む分には分かりやすいのではないかと思う。
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中国史で活躍したとされる、伝説上の堯舜から元代の耶律楚材にいたる人物にまつわる名言やエピソードを1項目当たり見開き2ページで紹介している作品。
『左伝』、『戦国策』、『史記』、『三国志』、『十八史略』、『宋名臣言行録』といった古典の言葉が引用されていて、思想家っぽい人物よりも政治家や将軍タイプのエピソードが多く扱われている。
例えば『三国志』で権謀術数を用いる悪役のイメージが強い曹操の意外な気さくさや、劉邦や李世民といった皇帝と名臣たちのやりとりなどが興味深い。
特に南北朝時代以降はそれまでと比べて日本で知名度の高い人物が少なそうなこともあり、初めて知る話が多かった。
そこから組織で活躍するための心得などを抽出しているという形で、そういう使い方をするのかと思いながら読んでいった。
たまに「このエピソードは教訓として適切なのか?」というところや、しばしば最後の一文で「それに比べて現代は・・・」という嘆きを入れているのはあまり好感が持てない。
前者は好みが分かれるところだろうが、後者だと読者がこれを読んで「そうだ、頑張らないとな」ということにはならないと思っていて、もう少し効果を考慮してほしいところではある。
この手の本を数十冊読んだこともあるためか、1回読むには興味深いが、再読するほどの内容でもないと感じた。
- 著者の作品について書いた記事
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- 『“中国古典”役に立つ兵法120』

儒教の経典として知られる四書五経(『大学』、『中庸』、『論語』、『孟子』、『易経』、『書経』、『詩経』、『春秋』、『礼記』)に収録されている言葉を、経営という観点からどのように活かせるかを語っている作品。
この四書五経は、朱子学によって選択されたものという。
朱子学は儒教の教条主義的な部分が集まった感じがしてあまりいい印象を持っていないが、ある種の整備は必要で、整備されたからこそ現代に伝わったという面もあるのだろう。
経営に絡める性質上、著者が講演などで知り合った経営者のエピソードなど、著者の見聞を語った話が多くなり、エッセイに近い感じとなっている。
それもあってか、著者の作品での悪癖である説教臭さ、具体的には「昔に比べて現代は・・・」という感じで話を締めくくる箇所が多く出てきてうっとうしい。
いい言葉が扱われているだけに、くどくなって効果が薄れているようなのは惜しい。
儒教と経営について書かれた本を読むのならば、渋沢栄一の『現代語訳 論語と算盤』あたりから始めるのがいいと思う。
