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読んだ本の感想をつづったブログです。



安藤優一郎 (著)
日本経済新聞出版 (2022/10/4)


関ケ原の合戦についての最近の研究で分かってきたことを、分かりやすく解説している作品。

秀吉が生前に五大老のランク付けを徳川家康・毛利輝元→小早川隆景・前田利家・宇喜多秀家だったのが、隆景が亡くなって輝元は頼りないと見られたのか、家康・利家→輝元・秀家・上杉景勝と家康を牽制する役割が輝元→利家に代わったという話が面白い。

そして秀吉と利家が相次いで亡くなり、利家の息子である利長は家康を牽制する役割を放棄して家康に屈服、そして輝元も家康の下にならざるを得なくなる状況が書かれている。
この間、毛利家では秀元の処遇問題、宇喜多家ではお家騒動で家康の介入、前田家では利長の屈服でもめるなど、家内統制や軍事的にガタガタになっていることも分かってくる。

こうした事情から、家康が上杉討伐に出た頃は家康が絶対的な第一人者だったはずなのに、輝元の野心を見透かして安国寺恵瓊や大谷吉継と連携してクーデターを成功させた石田三成の戦略はかなりすごかったのだと思わされた。

官軍のはずだったのに賊軍とされて家康が動きが取りづらくなったり、一方で福島正則や黒田長政らの東軍が想定外に快進撃を続けたこと、輝元が家康打倒よりも伊予、豊前、阿波、豊後などへの領土拡大を目指したために兵力を分散した戦略ミスなどにつながっている。

『関ケ原合戦全史 1582-1615』などの類書で読んで知っている話も多いが、初めて読んだと思われる話もそれなりにあって興味深く読むことができた。




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関連タグ : 安藤優一郎, 関ケ原の合戦,


安藤 優一郎 (著)
朝日新聞出版 (2020/8/11)


タイトルにあるように、明治時代に徳川慶喜の復権について渋沢栄一と勝海舟が対立していたというエピソードを紹介している作品。

渋沢は慶喜に取り立ててもらった恩義を強く感じている一方、勝は慶喜から敗戦処理時の交渉だけを押し付けられて役目が終わったらすぐに左遷されたことに面白くない感情を持ち、2人は慶喜に対して正反対に近い感情を持っていたことが書かれている。

さらに、渋沢は勝と初めて会った時に小僧扱いされてプライドを傷つけられたことや、勝が新政府軍との交渉をやっていた時期に慶喜から交渉方法が綱渡り的で危なっかしいと苦言を呈されて反論したなど、さらにこじれた要因も紹介されている。

慶喜は新政府軍から比較的早い段階で謹慎処分を解除されたのだが、勝の進言もあって静岡から東京に出てこなかった時期が長く、渋沢から見るとこれが「勝が慶喜を静岡に閉じ込めている」ように見えたようである。

勝からすると慶喜が東京に出てくると政争に巻き込まれる危険があったことや、慶喜自身が朝敵という立場を重く受け止めて自粛していたこともあり、期間はともかくとして不安定な時期に東京に出てこなかったのは妥当な判断だったと感じている。

それでも渋沢と勝はそれぞれの立場から慶喜の東京復帰、そして明治天皇への謁見も実現できているので、それらは非常に良かったことと思う。

そして勝の死後、渋沢が慶喜の自伝を書くという事業を始め、初めは嫌がっていた慶喜も途中からは率直にインタビューに応じるようになったことも書かれている。
その中で、勝が話したり書いたりして広まっている話で事実ではないことも多く証言していて、いかにもありそうな話だと少し笑ってしまった。

これまで意識することがあまりなかった、幕末から明治にかけての偉人たちの関係性が分かりやすく書かれており、興味深く読むことができた。




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30の神社からよむ日本史 (日経ビジネス人文庫)
安藤 優一郎
日本経済新聞出版社 2018/7/3



神社の中から日本史上の事件となった神社や、歴史上の人物を祀っている神社、経済や文化の面で大きな影響があった神社などを30章構成で紹介・解説している作品。

扱われているのは以下の神社で、出羽三山や熊野三山のように複数の神社を1まとめにしている章もある。

北海道神社/出羽三山/塩竈神社/神田明神/日枝神社/明治神宮/三囲稲荷/乃木神社・東郷神社/鶴岡八幡宮/鹿島神宮/日光東照宮/浅間神社/諏訪大社/秋葉神社/熱田神宮/伊勢神宮/賀茂神社/御霊神社/愛宕神社/平安神宮/樫原神宮/熊野三山/湊川神社/出雲大社/厳島神社/松陰神社/金刀比羅宮/太宰府天満宮/宇佐神宮/水天宮


伊達政宗と塩竈神社、渋沢栄一と明治神宮、水戸光圀と湊川神社のように初めて知った歴史上の人物と神社との関係や、伊勢神宮や熊野三山、出雲大社などが造営や遷宮の費用をねん出するために取った手段、テーマパークや歌舞伎の会場として神社が果たした役割など、興味深い話が多く扱われている。

近代の偉人を祀った神社は比較的新しいことが分かるとして、平安神宮や樫原神宮なども明治時代になってから創建されたことが書かれていたのも少し意外だったりもした。
この時期は廃仏毀釈で神社に求められる期待が多かったのだろうとも思った。

三越百貨店(越後屋)と三囲神社の話や、北海道開拓にまつわる北海道神社、久留米藩有馬家の江戸屋敷にある水天宮が多くの参拝者でにぎわった話など、初めて知ることも多くてなかなか良かった。

日経ビジネス人文庫では『30の・・でよむ・・史』というタイトルの本をけっこう出しているので、『30の寺院からよむ日本史』も企画されているかもしれない。




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安藤 優一郎 (著)
日本経済新聞出版社 (2020/2/11)


江戸時代の大名や旗本の人事異動、つまり国替えや幕府内での人事について、具体的な事例からその内容を解説している作品。

国替えは関ケ原の合戦からしばらく実施されていたが、幕府権力が安定してくると財政負担が問題となり、途中からは松平家や水野家、榊原家といった譜代大名の国替えがほとんどとなる。
姫路、前橋、舘林、川越などと、一定の期間ごとに国替えがなされる藩も固定しているようである。

本書ではその中でも、磐城平(福島県)から延岡(宮崎県)という最も遠い距離の国替えを命じられた内藤家の事例が扱われていて、移動先の家や後任の家との手続き、移動にかかる莫大な費用負担、商人からの借金や農民からの年貢にまつわるトラブルなど、思っている以上に大変なことであるのが分かる。
ただ、国替えによって潤う人々もいるはずなので、そのあたりも書いてほしかったところである。

後半では松平定信、水野忠邦、大岡忠相(大岡越前)、長谷川平蔵(鬼平)が幕府組織でどのように出世したり出世しなかったりしたのかが書かれている。
嫉妬や根回し、足の引っ張り合いなどが書かれていて、現在の官庁での出世争いや、自民党の派閥争いを思わせるものがあり、時代を経てもこのあたりは変わらないのかもしれない。

終盤では国替えが反対に遭って撤回に追い込まれた話、そして明治維新で徳川家が静岡藩70万石に国替えさせられた話が収録されている。

教科書などで扱われることがあまりないと思われる話が多く出てきて、それなりに興味深く読むことができた。




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30の名城からよむ日本史 (日経ビジネス人文庫)
安藤 優一郎
日本経済新聞出版社 2018/12/4



日本の名城を30選び、城が築かれた背景や地理的な利点、歴史的事件でどのような役割を果たしたか、その後の変遷などを紹介・解説している作品。
具体的には、以下30の城が扱われていて、古くは坂上田村麻呂による東北遠征、新しくは日清戦争で広島城に大本営が置かれた話などが語られている。

五稜郭、胆沢城、多賀城、会津若松城、江戸城、世田谷城、小田原城、川越城、
宇都宮城、水戸城、浜松城、上田城、金沢城、清洲城・名古屋城、岐阜城、大津城、
二条城、大坂城、千早城、姫路城、赤穂城、備中高松城、広島城、津和野城、
松山城、高知城、名護屋城、原城、熊本城、首里城

メジャーな城ばかりではなく、津和野城や世田谷城、水戸城のように必ずしも歴史の教科書などであまり扱われない城を扱っているのはマニアックでポイントが高い。

城の紹介では山城、平山城、平城の分類は知っていたが、これに加えて本丸などの曲輪の配置によって梯郭式(ていかくしき)、輪郭式(りんかくしき)、連郭式(れんかくしき)といった分類があることを知り、興味深かった。
今後城を訪れた時などにチェックしてみようと思う。

歴史的な話で印象に残ったのは、安土城、八幡山城、聚楽第、岐阜城、名護屋城、原城、大津城などが廃城になったり徹底的な破壊を受けた理由に、前の時代の権力者(例えば信長や秀吉)のイメージが強い城や、敗戦や苦戦など権力者にとっていやな記憶を思い起こさせる城を破壊することでイメージを払拭したかったという話が興味深い。
(新たな城を築くに当たって資材を転用するために解体された例も多いみたいだが)

近年になって唱えられた新説や新たな発見が紹介されていたり、例えば大坂城では冬の陣・夏の陣ではなく大塩平八郎の乱を扱ったように変化球的な話があったりと、なかなか面白かった。
ただひとつ注文を付けると、地勢に関する話があるのだから、やはり周辺の地図はつけておいて欲しい。

日経ビジネス人文庫から出されている『30の〇〇から読む〇〇史』というタイトルの本は基本的に単発のようだが、本書で紹介しきれていない城は例えば仙台城、犬山城、竹田城、松江城、萩城、岡城などいくつもあるので、続編を出してくれたらぜひ読んでみたいところである。





30の神社からよむ日本史 (日経ビジネス人文庫)
安藤 優一郎
日本経済新聞出版社 2018/7/3


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