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読んだ本の感想をつづったブログです。



宮城谷昌光 (著)
新潮社 (2021/1/19)


中国の戦国時代に活躍した学者・公孫龍を描いた歴史小説の第1巻。

衰えた周国の王子・稜は父親である周王から北の燕国へ人質として出向くよう命じられ、途中の趙国を通っていた頃に事件に巻き込まれ、封印されていた周王から燕王への手紙に稜を殺すように書かれていることを知ってしまう。
これは稜を排除して別の王子を王位に就けようという勢力の陰謀と推察され、この時点で稜は周の王子として生きられないと判断し、商人の公孫龍という人物として生きることを決意する。

また、趙の公子2人を山賊や暗殺者たちの襲撃から助けたことで信任を受けただけでなく、燕の昭王からも知遇を得たことで、趙と燕の2か国にまたがって商人として活動していくことになる。

扱われている時代では孟嘗君、楽毅、郭隗、趙の武霊王、平原君など、『戦国策』や『史記』などでも有名な人物が多数登場するのがいい。
主人公がやや脇役っぽくて、周囲が著名人という形となっているのは、昨年の大河ドラマ「麒麟がくる」に似ているように感じた。

公孫龍を支える家臣たちの活躍が目立ったり、趙の公子何(後の恵文王)と公子勝(後の平原君)の兄弟の素直さ、2人の父親である武霊王の底知れなさなど、スケールの大きな話が展開されてきそうな感じがあり、続きを期待させてくれる。




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宮城谷 昌光 (著)
文藝春秋 (2020/10/8)


孔丘(孔子)の生涯を描いた歴史小説の長編。

人間臭い孔丘を描くという意図からか、『論語』で出てくることの少ない若い頃の話が多く扱われている。
それもあって、秦商や顔回の父親、漆雕啓(しっちょうけい・子開)といった初期の弟子が多く登場してたり、子路や子貢といったあざなではなく仲由や端木賜のように本名で表記していて新鮮に感じる。

魯の重臣である季孫氏に招かれたのにその家来である陽虎に追い返されて落ち込んだり、意地を張って弟子たちにたしなめられるような孔丘の姿が描かれていたり、春秋時代に君主の権力が重臣たちに奪われる下剋上の傾向が出ているところなどはそれなりに面白い。

また、『論語』に出てくる言葉が(当然ながら)しばしば出てくるところもいい。

しかし、井上靖の『孔子』でも感じたことだが、『論語』などで聖人とされている上に実像があまり分かっていないと思われる孔丘は小説にするには難しい人物のようで、エンターテイメントとしてはそこまで面白いかというと微妙なところである。

著者があとがきでも書いているが、それだけ手を出すのは危険な題材ということだろう。





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宮城谷 昌光 (著)
文藝春秋 (2020/1/4)


中国の春秋時代、晋で大臣として活躍して最終的には韓氏・魏氏とともに晋を簒奪することになった趙氏の人々を描いた連作形式の歴史小説。

  • 晋の文公(重耳)に従って繁栄の基礎を築いた趙衰(趙成子)
  • 執政として君主の廃嫡にも関与した趙盾(趙宣子)
  • 断絶の危機に瀕した時期の趙朔(趙荘子)
  • 忠臣たちに守られて育ち父・趙朔の仇を討った趙武(趙文子)
  • 士氏や中行氏といったライバルや他国の敵対勢力と戦った趙鞅(趙簡子)
  • 韓氏・魏氏とともに知氏を滅ぼした趙無恤(趙襄子)
といった当主たちに加え、公孫杵臼、程嬰、董安于、尹鐸、陽虎、張孟談といった家臣などの関係者たちの活躍も描かれている。

公孫杵臼や程嬰による趙氏断絶の危機に立ち向かった「月下の彦士」や、「老桃残記」で魯で下剋上に失敗して亡命してきて評判が悪い陽虎が趙鞅に仕えてからは忠臣として大活躍する話、趙鞅の時代に本拠とした晋陽の街に関するやり取りなどが印象に残る。

長く続いた一族にまつわる形式の連作小説はあまり読んだことがなく、もっとあってもいいと思う。
本書で扱われた趙一族は、それに耐えるだけ名君が出たということなのだろう。




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呉漢 - 下巻 (単行本)
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宮城谷 昌光
中央公論新社 2017-11-08

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後漢の建国に貢献した、呉漢の生涯を描いた歴史小説の下巻。

更始帝から差し向けられた軍に勝利した劉秀は皇帝に即位し、大司馬となった呉漢は配下につけられた将軍たちとともに河北から南方、東方と転戦を続けていく。

敵としては各地を移動する賊軍の他、梁の劉永、斉の張歩、蜀の公孫述といった地方に割拠する勢力がいて、呉漢はいまいちな将軍の能力不足や裏切りなどのために敗戦することもあるが、劉秀のバックアップもあって確実に平定を成し遂げていく。

変換しづらい漢字が多いので名前は書かないが、呉漢の側近たちもそれぞれの持ち味を発揮して呉漢の軍を盛りたてているところも注目のポイントである。

劉秀はどうしても他の創業時の皇帝、例えば劉邦や李世民と比較すると歴史小説で扱われることが少なくて配下の将軍なども知名度が低いが、建国するにはそれなりの困難さがあるわけで、そのあたりがよく描かれていたのではないかと思う。






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宮城谷 昌光
中央公論新社 2017-11-08

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光武帝劉秀の大将軍として後漢王朝の建国に貢献した、呉漢の生涯を描いた歴史小説の上巻。
著者の作品では劉秀を描いた『草原の風』があって読んでいたので、これも読んでみた。

呉漢は洛陽の南にある南陽郡で小作人をやっていたが、仇討ちのために旅していた人物との出会いをきっかけに主人からも見出され、農場経営を徐々に任されることとなる。

その頃は前漢王朝が王莽に乗っ取られて新王朝になる頃のことで、呉漢はその王朝で亭長(現在で言えば駐在所長くらいの役職)になったが、客人となっていた人物が仇討ちを果たしたことで連座を逃れるために洛陽へ、その後は新王朝への反乱が続いて治安が悪くなったために河北地方へと難を逃れた。

そこでも多くの人とのつながりから北京近くの県令になり、河北を平定するために遠征してきた劉秀の配下に入ることとなる。
そこからは趙で前漢皇帝の血脈である劉子輿を騙る王朗の征伐や、劉秀が仕えていた更始帝と反目して自立を図ったことでも戦いとなるなど事態が展開し、呉漢は劉秀から大将軍に任じられて河北の騎馬軍団を率いて戦っていく。

前歴からも呉漢は学問はないが人徳があって本質を見抜く能力が高い人物として描かれていて、「小石が黄金に変わることはあるのか」という言葉が背景に語られている。

なかなか面白いので、続けて下巻を読む。





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宮城谷 昌光
中央公論新社 2017-11-08

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