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読んだ本の感想をつづったブログです。



本郷 和人 (著)
河出書房新社 (2018/11/21)


現在の日本史の授業が暗記科目となっていて考えることがおろそかになっていることを憂い、考えることの重要性から日本史を語っている作品。

編集者から信、血、恨、法、貧、戦、拠、三、知、異と10の漢字でお題を出してもらい、それに対し著者が即興で話した内容をまとめた構成となっている。

中世では法律の記録がずさんで判例や法の根拠があるか否かから裁判をしていたという、現代から見ると恐ろしい話や、律令を導入した際に科挙を採用しなかったことで世襲の社会となって知識を軽んじて儀礼を重んじていた話、昔から軍事の研究が進んでいなかったり発展を必ずしも望まない傾向が日本にはあったことなど、興味深い論点がいくつも語られている。

「拠」の話では城攻めのシーンがある漫画として『キングダム』と『狼の口』が紹介されていて、『キングダム』は読んでいるが『狼の口』は未読なので関心を持った。

最近読んだ著者の『世襲の日本史: 「階級社会」はいかに生まれたか』『怪しい戦国史』と重なる話もしばしばあるが、多作となった場合につきもののことではある。

他国の歴史と比べての日本の歴史や、現代から見た過去の特徴などの一端が分かるようになっていて、興味深く読むことができた。






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本郷 和人 (著)
産経新聞出版 (2019/7/5)


東京大学史料編纂所教授による産経新聞での連載をまとめた作品で、『戦国武将の選択』の続きのような位置づけとなっている。

最新の研究から通説と異なる事実が分かったことの紹介や、歴史小説や歴史読み物などでなんとなく納得している設定に疑いをはさんだりと、さまざまな論点から話をしている。

特に、史料に書かれている兵数が盛った数字であることが多くて土地の生産力からいくとそこまで多かったはずがないとか、城攻めをする理由としない理由の考察などが面白い。

また、マイナーな戦国武将の話や、彼らの家が思わぬ大物とつながっている話(本多・小笠原、藤堂・生駒・蒲生、福島・南部・石田など)もまた、マニアックな関心に応えてくれている。

著者がライトノベルにはまったために文章が軽いとお叱りを受けたと書いていたりして、楽しく読むことができた。






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本郷 和人 (著)
NHK出版 (2019/9/10)


日本史における世襲がなされてきた実態や、その理由、メリットやデメリットなどを考察している作品。

律令国家でも科挙を採用せずに豪族が貴族になっていった事情、摂関政治や院政のシステム、世俗も宗教も階級制度では同等だったこと、イエ制度の観点から武士が養子をとっていた話、明治維新で能力主義が採用されたことなどが扱われていて、天皇や征夷大将軍といった「地位以外で実権を持つ人」の存在が政治などを動かしていた事情を知ることができて興味深い。

鎌倉幕府の北条氏が将軍にならなかったのは地位についたことによるトラブルを避けるためという話と、それでも名目だけの地位だった藤原氏の将軍にからんで陰謀がなされたように、実権があってもなくても地位をめぐる争いは発生するという話が特に印象に残る。

著者の専門が中世ということで、江戸時代における世襲の話がなかったのは少し物足りない気もするが、全体的には歴史の読み物で何となく感じるが言語化しにくかったと思われる部分を突いていて、なるほどと思わせてくれたと思う。






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本郷 和人 (著)
KADOKAWA (2019/5/24)


東大史料編纂所の教授による、日本史上の人物の行動を通して組織での生き方、立ち回り方などのヒントになるかもしれない話を紹介している作品。

陰謀家の父・時政も排除した北条義時、教科書には出てこないが足利義満の政策を策定したと思われる細川頼之、「義の武将」というかっこいいイメージとは裏腹にせこい面や無責任かもしれない部分が多々見受けられる上杉謙信、粗暴なイメージがあるが史料からは思慮深さが感じられる福島正則など、それぞれの人物の魅力的な部分とダメな部分を分かりやすく説明していて面白い。

ビジネスマン向けに各項目にポイントとして教訓となる(かもしれない)一言をつけていて、当たっていたりちょっと強引だったりするところも楽しい。

一般的な歴史読み物にはあまり出てこない、津軽氏に育てられた福島氏の血を引く人物のエピソードや、秀吉が武功だけでなくデスクワークも部下の勤務評定で重視していた話など、学者だからこそ出てくる話もあり、内容に厚みを加えている。

楽しさと興味深さを両立した、面白い作品だと思う。






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本郷 和人 (著)
KADOKAWA/角川学芸出版 (2012/11/23)


中世から近世にかけての時代を戦いの観点から、その時代を代表する人物2人の対比を用いて以下の8章で語っている作品。
  1. 平清盛と源頼朝-治承・寿永の乱
  2. 後鳥羽上皇と北条義時-承久の乱
  3. 安達泰盛と平頼綱-霜月騒動
  4. 足利尊氏と後醍醐天皇-南北朝内乱
  5. 細川勝元と山名宗全-応仁の乱
  6. 今川義元と北条氏康-駿東地域の争奪戦
  7. 三好長慶と織田信長-戦国の畿内争奪の諸相
  8. 豊臣秀吉と徳川家康-小牧・長久手の戦い

いきなり「はじめに」で、「古代史なんて、なかったら良かったのに」とか「史料なんて、なかったら良かったのに」との思いを語って読者にショックを与えているが、これは古代史や資料の多さによって簡単な捉え方をしてしまう歴史学界の傾向を危惧してのもので、あくまで歴史研究が多面的な観点からなされてほしいとの思いが書かれていて納得する。

基本的には過去に読んだ著者の作品と重なる話も多いが、武家が貴種をかくまう風習や、霜月騒動の背景にある御家人の利益(のみ)を重視するか「撫民」もするかという路線対立、畿内・中国・四国・中部の「日本A」とそれ以外の「日本B」という構図などが、2人の人物の話と関連付けて語られているのは分かりやすく感じた。

著者の作品の中でも、まとまりの良さではけっこう上位に来る良書だと思う。
著者があとがきで検討しつつも諸般の事情で先になりそうだと語っていた『九条道家』の作品が出る日を楽しみにしている。






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