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読んだ本の感想をつづったブログです。





海運や異文化間交易、情報などの観点から、西欧諸国が近代にのし上がったプロセスを語っている作品。
世界史の教科書における記述や、ウォーラーステインの世界システム論で欠落していると思われる話を多くしている。

著者の他の作品と重なる話も多いが、多分初めて読んだ話も多くて興味深い。

著者がバルト海交易を専門としてきたこともあり、木材の調達に難がある地中海のイタリア諸都市から、木材や鉄などの資材が調達しやすいバルト海や北海の沿岸にあるオランダやイギリスに海運の主導権が移った話は分かりやすい。
また、イギリスの海運業はスウェーデンに代わってロシアから輸入した鉄が支えた話が書かれていて、イギリスのバルト海での主要貿易相手国が代わったこととバルト海の覇権が移ったのはどちらが先なのか少し気になった。

近世ではイギリス、フランス、スペイン、オーストリア、プロシアなどが戦争を繰り広げていたが、その中でスウェーデンやデンマーク、アメリカといった中立国の商船が地中海の多くの港で活動し、戦争続きながらも貿易が盛んになされていた話も面白い。

中国(清朝)との貿易で初めの頃に銀が中国に流入していたのは茶に代わる輸出品がなかったためとの説明がなされることが多いが、当時の中国で納税に銀を使用していたことと、金銀の交換比率が西欧と中国で異なったためと説明されて新鮮に感じる。

その中国との交易ではイギリスの東インド会社が有名だが、フランスやスウェーデンも東インド会社を設立して中国から茶を輸入し、イギリスに密輸出していた話は既に知っていても面白い。
これはイギリスが茶に80%を超える高い関税をかけていたことが背景にあり、フランスからの茶は高級品なので高所得者向け、スウェーデンからの茶は低級品なので低所得者向けで、イギリスの茶の消費を支えていたという。
この話は『密輸の世界史』などの本が出て扱われるようであれば読んでみたい。

他にも商人に頼ったポルトガルとインフラ整備に努めたイギリスの海洋帝国としての性質の違いや、国家間の争いでは敗れてもポルトガル商人はアジアで長いことニッチな分野でイギリス商人やオランダ商人と取引を続けていた話、電信と蒸気船の発達によって東インド会社が不要となりイギリスがインドを直接統治できるようになった話、新世界で砂糖ではなく綿花を栽培したイギリスの慧眼などが書かれていて、他の著作同様に楽しむことができる。

ここ2~3年に書かれた著作よりもタイトルや内容が少し堅めなので、著者が一般向けの作品を出していくうちに売れそうなポイントやコツをつかんでいったのではないかと思っている。






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人が移動して定住したり次の場所に移動するという、広い意味での「移民」から、世界史を語っている作品。

著者の他の作品でも書かれていた、ムスリム商人、ポルトガル商人、アルメニア商人、ニュークリスチャン(イベリア半島で改宗した元ユダヤ人)の活躍が本書でも多く扱われている。

世界史の教科書に書かれていることと印象が異なる話、例えばヴァイキングがロシアの河川から黒海やカスピ海沿岸でも交易していた話や、ポルトガル国家がライバル国に敗れた後もポルトガル商人はアジア貿易で活動を続けていたこと、アルメニア商人のユーラシアに広がったネットワークを多くの国が利用してきた経緯、新大陸でのサトウキビ栽培では黒人奴隷の労働力とニュークリスチャンのノウハウが結びついてのものだったなど、知らないことはいくらでもあることを再認識させられる。

本書でさらに印象に残ったのはスコットランド人の話で、中世の宗教戦争では傭兵としてプロテスタント側のデンマーク軍やスウェーデン軍などで活躍したことや、大英帝国の発展に伴って植民地に移民していった話、明治政府のお雇い外国人として来日した「エゲレス人」にも多くスコットランド人が含まれていた事例などが書かれている。

そのスコットランドではブレグジットでイングランドと同じ国であることのメリットが減り、独立してEU内に留まろうとする動きも扱われ、これはスペインにおけるカタルーニャ独立運動など、ヨーロッパの多くの国が抱えている問題だと指摘されている。

具体的なデータを多用して知らなかった話が本書でも多く書かれていて、興味深く読むことができた。






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物流の観点から、17章にわたって世界史の出来事を語っている作品。

まず、歴史上地中海やイタリアが過大評価され、北海やバルト海、カスピ海、黒海、白海といった北の海と、それらの海から続く大河を利用した交易がもっと注目されていいという話が印象に残る。
地中海沿岸では木を伐採するとなかなか生えてこなくなることが海運業の衰退につながったという話や、バルト海沿岸地域が穀物や木材、麻、リネンといった海運業に必要な物資を輸出してきた話などが書かれている。

また、ポルトガル、オランダ、イギリス、アメリカ、アルメニア人、セファルディム(イベリア半島に住んでいたユダヤ人)などによる交易のネットワークや商売方法の違いなどが語られているのみ興味深い。
東インド会社はオランダやイギリスのものが有名だが、小さいながらスウェーデンも東インド会社を経営していて、中国から安いお茶を輸入してイギリスに密輸していたことが貧困層にも喫茶の習慣が根付いた一因という話が特に面白い。

他にも中国が秦や漢の時代に他の地域に先駆けて実施した政策が繁栄につながったことや、フェニキア人が開拓した地中海のネットワークをローマ人が引き継いだような事例が世界史ではいくつも見られること、共産主義国が失敗した一因として消費財の流通を軽視したことも大きいことなど、多くのトピックが語られている。

著者の他の作品と重なるところも多いが、本書もまた興味深く読ませてもらった。






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人に話したくなる世界史 (文春新書)
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玉木 俊明
文藝春秋 2018-05-18

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世界史の教科書に書かれていることとは印象が異なると思われる、貿易、保険、商業ルール、産業などの話を13章に分けて解説している本。

古代ではアレクサンドロスがインダス川流域までで進撃が止まったのはアケメネス朝ペルシアの交易範囲がそこまでだったためで、アレクサンドロスはアケメネス朝から引き継いだ部分が大きかったことが分かってくる。

また、海で活躍したイメージが強いヴァイキングはバルト海からロシアの大河を経て黒海やカスピ海にも進出し、ビザンツ帝国やムスリム国家とも交易を盛んに行ってきた話も面白い。

大航海時代ではポルトガルは元から喜望峰を経由してのアジアへの航路を目指していたのではなく、西アフリカにある黄金の交易ルートを探していたという話にはけっこう驚いた。

アニメ『母をたずねて三千里』でマルコの母親がイタリアからアルゼンチンに出稼ぎに行ったのは労働力不足だったためとあり、背景が分かってくると改めてアニメを観てもいいかもしれないと思った。

中世から近世にかけてのヨーロッパでは貿易をしながら戦争も継続していたが、これは中立国の存在があったためとあり、中立はいけないとするマキャベリの『君主論』の話とは異なる結果が出ているところが面白い。

国債を用いた借金による軍費調達の能力で先んじたイギリスがオランダやフランスを破って多くの植民地を獲得したことは知られているが、南米のように非公式の帝国を形成していたり、ポルトガル、スペイン、インドの綿織物なども衰退するまでには思われているよりも長い時間を要した話も意外だった。

著者の他の作品と重なる話もあるが、刺激的な内容なので興味深く読むことができた。
話す相手に一定以上の歴史に対する予備知識が必要なのが難点だが、確かに人に話したくなる内容が書かれていると思う。






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逆転の世界史 覇権争奪の5000年
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玉木 俊明
日本経済新聞出版社 2018-05-25

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以前読んだ『先生も知らない世界史』の著者による、経済や物流の観点から覇権が近世にアジアからヨーロッパに移り、現在アジアに戻ってきつつあるという構図で世界史を語っている作品。

過大評価されてきた存在と過小評価されてきた存在についての話がしばしばなされていて、認識を新たにするきっかけとなる。
前者が古代ギリシアや中世イタリアの都市国家などで、後者がフェニキア人(地中海から北海)、アルメニア人(ユーラシアの陸上)、ポルトガル人、セファルディム(イベリア半島などのユダヤ人)などによる交易などを挙げていて、イギリスやオランダがバルト海交易で物資を調達していた話も興味深い。

ポルトガルは商人のネットワークが強くて領土を失っても貿易での影響力を維持できたことや、イベリア半島とサハラ地域、ブラジル、西インド諸島などは南大西洋の海流を利用すれば意外と近かったことから奴隷やサトウキビの貿易が拡大した話が面白い。

大航海時代に大西洋やインド洋の物流をヨーロッパ諸国が握ったことが覇権を握ったことにつながったり、商業のルールが明文化されたこと、蒸気機関や電信の発明が世界を小さくしてきたことなど、多くの要素がつながっていることも伝わってくる。

近代のところでは資本主義は単体でも存在できるが共産主義は貿易相手の資本主義国が存在しなければ存在できないという話や、アメリカは国際機関を通しての支配だったことが不安定さにつながった話などがなされていて、あまり意識してこなかったことが多く書かれている。

過去に読んだ著作2冊よりもページ数が多い分か、広い視野から多くの要素が入った形で世界史が語られていて、興味深く読むことができた。他の著作も読んでみたい。






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