ビジネス社 (2021/5/25)
元建設官僚の竹村公太郎による、地理や気候と歴史を関連して語る作品の1つ。
他の著書と重なるところもままあるが、伊達政宗が河岸段丘の上に築いた仙台の街が治水や下水処理の観点からも優れていたこと、関ケ原の合戦では現在のように森が鬱蒼と茂っておらず禿山だらけだからこそ見晴らしが良くて大きな合戦になったという考察、石山御坊や大坂城が築かれた上町台地が上水・下水ともに便利な地勢だったことなどの話が、他の著作であまり目にしていなくて印象に残った。
また、江戸時代の後半は薪にするために伐採が進んだことで森林資源の枯渇が深刻な状態となっていた話は他の著作でも読んでいたが、出口治朗氏の歴史の本で江戸時代が日本史の中でも最も体格が貧弱だったという話を思い出し、エネルギー不足が栄養不足につながったのかも?と連想した。
好きなテーマの作品で、たまに表現が感情的になるところが気にならないではないが、誰とは言わないもののこの手の作品でまま見られる読みにくさも少なく、本書もまた興味深く読むことができた。
- 著者の作品について書いた記事
- 『日本史の謎は「地形」で解ける』
- 『日本史の謎は「地形」で解ける【文明・文化篇】』
- 『日本史の謎は「地形」で解ける【環境・民族篇】』
- 『地形から読み解く日本の歴史』
- 『「理系」で読み解くすごい日本史』
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関連タグ : 竹村公太郎,
宝島社 (2019/8/9)
元建設官僚の竹村公太郎氏による、地形と水脈から日本史を語っている作品。
他の著書と重なる部分もあるが、水脈というキーワードで語っているところがポイントとなる。
古代に大和盆地にあったと思われる広大な湖が地形変動あるいは長年にわたる亀の瀬からの水抜き工事によって肥沃な耕地に作り替えられた説や、源平の合戦では源氏にも東国の水軍が多く味方していた一方で木曽義仲軍にはろくな水軍がなかったという話、戦国時代に長島の一向一揆が信長に長年敵対できたのは輪中地域という地の利を得ていたという理由、秀吉には大阪への遷都構想があったなど、初めて知ったと思う話がそれなりに書かれていて興味深かった。
NHKで放送中の「ブラタモリ」でも扱われた、信玄堤でお祭りによって堤を踏み固めていた話や、秀吉による京都をお土居で囲んで防御を固めていた話も出てきて、懐かしく思い出したりもした。
地形図がモノクロで分かりにくいとか、もう少し地図があればもっと分かりやすかったと思うなど注文を付けたいところもあることはあるが、なかなか良かったと思う。
- 著者の作品について書いた記事
- 『日本史の謎は「地形」で解ける』
- 『日本史の謎は「地形」で解ける【文明・文化篇】』
- 『日本史の謎は「地形」で解ける【環境・民族篇】』
- 『地形から読み解く日本の歴史』
- 『竹村公太郎の「地形から読み解く」日本史』
縄文土器、古代の巨大建築、日本酒、日本刀、日本城郭、江戸のインフラ構築、和算、伊能忠敬の日本地図など、日本人が作ってきた高度な技術の歴史を紹介している作品。
著者はこうした技術が発達した要因として、これだけ寒くて積雪があるのに人口が多い地域は世界で他になくて冬に工夫を重ねられてきたことや、交通の便が悪くて徒歩が基本のためにさまざまな道具を小さくする知恵が生み出されたことなどを挙げている。
著者の他の作品と重なる部分も多いが、専門とするインフラ以外の話も多く扱われていて、なかなか興味深い。
特に、法隆寺五重塔のように古代で巨大な建築を実現した構造計算はどのようにやっていたのかが気になった。
江戸のインフラ構築に関しては、先日4月6日にNHK・BSプレミアムで放送されていた「大江戸 奇跡のロスト・シティー 265年の物語」を観ていたので、より関心を持って読むことができた。
- 著者の作品について書いた記事
- 『日本史の謎は「地形」で解ける』
- 『日本史の謎は「地形」で解ける【文明・文化篇】』
- 『日本史の謎は「地形」で解ける【環境・民族篇】』
- 『地形から読み解く日本の歴史』
- 『竹村公太郎の「地形から読み解く」日本史』
竹村公太郎の「地形から読み解く」日本史 (宝島SUGOI文庫) | |
竹村 公太郎 (著), 歴史地形研究会 (監修) 宝島社 2015-12-14 Amazonで詳しく見るby G-Tools 関連商品 地形から読み解く日本の歴史 (宝島SUGOI文庫) 日本史の謎は「地形」で解ける【環境・民族篇】 (PHP文庫) 日本史の謎は「地形」で解ける【文明・文化篇】 (PHP文庫) 日本史の謎は「地形」で解ける (PHP文庫) 本質を見抜く力―環境・食料・エネルギー (PHP新書 546) |
元建設官僚で、地形やインフラなどから歴史を語る竹村公太郎による作品の1つで、宝島社から出ている『地形から読み解く日本の歴史』の続編に当たる。
下記に挙げている著者の作品と重なるところが多く、同じテーマで10冊くらい書いたことによるネタ切れの傾向も疑われるが、同じ事例をそれなりに違った書き方をしていたりして多少は新たな発見もある。
印象に残ったのは森林の破壊と保護の歴史が繰り返されてきたことや、滋賀県の大津から京都への間にある逢坂の関が物流の難所だったために牛車や馬車の専用道路を造ったり、船をレールで運んだりしていた話などで、本書も興味深く読んだ。
本書の様子では著者の作品で新たなネタが出てこなさそうなので、近いテーマを扱っていて現在NHKで放送中の「ブラタモリ」が書籍化されないかと期待している。
- 著者の作品について書いた記事
- 『地形から読み解く日本の歴史』
- 『日本史の謎は「地形」で解ける』
- 『日本史の謎は「地形」で解ける【文明・文化篇】』
- 『日本史の謎は「地形」で解ける【環境・民族篇】』
- 『日本文明の謎を解く―21世紀を考えるヒント』
地形から読み解く日本の歴史 (宝島SUGOI文庫) | |
歴史地形研究会 (著), 竹村 公太郎 (監修) 宝島社 2014-11-07 Amazonで詳しく見るby G-Tools 関連商品 竹村公太郎の「地形から読み解く」日本史 (別冊宝島 2326) 日本史の謎は「地形」で解ける【環境・民族篇】 (PHP文庫) 日本史の謎は「地形」で解ける【文明・文化篇】 (PHP文庫) 日本史の謎は「地形」で解ける (PHP文庫) 「地形」で読み解く日本の合戦 (PHP文庫) |
元建設官僚の竹村公太郎と歴史地形研究会による、地形が日本の歴史に及ぼした影響を考察している作品。
冒頭では博物学者・作家の荒俣宏と竹村氏の対談が収録されていて、竹村氏の過去の著作で信長の比叡山焼き打ちについての考察について連絡があり、怒られるかと思ったら感謝されたという話が面白い。
これまでに読んだ竹村作品と重なるところもあるが、初めて知る話もけっこう出てくる。
例えば元寇について、日本の鎌倉幕府が元の海軍を撃退した事情や、ベトナムの陳将軍が杭を打ち込んだ浅瀬に元の軍船を誘い込んで打ち破った話は知っていたが、樺太に住むアイヌ人もまた、沿海州のギリヤーク族を従えた元軍に勝利していた話は知らなかったので少し驚いた。
また、川中島の合戦で上杉軍は妻女山に陣取ったとされていたが、地形からすると武田軍の城砦に囲まれている上に大軍が展開できるほどの大きさもないことから、実際にはその北西にある若槻山という山に陣取っていたのではないかという説も初見だった。
他にも駿府(静岡市)や鎌倉、大坂などが防御に優れた地形だということが書かれていたが、今川氏や北条氏(得宗家)、豊臣氏などのように滅ぼされる時は訪れているわけで、地の利があっても天の時や人の和が失われているとどうしようもないのだろうと感じた。
竹村氏が語る地形と歴史の関連する話が面白く、本書もかなり早く読むことができたと思う。
- 著者の作品について書いた記事
- 『日本史の謎は「地形」で解ける』
- 『日本史の謎は「地形」で解ける【文明・文化篇】』
- 『日本史の謎は「地形」で解ける【環境・民族篇】』
- 『日本文明の謎を解く―21世紀を考えるヒント』
- 『幸運な文明―日本は生き残る』