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読書:雨読夜話

ここでは、「読書」 に関する記事を紹介しています。



本郷 和人 (著)
NHK出版 (2019/9/10)


日本史における世襲がなされてきた実態や、その理由、メリットやデメリットなどを考察している作品。

律令国家でも科挙を採用せずに豪族が貴族になっていった事情、摂関政治や院政のシステム、世俗も宗教も階級制度では同等だったこと、イエ制度の観点から武士が養子をとっていた話、明治維新で能力主義が採用されたことなどが扱われていて、天皇や征夷大将軍といった「地位以外で実権を持つ人」の存在が政治などを動かしていた事情を知ることができて興味深い。

鎌倉幕府の北条氏が将軍にならなかったのは地位についたことによるトラブルを避けるためという話と、それでも名目だけの地位だった藤原氏の将軍にからんで陰謀がなされたように、実権があってもなくても地位をめぐる争いは発生するという話が特に印象に残る。

著者の専門が中世ということで、江戸時代における世襲の話がなかったのは少し物足りない気もするが、全体的には歴史の読み物で何となく感じるが言語化しにくかったと思われる部分を突いていて、なるほどと思わせてくれたと思う。






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関連タグ : 本郷和人,


乃至 政彦 (著)
河出書房新社 (2019/9/26)


惟任日向守光秀の事績を史料からたどり、通説とは異なる部分が多々あることを語っている作品。
よくあるNHK大河「麒麟がくる」の便乗本だと思っていたが、タイトルに「明智」を使わないようにしたとあとがきで書いているなど、著者の『天下分け目の関ヶ原の合戦はなかった』のように少し驚くような話が多く扱われている。

まず、光秀が土岐氏に連なる明智氏の出身というところから怪しいと見ていて、「麒麟がくる」で斎藤道三から毒殺される土岐頼充(頼純)に仕えていた武士だった可能性が高いものの、仮に明智の系譜に連なったとしてもかなり傍流で、家柄が良かったら美濃を離れてから10年も貧窮生活をしていないと語っている。

軍記ものでは光秀が日本各地を巡って戦国大名たちと出会ったというのも身分から行くと無理があるが、光秀が当時では武田・上杉・北条でしかやっていなかった兵種別の軍編成をできていたことから、東国で軍事を学んだことまでは合っているという。

そして、信長からつけられた惟任(これとう)という苗字も九州の名族だったというがそれ以前には史料になく、信長は任(いとう≒伊東)とつけたのを、信長のネーミングセンスのダサさ(日向の伊東氏の偽物みたい)から惟任に変更したという話には驚かされた。
ちなみに、丹羽長秀がつけられた惟住(これずみ)という苗字も、維住(いずみ≒出水)だったという。

信長についても通説と大きく異なる話が多く、特に信長は室町幕府や足利義昭を軽視していたとされがちだが、元々は中央の政治にはあまり関心がなく、義昭や細川藤孝、光秀らに巻き込まれてからも室町幕府を継続してその実権を握る形を目指していたという話に驚かされた。
ただ、義昭の言動には朝廷、京の人々、秀吉など信長の家臣たちは既に見切りをつけていて、実現するために苦慮していたという。

他にも、「天下布武」の印章についても、特に日本を支配したいとか畿内を支配したいとかではなく「単純に文字のデザインがかっこいいから」という理由で、だからこの印がついた書状を受け取った他の大名も特に怒ったりもしていないという話などが面白かった。

最初の方は史料の考察の話に少し退屈していたが、途中からは通説と大きく異なる話がいくつも出てきて、非常に興味深く読むことができた。






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清水秀生 (著), R4320 (イラスト)
TOブックス (2015/7/20)


佐賀にまつわるあるあるネタを208個紹介している作品。
著者は東京出身だが福岡に移住し、奥さんが佐賀県出身ということを書いていて、佐賀県出身の人や佐賀県在住の人が当たり前すぎて意識していないことも多く扱われているように見える。

あるあるネタでは佐賀市周辺のもの、鳥栖周辺のもの、唐津・伊万里周辺のものと地域性があったり、ブラックモンブランやシシリアンライスのような食べ物ネタ、はなわや江頭2:50のような佐賀出身の芸能人ネタなど、知っているものも初めて知るものもありで、楽しく読むことができる。

私が知っていて扱われていなかったのは、井手ちゃんぽん(武雄北方に本店がある人気店)くらいだろうか。

各章のコラムで田舎や移住、県ではなく市の出身と答えることなどについて書いているのもいい。
中でも、例えば都会から田舎に憧れて移住したのはいいが、「思ったほど田舎じゃない」とがっかりしてさらに離島に引っ越した人の話が面白かった。

さらりと読んで新たに知ること、再認識することなどが多くて興味深かった。





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安藤 優一郎 (著)
日本経済新聞出版社 (2020/2/11)


江戸時代の大名や旗本の人事異動、つまり国替えや幕府内での人事について、具体的な事例からその内容を解説している作品。

国替えは関ケ原の合戦からしばらく実施されていたが、幕府権力が安定してくると財政負担が問題となり、途中からは松平家や水野家、榊原家といった譜代大名の国替えがほとんどとなる。
姫路、前橋、舘林、川越などと、一定の期間ごとに国替えがなされる藩も固定しているようである。

本書ではその中でも、磐城平(福島県)から延岡(宮崎県)という最も遠い距離の国替えを命じられた内藤家の事例が扱われていて、移動先の家や後任の家との手続き、移動にかかる莫大な費用負担、商人からの借金や農民からの年貢にまつわるトラブルなど、思っている以上に大変なことであるのが分かる。
ただ、国替えによって潤う人々もいるはずなので、そのあたりも書いてほしかったところである。

後半では松平定信、水野忠邦、大岡忠相(大岡越前)、長谷川平蔵(鬼平)が幕府組織でどのように出世したり出世しなかったりしたのかが書かれている。
嫉妬や根回し、足の引っ張り合いなどが書かれていて、現在の官庁での出世争いや、自民党の派閥争いを思わせるものがあり、時代を経てもこのあたりは変わらないのかもしれない。

終盤では国替えが反対に遭って撤回に追い込まれた話、そして明治維新で徳川家が静岡藩70万石に国替えさせられた話が収録されている。

教科書などで扱われることがあまりないと思われる話が多く出てきて、それなりに興味深く読むことができた。





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昭文社 旅行ガイドブック 編集部 (編集)
昭文社 (2020/1/30)


福岡県の歴史、地理、交通、産業、文化などについてのトピックを、地図を多用して紹介している作品。

この手の本でたまに地図が少なくて不満を持つことがあるが、本書では地図による位置関係がきちんと書かれているので分かりやすい。

平成筑豊鉄道の面白い駅名(東犀川三四郎駅、今川河童駅、源じいの森駅など)や、筑豊炭田から石炭を運んだ鉄道が現在の日田彦山線などの路線になった話、卑弥呼の墓という説がある糸島市の平原古墳、海の中道にあった雁の巣飛行場など、初めて知る話が多くて非常に興味深かった。

特に印象に残ったのは、筑豊炭田から沿岸部へ鉄道を敷こうとすると遠賀川河口の芦屋町が適切だったが、地元の反対に遭って堀川運河の河口にある若松が選ばれたことで若松の方が栄えるようになったという話で、もし芦屋に駅ができていたらその後の歴史はどのように変わったのか気になる。

福岡市内にはしばしば行くものの、福岡市、北九州市、糸島市、久留米市、柳川氏くらいは泊ったことがあって多少知っているものの、それ以外の筑豊や筑後、豊前といったエリアで知らなかったことが多いことを再認識したし、新鮮に感じるところも多かった。

「ブラタモリ」に近い感じの内容が書かれていて、非常に良かったと思う。






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