東海林 さだお (著)
文藝春秋 (2014/7/10)
東海林さだおによる食べ物がらみのエッセイ本の33冊目。
時期が2010年前後のため、食べるラー油を品薄の中探して食べてみた話や、「・・・じゃダメなんですか?」という特定野党の議員のセリフをいじる話などが時節を感じる。
炭酸水で冷たいお茶漬けや薄めた冷そうめん、冷たい味噌汁などを試したら意外とおいしいという話や、食べるラー油をたらこマヨネーズのスパゲティに和えるのがたまらなくおいしいなど、意外な組み合わせの話が興味深い。
ちくわ天そばは長いままで橋状に乗っていないとイヤで3軒もはしごした話や、タイトルにもあるゆで卵の正しい食べ方についての考え、スープ炒飯という存在への疑問など、食べものへのこだわりが面白い。
スリランカカレー店のメニューにあるドライカレーは炒めたライスとスープカレーで構成された感じなので、まあカレー版スープ炒飯と言えなくもなく、これはこれでおいしい。
- 著者の作品について書いた記事
- 『いかめしの丸かじり』

星 新一 (著)
角川書店 (2012/12/25)
星新一による、60年代後半頃に書かれたものが多くを占めるエッセイ集。
三億円事件とか大阪万博とか公害問題など、当時の世相が扱われているのが時代を感じさせる。
一方で、色々な言葉や概念がメディアで繰り返し取り上げられることで神聖さが失われて安っぽくなる傾向や、大衆のマスコミへの迎合(テレビに映るために制作者の意図に沿った言動をしがち)など、50年くらい経過しても変わらなかったり、著者が見通していたと思われる話を読むと感性の鋭さを再認識させられる。
『進化した猿たち』という作品にまでなったアメリカの1コマ漫画を収集した趣味や、SF短編を書くためにやっていること、SF作家仲間との交流や親友・小松左京との作風の違いなども書かれていて、興味深く読んだ。
- 著者の作品について書いた記事
- 『きまぐれ体験紀行』
- 『きまぐれ暦』
- 『できそこない博物館』
- 『ごたごた気流』
- 『地球から来た男』

村上 春樹 (著), 安西 水丸 (イラスト)
新潮社 (1999/7/28)
村上春樹がイラストレーターの安西水丸とともに『週刊朝日』で連載していたエッセイ『村上朝日堂』の第4作。
90年代後半頃の話が扱われている。
体罰の問題や日本の形式だけ整えて本質はあまり改善しない問題などについての批判や、仕事上で人伝いに横車を押す感じのことをされて不快に思い拒否した話などの比較的真面目に書いた話も出てくるが、脱力エピソードも多い。
出版社からホテルにカンヅメ(もう死語かもしれない)された際にホテルの机の中にエロ本がいっぱい入っていて仕事にならなかった話や、全国に存在する変な名前のマンションやラブホテルの回、飼っていた猫が謎の行動をする話などが書かれていて、当たり外れはあるものの全体としては面白い。

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清水義範による、作家として作風を確立させるまでの経緯や、『尾張春風伝』や『偽史倭人伝』などの著作におけるアイデアを思い付いた過程、作品を書く上での裏話など、さまざまな媒体に書いてきたエッセイをまとめている作品。
性質上あまりまとまった形ではないが、イスラム圏や中央アジアなどを旅行した時の話や、作品の裏話、歴史がらみの話などは面白い。
一方で身辺の雑記や読書にまつわる話はそれほど面白いと思えなかった。
著者の嗜好や考え方の一端を知ることができるとは思う。

吉田 戦車 (著)
光文社 (2020/3/20)
漫画家・吉田戦車が雑誌「FLASH」で連載していた買い物にまつわるエッセイをまとめている作品。
調理器具、服、食品、省エネグッズなど、生活の中で必要と思ったり、買いたい衝動に突き動かされて購入したモノにまつわるエピソードが著者の挿絵とともに書かれている。
妻で漫画家の伊藤理佐や子供たちなど家族とのやり取りや、モノを購入する前の妄想と購入した後にもっと安く購入できることを知って落胆したり、取り寄せたり使いだしたら思っていたのと違うところがあったとか、飽きて使わなくなったなど、買い物にまつわるあるあるネタが面白い。
特に、熱い日にゆで卵やお湯ができないか?とブラックホイルや鍋、飯盒などを利用して自由研究していた話が3回くらいにわたって書かれていたのが熱心過ぎて面白かった。
男女の2人組からなる「物欲の妖精」が著者に物を買わせようとするイラストなども作風がもろに出ていて笑ってしまうなど、楽しく読むことができた。
- 著者の作品について書いた記事
- 『吉田自転車』
- 『吉田電車』
- 『吉田観覧車』
- 『なめこインサマー』
- 『伝染(うつ)るんです。 (1)』
