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読書-歴史(世界:通史・地域別):雨読夜話

ここでは、「読書-歴史(世界:通史・地域別)」 に関する記事を紹介しています。



ジョン ハースト(著), フィリップ スラヴェスキ(著), 福井 憲彦(監修), 倉嶋 雅人(訳)
東京書籍 2023年08月30日


オーストラリア人の歴史学者による、ヨーロッパの歴史を大まかな構図から分かりやすく解説している作品。

本書の最大の特長としては、ヨーロッパの中世を、必ずしも相性がいいとは限らない3つの要素がつながったという下記の構造で図式化しているところで、かなり分かりやすい。

①ゲルマン戦士
    ↓支持
②ローマのキリスト教会
    ↓保護
③ギリシャ・ローマの学問

これが近世・近代になると①がナショナリズムなどに変質し、③が合理的な科学思想や啓蒙思想に取って代わられたこと、そして①と③の間をつないできた②が宗教改革などもあり影響力が低下したなどの変化があり、①と③の距離が離れたことから近代以降が少しごたごたした感じになっているということが言いたいように感じる。

他にも、ヨーロッパでの民主制と封建制、教皇と皇帝、近代の産業化とそれに伴って発生した社会主義にイギリス、フランス、ドイツなどがどのように向き合ったのかなどが書かれていて、このあたりも読みごたえがある。

図式も多用していて、政治体制が軍隊の構成と密接に関係していることや、礼法もそれに伴って変化してきたという図などが分かりやすい。

本書が18か国で出版されたベストセラーとなったと書かれていて、その理由がよく分かった。




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伊藤 敏(著)
PHP研究所
2023年04月28日


ヨーロッパの現在の国際関係は中世に由来するものが多いという考えから、複数の国の歴史を背景から解説している作品。

フランス、ドイツ、スイス、スペイン、ロシア、ポーランド、ユーゴスラビアを章別に扱っていて、「分断と統合」が一貫したテーマとして扱われている。

全体的には元々は歩兵が主戦力だった地域で遊牧民の国家の侵攻を受けて騎兵が主力となる時期もあったものの、再度歩兵型の文明に回帰したというのが軍事的な歴史ということも書かれている。

各国ともに、カトリックや東方教会といった宗教、ローマ帝国やフランク王国の後継国家という権威から来る普遍化の流れと、各地に割拠する領主たちの独立志向、そして他の国家からの干渉が歴史上の事件の背景となっているようである。

フランスやドイツは比較的取り上げられることが多いが、
  • 領邦同士の内乱が多かったスイス
  • レコンキスタ以前からのスペイン
  • ロマノフ朝以前のモスクワ大公国(モスコヴィア)やウクライナの前身国家に分かれていた時代のロシア
  • 貴族の共和制という政体で統治能力はいまいちだったがリトアニアと連合して現在のウクライナやベラルーシの領域を支配していたポーランド
  • セルビアやボスニアが広大な領域を支配していた時期を含めたユーゴスラビア
などは、他のヨーロッパ史の本で必ずしも多く扱われる感じでもなくて知らなかった話が多いところが興味深かった。

予備知識が不足していて人名や地名ですぐに覚えられそうにないところは多いが、そこは本書を読んだ後に各地の歴史の本を読めばいいという話となる。




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玉木 俊明 (著)
日本経済新聞出版 (2019/7/13)


経済や商業、貿易、物流、財政などの観点からイギリス史を語っている作品。

ローマ帝国や北欧の強国、フランスなどの一地方だった時代から辺境の島国となった時期、そして7つの海を支配する大英帝国の時代を経て、ヨーロッパの一員からブレグジットにより再び島国に戻りつつあるという歴史観で語られている。

経済で言えば毛織物工業において対岸のアントウェルペンやアムステルダムの下請けみたいなポジションだった時期も長く、原料や中間財の輸出国というだけで従属関係にあるのではなく、販路が限られていることがポイントだという話が印象に残る。

イギリスの前にヘゲモニーを握っていたのがオランダで、オランダが自由な商人たちの活動によって栄えていたのに対し、イギリスは国家が後押ししての支配を進めていた話に続いていく。

オランダから覇権を奪った要因にはクロムウェルによる航海条例があり、これはイギリスから中間貿易を行うオランダ船を締め出すことで海運業のシェアを奪うことを意図していて、複数回にわたる英蘭戦争も発生している。

また、人口や財政規模でイギリスより上だったフランスとは第二次百年戦争、フランス革命戦争、ナポレオン戦争など長らく戦い続けて勝利するわけだが、著者は要因として両国の税制と財政制度を挙げている。

イギリスは消費税の割合が大きくて経済成長に応じて税収を上げることができたのに対し、フランスは地租=固定資産税の割合が大きくて税収が上がらなかったこと、そしてイギリスが国王と議会の対立や南海泡沫事件などを経て国債制度を早く整えることができたことが書かれている。

そして産業革命や「世界の工場」と呼ばれたことから製造業が大英帝国を支えたと思われがちだが、実際には海運や通信、海上保険、金融業などによる部分が大きく、手数料収入で潤った話が書かれている。

また、世界の各地に築いた植民地から構成される「公式帝国」だけでなく、海運力でつながった「非公式帝国」の多さも指摘されている。

こうした帝国は維持コストがかかるために第一次世界大戦(著者は三十年戦争、フランス革命・ナポレオン戦争に続く「第三次欧州大戦」と呼ぶ)によって次のアメリカに覇権を明け渡すこととなり、アメリカの支配構造にも言及されている。

その後、第二次世界大戦後に福祉国家を志向した結果として「イギリス病」に陥ってからマーガレット・サッチャーによる改革、インターネットの普及、リーマンショック、ギリシア危機、ブレグジットと現代の話に続いている。

イギリス史でよく出てくる、海賊や外交、ドロドロした謀略などの話があまり出てこないのが新鮮だし、世界史で必ずしも意識するとは限らない産業や物流、産物などの話が多く書かれていて、興味深く読むことができた。




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関連タグ : 玉木俊明,


岡本 隆司 (著)
東洋経済新報社 (2019/7/5)


中国史を世界的な気候変動や、遊牧民や商業民との様々な交流、東西・南北でのバランスの変動などの要素を含めて語っている作品。

文明の発達が早かった華北と湿地帯が多くて遅れ気味だった江南という構図が、遊牧民の進出で荒れ気味な華北とコメの生産が増えて経済でリードするようになった江南という形になっていったこと、さらには沿海部を中心に発展する東部と取り残されがちな西部と、東西・南北での差が移り変わっている構図が興味深い。

また、王安石が改革をしていた宋代くらいまではまだ国家権力の支配がある程度及んでいたものの、元・明・清あたりになると地方の人口や自治体の数が増えて統治が及ばなくなる上と下の乖離現象が定着し、これは現在の中華人民共和国にも続いているという視点も、中国っぽいと感じた。

そして、黄河流域と長江流域、北方や東海の周辺国、さらには大航海時代以降の欧米など、交易でどのような品目が取り扱われていたかの図解がなされているのも分かりやすくて良かった。




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宮脇淳子 (著)
徳間書店 (2019/12/13)


皇帝たちを切り口にして中華思想による捏造からできるだけ離れた形で書かれた中国史に関する歴史読み物。

著者の夫である岡田英弘著『中国文明の歴史』で書かれていた歴史観から、より具体的な話がなされている。

中国では昔から周辺の異民族を蔑む考えが強いが、例えば三国志の時代に戦乱で人口が十分の一に減ったことで北方からの遊牧民出身の人々に入れ替わるなど、新しく中原に入ってきた人たちが昔から周辺にいた人たちをバカにする構造が繰り返されていて、地方から東京に住んでそれほど長くない人たちが田舎の人をバカにする話と少し似ている。

そして中華思想に染まると堕落して軍事的に弱くなって北方の遊牧民の国から攻められるのもお決まりのパターンとなっていることや、遊牧民の王朝の方が名君が多くて「漢民族」の王朝では偏狭な思想に凝り固まった暗君が多いのも中国の歴史読み物を読んでいて納得しやすい。

漢の武帝は領土を広げた一方で人口を半減させて財政を破綻させた暴君という評価、前漢初期の郡国制は郡県制にできなかったことの言い訳、日本でうまく運用できなかった律令制は本家の唐王朝でも徹底できていなかったなど、司馬遷をはじめとする中国の歴史家たちがごまかしてきた話を書いているのが印象に残る。

また、表意文字の漢字は発音が違う人々の間でニュアンスは伝わる利点がある一方、それだけだと学習できずにアルファベットなどの表音文字(日本だとかな)の補助が必要という欠陥、中国やロシアによる地元の歴史や言語を教えさせない政策によって例えばモンゴル人がチンギス・ハンのことをあまり知らなくて日本人に教わる現象、明代に造られて現代に残る万里の長城があまり役に立たなかったらしいことなど、あまり知られていないと思われる話が多く書かれている。

重くて強烈な話が多いが、それだけに読みごたえもある。




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