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読書-伝記(日本:単独・近代以降):雨読夜話

ここでは、「読書-伝記(日本:単独・近代以降)」 に関する記事を紹介しています。



勝 海舟 (著), 高野 澄 (翻訳)
PHP研究所 (2009/10/29)


勝海舟が自身のこれまでや、幕末から維新にかけての著名人たちの批評、同時代である明治期の政治や外交、戦争などに対する批判などを語ったことをまとめた『氷川清話』を現代語訳および解説している作品。

話は幕末より前の、家康や後北条氏、『鎌倉殿の十三人』の主人公である北条義時、柳生宗矩、天海といった歴史上の人物の話もしているのが面白い。

幕末・明治の人物批評では、西郷隆盛と横井小楠を高く評価していて、「西郷に比べると…」といった感じで西郷を引き合いに出してスケールが小さいとけなすことが多く、勝のあくの強さが伝わってくる。

また、伊藤博文、松方正義、大隈重信、板垣退助といった当時の指導者たちへの評価はかなり厳しいものとなっていて、江戸時代を引き合いに「昔は良かった」式での話も相まって、論客などはいつの時代もこんなことを言うのだろうと感じた。

勝は日清戦争に最後まで反対を表明していて、いずれしっぺ返しを食らうという意味のことを語っていて、戦後以降や改革開放で急成長した中国には十分しっぺ返しを食らい続けているどころかそれ以上の被害を受けているような気がする。

そして中国は統一国家というイメージではなくて政府と大衆が分かれていて、日清戦争で戦ったのも清帝国ではなく清の帝室ということが書かれており、これは現在でもそうした傾向はありそうである。

偏った意見も多そうな気はするものの、歴史上の多くの事件に関わった当事者がざっくばらんに語っている史料は貴重であり、興味深く読むことができた。




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勝海舟の言葉やエピソードから、人生訓などを語っていると思われる作品。

・・・なのだが、私の考えがひねくれている可能性は認めるとして、勝海舟にかこつけて著者が現代人や現代社会にあれこれ説教を垂れているような雰囲気が前面に出ているように感じられ、つまらなかった。

多分、『氷川清話』や勝海舟の伝記で既に知っている話が多かったり、勝のホラ吹きなところや煙たがられた残念な面も知っていて、著者が手放しで崇拝しているところに違和感を持ったためではないかと思う。






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裏がえしの自伝 (中公文庫)
梅棹 忠夫
中央公論新社 (2011-04-23)



人類学者で国立民族学博物館の設立や世界各地での学術調査、『文明の生態史観』『知的生産の技術』といった著作など多くの業績を残した梅棹忠夫による、さまざまな事情や自身の素質などでならなかった、あるいはなれなかった職業や生き方について語った、自身のIFを扱った変則的な自伝。

「ぼくは大工」、「ぼくは極地探検家」、「ぼくは芸術家」、「ぼくは映画製作者」、「ぼくはスポーツマン」、「ぼくはプレイボーイ」の6編が収録されている。

この中では南極探検隊の隊長になる話がきていた話が最も魅力的なIFなのだが、そちらに進んでいたら『モゴール族探検記』のような中央アジアの砂漠地帯での業績がなかった可能性が高く、著者が語っているように砂漠に深入りしていたのが運命の分かれ目だったということなのだろう。

一方で著者が一時期やっていた俳句があまりにもひどくて先生から破門された話も隠さずに披露していて、多才な学術界の巨人もスーパーマンではないことを知って親しみが持てる。

2012年に日本科学未来館に特別展「ウメサオタダオ展 —未来を探検する知の道具—」を観に行った時にさまざまなもののスケッチが大量に展示してあり、それが異常に上手いできばえだったことを記憶していたが、元々絵や空間認識についての素質や関心があって学術調査に活かされたことが分かって納得できた。

他にも桑原武夫や今西錦司、西堀栄三郎といったそうそうたる人物との交流や、初期から関わる機会が多かった映画やテレビの世界や業界人に対して不信や疑問を抱くようになってテレビ出演をしなくなったなど、現在のマスコミ不信につながる話が語られているのも興味深い。

本作は正規の自伝に当たると思われる『行為と妄想 わたしの履歴書』の外伝のような位置づけをされるみたいなので、『行為と妄想』にも関心を持っている。








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平凡社 2012-02-17

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渋沢栄一による自伝『雨夜譚』を中心に、渋沢の著作である『論語講義』や他の人が渋沢について語っている作品などを現代語訳し、自伝として編集している作品。

武蔵の富農に生まれて攘夷の志士として決起を企てたり、平岡円四郎(慶喜の家老)の引きで一橋家に仕官したり、慶喜の弟である昭武(民部公子)のお供としてフランスへ派遣されていた間に徳川幕府がなくなっていたりと、幕末という事情があったとしてもかなり急激な変化をいくつも経験している。

帰国後は幕府の遺臣が集まっている静岡藩に仕えるつもりだったのが大隈重信らのスカウトで大蔵省に入省して予算制度の確立に奮闘した後、民間の人材不足や政争もあって辞職して銀行など多くの企業を設立し、日本の資本主義の父と呼ばれる大活躍をしている。

若い頃は高崎城乗っ取りや横浜での外国公館焼き打ちを仲間たちと計画していたり、一橋家時代には薩摩の兵学者に学んでいた頃に酒がらみのトラブルで(後に警視総監となる)三島通庸を刺殺しようとしたりと、かなり血の気が多かったことが伝わってきて、人って変わるものだと思ってしまう。

明治維新の元勲たちについての人物評もしていて、考えが読めなくて不気味な大久保利通、おしゃべりすぎる大隈、気配りの木戸孝允、マイナス思考な井上馨、目的のために手段を選ばない江藤新平、無定見で頼りにならない三条実美と、これらの人々が亡くなった後に語ったのかかなりずけずけと評しているのも面白い。

実業の世界では三菱の岩崎弥太郎との確執や、益田孝(三井物産創業者)や古河市兵衛(古河電工などの前身である古河財閥の創業者)らとのやり取りなどが語られているのもいい。

読みやすい現代語訳になっていて、見出しで何を書いているか分かりやすくするなど編集も工夫されていて、渋沢の生涯について興味深く読むことができた。






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勝海舟の人生訓 (PHP文庫 ト 1-2)
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童門 冬二
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勝海舟の事跡や残した言葉、著作などから、人生に役立ちそうなものを紹介・解説している作品。
勝は自慢話やホラに近い話もしばしばしていたらしいので、そのあたりは考慮して読んだ方がいいのかもしれない。

面白い話がいくつもあり、例えば歴史上の人物を論評しているところでは細川頼之(南北朝時代の室町幕府管領)、北条早雲、天海、松尾芭蕉などを評価している。
松尾芭蕉が近江商人を指導したとか、細川頼之が北朝の経済を発展させて南朝を圧倒したなど、広く知られているとは思えない話が紹介されているのが興味深い。

民衆を生活できるようにするのが支配者の役目で、経済を軽視する支配者は滅ぶという趣旨の話はその通りだと感じた。

低い御家人の身分から立身していったこともあり、「世間は生きている、理屈は死んでいる」と語っているようにかなり現実主義的で、イデオロギーにこだわる人物を好まないことも伝わってくる。
これは朝令暮改を気にしない横井小楠を高く評価し、水戸藩の儒者だった藤田東胡を嫌っていた話、江戸幕府滅亡後に明治政府に仕えた勝をひどく非難した福沢諭吉を「幕末は本郷に隠れていた弱い男」と評しているところなどに表れているのがいい。

柔軟ながらも筋を通し、覚悟を持って生きた勝のエピソードが分かりやすく書かれていて、興味深く読むことができた。






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