読書-経済小説:雨読夜話

ここでは、「読書-経済小説」 に関する記事を紹介しています。


天下、なんぼや。
天下、なんぼや。吉川 永青
幻冬舎 2014-09-19

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

関連商品
窓から逃げた100歳老人
誉れの赤
野望の憑依者 (文芸書)


戦国末期から江戸初期にかけての時代、鴻池屋を創業した鴻池新六(山中幸元)の活躍を描いた歴史小説。

話は新六が伊丹にいる大叔父のもとを頼って、飢えをしのぎながら出かけるところから始まる。
そして大叔父が亡くなった後は大鹿屋という酒蔵で丁稚奉公を始めるが、以蔵という杜氏から殴る蹴るといった厳しすぎる指導を受ける。

その後も元同僚や近所に住む豪農の息子からのいやがらせ、店を持った後での風評被害や仲買人との関係など、多くの問題に遭遇する。

そうした中、あるきっかけで清酒を造ることに成功したことや、家康の知遇を得たことなどから徐々に商人として成功を重ねる。

家康やその家臣である酒井忠利、大阪の大商人である淀屋善右衛門らと交流を重ねるうちに、新六が過去の体験から武士が嫌いで商売をしようとしなかったところから、より大きな視点で世の中を銭の力でいかに良くしていくかを考えるようになっていく。

新規参入業者による競合や、新規事業が儲けられるサイクルなど、経営やマーケティングに出てくるような話が出てくるので、経済小説としても読むことができる。

新たなタイプの歴史小説という感じを受け、興味深く読んでいった。



[鴻池新六を主人公にした他の歴史小説]

月に捧ぐは清き酒 鴻池流事始月に捧ぐは清き酒 鴻池流事始

小前 亮
文藝春秋 2014-03-24

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


[本書で参考文献に挙げられていた作品]


[著者の他の作品]


にほんブログ村 本ブログへ
スポンサーサイト

天下商人 大岡越前と三井一族
天下商人 大岡越前と三井一族
高任 和夫
講談社 2010-10-08

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

関連商品
家康、死す 上
家康、死す 下
再会
青雲の梯 老中と狂歌師 (100周年書き下ろし)
天佑、我にあり


江戸中期を舞台とした歴史経済小説。
大岡越前守忠相と、2代目高平をはじめとする三井家の人々が主人公となり、それぞれの立場からせめぎ合いを続ける様子が描かれている。

時代劇では大岡裁きのイメージの強い忠相だが、読んでいくと江戸町奉行の職掌は裁判の他に民政や商業政策など幅広いことが読んでいくうちに分かってくる。

時代は徳川将軍6代家宣から9代吉宗にかけての頃で、幕府の体制が貨幣経済の発達についていけなくなり、以下の形で危機に瀕していることが書かれている。
  • 農民から税を米で徴収して武士の給与も米で支払われるため、新田開発などで増産すればするほど米価が下がって武士の生活が困窮する
  • 江戸が金、上方が銀という使用通貨の違いにより、為替レートの変動で江戸と上方の景気が大きく影響を受ける
  • 綱吉時代は荻原重秀の通貨の質を落とす改鋳という形で量的緩和を行っていたが、その後通貨の質を上げる政策を採ったことが金融引き締めと同様の効果を発揮して ひどいデフレに入ってしまった
忠相は吉宗から米価を上げるよう命じられ、物価や為替レートの統制、新田開発、民間人の起用など様々な政策を試みるが、市場原理に逆らう政策では商人たちの抵抗も強くなかなかうまくいかない。

一方、三井では創業者である高利(宗寿)の後を継いだ高平(宗竺)の代に当たり、高利の主だった息子たちを6つの本家、縁者を連家とし、大元〆(現在で言えばサラリーマン社長)も参画した最高会議で重要事項を決定するなど、組織的な経営を行うようになっていた。

家訓や過去の倒産事例をまとめるなどのルール作りを進める他、幕府内にパイプを作って情報を集めたり、状況に応じて適切な手を打つなどしたたかなところを見せ、潜在的には幕府よりも経済力があるかもしれないことが書かれている。

特に、幕府はいずれ潰れるだろうが三井は生き残る、ただ幕府が潰れた後のことが読めないのでとりあえずは延命させておこうという意味のことを述べていた場面には凄みを感じた。

扱っているのは江戸時代だが、著者が経済小説の著作が多いこともあってか完全に経済小説のスタイルとなっているように感じられて面白い。

忠相を東京都知事+経済産業大臣+国土交通大臣その他、高平を三井財閥の総帥、吉宗を財政再建路線の首相と読み替えると、かなりイメージが明確になってくる。



[参考文献に挙げられていた作品]

にほんブログ村 本ブログへ

ジャパン・プライド
ジャパン・プライド江波戸 哲夫 (著)
講談社 2009-09-04

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

関連商品
排出権商人
鉄の骨
同和と銀行 三菱東京UFJ“汚れ役”の黒い回顧録 (現代プレミアブック)
凄い時代 勝負は二〇一一年
竜の道 飛翔篇


リーマン・ショック以降の大混乱の中、たくましく活躍を続けるメガバンクの行員たちを描いた経済小説。

舞台となるのは関東系の銀行と関西系の銀行が統合してできたメガバンクの東西銀行で、登場するのは
  • 富裕層向け営業のエース
  • 個人向け営業の部長
  • 東西銀行から転身した工作機械メーカーの社長
  • 上記3人の元上司であり時期頭取と言われていたが、失脚して東西銀行を離れた元専務
の4人を中心として
  • 野心的な頭取
  • 頭取の拡大路線に危惧を抱くホールディングス社長
  • 大手電機メーカーを担当する法人向け営業の行員
  • 個人営業でトップクラスの成績を挙げる女性行員
  • 頭取の懐刀と目される企画課長
など多岐に渡る。
当然、取引先やライバルである外資系金融機関や国内外の企業のキーマンたちも登場する。

東西銀行はリーマン・ショックを受けて他の銀行と同様、
  • これまで順調に進んでいたM&A交渉の頓挫とそれに対する対策
  • 投資信託の価格下落による個人投資家の不安
  • 中小企業への貸し渋り
  • 産業構造の変化による業界再編
  • 邦銀による欧米投資銀行への進出と、そうした風潮への反発
など、さまざまな事件が発生し、各人がそれぞれの思惑を胸に活動をしていくことになる。

少し対象が広がりすぎな感じもしないでもないが、その分厚みのある設定となっていてまあまあ楽しめたと思う。
途中色々あるにせよ、前向きな感じでまとめられているのがいい。


[本書の文庫版]
ジャパン・プライド (講談社文庫)
「ジャパン・プライド (講談社文庫)」
 著者:江波戸 哲夫
 出版:講談社
 発売日:2011-03-15
 価格:¥ 920
 by ええもん屋.com

[著者の他の作品]

にほんブログ村 本ブログへ


もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
岩崎 夏海 (著)
ダイヤモンド社 2009-12-04

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

関連商品
マネジメント - 基本と原則 [エッセンシャル版]
女子高生ちえの社長日記―これが、カイシャ!?
女子高生ちえの社長日記〈PART‐2〉M&Aがやって来た!?
20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義
新人マーケター乙女侍奮闘記 (ビジネス・ライトノベル)


昨年末に出版されてベストセラーとなっている、通称『もしドラ』。

タイトル通り、高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読み、無名の公立校野球部を甲子園に出場させるべく奮闘するという小説の形式を取っている。

随所で『マネジメント』に書かれているドラッカーの記述が引用され、普通に読んだだけでは理解が難しいドラッカーの言葉を、高校野球という比較的イメージしやすい事例に落とし込んでいくので分かりやすい。

小説としての完成度はともかくとして、専門家の言葉を分かりやすく翻訳することやイノベーションの必要性など、経営的なところの提言が書かれていて入門書としては良書と言える。

せっかく『もしドラ』を読んだので、「マネジメント - 基本と原則 [エッセンシャル版]」などのドラッカー関連作品にも挑戦したい。






にほんブログ村 本ブログへ

関連タグ : AKB48,

マグマ (朝日文庫 ま 27-1)
マグマ (朝日文庫 ま 27-1)真山 仁

朝日新聞社 2008-03-07
売り上げランキング : 16345

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

関連商品
虚像の砦 (講談社文庫 ま 54-5)
ベイジン〈上〉
ベイジン〈下〉
再生巨流 (新潮文庫 に 20-1)
ハゲタカ2(下) (講談社文庫)

地熱発電のプロジェクトをめぐるさまざまな駆け引きを描いた経済小説。

冒頭はエネルギー関係の国際会議で日本代表が原子力発電をやめるように欧米から圧力をかけられるところと、ハゲタカファンドに勤める主人公の妙子が地熱発電の会社再建を任されるところから始まる。

そこから日本の原子力発電のチェック体制の甘さと事故隠し、そして地熱発電が原子力がらみの利権により割を食ってきたことなどが妙子と関係者たちとのやりとりから浮かび上がってくる。

登場する人物も、命を削って地熱に打ち込む研究者やエネルギー利権の黒幕といえる政治家、要領よく立ち回って実績を上げようとする妙子の上司などバラエティに富んでおり、エネルギー利権と環境利権の衝突のようなところも出てきて読みごたえがあり面白い。

実際のところ地熱発電(と高温岩体発電)はどこまで引き合う事業なのかよく分からないが、石油価格の高騰がこのまま進むと現実味を帯びてくるかもしれないと思った。

[著者の他の作品]
レッドゾーン(上)
「レッドゾーン(上)」
 著者:真山 仁
 出版:講談社
 発売日:2009-04-24
 価格:¥ 1,785
 by ええもん屋.com

にほんブログ村 本ブログへ