読書-政治:雨読夜話

ここでは、「読書-政治」 に関する記事を紹介しています。


地政学リスク―――歴史をつくり相場と経済を攪乱する震源の正体
地政学リスク―――歴史をつくり相場と経済を攪乱する震源の正体
倉都 康行
ダイヤモンド社 2016-04-15

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金融業界で長年活躍してきた人物による、投資を行う上での地政学のリスクについて具体的な例を挙げて分かりやすく紹介している作品。

紛争や対立には民族や宗教、イデオロギーに起因すると思われるものもあるが、本書ではそれらが顕在化するのは経済的な要因、例えば格差の拡大、資源の価格変動、インフレによる生活物資の高騰などがあるためだとしていて、「衣食足りて礼節を知る」とか「恒産なくして恒心なし」といった言葉を地で行く感がある。

書かれた時期が昨年の春ということでブレグジット(英国のEU離脱決定)やトランプ大統領誕生、韓国の混乱などは反映されていないが、例えば下記の話が日本であまり報道されない部分を含めてよく書かれていると思う。
  • シリアのアサド政権、反政府勢力、ISの戦闘をめぐる、欧米、ロシア、トルコなど関係各国の利害が調整できない事態と、それに乗じたISの脅威
  • シェール革命によって輸出国に転じたアメリカ、石油価格の下落に苦慮するサウジアラビアやロシア、アメリカからの制裁解除によって石油の輸出を増やしつつあるイランなど、石油をめぐる各国の駆け引き
  • 中国が国内の不満をそらすために中央アジア方面と海洋の2方面に進出を図っていることと周辺諸国との対立

国際情勢では予想もしていなかった事態が突然発生することがあり、これをブラックスワン(存在しないと思われていた黒い白鳥の出現)というらしく、それらが発生するとしたらどこでどのように起こるか?という例を考察しているのも興味深い。

政権基盤が磐石と思われていたところが揺らいだり、友好関係と思われていた関係が崩れるパターンが多いようで、このあたりを読み切ることは不可能に近いだろうが、何が起こるかわからないということだけは心に銘記しておく必要があるのかもしれない。
アメリカのラムズフェルド元国防長官による、「Unknown Unknown」(知らないことすら知らない)という表現も印象に残る。
(あと2つあって、それは「Known Known」と「Unknown Known」)

投資だけでなくニュースの見方に役立つ内容が多く書かれていて、非常に興味深く読むことができた。






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「世界大波乱」でも日本の優位は続く
「世界大波乱」でも日本の優位は続く
長谷川 慶太郎
PHP研究所 2016-09-02

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長谷川慶太郎による世界と日本の情勢を分析した本のひとつで、9月に発行されたもの。
近い時期に書かれた他の作品と重なる部分も多いが、印象に残る部分はそれなりに違ってくる。

本書で特に印象に残ったのは、軍隊における工兵の重要性、テロに対して効果があるのが警察力の充実ということ、災害時の緊急体制の強化が求められることなどである。

第二次世界大戦で日本がアメリカに敗れた要因のひとつには工兵による飛行場建設能力の差があり、東日本大震災の際も「トモダチ作戦」で米軍が修理した仙台空港と、自衛隊が修理した松島飛行場で期間に大きく差がつき、現在でも追いつけていないことが書かれている。

その背景として、アメリカでは歴史的に陸軍の工兵隊が開拓に大きく関わっていて、現在でも河川工事などでは工兵隊が管轄しているという。
ここまではいかなくても、工兵が災害対応で大きな役割を果たすことは分かっているわけで、予算を増やして能力や権限の強化がなされるのが望ましいと感じた。
(権限については防衛省と国土交通省との縄張り争いがあって難しいかもしれないが・・・)

そのように災害対応には自衛隊のような軍隊組織が向いているのに対し、テロへの対策では警察組織が重要ということも書かれている。
理由は警察が地域と密着していて、住民からの情報が集まりやすいことを挙げている。

例として連邦警察があるドイツではテロの発生が少なく、一方「ジャンダルメ」(憲兵隊)が警察の代わりをしているフランスではテロの頻発を防げていないことを挙げている。
この違いは能力や技術の差ではなく、移動することが前提の憲兵隊では対応に限界があるためだという。

また、戦前・戦中の日本が進駐した満州や華北で交番などの警察組織を充実させたことで、テロを嫌う地元住民の協力を得てゲリラ、馬賊、匪賊といった勢力の駆逐に成功した話が書かれていて、中国共産党が嫌がる事実だというのはよく分かる。

あともう1つが、災害時の体制についてである。

今年の春に発生した熊本での自身に対して安倍総理をはじめとした官邸の対応は早かったことが評価されているが、災害時に県知事の上に存在して指示を出す組織(危機管理庁)と、憲法に「緊急事態条項」があればさらに対応は迅速にできたはずだと書かれていて、実態に合った意見だと感じる。

こうした話を受けてもあくまで護憲にこだわる人々は、震災のような緊急事態に対して意識が足りないか、それ以外の反日的な思惑があるのかと考えてしまったりもする。

本書でも、興味深い話を読ませてもらった。





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2017年 世界の真実 (WAC BUNKO 239)
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長谷川慶太郎
ワック 2016-08-03

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長谷川慶太郎による、国内外の政治や経済の状況を解説している作品の2017年版。

まず、伊勢志摩サミットで安倍首相が見せたリーダーシップについての話が印象に残る。
安倍首相は大きく語ってはいないが、どうやらG7のシステムを国連ができないことをする組織として改革・強化を試みていると書かれていて、成果を上げられれば大きい。

それが各国に受け入れられる理由としては、日本が「失われた20年」の間に大きな代償を払ってシステムをデフレ経済に対応させたことで、長期資金を貸し出せる国が日本だけになっていることを挙げている。
こうした傾向についての報道はあまりされないが、海外では大ニュースだったとのことで、日本のマスコミ報道の残念さが伝わってくる。

消費税増税の延期理由とされた「リーマンショック前に似ている」という話についても、イギリス、フランス、ドイツなどの主要銀行で経営危機に陥っていることを考慮すると、実際にはさらにひどいかもしれないという。
ただ、こうした話をすると現実化するので、報道はできない。

これに関しては昭和2年の日本で国会答弁が銀行の倒産につながった教訓から、90年代に長銀や山一證券が破綻する前に竹下登と当時新進党だった小沢一郎が政争の具にしないよう打ち合わせて被害を最小限にとどめた話が紹介されている。

他に報道できない、報道を遠慮している事柄には東芝が粉飾決算していたとはっきり書けないことや、セブンアンドワイホールディングスで鈴木敏文が失脚したのは長男を取締役にした事を創業者の伊藤雅俊に嫌われたことを鈴木に遠慮しているためだとしている。

それにしても現在の民進党幹部が政府に対し、公開できない・すべきでない性質の情報のものを公開するよう執拗に迫ったり、では自身はどうかというと、代表が二重国籍に関連した疑惑を晴らす(はずの)書類の公開を拒み続けるなど、この政党が日本の国益に寄与する気があるのか疑問を持たざるを得ない。

他には中国の富裕層が日本国債や大坂南港の太陽光発電所を買い付けている事情、中国が金正恩政権を打倒することでアメリカの合意を得たという話、非常用に大量の米と石油を備蓄している日本にパク・クネ政権が擦り寄ってきた話などが語られている。

そして、著者がかなりのハイペースで本を出している秘密も語っている。
実は執筆ではなく語り下ろしで、30年くらい前にそうした方が短時間に多くの文字数を出力できるため、文章にしてもおかしくないような語り方ができるように訓練したとあって驚く。

この数ヶ月に起きたトランプの大統領選勝利や、韓国でのパク・クネ政権のつるし上げなどについて書かれた本も読みたいところである。






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世界はこう激変する
世界はこう激変する長谷川 慶太郎
李白社 2016-02-12

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2017長谷川慶太郎の大局を読む
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長谷川慶太郎による、今年から来年にかけての世界や日本の情勢を分析している作品。

大きな流れとしてはアメリカのシェールオイル増産などによる逆オイルショックがあり、これによってロシアや中東などの産油国が打撃を受けたり、ISの活動やサウジアラビアとイランの関係悪化などの材料が出ているにも関わらず石油価格が上昇しない現象につなげている。

中国では昨年夏に発生した天津での爆発事故がいまだに尾を引いていることが書かれている。
これはテロによる可能性があり、有毒ガスによって人が住めなくなったことによって華北の物流に打撃があったとのことで、あまり報道されていない部分なので参考になる。

中東ではISがしぶとく活動を続けている背景には、アメリカがイラク占領後、サダム・フセインにつながるバース党の行政官や警官を追放したため、イラク政府からISへ人材が流出したことがあると書かれていて説得力がある。

ロシアではクリミア半島の併合などで欧米から経済制裁を受けているのに加えて、戦闘機撃墜事件によってトルコとも関係が悪化し、さらに食料が高騰した上に海外旅行先が制限されたことで国民の不満がたまってきているという。

そして日本ではアベノミクスの第2弾について書かれていて、マスコミが報じたがらない税収が増えて国債の発行額が減ったことが書かれている。
安倍政権は本来は連合などの労働組合の仕事である賃上げでも実績をあげたため、連合が民主党(現在は民進党)への支援にも身が入らないだろうとあり、今年の参議院選挙や東京都知事選でもそれは裏付けられたと思う。

人手不足が進行していることで、ワタミのようにブラック企業とされた企業は客だけでなく働き手も失うことが書かれていて、また世の中のターンが変わってきていることを感じる。

付録にはQ&A形式で日本企業や業界の見通しについて、投資家の観点から語っている。
さすがに三菱自動車の件は予見できなかったようだが、それなりに納得できそうなデータを元に語っている。

著者らしい歯切れのいい文章で、本書も興味深く読み進めることができた。





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トランプなんか怖くない
トランプなんか怖くない日下公人
悟空出版 2016-07-20

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日下公人による最新刊。

安倍政権による積極的な外交に対するマスコミが報じない海外での高評価や、日本に対して攻撃的な言動をしてきた国々がしくじってきた歴史、戦前の日本人の知性や道徳心の高さなどの基調は他の作品と同じではあるが、本を出すたびにきちんと新たな情報を入れているので読んでいる。

最も印象に残ったのは、アメリカ軍による原爆投下のニュースを受けて防空壕にいた大人たちが交わしていた会話を紹介しているくだりで、日本は原爆開発競争に負けたが、先んじていればいきなり敵国に投下して人体実験するようなことはせずに海上で脅しの一発を実験していたであろうことや、戦後はアメリカとソ連が対立するであろうこと、日本がアメリカに占領された後の軍政の方向性など、世界情勢を冷静に分析した知的な会話がなされていたことに驚く。

以前著者の作品で共産主義は「国家財産の合法的な略奪」という意味のことを語っていたが、フランス革命においても教会や王室の財産を略奪して「市民による革命」とし、略奪するところがなくなってからはギロチンを用いた殺し合いになったと書かれていて、それに比較すると「革命」ではなくゆるやかな「維新」という手段を採用した日本の方が文明レベルとしては高いという見方がなされている。

もっと日本では非難されていいはずのフランクリン・ルーズベルトなどに代表される白人たちの狡猾さに対し、最初はうまくしてやられつつもその後問題を乗り切っていく日本に対する信頼が書かれ、本書でも勇気というか希望が持てる内容となっている。

表題に出てくるトランプは基地の費用分担を日本が増やさない場合は在日米軍の引き上げと日本の核兵器保有の容認をちらつかせているが、それをやって本当に困るのはアメリカの方だと語っていて、それには同意できる。

また、これだけ休日が増えた状態で経済状態がそれほど下がっていないということは、その分だけ経済成長しているとも書かれていて、他の識者がまず語らないことだと感じた。

問題としては教育レベルの低下や欧米の悪いところを真似している部分だとしていて、それ以外はさほど問題ではないとも言っているようだった。

本書でも刺激的かつ痛快な内容が書かれていて、改めて読んだ分だけの効果が得られると思った。






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