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読書-政治:雨読夜話

ここでは、「読書-政治」 に関する記事を紹介しています。



2020長谷川慶太郎の大局を読む
長谷川慶太郎
徳間書店 2019/10/11



先日逝去された長谷川慶太郎の遺作に当たり、翌年以降の世界情勢に関する分析や見通しを語っているシリーズの最終巻。

米中貿易戦争、令和となった日本の見通し、身の程知らずな主張を繰り返す国の末路、ドイツやイギリスの大変さなどを分かりやすく解説している。

まず印象に残ったのは、米中貿易戦争は第二次世界大戦前のブロック経済のように「自国以外を締め出す」形ではなく「特定の国だけを締め出す」形なのと、どちらの国も大国で貿易依存度がさほど高くないことから、世界経済への影響が思われているほど大きいわけでもなく、他の国、例えば中国の代替先として東南アジアなどは漁夫の利を得る結果となる話である。

トランプ政権が2020年の大統領選挙のために分かりやすい成果を欲しがっていることで交渉相手国から足元を見られている事情も書かれていて、難航しそうと思われていた日米貿易協定でもTPPと同じレベルで早い段階で妥結したのも、この文脈から解説されている。
安倍首相がアメリカから(中国の報復関税でだぶついた)トウモロコシの輸入を決めた話も書かれていて、選挙の激戦区がトウモロコシの大産地という事情からもトランプへ大きな貸しとなったとしていて、大局的な観点からすると大きな効果を上げそうである。

日本がアメリカ抜き・11か国でのTPPを成立させたことは日本外交史上の大成果としていて、同感であるとともに評価する報道があまりに少ないことに不満を感じたりもする。
著者はさらに、TPP11と日欧EPA、さらにはメルスコール(ブラジル・アルゼンチン・ウルグアイ・パラグアイの貿易協定)が合体することもありうるとしていて、成立できれば世界経済の40%近くの自由貿易圏ができるのでちょっとした夢がある。
(メルスコールとの統合にはペルーやチリが反対しそうな気もするが)

他にもトランプと金正恩の成果のなかった会談、安倍首相とイランのハメネイ師やロウハニ大統領との会談、日韓関係でのトラブル、ドイツの苦境、イギリスの混乱などが扱われている。

本書が最後の作品となって次が読めないのは非常に残念だが、これまでいろいろなことを著作を通して教えてもらったと思っている。
著者が遺したという、この言葉も印象に残る。
「中国共産党は必ず崩壊します。皆さん有難う。老人はハイ、さようなら」





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長谷川慶太郎による、昨今の政治や経済の情勢を分析している作品。
タイトルの割に、それほど楽観的な内容でもない。

まず目についたのはファーウェイの評価が高いことで、民間企業なのでそれほど心配しないみたいなことが書かれている。
安くて性能がいいことは認めるとして、情報漏えいやセキュリティの問題といった安全性の話をしていないのは、これまでの著者らしくなくて少し心配である。

それはそれとして、原発技術で日本が遅れることを危惧していることはその通りだと思う。

アメリカや中国の話は報道されることが多い一方で、ヨーロッパでの報道が少ないのでこうした本が役立つ。
ドイツのメルケルがドイツ銀行の不良債権問題を先送りしたことが大変な事態になっていて、ここでしくじると失われた何十年になるのか?

日韓での衝突については「韓国人は言葉が軽い」と評しているが、さすがに昨今の韓国の状況がここまでひどくなることは予想できていなかったように感じる。
特に、「反日で支持率は上がらない」と書いているが、現にイキった発言(だけ)でムン・ジェイン政権の支持率が上がっているのはある意味すごいことだと思う。

現在の情勢の変化は、大ベテランの著者でもついていくのが大変ということなのかもしれない。





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アメリカ、中国、EU、ロシア、中東、日本など、昨今の政治・経済の情勢分析と今後の見通しを語っている作品。
アメリカが中国に仕掛けた経済戦争が、中国に効果的なダメージを与えていくであろうことが書かれている。

こうした背景には中国がGoogleやAppleのような外国企業をを国内から締め出す一方で、ファーウェイのような中華系企業の進出を図る一方的なやり方が反発を受けていると解説されている。

そして中国は日本にすり寄ってきているが、安倍首相が習近平と会談した少し後に(中国のライバル国の1つである)インドのモディ首相と会談するなど、きっちり嫌がらせをしているのは頼もしい。

中国が進めている一帯一路戦略にも触れられていて、例えば米軍がアフガニスタンに現在も進駐しているのは、中央アジアの要地を抑えて一帯一路を牽制していると解説され、なるほどと思った。
そして中国が借金のカタに領土や港湾の使用権を取るような強引なやりかたが多くの反発を招き、マレーシアのマハティールのように親中政権が倒れて反中政権が誕生している話につながっている。

残念な話題ばかりな韓国については日米とも見放しつつあり、フィリピンで米軍基地を復活し、台湾と沖縄の基地と合わせて中国を包囲する形になるという。
日本はその韓国に対しては、関税よりも金融制裁やビザなし渡航の廃止などが効果的だとしていて、近年関係が悪くなっているのは、韓国の利用価値が低下して日本が遠慮する必要がなくなったためのようである。
私は安倍政権がまだ制裁措置をあまり実施していないのは、選挙用に取っているのかもしれないと思っている。

アメリカが北朝鮮を中国やロシアから手を出させないようにしている話など、報道であまり語られない話が多く出ていて、興味深く読むことができた。








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昨年にルノー・日産・三菱自動車アライアンスのCEOだったカルロス・ゴーンが逮捕された事件を受け、その背後にある各国の思惑や方向性をめぐる対立を解説している作品。

まず、ルノーの株式を保有して強い影響力を持つフランス政府は元々国有企業を多く持つ社会主義の性質が強いことを挙げ、フランスがルノーを通じて日産・三菱の乗っ取りを図ったという見立てが書かれている。

さらにこの背景にはフランスや中国が推し進めてきた、グローバル化の風潮を悪用して他国の経済を食い物にしようとする方向と、これに対してグローバル化に反対して各国の利権を重視しようとするトランプのアメリカや、それに歩調を合わせる日本という構図が書かれている。

この両者は中国、フランス、ドイツ、カナダなどが大陸型の国、それに対抗するアメリカ、日本、イギリス、オーストラリアなどが海洋型の国ということで、地政学の類型とも一致している。
その中でトランプは味方と敵をはっきりさせようとしていて、米中の貿易戦争やファーウェイやZTEといった中華系企業の排除、タックスヘブンを利用した脱税の摘発なども、一連の流れとして位置づけているのが興味深い。

ゴーンの往生際の悪いコメントやフランス政府のヒステリックとも思える対応は、これまでおとなしかった日本から普通にしっぺ返しを食らってショックを受けているような感じのようで、ぜひとも日本政府には毅然とした対応を頼みたいと思った。

著者の作品らしくマスコミの報道では踏み込まないところまで書かれていて、非常に充実した読後感だった。






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習近平の真意: 異形の大国を操る
Posted with Amakuri
長谷川 慶太郎
徳間書店 2018/6/12


長谷川慶太郎による、昨今の中国を中心とした政治情勢を解説している作品。

習近平が任期を撤廃して独裁を強め、共産主義一党独裁を維持しつつ経済的には資本主義化を進めるという、かなり難易度が高そうな国家実験をしているという文脈で書かれている。

独裁では反腐敗闘争による政敵の排除や後継者と目される人物を決めていないこと、そしてインターネットの監視や電子決済の管理などが挙げられていて、資本主義化では悪名高い都市戸籍と農村戸籍をなくす方向で進めていることやITやEVなどの技術への投資、国営企業や国有企業の形で生き残っているゾンビ企業の淘汰などが書かれている。

国際関係では習近平はトランプに東アジアの覇権をめぐる賭けに敗れて金正恩もアメリカに降伏に追い込まれたと見立てで書かれている。
そのため日本は中国の一帯一路や統一されるであろう朝鮮半島で儲けることができると書かれているが、ちょっと楽観的すぎるような気もする。

著者の見立てには違和感が少しあるが、習近平の実験は成功しないであろうという部分は肯定できる。
興味深い話が多く書かれていて、参考になった。





2019 長谷川慶太郎の大局を読む
Posted with Amakuri
長谷川慶太郎
徳間書店 2018/10/20

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