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読書-社会:雨読夜話

ここでは、「読書-社会」 に関する記事を紹介しています。



安田 喜憲 (著)
PHP研究所 (1997/09)


環境考古学者による、日本に現存してかつてはメソポタミアやドイツにも存在した森の恵みを尊重する文明と、キリスト教などに代表される砂漠から生まれて自然を支配しようとする文明の違いなどを語っている作品。

森の文明では蛇や牛、大地母神などが崇拝される傾向にあり、日本だけでなく例えばギリシア神話のメデューサやミノタウロスも、元々は地元で崇拝された神々だったのが、その後に地域を支配したギリシアやローマの文明から怪物に格下げされ、貶められていったようなことが書かれていて、他の本でも読んだことがあるような気がして納得しやすい。

気候の変動が歴史に及ぼした影響なども書かれていて、例えばヨーロッパでペストが大流行した背景には、森を伐採しすぎてペストを媒介するネズミの天敵が少なくなっていたことを挙げているのがなるほどと思った。

その時期に実施されていた魔女狩りについても、森の信仰の中心である大地母神を弾圧していた一面もあるという話には少し驚いた部分もある。

他にも著者が中東で実施していたレバノンスギの救済活動や、中国での森林伐採の背後に日本の宗教団体が暗躍しているという話、こだわりの文明といいとこどりの文明の違いなどについても語られている。

シリアが内戦で簡単には行ける場所ではなくなったなど少し古くなったところもあるが、著者の他の作品にもみられるような環境から社会や歴史を捉えている話を興味深く読むことができた。






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「ドライな外国人とウェットな日本人」のような企業や社会で見られるステレオタイプな考えに対して、調べたり著者の経験からそうではない事例を出し、一見問題とされてきた性質や慣習などがいい効果も上げているのではないか?という話をしている作品。

ドライとされる外国の企業でもグーグルやシリコンバレーのベンチャー企業などではファミリー的な雰囲気や制度があったり、独裁的な経営者のイメージがあるジャック・ウェルチが従業員の家族に手紙を送るようなところがあったエピソードなどを紹介している。

そして日本で見られるハラスメント(嫌がらせ)については、実はこれが職場環境を「公平」ではなく日本人が好きな「平等」にする効果があるとか、格差が広がると富裕層のストレスが高まって早死にする傾向があるなど、言われてみればそういう面もあるなという話が書かれている。

後ろの方にある、日本人が不安を感じやすくて集団になりがちという傾向を遺伝子レベルでの話につなげているところでは、かなり以前に読んだ竹内久美子著『パラサイト日本人論―ウイルスがつくった日本のこころ』に書かれていたことを思い出し、まあまあ楽しく読むことができた。

何事にもいい面・悪い面があるということで、視野の広さをもちたいところである。




経済の不都合な話 日経プレミアシリーズ
ルディー和子
日本経済新聞出版社 2018/7/10



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世界の大陸や地域によって格差ができた背景を考察した、『銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎』の下巻。

下巻では技術の伝播や交流、そして衰退など、文字による種族ごとのやり取りの考察、オセアニア、太平洋地域、アフリカなど各地における個別の事例などが扱われている。

上巻に続いてアメリカ、アフリカ、オセアニアなどでは食糧生産に適した植物や動物が少なかったこと、東西ではなく南北に長いことによる障害が多いことで社会間の交流が少なかったことがユーラシアに後れを取った要因という話が多いが、中国の場合は逆に早い段階で統一されてしまったことで、愚かな決定(明朝の海禁や毛沢東の文化大革命など)によって停滞したケースを扱っていて、ほどほどに複数ある社会が交流する形なのが文明の発展には適しているようである。

また、ヨーロッパ人による征服が目立つが、西太平洋やインド洋における中国系やインドネシア系の種族が広まった経緯や、アフリカでバンツー系の黒人がピグミー族やコイサン族(ブッシュマンとして知られる)を圧倒した事例が書かれていて、これもまた食糧生産をいち早く実施したことが明暗を分けている。

ところどころで似た話を繰り返すなど、くどく感じる部分も多いが、多くの事例を用いてできるだけ精緻な話として書きたかったということなのだろう。
読むのにかなり時間がかかったが、それだけの内容の作品でもあると思う。





昨日までの世界(上) 文明の源流と人類の未来 (日経ビジネス人文庫)
ジャレド・ダイアモンド (著), 倉骨彰 (翻訳)
日本経済新聞出版社 2017/8/2


文明崩壊 上: 滅亡と存続の命運を分けるもの (草思社文庫)
ジャレド・ダイアモンド (著), 楡井 浩一 (翻訳)
草思社 2012/12/1


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アメリカ、アフリカ、オセアニアなどがユーラシア大陸から出てきたヨーロッパ人に征服されて植民地となり、その反対にこれらの大陸からヨーロッパの征服が起こらなかったのはなぜか?という疑問を提起し、生物学や社会学など多くの学問を駆使して考察している作品の上巻。

直截的にはアメリカなどになかった剣や銃といった鉄製の武器や馬という機動力と戦闘力を合わせ持つ強力な兵器、そしてそれ以上に現地の人々がヨーロッパ人が持ち込んだ伝染病に免疫がなくて人口が激減したことを挙げているが、本書ではさらにその遠因を何千年にもわたるスパンから考察していく。

具体的にはヨーロッパでは、栽培が容易な穀物や豆類といった食用植物の栽培を可能として人口を増やしたこと、飼いならせるレベルの動物が生息していて家畜化に成功したこと、東西に広くて栽培や畜産が広まりやすかったこと、家畜から感染する伝染病の洗礼を早めに受けて免疫ができていたことなどが書かれている。

対照的に他の大陸では、小麦やコメくらい栽培化が容易な植物が少なかったり、家畜になりそうな動物が早い段階で絶滅していたり、南北に広い地形では栽培や畜産の広がりを妨げられていたことなど、環境による要因によるであろう話に説得力がある。

家畜の話では馬とあまり違いがなくて家畜にできそうなシマウマは、実は成長するごとに獰猛になり、すぐに人にかみつくので家畜にできなかったというくだりが印象に残る。
この話を知ると、哀川翔が演じた「ゼブラーマン」や『キン肉マン』に登場した「キン肉マンゼブラ」の印象が変わってきそうになった。
(キン肉マンゼブラの戦績はあまり振るわないが・・・)

本書では欧米人が語りがちな「インド・ヨーロッパ語族が優れていたから繁栄し、他の人種は文化や文明のレベルが遅れていたから」みたいな偏見ではなく、環境や地勢などから理論的かつ具体例を挙げながら説明しているのが受け入れやすい。

具体例が多くて丁寧に説明している分、「早く次に進んでほしい」とまどろっこしく感じるところもあって読むのに時間がかかるが、内容自体は興味深くて読みごたえがある。

下巻も購入してあるので、続けて読んでみる。






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世界一自由で差別のない国・日本
武田 知弘
ベストセラーズ 2016/7/16



他の国と比較して日本がいかに自由で、差別がない国であるかをさまざまな項目ごとに解説している作品。
著者の作品は歴史と経済に関係するものが多かったので、少し異色なものとなっている。

具体的にははっきりした階級差別が存在しないこと、出身地による差別が小さいこと、宗教対立による紛争が少ないこと、戦争による被害が戦後ほとんどなかったことなどで、他国の事例と比べるとありがたい国であることが分かる。

例えば韓国では済州島や全羅道出身者への差別がひどいことや、インドネシアでのアチェ、イギリスでの北アイルランド、スペインのバスク地方などでの独立紛争、アメリカでキリスト教の影響のために進化論を信じる人がなかなか増えなかったことなどを挙げていて、住みたい国ではないと思ってしまう。

著者は日本がこうなっている背景には天災が多くて助け合わなければならなかった必然性や、どの時代の為政者もそれなりに庶民のことを考えた政治を行っていたことを挙げている。

マルクス主義史観の亡霊にまだ憑りつかれている人々は日本で革命がなかったのは民度が低かったからみたいなことを言うが、本書を読むと民衆の不満が高まって革命になるかなり前の段階でトップが改革するか、そうでなければ支配階級の一部がクーデターを起こすかして改善することができていたことが分かる。
革命は不満が限界に至ってから起こるものなので、発生させなければそれに越したことはないだろう。

巻末では米軍の軍政下から日本復帰を果たした沖縄県の話をしていて、知らなかったことが多くて驚いた。
自由の国アメリカも沖縄に対しては(多分フィリピンなどに対してやっていたのと同じように)自由を制限していたり差別的な扱いが多かったようで、沖縄の民衆は「アメリカか日本か」ではなく「本土復帰以外ありえない」という話にはいろいろと考えさせられる。
現在はどこから来たのか?という人々が跋扈している現状も思い起こし、少し複雑である。

差別と言えば、戦犯というレッテルを張って何十年も反日活動を続けることは、立派な日本人差別だと思う。
現在日本で見られる最大の差別は、これではないだろうか?

初めて知ったことも一定以上あり、興味深く読むことができた。





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