読書-社会:雨読夜話

ここでは、「読書-社会」 に関する記事を紹介しています。


シリーズ・企業トップが学ぶリベラルアーツ 世界は四大文明でできている (NHK出版新書 530)
シリーズ・企業トップが学ぶリベラルアーツ 世界は四大文明でできている (NHK出版新書 530)
橋爪 大三郎
NHK出版 2017-10-06

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社会学者の橋爪氏が、大企業の幹部を対象とした講義で語った内容を本にまとめた作品。

四大文明とは古代文明(メソポタミア、エジプト、インダス、黄河)のことではなく、現代におけるキリスト教、イスラム教、ヒンドゥー教、儒教に大別した4種類の文明を指していて、日本人が違った文明に属する人と付き合うに当たって知っておくべきことを解説している。

また、共産主義では宗教を否定しているが、ソビエトでは神をマルクスやレーニン、聖書を『資本論』などに置き換えただけで行動様式はキリスト教(東方正教会)と同じであること、中国の共産党政権でも官僚システムなどが儒教によるものだとしていて、政治だけでなく行動様式においても宗教の影響が大きいことを指摘している。

まずはユダヤ教、キリスト教、イスラム教が属する一神教の話をしている。
唯一絶対の神、人間という存在の軽さや罪深さ、最後の審判といった、日本人には理解が難しい話をできるだけ噛み砕いて解説している。

次がヒンドゥー教の話で、カースト制度と輪廻思想のセット(いいことをすれば来世でいいカーストに入れるかもしれない)が長く続いてきた背景を説明している。
古代において下の身分にされた人々からすれば奴隷制度と比較するとカースト制度は「かなりまし」ということになる。

そして儒教の話がなされている。
儒教で政権交代には禅譲、世襲、放伐(易姓革命)の3パターンがあり、世襲で暗君が出現するデメリットを補うのが科挙による官僚システムという説明はかなり分かりやすい。
また、忠・孝という徳目で特に孝を重視するのは、庶民に家系への貢献をした達成感を与えることでつらい現実をなぐさめる役割があると語っているのも興味深い。

最後が日本の話で、日本は文明でないとか「空気」ばかり気にしてふらふらしているみたいなことがあれこれ書かれているが、あまり目新しい話はない。

一見非合理に見える信仰や行動様式も、考案された当初は救いになる部分やメリットが多かったことなどが分かり、自分の物差しで違う考え方の人々を判断することの難しさを教えてくれる1冊となった。






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繁栄――明日を切り拓くための人類10万年史 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
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マット・リドレー (著),‎
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「合理的楽観主義」という考え方から、人類が繁栄するに至ったプロセスを解説している作品。
著者は動物学者で、本書では人類が動物と異なる部分にアクセントを置いて書かれている。

最初は形状や大きさが似ている、打製石器とマウスの違いから話を始めている。
前者がほぼ1人で製作されたのに対し、後者は数多くの人が関わっていることを大きな違いとしてあげている。

ここから繁栄は交換と分業、専門化、そして数多くのアイデアが組み合わされていくつものイノベーションが起こったことを紹介し、人口が増えるごとに集団的頭脳もまた発達したことを語っている。
このプロセスは逆もまた有効で、人口が減るごとに技術が退化していったタスマニア人が例に挙げている。

そしてしばしば「昔は良かった」という話がなされることが多いが、そんなものは生活に苦労しない富裕層の幻想だとばっさり切り捨て、具体的なデータを用いて反論している。
技術の進歩によっていかに悲惨な事態を回避することが出来たかが書かれていて、昔を懐かしむのもほどほどにした方がいいことを再認識させられる。

この手の幻想には原始時代幻想、農村幻想、平等幻想、平和幻想、政府や君主によるコントロール幻想などがあり、これらが支配的になるとろくなことがなさそうである。

世の中の変化によっては混乱が起こる場合もあるが、いきすぎと規制しすぎでどちらの害が大きいかと言うと、後者という趣旨のことも書かれている。
いきすぎはタイムラグがあっても慣習的に解決されることが多いのに対して規制しすぎはそうはいかないことや、「市場の失敗」と「政府の失敗」では後者の害が多いというのもありそうな話である。

今後についても基本的には楽観的な見方がなされているが、全体主義、官僚主義、強大な帝国、多すぎる規制、宗教による制限などが交易を妨げることはいつでも不安要素として存在することも書かれている。
これは共産主義もそうだし、グリーンピースのような環境原理主義も当てはまる。
(本書では遺伝子組み換え作物に強硬に反対したことで、アフリカでの飢餓を助長したことがその例とされている)

例に挙げる話が多くて読むのにかなり時間がかかったが、読み終えるとそれなりに必要な過程ということも理解できた。
少し前に読んだ『「豊かさ」の誕生』などと同様、前向きさと読み応えがあって充実した読書になったと思う。






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「豊かさ」の誕生(下) 成長と発展の文明史 (日経ビジネス人文庫)
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近代の急激な経済発展を、制度や技術の点から考察している作品の下巻。
上巻に続いて下記の4つの要因を用い、まずは先頭に立った国(オランダ、イギリス、アメリカ)、出遅れたが追いついた国(フランス、スペイン、日本)、取り残されたままとなっている国(かつてオスマントルコの領域だった国や、スペインから独立したラテンアメリカ諸国など)についてのケースを解説していて、具体的で興味深い。
  • 私有財産制
  • 科学的合理主義
  • 資本
  • 動力・スピード・光
フランスでは統制経済、スペインでは略奪や地下資源への依存、日本では江戸幕府による鎖国などの政策が上記の要素を妨げてきたとしている。
制度についてはイギリスの植民地だった国とスペインの植民地だった国では法律によって財産権を保護する部分に差が出ていて、これが経済発展の差につながっているとしている。
これはあくまで法や社会制度についての話であり、植民地でマイノリティを優遇していがみ合いを煽ってきたイギリスの統治にも問題はあるわけで、あくまで経済成長ではという但し書きがつくかとは思っている。

その後は経済成長が幸福につながるかはなんとも言えないが、著者の母親によれば「少なくとも居心地のいい場所で苦しむことができる」という話をしたり、民主化は経済成長につながるとは限らないが経済成長は民主化につながりやすいという話、そして経済成長と民主化を達成した国は国防費を一定レベル(30%くらい)に抑えようとしたり、戦死者を減らすために軍事技術が発達する傾向があることなどを解説している。

後半は少し読みづらく感じる部分もあったが、まずまず前向きな形で経済成長についての話が書かれていて、興味深く読むことができたと思う。





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「豊かさ」の誕生(上) 成長と発展の文明史 (日経ビジネス人文庫)
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1860年前後を境に経済や産業の発展スピードがが急激になっているとして、その背景を解説している作品。
これは以下の4つの条件が揃ったことによるものと語り、それぞれに章を立てている。
  • 私有財産制
  • 科学的合理主義
  • 資本
  • 動力・スピード・光

私有財産制が重要なのは権力者などから不法に財産を没収されたりすることがないことであり、自由も財産権と密接に関係していることは借金があると自由がなくなることを考えると理解しやすい。
特許で自身の発明が守られなければ工夫しようとするインセンティブが働かないし、「共有地の悲劇」や共産主義による失敗からも、自分のものにならなければ生産や技術も発達しないことが書かれていてその通りだと感じた。

科学的合理主義でなかった状態というのは例えば、カトリックがプトレマイオスによる天動説を正規の説として、それを疑ったり地動説を大衆に広めるとガリレオのように宗教裁判にかけられるようなことを指している。
宗教改革で有名なルターもガリレオの学説には否定的だったことを考えると根深いものがあるわけで、科学と宗教の分離がまず必要という話になっている。
この章ではコペルニクス、ブラーエ、ベーコン、ガリレオ、ケプラー、ニュートン、ハレーといった人々が果たした役割が書かれている。例えばハレー彗星のことでしか知らなかったハレーはニュートンの弟子で、科学だけでなく保険業やオーストラリア大陸発見にも実は貢献していたという話にはけっこう驚いたりした。

資本のところでは、資本主義が成立する前は出資者は損失に対して全財産を支払わなければならず、イギリスなどで債務不履行をすると懲役を受けた時代もあったことが書かれている。
それだと出資のリスクが高すぎるので、家族経営をするか高利で融資を受けるしかなかったわけで、長期で多額の資金を必要とする事業には限界があったという。
アジアやアメリカ大陸との貿易でのリスクを分散・有限化するために株式会社の仕組みができたわけで、有限責任(損失は出資した金額まで)によって資金がさまざまな事業に流れるようになったことが理解できた。
19世紀に大規模なインフラ工事がなされたのはデフレで金利が低かったからということもあるとは思うが、さすがにページの都合であまり触れられていない。

4条件で最後の動力・スピード・光については、蒸気機関と電信をメインで扱っている。
蒸気機関の発明によって人や動物、自然エネルギーではできなかった強く安定した動力を得られたことで、工場や鉱山といった産業での用途、そして蒸気船や蒸気機関車で輸送のスピードが劇的に向上した効果を語っている。
電信についても情報の伝達スピードが上がったことで、価格が一定の範囲内に収まるようになったという経済的な効果を例に挙げている。

興味はあったが少し硬そうなので読むまで時間がかかったが、読み出すと興味深いポイントがいくつも分かりやすく解説されていて、充実した読後感を得ることができた。
続いて下巻も読むつもりである。





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ついに日本繁栄の時代がやって来た (WAC BUNKO 249)
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日下 公人
ワック 2017-01-26

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日下公人による、近年の日本におけるポジティブだがマスコミが報道しない変化について語っている作品。

アベノミクスの3本目だか4本目だかの経済成長だが、これは新たに生み出されるものであり、それをあれこれ聞くほうが間違っていると語っているのが著者らしくて面白い。

また、安倍首相が精力的に行っている外交の意義を報じないメディアが多すぎることも印象に残る。
現在北朝鮮にまつわる危機が発生しているわけだが、インドを訪問して北朝鮮との裏取引などを行わないように働きかけることに成功したことなどがあまりテレビや新聞で報道されず、言いがかりに近い森友・加計の話題のような偏向報道を繰り返しているわけで、バランスを取る情報を得るには本書のような本を読まなければならないのは少々不本意な気もする。

(少なくともアメリカが主導する形では)TPPは雲散霧消するのではないかという見立てを披露していて、現在アメリカを除いた11カ国でのTPPについての話し合いがなされていると思うが、それなりに注視している。

景気を良くするにはもっと働くこと(公務員として働くことではない)や、政治が景気に対してできることなんて限られているなど、民間や大衆への信頼が感じられるのも好感が持てる。

著者が日頃の準備ととっさの行動に関して尊敬する人物として平田竹男氏、宮崎正弘氏、安倍首相の3名を挙げていて、それぞれの特徴を語っているのも興味深い。
安倍首相と著作を読んだことがある宮崎氏は多少分かるが、平田氏についてはほとんど知らないので著作などを読んでみようかと思った。

近年の話題を織り交ぜつつ、著者らしい主張が分かりやすい語り口で書かれていて非常に良かったと思う。





新しい日本人が日本と世界を変える新しい日本人が日本と世界を変える

日下 公人
PHP研究所 2016-12-22

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