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読書-スポーツ:雨読夜話

ここでは、「読書-スポーツ」 に関する記事を紹介しています。



高橋 安幸 (著)
集英社 (2018/8/21)


NPBでは近鉄で捕手として入団し、広島、西武、ダイエー(後のソフトバンク)で球団の編成責任者として辣腕を振るった根本陸夫について、関係者たちから証言を集めてまとめている作品。

証言者は旧制中学時代からの親友だった関根潤三をはじめ、工藤公康、大久保博元、衣笠祥雄、石毛宏典、森繁和、下柳剛、森脇浩司といった現役時代に指導を受けた元選手たち、根本からダイエーの監督に招聘された王貞治にその交渉を命じられた瀬戸山隆三、スポーツジャーナリストの安倍昌彦、さらには根本の幼馴染や家族などからも証言を集めている。

戦後の荒れた時代に硬派学生として暴れていたという伝説や、ヤクザがあいさつしてくるという逸話、人によっては無茶苦茶だと思われるが結果が出た場合も多い指導、面倒見の良さなど、かなり濃い人物だったことが証言者たちの話から伝わってくる。

選手としてはぱっとせずに早めに引退し、監督としてはそもそも勝つことにこだわりがないどころか勝ちすぎて次の監督に引き継ぐ際のことを心配するようなところがあったが、監督をやって実情を把握したり選手を育ててから次の監督が優勝するなど、編成部門の責任者、今でいうGMとしてはすごい人物だったことが改めて分かる。

「球界の寝業師」と呼ばれるようなルールすれすれの行為も多く、昭和から平成初期でなければできなかったことも多かったとは思うが、幅広い人脈づくりや野球人の以前に人間としての指導など、多くの人が心酔したポイントも分かる。

野球人以前に人間として、という部分はノムさん(野村克也)の指導方法にも共通していて、ノムさんの現役時代晩年に西武でどんなやり取りをしていたのか気になる。

根本家で出される牛乳入りのすき焼きをおいしくないと言い放った若い頃の工藤や、体の強さを評価されて毎日のようにバッティングピッチャーをやって技術を向上させた下柳、根本から心配されていた通りにあちこちでトラブルを起こした石毛など、証言者たちの濃いエピソードも面白い。

廣岡達朗や森祇晶が根本のことをどのように語るかも知りたいところだが、色々と難しそうだということも分かる。
読み応えのある作品で、興味深く読んだ。





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野村 克也 (著)
集英社 (2014/11/14)


ノムさんによる、他の人と成績は変わらなくても実績が大きかったりここぞの場面で結果を出したりする人がなぜそうなるのか?という観点から書かれている作品。

まず、楽天時代に著者が「マー君神の子不思議な子」と呼ばれたように、マー君こと田中将大が登板した試合で打ち込まれても味方の援護があってなかなか負けなかった理由には、マー君がチームメイトから勝たせてやろうという信頼を得る言動を普段からしていたからではないか?と考察していて、現役時代は杉浦忠もそれに当てはまっていたという。

また、正しい努力をする必要がある話では著者の作品の常連である稲葉篤紀や宮本慎也の他、長距離打者へのあこがれを捨てることができた土橋勝征などのエピソードを紹介している。
そしてプロ野球では努力しなくても結果を残せた例として、著者の現役時代に一緒にプレーしていた広瀬叔功やシダックス監督時代に一緒だったキューバの選手の話も面白い。

野球選手のエピソードとしては阪神時代の新庄剛志とのやりとりが秀逸で、どこを守りたいのか尋ねると「そりゃあピッチャーですよ。カッコいいじゃないですか」との返答に「ならやってみい」と返して新庄がノリノリで練習していた話については、「宇宙人とヘンな地球人の間でしか成立しない」みたいなことを書いていたのに笑ってしまった。

著者による「スランプではなく未熟なだけ」とか張本勲が語った「夜の素振りは睡眠薬」といった名言も印象に残り、改めて著者の話は使いまわしが多いことを除くといい言葉が多いと再認識した。






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関連タグ : 野村克也,


喜瀬 雅則 (著)
光文社 (2020/4/14)


福岡ソフトバンク・ホークスの3軍システムがどのような経緯で始められ、結果を出してきたかを取材しているスポーツノンフィクション。

王貞治会長をはじめとして小林至、永井智浩、小川一夫、三笠杉彦、山本省吾、瀬戸山隆三といった現場やフロントの人々、そして千賀滉大、甲斐拓哉、牧原大成、石川柊太、大竹耕太郎、周東佑京といったソフトバンクの育成指名からのし上がった選手たちから聞いたコメントが多く収録されていて読みごたえがある。

特に、「杉内俊哉投手に心無い言葉をかけて巨人にFA移籍された残念なフロント責任者」というイメージがある小林氏がかなりの業績を上げてきたことには少し驚かされる。
癖がある人柄なのもコメントから伝わってきたが・・・

これまでもロッテなどで独立リーグの球団を買収して育成選手を派遣するとか、独立リーグに3軍が参加するなどの話が出ていたようだが、「する球団としない球団で不公平になる」などの抵抗もあり、うまくいかなかったケースも多かったようである。
そうした中でさまざまな課題をクリアしてソフトバンクの3軍の運営がなされるようになったことが書かれていて、大変だったことが伝わってくる。

スカウトからすると大学や社会人でドラフト1位になる選手をそれ以前に見抜けないことが痛恨のことのようで、それなら母数を増やすことと、試合による経験を積んだり課題を見つけて解決するなどして成功する数を増やしていくというロジックで書かれている。

3軍のシステムにより試合を組んだり、海の中道の近くの雁の巣や西戸崎にあった二軍施設が手狭だったり老朽化していたため、移転先を公募して筑後市に広大な二軍施設を建設した話も書かれている。
移転先候補には福岡市のアイランドシティや北九州市、宮若市などが上がっていた話も面白い。

そしてこうした構想には前身のダイエー時代に基礎を築いた故・根本陸夫氏の影響が随所で書かれていて、業績の大きさや先進的なビジョンには驚かされる。

さまざまな困難を乗り越えて結果を出してきた3軍や育成のシステムも、結果を出したら出したでアマチュア側からも警戒を受けたり、ヤクルトが支配下で獲得した元ソフトバンク育成の長谷川宙輝投手のように他球団の動きも出ていて、競い合ってプロ野球の裾野が広がっていけばいいと思う。
例えば横浜DeNAベイスターズで二軍施設を充実させたり神奈川の独立リーグ球団との提携などがなされているので、こうした他球団の動きについての本も出たら読んでみたい。

充実した内容の作品で、興味深く読むことができた。





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日本サッカーでJリーグ創設などの業績で知られる川淵三郎氏が、国内リーグが2つに分かれていてFIBA(国際バスケットボール連盟)からの制裁措置でリオデジャネイロ五輪をはじめとする国際試合への出場を禁止された日本のバスケット界のため、リオ五輪開幕までの4ヶ月で単一リーグを創設するなどの体制作りに関わった話を中心に、スポーツがもたらす影響や批判にめげずに実行していくことなどを語っている作品。

当時の日本におけるバスケットボール界は企業のリーグとプロのリーグに分かれていて険悪な関係にあったり、「リーグが代表チーム強化に貢献する必要はない」という幹部がいたり、そもそも組織のガバナンスが機能していないなど、著者が調べていくと絶望的に厳しい状態にあることが分かる。

それに対して「地域に根ざしたチーム作り」、「Jリーグ開幕時とは時代が違うので企業名はつけてもいいが、地域名はつけること」、「体育館ではなく5000人収容のアリーナをホームとすること」、「リーグは三部制」などのルール作りをかなりのスピードで実施し、リオ五輪への代表チームの出場に間に合わせることができた。

このプロジェクトについては当然著者が中心人物の一人として携わったJリーグ創設の経験が活かされていて、批判する人との討論などで理念が徐々に伝わる効果などを書いている。
特にナベツネ(渡邉恒雄・読売新聞主筆)とのバトルはマスコミが大々的に報じてくれたおかげである種の宣伝にもなったとしていて、手厳しくやられたナベツネのことを恩人と呼んでいるのは興味深い。

Jリーグでは「引き分けが多くてつまらない」という意見に対して(延長で得点した時点で勝敗が決まる)Vゴール方式や、水曜と土曜の週2で試合を組んだのは日本選手の体力不足への対策だったなど、少し疑問に感じていた制度にも意図があったことを知ったことには新鮮な驚きを受けた。

他にもサッカー日本代表に関連してハンス・オフトの招聘と解任、ジーコ招聘の経緯、ドイツW杯後でのオシム発言などのことを当事者として語っていたり、現在理事長を務める首都大学東京での取り組みなどについても書かれている。

多分失敗してなかったことにした話も多いとは思うしポジショントークにも気をつける必要はあるが、刺激的な話が多く語られていて興味深かった。





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ヤクルトスワローズで選手としても監督としても活躍した古田敦也による、自身の野球経験から自分の心理状況をいい方向に持っていったり、他者の心理を洞察したり、うまくいかない時期の過ごし方などに関するヒントをあれこれ語っている作品。

まえがきでも述べているように、必ずしもそのまま応用できるものばかりではないが、野球選手がどのようなことを考えてプレーや練習をしているのかを知ることができるのが興味深い。

この中では、初めの方に書いてあった練習のように日常的に同じようなことを行う場合でも、より良い方法を求めてあれこれ試してみるということの重要性が書かれていて、ついついいつもの方法を取りがちなのでけっこう心に響いた。
野球の場合もそうだが、以前通用していた方法がある日通用しなくなることもままあるわけで、さまざまなパターンがあることを日頃から少しだけでも考えておくことが必要なのだろうと感じた。

春のキャンプは新たなことを試すというよりもシーズンに向けて状態を上げるためのもので、新たなことを試すのは秋のキャンプで行うなど、プロ野球に対して漠然と思い込んでいたことと異なることがけっこう書かれていて、プロ野球ファンの目線からでも興味深く読むことができる。

以前読んだ著者の『「優柔決断」のすすめ』と同様にソフトな語り口で書かれていて、受け入れやすさを重視しているようなところに好感が持てる。





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