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読書-歴史(世界:通史):雨読夜話

ここでは、「読書-歴史(世界:通史)」 に関する記事を紹介しています。



井沢 元彦 (著)
小学館 (2019/10/23)


井沢元彦著『逆説の世界史』シリーズの第3巻で、前半がインドや日本の宗教が一神教に負けなかった話、後半がギリシア文明の話をしている。

一神教が広まった地域では元々あった多神教が滅ぼされるというのが世界の多くの地域で発生したパターンだが、インドのヒンドゥー教と日本の神道だけは一神教的な性質を持つ仏教を取り込み、その後のキリスト教やイスラム教にも滅ぼされることなく続いてきた「強い多神教」という話がなされている。

その理由にはヒンドゥー教は輪廻の思想、神道ではある種のゆるさや日本人のカスタマイズ好きが一因ではないかといったことが考察されている。

日本での仏教の受容については、鈴木正三などに代表される禅宗の教えや親鸞の浄土真宗の教えにあった勤労を美徳として利益を肯定する考え方が、西欧のプロテスタンティズムやカルヴィニズムなしで資本主義を成立させたという話も紹介されている。

後半のギリシア文明では、まずポリスの時代のアテネに登場したアルキビアデスという人物が民主制の弱点を利用してのし上がるデマゴーグの典型的な人物と紹介されていて印象に残る。
軍人や政治家として有能なのは確かだが、平気で裏切って敵対勢力に鞍替えする反復常ない人物で、さすがにやりすぎたのか暗殺されるという末路をたどっている。

そしてポリスの時代を終わらせたマケドニアのアレクサンドロス大王の話に移る。
アレクサンドロスによる遠征はインド西部で止まったが、これは兵たちが高温多湿なインドの気候に辟易して「こんな土地をもらっても仕方がない」と思ったためではないか?と、上層部ではなく一般の兵たちの視点から考察されている。
基本的にイデオロギーや信仰がない状態での兵はお金、女性、土地を得られなければ働いてくれないものだという話は納得しやすい。

その後はアレクサンドロスが急死した後の後継者争いのごたごたや、ソクラテス・プラトン・アリストテレスなどギリシア哲学の話がなされているが、このあたりはそれほど新たに感じる話は少ないように感じた。

本作がギリシアを扱い次がローマを扱うそうなので、これが出てくるのを楽しみにしている。






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関連タグ : 井沢元彦,


神野 正史 (監修), 造事務所 (編集)
日本経済新聞出版社 (2019/11/2)


バビロンやテオティワカン(アステカ帝国の都市)、アンコールのように現在は遺跡しか残っていない都市、当時の繁栄まではいかなくても観光地として栄えている都市、現在まで繁栄が続く都市など、30の都市を選んでその歴史を紹介している作品。

一昨年に読んだ出口治明著『グローバル時代の必須教養 「都市」の世界史』で扱われて本書で出てこない都市はカイロとベルリンで、人によって選択が違ってくるのが興味深い。

アムステルダムが「アムステル川」のダムに由来するなどの都市名の由来や、都市の計画や建造に活躍した人物の話、歴史上の事件とのつながり、旧市街と再開発地区の関係、構造からくる渋滞などの都市問題など幅広い話が扱われていて、歴史の本というよりは地理の本という印象が強い。

社会科や地理ではインドのデリー(オールドデリー)とニューデリーは別物みたいに習ったような記憶があるが、現在はデリーという1つの都市でまとまって扱われているなど、知らなかった知識に驚いたりもした。

これも一昨年に読んだ『30の都市からよむ日本史』の世界史版という感じだが、日本史に比べて面白さの点でいまいちに感じたのは、扱われている都市についての予備知識が少ないためだろう。

世界史の本を読むにしても、世界のニュースを知って物事を考えるにしても役立ちそうな話が多く扱われていて、興味深い内容だと思う。






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陸の帝国・モンゴル、海の帝国・イギリス、空の帝国・アメリカと覇権国が交代してきた歴史を、気候や地勢、交易などと関連付けて解説している作品。

バルト海や大西洋の交易、ヴァイキングがバルト海からロシアの大河を経由してイスラム圏と交易していたなど、歴史学者の玉木俊明氏の作品と似た内容で、それを簡単にかつ定説寄りに書かれているという印象だが、本書では気温や湿度、地勢など地理的な要素をより重視して書かれているのが特徴だと感じた。

地中海は乾燥した海でバルト海からの小麦に救われた話、古代文明では黄河文明だけが海に開かれていない内陸型の文明と評するなど、梅棹忠夫著『文明の生態史観』などを連想したりもした。

大きなスケールからの話を区切り良く・分かりやすく解説されていて、概説書としてなかなか良かったと思う。






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ジュニア向けに書かれた、日本で定着している故事成句の元となったエピソードを多く扱いながら、分かりやすく中国の歴史を解説している作品。

著者があとがきで書いているが、春秋戦国時代のような古代に多くの故事成句が生み出された一方で、唐、宋、元、明、清と後になるにつれ、こうした故事成句のストックが増えたこともあるのか、既に知られている故事成句を用いた漢詩が多く書かれるようになった話があり、中国史が途中から面白さを減じていくのと比例していて面白い。

また、これまで読んだことのある中国の幻想小説が生み出された経緯や、文学史に関する話も随所でなされていて、政治状況などとも関連していることが伝わってくるのも興味深い。

既に知っている故事成句も多いが、改めてエピソードが言葉に定着しているのは面白いと再認識させてくれる。
ジュニア向けに書かれた作品だが、しっかりした内容で大人が読んでも十分以上のものとなっている。








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タイトル通り、日本人が定説として知っている世界史とは大きく異なる話を語っている作品。

著者は他の著作にも書いてきた帝国と属国からなるという歴史観の他に、食べさせてくれる指導者を求める「食べさせてくれ史観」、北方の遊牧民が襲来・支配する「ドドド史観」、ある種の思想や宗教に救いを求めて幻滅したり混乱する「熱狂史観」の3つを提示し、特に熱狂史観の例にパレスチナで起こったキリスト教、ユダヤ教、イスラム教という一神教が人類に不幸をもたらしてきたと語っている。

ここまではそこまで目新しくはないが、『ユダヤ人とは誰か』、『想像の共同体』、『ユダヤ人の起源』、『サピエンス全史』の4冊に書かれている内容を紹介している部分がインパクト十分なものとなっている。

例えばユダヤ教や整った形での『旧約聖書』はキリスト教の成立よりもかなり後で、モーセやダビデ、ソロモンといった旧約聖書の登場人物はまだ出現していなかったユダヤ人ではなくエジプト系であること、ユダヤ人とパレスチナ人は使う文字は異なるが会話をすることは問題なくて元は同じで一部がユダヤ人だと意識したからユダヤ人になっただけでそれ以上の根拠はあまりないことなど、確かに欧米の人々からすると都合が悪いであろう話が多く、ユダヤ人が嫌われてきた事情も少し分かる気がする。

ユダヤ人と意識すればユダヤ人になれることから、例えばコーカサスにあったカザール王国や西欧にいた商業民がユダヤ人になった説や、インド・ヨーロッパ語族のアーリア民族とは虚構とばっさり切り捨てている話、古代のギリシア人とフェニキア人は実は同一の集団でどちらもローマに攻められた話など、刺激的な説がいくつも書かれている。

根拠を明示せずに「・・・だったに違いない」みたいな表現が多かったり、自分だけが賢くて他の知識人はバカだとする上から目線の書き方には違和感を覚えるものの、興味深い内容の作品ではある。







副島隆彦の歴史再発掘
副島 隆彦
ビジネス社 2018/12/18


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