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読書-歴史(世界:通史):雨読夜話

ここでは、「読書-歴史(世界:通史)」 に関する記事を紹介しています。





ルターの宗教改革から現代にかけてを扱った、学者、作家、評論家といった識者たちによる「文芸春秋SPECIAL」に掲載された論文をまとめている作品。

まず印象に残るのは、ロシア、中国、イスラム圏、韓国、北朝鮮など、欧米や日本とは世界観や歴史観、モデルとなる体制や人物が異なっている地域の話で、現在の体制が崩壊したからといって民主化が進むとは限らないことを再認識することができる。

他にも、ワイマール共和国では政党政治の混迷と緊急事態用に議会を無視できる大統領令の乱発によって行政が立法に優先してヒトラーが台頭する前から民主政治が変質していたことや、音楽が教会、ブルジョア、軍隊など時代によって主要なスポンサーが変わることで流行が移ってきた話、福田和也による違和感だらけの戦後のアメリカ大統領の評価(フランクリン・ルーズヴェルトやバラク・オバマの評価が高すぎる気がする)などが目についた。

納得できるもの、できないもの、知らなくて新鮮に感じたものなどさまざまで、興味深く読むことができた。





世界史の新常識 (文春新書)
文藝春秋 (編集)
文藝春秋 2019/3/20


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世界史での出来事を貿易や税制、金融政策など、お金の観点から解説している作品。
エジプト、ローマ、漢、イスラム、モンゴル、オスマン、スペイン、イギリス、アメリカ、ドイツ、日本と、様々な時代の様々な国家のお金事情が書かれていて面白い。

古代のエジプトやローマの時代から税制に関する共通した法則があることを指摘していて、官僚機構が妥当な額の税を徴収している間は国が栄え、徴税請負人のように中間搾取がひどくなれば増税なのに税収不足の状態を経て、平安時代の日本で荘園に土地を寄進したような脱税がまかり通るようになって国が衰退していくというものである。
経済が傾いたから増税となるのか、税制で失敗したから経済が傾くのかは双方向で作用しているようにも感じる。

近代にイギリスが覇権を握った理由には国債による資金調達、株式会社のいち早い組織的な運用、そして海賊行為を挙げていて、まっとうな方法だけで短期間にのし上がることは難しいのだろう。

また、この時期にユダヤ系のロスチャイルド家がヨーロッパ各国の宮廷に入ってナポレオン戦争で大儲けをした一方で、その後振るわなくなったのは家族経営を重視しすぎて株式会社への移行が遅れたためとあり、成功体験が次の足かせになる事例であるとも思った。

イギリスの次の覇権国がアメリカだが、第一次大戦や第二次大戦でヨーロッパやアジアの戦争には傍観するつもりだったのが、ドイツや日本みたいな国がアメリカのドル体制へ挑戦する動きを認識した途端に全力でつぶしにかかっていることが書かれているのも印象に残る。

そして、一方的に搾取する経済システムを構成するとそれがどこかで破綻に至るパターンも書かれていて、人間は一定レベルで似たような行動パターンを繰り返すものなのかもしれないと改めて思った。

著者の他の作品と同様にお金というリアルな視点から歴史を読むことができ、興味深かった。






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関連タグ : 大村大次郎・武田知弘,




貨幣や金融の歴史について、この業種を宗教的な制約をあまり受けずに実施できたユダヤ人の活動とともに解説している作品。

元々メソポタミアの遊牧民だったユダヤ人はパレスチナの地に王国を築いていたが、アッシリア、バビロニア、古代ローマ帝国などに何度か滅ぼされ、ディアスポラと呼ばれる離散を強いられてしまう。
この結果、神殿ではなく教書を重視した信仰となったり、多くの地域に仲間が住むことでネットワークを構築したことで商業で活躍できるようになっている。

また、イスラム教やキリスト教では利子を取ることを認めていないのに対し、ユダヤ教だと異教徒に金を貸して利子を取ることは問題ないため、金融業でも大きな力を持つに至っている。

イスラム圏では比較的差別を受けていないように見えるが、キリスト教圏だとユダヤ排斥の動きに対して資金調達や商業振興の面でいてほしいというニーズのせめぎあいがあり、結果としてユダヤ人を追放したスペインやポルトガルは衰退し、ユダヤ人を受け入れたオランダ、イギリス、アメリカなどが繁栄するようになった経緯も書かれている。

貨幣については金属片、金貨や銀貨といった鋳造通貨、金銀などと交換できる兌換紙幣、発行元の信用(のみ)で流通する不換紙幣と、経済の拡大とともに多くの量が流通できるようになった経緯が分かりやすい。
取引方法についてもそうで手形や国債、株券などが発行されて取引がしやすくなっていく一方、実体経済以上に貨幣や取引がなされることによるバブルも発生しているのは当然の結果なのだろう。

ロスチャイルド家のように宮廷ユダヤ人として活躍した人々や、各国の政界や財界で活躍してきたユダヤ人も随所で扱われている。
この中では、ロシアの新興財閥(オリガルヒ)としてのし上がったアブラモビッチやホドルコフスキーなどもユダヤ系ということは知らなかったので少し驚いたりもした。(名前からはユダヤ系と分からない)

当方の知識や理解力不足で金融の話で少し難しく感じる部分も少しだけあったが、幅広い内容が明快に語られていて興味深く読むことができた。






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古代、中近世、近現代で20章の構成で、さまざまな民族の活動や移動、衝突や迫害といった出来事を紹介・解説している作品。
フェニキア人、ユダヤ人、アルメニア人、ゲルマン人、ノルマン人、トルコ系、漢民族など、世界史の教科書に登場する多くの民族が扱われている。

単一あるいはグループが限られた民族であればまだ理解しやすいが、ゲルマン人の諸部族、ノルマン人の諸派、アフリカの部族などは細かなグループが多数出てくるので、なかなか理解が追い付かない。

あまり知らなかったり意識することがない事柄も多く書かれていて、ドイツ、ポーランド、ウクライナとその周辺地域は平原が続くために頻繁に国境線が変わって悲劇が繰り返されてきたことや、ドイツ系住民が東欧やバルト海沿岸などに数百年にわたり住んでいたのを第二次世界大戦後にドイツに強制的に「帰国」させたために当事者がひどい目にあったのはもちろん指導者を引き抜かれた地域も経済的に打撃を受けた話、ユダヤ人は世界中に広がりすぎてイスラエル建国を目指したシオニズム運動に反対のユダヤ人も多かったことなどがそれに当たる。

「漢民族」の概念が時代を追うごとに変質したり、中央アジアなどでトルコ系がイスラム化していったり、地域によっては複数の民族が同化することや名前は同じでも内実が変わるなど、さまざまな事情で民族の構成が変わっていく話も随所で出てくるのも興味深い。
同化を期待してマイノリティに対し宥和政策を取ったのに同化が進まなかったために弾圧に転じるようなケースもあり、民族に対する政策で長期的にこれはという正解はないのかもしれない。

ところどころで読みにくかったり著者の見解に異を唱えたくなるところもないではないが、内容が濃くて刺激的な内容だったと思う。






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関連タグ : 関真興,




人が移動して定住したり次の場所に移動するという、広い意味での「移民」から、世界史を語っている作品。

著者の他の作品でも書かれていた、ムスリム商人、ポルトガル商人、アルメニア商人、ニュークリスチャン(イベリア半島で改宗した元ユダヤ人)の活躍が本書でも多く扱われている。

世界史の教科書に書かれていることと印象が異なる話、例えばヴァイキングがロシアの河川から黒海やカスピ海沿岸でも交易していた話や、ポルトガル国家がライバル国に敗れた後もポルトガル商人はアジア貿易で活動を続けていたこと、アルメニア商人のユーラシアに広がったネットワークを多くの国が利用してきた経緯、新大陸でのサトウキビ栽培では黒人奴隷の労働力とニュークリスチャンのノウハウが結びついてのものだったなど、知らないことはいくらでもあることを再認識させられる。

本書でさらに印象に残ったのはスコットランド人の話で、中世の宗教戦争では傭兵としてプロテスタント側のデンマーク軍やスウェーデン軍などで活躍したことや、大英帝国の発展に伴って植民地に移民していった話、明治政府のお雇い外国人として来日した「エゲレス人」にも多くスコットランド人が含まれていた事例などが書かれている。

そのスコットランドではブレグジットでイングランドと同じ国であることのメリットが減り、独立してEU内に留まろうとする動きも扱われ、これはスペインにおけるカタルーニャ独立運動など、ヨーロッパの多くの国が抱えている問題だと指摘されている。

具体的なデータを多用して知らなかった話が本書でも多く書かれていて、興味深く読むことができた。






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関連タグ : 玉木俊明,