読書-歴史(世界):雨読夜話

ここでは、「読書-歴史(世界)」 に関する記事を紹介しています。


アメリカ人の物語 第1巻 青年将校ジョージ・ワシントン (アメリカ人の物語 1)アメリカ人の物語 第1巻 青年将校ジョージ・ワシントン (アメリカ人の物語 1)

西川秀和
悠書館 2017-01-20

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アメリカ合衆国の歴史を、人物の活躍を中心に描いているシリーズの第1作。
本作では初代大統領となるジョージ・ワシントンが独立戦争前の若い頃、将校としてフランスとの戦いを指揮したり、ヴァージニア植民地の代表として活動する話が多く書かれている。
(りんごの木を切ってどうのという話は出てこない)

前半ではオハイオ地方をめぐってのイギリスと、フランス・インディアンの連合軍が戦ったフレンチ・アンド・インディアン戦争が描かれている。

イギリス本国から適性のない将軍が派遣されて戦略ミスを重ねたり、インディアンによるゲリラ戦に翻弄されたり、原生林が多くて行軍に支障をきたすこと、物資の不足などにより、しばしばフランスに敗れるシーンが出てくる。
その後、本国が北米に本腰を入れたこともあって勝利することになるが、ワシントンをはじめとする植民地の人々は本国の軍隊に対する複雑な感情を持つことにもなった。

そして後半では、戦後の戦費負担や税制、植民地政策などをめぐって本国政府と植民地で対立が深まり、度重なる交渉も不調に終わって戦争に至る過程が書かれている。

必ずしも本国は圧政を以て臨んだわけでもなく、負担軽減を狙った政策が植民地の人々から圧政と捉えられることが多かったことや、ワシントンたちもはじめのうちは独立を考えていなかったことも書かれている。
それでも多くの失策や行き違いが重なることで、本国の軍隊と植民地の民兵が衝突する事件が発生し、独立戦争のきっかけとなることが書かれている。

予備知識があまりない状態で読み始めたことと、名前が覚えにくいこともあって初めのうちはなかなか頭に入らなかったが、途中から話に身が入って興味深く読み進めることができた。

人物についてはワシントンとベンジャミン・フランクリンしか知らなかった状態から、アダムズやハンコック、ヘンリーといった人物の活躍が印象に残った。

かなり読み応えのある作品で、アメリカに対する関心が深まった。






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先生も知らない世界史 (日経プレミアシリーズ)
先生も知らない世界史 (日経プレミアシリーズ)
玉木 俊明
日本経済新聞出版社 2016-10-12

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西欧の歴史を主な専門とする歴史学者による、近年の欧米における歴史学のトレンドを紹介しつつ、学説の問題点や著者の考えも語っている作品。

これまで定説として語られていた話と異なる言説が多く、特にヨーロッパ世界の過大評価として中世のイタリアが実はそれほど豊かでなかったとか、イスラム教の帝国から地中海の交易を妨げられたという説が怪しいこと、北海やバルト海での交易の重要性など、初めて知る話が多い。

また、近代においてイギリスが覇権を握った要因には自国だけでなく、ポルトガルとオランダによる(意図しない形での)後押しが合ったという話も驚かされる。

著者は交易についての分野に詳しいようで、大航海時代も国家の影響力よりも商人たちがリードした部分が大きいことや、密輸が経済にもたらした変化が見過ごされがちなこと、銀、砂糖、綿といった資源や商品の流れについての話が面白い。

読んでいくと金融と通貨(近代だと銀が決済に使われた)、そして海運を握ったものが経済的に勝利していることが分かってくる。
この点で言えば、世界一の経済大国だった中国の王朝が自前の船をあまり出さなかったり、自国でほとんど産出しない銀を決済に用いていた状態から衰退していったのは必然であるかのように書かれていて、一理あると感じた。

そして現在の状態はというと、水野和夫著『資本主義の終焉と歴史の危機』のように、フロンティアがなくなって労働者の賃金を搾取するしかない状態にあると、少々楽しくない見立てをされている。

扱われている内容は非常に面白いが、もっと面白くて分かりやすい構成にできる余地が大きいようにも感じる。
特に、世界システム論のような歴史用語についての予備知識があまりなく、消化不良気味だった。

全体的には、日本であまり知られていない学説を紹介してくれているのが非常にありがたい。
翻訳されていない本も多いらしく、著者にはこうした本のさらなる翻訳や後進の人材育成も期待している。






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なぜ、地形と地理がわかると世界史がこんなに面白くなるのか (歴史新書)
なぜ、地形と地理がわかると世界史がこんなに面白くなるのか (歴史新書)
関 眞興
洋泉社 2016-01-08

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世界史上の事件について、地図を用いて地形や地理、気候などの事情を50項目に分けて解説している作品。

あまりマニアックなことは書かれておらず、中学や高校で習った(はずの)世界史の授業における、分かりやすいおさらいといった感じの内容となっている。

同じシリーズの『なぜ、地形と地理がわかると江戸時代がこんなに面白くなるのか』では江戸時代という枠の中で掘り下げている分だけ初めて知る話が出てくるが、本書だと範囲が広いのでどうしても一般的な内容になってしまうのだろう。

教科書や参考書ではページ数の都合で掲載できないと思われる部分について、地図で分かりやすく図解されて理解が深まるかもしれないところが特長なのだろうと思う。

読みやすいことは読みやすいので、1回くらい目を通すのも悪くない。






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ローマ人の物語〈28〉すべての道はローマに通ず〈下〉 (新潮文庫)
ローマ人の物語〈28〉すべての道はローマに通ず〈下〉 (新潮文庫)
塩野 七生
新潮社 2006-09-28

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塩野七生の『ローマ人の物語』シリーズのうち、ローマ帝国のインフラについて語っている作品の下巻。
本作ではハードのインフラとしては水道、ソフトのインフラとしては医療と教育について語られている。

街道のところと同じように必ずしもローマ周辺で水に困っていたわけではなかったようだが、比較的早い段階からローマ帝国では水道建設がなされていて、国の規模も存続期間も長かった割に疫病に悩まされたことが少なかった要因とされているのはなるほどと感じた。

水道は蛇口をひねる形ではなく流しっ放しにする方法を選んでいて、「ローマ帝国の滅亡の要因は鉛の水道管を使用していて鉛中毒になった人が多かったから」という説は信憑性が低いとばっさり切り捨てている。
また、メンテナンスが必要なくらい石灰分が溜まる現象も、結果として鉛の水道管をコーティングしてくれたのではないか?とも書かれている。

そして漫画『テルマエ・ロマエ』にも出てくる公衆浴場も書かれている。
実写版の映画『テルマエ・ロマエ』に軍隊の駐屯地に浴場を建設するシーンがあってフィクションだろうと思い込んでいたが、どうやら史実だったとしって少し驚いた。

医療と教育については、カエサルがギリシアなど他国からの人材獲得のために医者と教師に一代限りのローマ市民権を与えたことで数を増やした一方で、診察料や授業料については市場原理に任せたことが書かれていて、このあたりも現代とはかなり様相が異なっていることが分かる。
時代や環境によって適したシステムは異なるということなのだろう。

ローマの衰退時には水道は異民族の都市への侵入を恐れて一部を閉鎖したり、キリスト教の広まりによって疑うことが重要な学問が信じることを重視する宗教に圧されてしまい「暗黒の中世」と呼ばれる一因となったりと、その後の経過についても書かれている。

ところどころでカエサルやアウグストゥス、アグリッパ、ティベリウスといった人物のエピソードも書かれていて、興味深く読むことができた。
このシリーズを読むのはしばらくお休みしていたので、少しずつ再開していきたい。






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関連タグ : 塩野七生,

ローマ人の物語〈27〉すべての道はローマに通ず〈上〉 (新潮文庫)
ローマ人の物語〈27〉すべての道はローマに通ず〈上〉 (新潮文庫)
塩野 七生
新潮社 2006-09-28

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ローマ人の物語〈34〉迷走する帝国〈下〉 (新潮文庫 し 12-84)


塩野七生の『ローマ人の物語』シリーズのうち、ローマ帝国のインフラについて語っている作品の上巻。
以前読んだ竹村公太郎著『日本史の謎は「地形」で解ける【環境・民族篇】』で紹介されていたので読んでみた。

本書で扱われているインフラは街道と橋で、主要なものの紹介やプロジェクトの決定プロセス、建設費の財源、メンテナンスの費用や主体など幅広く書かれている。

元々は軍隊や軍需物資を前線に速やかに送り込むためのもののようだが、一般用としても使用されていて、極めて公的なものという認識がなされていたことも語られる。

また、同時期に栄えた秦・漢帝国では万里の長城が建設されていて、街道は横に敷く、長城は立て掛けるという違いはあるが、似た構造の建造物が正反対の目的で使用されたという話は興味深い。

決してそれまでの道が他の地域に比べて通りづらかったわけでもなかったようであり、ローマ人がこだわりを持って建設していったこと、公的なインフラとして税金で賄われて通行料なども徴収していないことなどは特徴的だと感じる。
(現在の高速道路と違ってどこから入ってどこから出ることもできるため、料金所を作る方が高くついてしまうという事情もある)

橋についても同様の思想で建設されていたようで、古代に長期間続いた国の底力とでも言えるのかもしれない。

現在は土に埋もれたり石材が風化して丸くなったりしているが、往年は定期的なメンテナンスがなされていて、現在の状態でイメージしてはいけないことも書かれている。
これは日本において、樹木の茂った古墳や古びた神社仏閣を見てそのままのイメージで過去を想像してはいけないのと同じようなものだろう。

題材がインフラなだけに話が少し地味だったりもするが、その点は著者が断りを入れている。
古代においても交通の重要性を認識して街道や橋を大事にしていた人々の話として、興味深く読むことができた。





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