読書-歴史小説(世界):雨読夜話

ここでは、「読書-歴史小説(世界)」 に関する記事を紹介しています。


中国任侠伝 (〔正〕) (文春文庫)
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陳 舜臣
文藝春秋 1975-08-25

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司馬遷の『史記』に登場する侠客たちの活躍を描いた、陳舜臣による歴史小説集。
先日読んだ『メンターが見つかれば人生は9割決まる!』の内容が、本書に収録されている「似てくる男」に通じているように感じたので、再読してみた。

「似てくる男」は朱家という魯の大親分のところに来た田仲という若者が、朱家を尊敬するあまりちょっとした癖に至るまで真似をし始め、朱家がほとほと弱ったという話を描いたもので、必死になって学ぼうとする人の熱意が感じられるものとなっている。
朱家についてはもう1作の「季布の一諾」でも漢帝国のお尋ね者となっていた季布をかくまう人物として登場していて、これは塚本青史の『史記游侠外伝 一諾』と同じ題材を元としている。

他にも始皇帝暗殺を企てる「荊軻、一片の心」、鶏鳴狗盗という言葉の元となった話である「孟嘗君の客」、漢の高祖劉邦が尊敬する魏の信陵君が登場する「虎符を盗んで」、郭解というならず者が調子に乗りまくる「おれは幸運児」など、中国の戦国時代から前漢の武帝の時代にかけての侠客たちの活躍が描かれていて面白い。





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劉邦(下)
劉邦(下)宮城谷 昌光
毎日新聞出版 2015-07-15

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宮城谷昌光による、前漢の高祖劉邦を描いた歴史小説の下巻。

関中に入って秦を下す話から項羽との有名な鴻門の会、漢中王に左遷されてからの関中への反攻、反項羽勢力を糾合しての彰城制圧と直後の大敗、河南の城をめぐって項羽に攻められまくる苦闘、そして広武山における項羽とのにらみ合いと、怒涛の時期を描いている。

項羽が絶大な軍事力を持ちつつも、それゆえに弱者や敗北への理解が不足していて部下が育たなかったのに対し、劉邦は敗北を重ねながら多くの人材を見出し、戦いを重ねることで良将が育っていく過程が印象に残る。

そして「国士無双」という言葉の元となった韓信や、奇謀の士である陳平と出会って役者が揃っていく。
司馬遼太郎の『項羽と劉邦』では韓信について繊細な面を描いていたが、本書では「人の下につくことができない男」という面が強調されていて、これもまた韓信なのだろうとも感じた。

項羽についても、タイトルが『劉邦』ということもあってか、軍事能力がありすぎて普通の人の痛みが分からない人物に描かれていて、司馬遼太郎の描く項羽とそれほど離れていないように思う。

一方で劉邦を地神の声を聞きながら行動してきた人物として描き、著者はしばしば筋の通らない行いをしたことに不快感を持っていたようだが、天下や庶民のことを考慮しての判断も多かったということで認識して書いたことをあとがきで述べているのも興味深かった。

劉邦軍の約束違反によって攻められることになった斉の田横を主人公とした『香乱記』では劉邦を悪役に描いているそうで、これも気になっている。




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劉邦(中)
劉邦(中)宮城谷 昌光
毎日新聞出版 2015-06-16

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宮城谷昌光による、前漢の高祖劉邦を描いた歴史小説の中巻。

上巻に引き続いて沛公となった劉邦が陳勝・呉広の反乱で混乱する情勢の中、まだ弱小勢力ながらも戦いの中で少しずつ強くなっていく。

陳王を名乗っていた陳勝が敗死したり、魏や斉、趙といった秦に滅ぼされた国々の再興を目指して立ち上がった諸勢力とのやり取り、味方と信じていた雍歯の裏切りにあって落ち込むなど、多くの出来事が発生する。
そして軍師として有名になる張良と出会い、多くの局面で方向性を示してもらうなど、力強い味方になっている。
張良以外にも多くの人物が劉邦陣営に加入し、初対面の人物を将軍や将校に任じるなど、劉邦による適正を見抜いた上での思い切った人事が目立つ。

徐々に各地の勢力が集約していく中、劉邦は江南から決起した項梁が率いる楚軍に加わり、ライバルとなる項羽と出会う。
寡黙で他の将と馴れ合わない項羽はなぜか劉邦には関心を示したようで、軍を並べて秦軍と戦うシーンが増えていく。
また、劉邦は陳勝の元部下だった呂臣という将軍と息の合ったところを見せている。

その後秦軍と戦いの中で大きな事態がいくつも発生し、一旦軍を立て直すなどして戦いを継続していくところで終わる。
司馬遼太郎の『項羽と劉邦』で言えば上巻で収めているところが中巻まで使っていて、他の宮城谷作品とも共通する、序盤の話に力を入れる傾向が出ている。

下巻では一気に話が進んでいくと思われるので、発売を楽しみにしている。




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劉邦(上)
劉邦(上)宮城谷 昌光
毎日新聞出版 2015-05-16

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宮城谷昌光による、前漢の高祖劉邦を描いた歴史小説の上巻。

話は劉邦が寧君と呼ばれる盗賊を捜索していた際、刺客2人に殺されかけるところから始まる。
その頃劉邦が就いていた役職は亭長といい、現在で言えば交番勤務の警察官レベルらしく、『こち亀』の両さん(両津勘吉)みたいなものだろうと思っている。

その後、始皇帝の陵墓建設のために沛県から派遣される人員のまとめ役として出かけることになったが、逃亡者が続出して厳罰を免れなくなったため、劉邦とその仲間たちも集団で逃亡することになる。

そこから陳勝・呉広の反乱に乗じて沛県を掌握して沛公となり、劉邦の一団が少しずつ軍隊らしくなっていくところで上巻が終わる。
ここではまだ後に軍師となる張良やライバルの項羽は登場していない。

後に前漢の功臣となる蕭何、曹参、夏候嬰、樊噲、盧綰、周勃といった面々が活躍し、それ以外で必ずしも有名でないと思われるが、後に将軍や官僚、領主などに出世する人物が何人も登場する。
偶然劉邦についていったのが大きな幸運につながっているのが興味深い。

どうしても司馬遼太郎の『項羽と劉邦』で描かれている劉邦のイメージを強く持ってしまっているが、本作ではまた異なる劉邦象になっているのが新鮮である。
人望があって人の資質を見抜いたり意見の良否を判断することに長けた人物という部分は同様だが、下品な振る舞いが少なくて達観した感じになっているのが面白い。

地図がついていて地理的なイメージを持ちやすくなっていて助かるが、登場人物が多いので主な登場人物一覧もつけてあればいいのにとも思った。

新たな劉邦の歴史小説ということでテンションが上がりながら読んでいったので、続編も早く読むつもりである。




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朱元璋 皇帝の貌
朱元璋 皇帝の貌小前 亮
講談社 2010-11-03

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明の太祖・洪武帝こと朱元璋が皇帝になるまでの活躍を描いた歴史小説。

舞台はモンゴル系の政権である元の末期で、失政が続いたことや洪水で黄河の流れが変わったこともあって飢饉が立て続けに発生し、白蓮教の教えを旗印とした紅巾軍などが各地で反乱を起こしていく。

そのような中、貧農出身の朱元璋は紅巾軍の一派である郭子興の勢力に属し、カリスマ性や有能な仲間たちの助けもあって頭角を現していく。

子供の頃から仲間だった徐達や湯和、花雲ら、宰相になりたいという野心から朱元璋に近づいた李善長、朱元璋に招かれた劉基や宋濂、豪傑の常遇春、甥の李文忠など、多くの魅力的なキャラクターが登場する。

元の政府軍の他、長江中流域を支配する陳友諒、蘇州一帯を根拠地とする張士誠といった各地の群雄との戦いが描かれていて、以前読んだ伴野明の『朱龍賦』と比べながら読んでいった。

朱元璋が皇帝になった後に家来の粛清を断行したことや、農業ばかりを重視して大商人を弾圧したことも知られているが、その伏線となるエピソードも各所で語られている。

wikipediaには中国はもとより全世界の帝王・王朝創始者の中でも最も悲惨な境遇から身を起こした人物と書かれており、光と影が強烈だった人物なのは確かなようなので、徐々に本性が明らかになっていく描写がなかなか良くて面白かったと思う。




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