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読書-歴史小説(世界):雨読夜話

ここでは、「読書-歴史小説(世界)」 に関する記事を紹介しています。



宮城谷 昌光 (著)
文藝春秋 (2020/1/4)


中国の春秋時代、晋で大臣として活躍して最終的には韓氏・魏氏とともに晋を簒奪することになった趙氏の人々を描いた連作形式の歴史小説。

  • 晋の文公(重耳)に従って繁栄の基礎を築いた趙衰(趙成子)
  • 執政として君主の廃嫡にも関与した趙盾(趙宣子)
  • 断絶の危機に瀕した時期の趙朔(趙荘子)
  • 忠臣たちに守られて育ち父・趙朔の仇を討った趙武(趙文子)
  • 士氏や中行氏といったライバルや他国の敵対勢力と戦った趙鞅(趙簡子)
  • 韓氏・魏氏とともに知氏を滅ぼした趙無恤(趙襄子)
といった当主たちに加え、公孫杵臼、程嬰、董安于、尹鐸、陽虎、張孟談といった家臣などの関係者たちの活躍も描かれている。

公孫杵臼や程嬰による趙氏断絶の危機に立ち向かった「月下の彦士」や、「老桃残記」で魯で下剋上に失敗して亡命してきて評判が悪い陽虎が趙鞅に仕えてからは忠臣として大活躍する話、趙鞅の時代に本拠とした晋陽の街に関するやり取りなどが印象に残る。

長く続いた一族にまつわる形式の連作小説はあまり読んだことがなく、もっとあってもいいと思う。
本書で扱われた趙一族は、それに耐えるだけ名君が出たということなのだろう。





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安能 務 (著)
講談社 (1992/01)


春秋戦国時代を真っ向から扱った歴史小説3冊のうちの下巻。

田氏による斉の簒奪、趙氏・魏氏・韓氏による晋の分裂などを経て本格的な戦国時代になり、始皇帝による統一までが扱われている。

孟子、荀子のような諸子百家と言われる思想家、張儀や蘇秦など口先で国を動かした遊説家、呉起や楽毅などの名将たち、商鞅のような改革者、多数の食客を登用し国政に影響を与えた戦国四君(孟嘗君・信陵君・平原君・春申君)や呂不韋など、歴史小説の主人公になった人物が多数登場し、人材や思想の面で華やかな時代だったことを再認識できる。

「まず隗より始めよ」、「刎頚之友」、「完璧」、「奇貨居くべし」、「鶏鳴狗盗」など、故事成語になっているエピソードも随所に出てくる。

儒教では孔子に次ぐナンバーツーの扱いをされる孟子については、論争で論理のすり替えのようなことをたびたびやってドン引きされるシーンが書かれ、「白馬非馬説」で詭弁の代表みたいな扱いをされる公孫竜とあまりやっていることは変わらないのに、儒教至上史観から持ち上げられすぎているという趣旨のことが書かれているのが面白い。

後半は秦の天下統一への過程が多く書かれているため、『キングダム』で活躍する人物も多く登場する。
他の歴史読み物であまり目にしたことがなかった、反乱を起こした王弟の成キョウ(長安君)や「山の女王」として描かれる(けどおそらく本当は男性と思われる)揚端和、盗賊団の首領上がりとして描かれた桓キなどの名前が出てくるのでテンションが上がる。

また、『キングダム』には(少なくとも今はまだ)登場していなくて、歴史読み物でもそれほど扱われていないように感じる、尉繚(うつりょう)という人物のことも印象に残った。
この人物は兵書『尉繚子』の著者の曽孫に当たるとしていて、始皇帝に「最高の兵法は兵法を用いないこと」と語り、他国の大臣を買収する戦略を提言し、成果を上げていることが書かれている。
そして始皇帝の恐ろしい部分を察知して逃げようとしたが、引き留められて才能を出させられた形になっている。

「始皇帝が悪く言われがちなのは中国人が本質的に統一や整った支配を好まないから」という趣旨のことを書いていたり、尉繚が提言した買収工作は現在の国際社会でもやっているお家芸だと感じたりと、なかなか読み応えのある作品だと感じた。
本書は20年近く前の作品ではあるが、再販しても売り方によってはそれなりに売れる可能性があるのではないかとも思う。





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安能 務 (著)
講談社 (1991/12)


春秋戦国時代を描いた歴史小説3冊のうちの第2巻。

斉の桓公が管仲を失った後の悲惨な末路から、晋の文公(重耳)や楚の荘王といった覇王となった君主、伍子胥の生涯から呉王夫差と越王勾践の戦い、春秋時代が長く続いたことによる権力の拡散などが描かれている。

宋の襄公という、覇王になれなかったけど「宋襄の仁」によって史書ではその扱いにされた人物、中原では脇役だが西域の覇王となった秦の穆公、晋の文公や宋の襄公との関係で登場回数が多い楚の成王なども登場し、複雑な時代であることが分かる。

夏姫、屈巫(子霊・巫臣)、趙衰、趙盾、華元、子産、伍子胥、晏嬰など、宮城谷昌光や塚本青史の歴史小説で読んだことがある人物が何人も登場し、テンションが上がる。

また、後半の方で登場する孔子のことは少しおちょくった感じで描いていて、これもまた面白い。

著者によるこの時代の地政学的な話や権力の話も語られていて、中原・西方(秦)・南方(楚・呉・越)という天下三分という構図や、君主が力を失って親族や有力家臣たちが権力を握る過程なども描かれていて、読みごたえがある。

もう1冊の第3巻も続けて再読する。






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安能 務 (著)
講談社 (1991/11)


春秋戦国時代のエピソードを扱った小説3冊のうちの第1巻。
中学生か高校生の頃に読んでいて、久しぶりに再読してみた。

最初の悪女比べの話はひどいが、その次からはまともな歴史小説になっている。
1/3くらいが鄭の荘公と宰相・祭足の主従が活躍する話、そして残りが春秋の覇者第1号である斉の桓公と覇業を支えた宰相の管仲の話が扱われている。

桓公と管仲の話は有名で本書でもそれを再認識できて良かったが、覇者でもなくそこまで有名でもないためか小説で扱われることも少なそうな荘公と祭足の話は、珍しい分だけ本書の特徴みたいになっている。

周の支配が弱まったとはいえ、それでも周王室と親戚である姫姓の国が多くてまだ権威を尊んでいてあまり思い切ったことができない中、祭足が主導して自国の国益を追求する姿勢が出ているところが興味深い。

また、各国でのお家騒動や後継者争い、他国を引き込んでの陰謀騒ぎなど、中国の歴史らしさがこの時代から出ていることが分かる。

読んだ内容を忘れかけていたが、読んでいなかった間に得た中国史など知識が活きたのか、再読する前よりもいい作品だと感じた。





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後漢の建国に貢献した、呉漢の生涯を描いた歴史小説の下巻。

更始帝から差し向けられた軍に勝利した劉秀は皇帝に即位し、大司馬となった呉漢は配下につけられた将軍たちとともに河北から南方、東方と転戦を続けていく。

敵としては各地を移動する賊軍の他、梁の劉永、斉の張歩、蜀の公孫述といった地方に割拠する勢力がいて、呉漢はいまいちな将軍の能力不足や裏切りなどのために敗戦することもあるが、劉秀のバックアップもあって確実に平定を成し遂げていく。

変換しづらい漢字が多いので名前は書かないが、呉漢の側近たちもそれぞれの持ち味を発揮して呉漢の軍を盛りたてているところも注目のポイントである。

劉秀はどうしても他の創業時の皇帝、例えば劉邦や李世民と比較すると歴史小説で扱われることが少なくて配下の将軍なども知名度が低いが、建国するにはそれなりの困難さがあるわけで、そのあたりがよく描かれていたのではないかと思う。






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