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読書-SF(海外):雨読夜話

ここでは、「読書-SF(海外)」 に関する記事を紹介しています。



ジェイムズ・P. ホーガン (著), 小隅 黎 (翻訳)
早川書房 (2005/2/1)


.ジェイムズ・P・ホーガンによる長編SFで、『星を継ぐもの』のシリーズとともに好きな作品の1つ。

話は第三次世界大戦前にアルファ・ケンタウリ系に人類の遺伝子を積んで送られた宇宙船が居住可能な惑星・ケイローンで人類を生み出し、大戦後に訪れた地球の人類と出会ってから発生する出来事を描いている。

著者は「人種や民族などによる差別をなくそうとしたら、初めからそれらの概念が存在しない社会を作るしかない」との発想からこの作品を書いたそうで、ケイローンの人類には人種や民族による差別はなく、また資源も豊富にあるためにこれらをめぐっての争いも発生しないという、現代社会のいくつかの重大な課題を解決した社会となっている。

そうした環境で人はどのようなモチベーションで生きるのかというと能力ということになり、人々は自身の関心や能力を複数伸ばすことができる環境にあるため、複数の職業を持っていることが多い。

主人公が所属するシロッコ小隊も隊長の寛容さもあって個性を尊重する雰囲気だったために主人公たちはケイローンの社会に最初は違和感を覚えつつ、徐々に適応していく。

一方で古い価値観に縛られた保守的な人々もいるわけで、このあたりのトラブルが話のポイントとなっている。

ストーリーそのものよりも舞台設定や、ケイローンで生まれたヒロインに近いポジションの女性が主人公と交わす会話などが印象に残り、読んでから結構時間を経過しても好きな作品となっている。



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ロバート A.ハインライン (著), 矢野 徹 (翻訳)
早川書房 (1978/2/1)


中学生だったか高校生だったかの頃に読み、妙に印象に残っているハインラインによるSF長編。

他の恒星系に人類が到達するには時間がかかりすぎて先に寿命が尽きる、それなら巨大な宇宙船を建造して多数の乗組員を搭乗させ、何世代もかけて行けばいい…という考えから地球を出た宇宙船だが、長い時間が経過するうちに船員の反乱が発生したり過去の記録が失われたりして、宇宙船内が世界の全てだと考えられるようになった設定が描かれている。

船員の中にはミュータント(突然変異種)として頭と人格が2つあるのに体は1つという人物も出現し、彼らは差別されて別の区画を占拠して他の船員と戦ったり、過去の船長や反乱を起こした冶金工が神話の世界の人物とされるなど、周囲の環境が変わると常識もいろいろと変わっていくものなのだろうと考えさせられた。

話しとしてはある青年がミュータントと出会って話すうちにこの世界のことに疑問を持ち…といった形で話が進んでいくが、話そのものよりも設定で読ませるタイプの作品なのだろうと、思い返すうちに感じるようになった。

アニメ『メガゾーン23』(観てないけどスパロボで少しだけ知っている)の元ネタになった作品らしいとも知り、スケールの大きさや世界観にインパクトがある作品は影響を与え続けるということなのだろう。

SF作品に一時期はミュータントが扱われることが多かったが、近頃あまり出てこないのは、遺伝子に関する研究が進んで突然変異よりも意図的に遺伝子操作したタイプの人類(『ガンダムSEED』のコーディネーターなど)の方が話を作りやすくなったためなのかもしれない。




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関連タグ : ハインライン,


ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア (著), 浅倉 久志 (翻訳)
早川書房 (1987/10/1)


同じ設定の宇宙を舞台とした、3作のSFから構成される中編集。
設定というのは宇宙のあちこちに人類が住んでいて異星人との交流もあり、宇宙旅行では人口睡眠が活用されており、通信速度に限界があるために連絡用の小型ロケットが活用されているなどである。

1作目は少女のコーティが親から与えられた宇宙船で探検に出かけ、人工睡眠から目覚めると頭の中に微細なサイズのエイリアンが入り込んでいることを知るというなかなか衝撃的なファーストコンタクトを果たす。
口は1つしかないために独り言での会話をしつつ、意気投合して冒険の旅を続けるが・・・という話で、軽そうな序盤から終盤にかけてハードになっていく。

2作目の「グッドナイト・スイートハーツ」は、宇宙のJAFみたいな稼業を営む主人公が助けた宇宙船にかつての恋人が、そして別の船にはその元恋人の〇〇〇〇がいて・・・という話で、悪人との戦いもある華やかな作品となっている。

3作目の「衝突」はジーロというしっぽがあって性別が3つある種族と人類のファーストコンタクトもので、さまざまな誤解や不思議な現象、人類の暗部がコンタクトに悪影響を及ぼすなど、3作の中では最も充実した話だと感じた。
通訳を通したたどたどしい会話は読みにくかったが・・・

SFとして有名な作品という印象から読んで、必ずしも好みの作風とは言えないが、人気がある作品ということは理解できた。



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マイク・シェパード (著), エナミ カツミ (イラスト), 中原 尚哉 (翻訳)
早川書房 (2009/12/10)


人類が銀河の広範囲で活動するようになった時代、名門の令嬢なのに海軍の少尉となった女性がさまざまなミッションを遂行するスペースオペラのシリーズ第1巻。

主人公のクリスは父親が有力な惑星の首相、祖父が財界の支配者、曾祖父が大戦争を勝利に導いた名将(しかも現役)ととんでもない名門に生まれたが、それゆえのしがらみや子供の頃に弟が誘拐・殺害された事件のトラウマなどもあってか、海軍に入隊して海兵隊の少尉となっている。

そのクリスが所属する戦艦はある惑星で子供が誘拐された事件の救出作戦を命じられ、誘拐犯のアジトへ向かうが偶然にしては不自然な事故、クリスの命を狙ったと思われる形跡があり、クリスは叔母のトゥルーらとともに調査している。

その後に別の惑星での任務でも不自然な事態は何度も発生し、クリスやロングナイフ家、そして地球とクリスが所属するリムル星系の関係など、大規模な陰謀や駆け引きの話にもなっていく。

曾祖父の代でも現役で活躍できるような長寿が実現されていたり、宇宙での支配地域を拡大していった結果として異星人の帝国と大戦争になって人類が滅びかけた過去、大きなスケールから現代でもありそうな陰謀の話になるなど、多彩な感じの話に仕上がっていて面白い。
人気シリーズになったことも理解できる作品だった。



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ティムール・ヴェルメシュ (著), 森内 薫 (翻訳)
河出書房新社 (2016/4/23)


ヒトラーが21世紀の現代になぜか復活するブラックユーモア小説『帰ってきたヒトラー』の下巻。

<狂気のユーチューブ・ヒトラー>の知名度は一気に上がるが、当然ながら賛否両論となり、特にタブロイド紙の「ビルト」紙(多分日本で言えば「文春」みたいなものか?)からあることないこと記事を書かれ、ヒトラーが事務所とともに戦うシーンで盛り上がりを見せている。

他にも極右政党の本部に突撃取材を敢行して党首にインタビューをしたり、ミュンヘンのオクトーバーフェストに招かれておかしな人にからまれるなど、さまざまな活動をしていたら・・・という話になっている。

現代の人が「ユダヤ人をネタにしない」というのは倫理的な理由から、ヒトラーがそれに同意するのは「ユダヤ人はネタにならない」からといったように、同じ言葉を話していてもヒトラーと他の人々が捉える意味が違っているのに妙に話のつじつまが合うところが、本作のポイントであるように思う。

いつの間にかヒトラーが冠番組を持つようになって社会問題を斬るご意見番のような存在になっていくなど、ヒトラーが受け入れられる社会的背景は現在でもあるのでは?という警告も込められているのが分かる。

ドイツではヒトラーやナチスについては条件反射的に「悪い!」だけで片付けられているようで、このあたりは先の戦争で「日本(だけ)が悪い!」だけで片付けていく日本の左派メディアと近いものがあるようにも感じた。

ヒトラーの側近や当時の状況などもヒトラーが語っていて、かなり細かく作りこまれた作品でもあり、ドイツだけでなく多くの国で評判になったことも納得できた。




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