読書-伝記:雨読夜話

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徳川家康大全
徳川家康大全小和田 哲男
ロングセラーズ 2016-06-28

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家康の事跡について、成功に至った経緯や研究で分かった新事実などを解説している作品。
「大全」とタイトルにつけているだけあって、よく知られた定説だけでなく意外な史実や異説も扱われていて、初めて知る話は非常に興味深い。

例えば、家康と松平一族との関係についてで、清康、広忠、家康に続く家系が松平家の直系とされているが、実は傍系の家系がどこかの時期に本家を乗っ取った可能性や、深溝松平家の家忠が日記である時期まで家康を呼び捨てで書いていたなど、家康の権力は当初相対的なものではなかったという話が面白い。

家康の代わりになりうる者はいくらでもいた可能性や、家康が源氏とされる徳川姓を名乗るようになったのは高位に就くためだけでなく他の松平一族から差別化するためだったという推測、三河一向一揆や関東への国替えなどを反抗的な一族の排除に利用した疑惑などを考えることができる。

他にも今川家での人質時代に優遇されていた説、妖刀とされる村正への弁護(伊勢で製作されたのなら三河で流通していたのは当然)、三男の秀忠が秀吉存命中から後継者と目されていたことなど話が扱われていて読みごたえがある。

江戸幕府が印象付けた神君でもなく、薩長が流布した腹黒い狸でもない家康を意図して書いた旨のことが書かれているのにも好感が持てる。
家康について最初に読むというよりも、興味を持ってから2冊目以降に読むのに向いているように思っている。






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中国知将「一日一話」―練りに練られた「知恵の宝庫」 (知的生きかた文庫)中国知将「一日一話」―練りに練られた「知恵の宝庫」 (知的生きかた文庫)

篠原 央憲
三笠書房 2005-09

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中国史上の23人における知恵や行動力などをピックアップし、『孫子』や『呉子』といった古典の言葉と関連付けて解説している作品。

管仲、無忌(信陵君)、呂不韋、張良、季布のように『史記』の列伝などで扱われている人物、曹操や諸葛孔明、司馬仲達のような『三国志』で有名な人物の話は既に知っていることが多く、あまり響くところはなかった。

ただ、(司馬遷の死後に活躍したために)『史記』で扱われていない霍光の業績や、横山光輝の漫画版『三国志』では孔明と張り合うシーンばかりが印象に残っていた周瑜の戦略などはあまり知らなかったので、興味深く読んだ。

そして西晋以後の時代における王導(東晋の宰相)、石勒(後趙国皇帝)、狄仁傑(てきじんけつ:則天武后の宰相)といった、日本での知名度が低いと思われる人物の話も面白かった。
特に、狄仁傑は多分本書で初めて知った人物だと思う。

ページ数の関係上、それぞれの人物の扱いはポイントを絞ったものとなっている。
面白い話はもっとあるはずなので、あくまで他の本を読む前の入口として読むのがいいと思う。






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春秋戦国時代 武将列伝
春秋戦国時代 武将列伝
Suniwa
双葉社 2014-08-20

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人気漫画『キングダム』に便乗して出されたと思われる、中国の春秋戦国時代の人物を紹介したコンビニ本。
メインは戦国時代の武将だが、タイトルから「春秋」を外すと日本の戦国時代と区別がつかないためか、申し訳程度に孔子や老子、墨子といった春秋時代の諸子百家も収録している。

既に事跡を知っている人物も多いが、
  • 斉の威王と宣王は、実は「威宣王」という1人の王の事跡が分かれて伝わったという説
    (日本で斎藤道三が1人ではなく、父子の2代だったという説の逆)
  • 桓齮(かんき)という秦の将軍が燕に亡命し、荊軻(けいか)による始皇帝暗殺未遂事件に登場する樊於期(はんおき)は同一人物という説
  • 『キングダム』にも軍師タイプとして登場する昌平君という楚の王族出身で秦の宰相に出世した人物が、楚の滅亡に際して楚王に擁立されて秦と戦った話
など、本書で初めて知る話もけっこうあり、興味深い。

『キングダム』に登場するが架空の人物だと思っていた麃公(ひょうこう)や龐煖(ほうけん)が史書に残る実在の人物だったらしいことにも少々驚くとともに、『キングダム』を甘く見てはいけないとも思った。

天下統一を果たした秦には記録が多く残っているだけあって商鞅、張儀、白起、王翦(おうせん)、蒙恬(もうてん)、李斯、李信と人材豊富なのは当然として、隣国で秦との戦争が多かった趙でも藺相如(りんしょうじょ)、廉頗(れんぱ)、趙奢(ちょうしゃ)、平原君、李牧とそこそこ人材がいるように見えるが、秦による離間工作や王との反目によって失脚したり非業の死を遂げる事例が多いなど、王が人材を使いこなせなかった印象が強い。

秦と国境を接していたという条件では趙と同じはずの楚や魏、韓で扱われている人数が少ないように見えるのは、楚では王族・貴族の既得権益が強くて抜擢が少なかったため、魏では戦国時代の初期だけしか有能な君主が出なくて秦で出世した范雎(はんしょ)のように人材が流出したため、韓では単純に国が弱小すぎて活躍のしようがなかったためではないかと考えている。

そして、秦から距離があって直接の合戦が少なかったと思われる燕と斉で扱われている人物が少ないようなのは、秦の記録に残らなかっただけと考えると辻褄は合う。

秦が勝者となったのは、3人に1人くらいは有能な君主が出たこと、外交や法制などの基本方針が継続できていたこと、趙や斉のようにここぞというところで壊滅的な負け方をしていないこと、外国人の登用に寛容だったことなども大きな要因なのだろう。

誤字、誤植、雑な記述があちこちに出てくるのは読んでいて非常に引っかかるが、まずまず楽しめたと思う。






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織田信長 四三三年目の真実 信長脳を歴史捜査せよ!
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明智 憲三郎
幻冬舎 2015-07-23

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明智光秀の子孫によるベストセラー『本能寺の変 431年目の真実』の続編で、信長の行動における考え方や謎解きなどを語っている作品。
本書でも史料から状況証拠を積み上げて考察する「歴史捜査」の手法が用いられている。

信長や本能寺の変については、勝者である秀吉による公式発表、それを元に書かれた講談本のフィクション、そして権威ある歴史学者がそれを受け入れてしまったことで、おかしな説が定説扱いされているとしている。

これに対して本書では信憑性の高い『信長公記』やルイス・フロイスなどの宣教師たちが書いた手紙や報告書、公家や戦国武将らの日記など、変なバイアスがかかっていない史料の記述から仮説を組み立て、各人の意図やどのように行動したのかを考察している。

まず、信長をはじめとする戦国大名たちは『孫子』や『韓非子』といった中国の兵学や政治学の書物をよく読んでいて、例えば信長が若い頃にうつけのふりをして保身を図っていたなど、どのような記述が使われていたのかを推定しているところが面白い。

桶狭間の合戦でも信長が孫子の兵法を利用していたと仮定して話を進め、敗れた今川義元は決して愚将ではなく単に信長の方が一枚上手だったということが分かる。
領国の統治や家臣の統制については、『韓非子』の教えが反映されたのではないかという話をしていて、結果からすると少しやり過ぎたのかもしれない。

他にも足利義昭や朝廷、イエズス会などとの交渉においては権威を利用するスタンスはともかく、一般的にイメージされるよりもソフトな感じの信長像が出てくるのもいい。
破天荒な信長を期待するファンは多いだろうが、実際はそんなものなのだろう。

そして後半で、信長が本能寺の変で滅びなかったらどのようなビジョンを持っていたのかという話や、本能寺の変に至る信長や光秀らの行動についての仮説を語っている。
この部分はネタバレさせるのはもったいないので具体的には書かないが、一般的な定説と大きく異なる上にそれなりに説得力を感じてしまうものとなっている。

前作に引き続いて刺激的な話がいくつも書かれていて、思っていた以上に早く読み終わった。






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関連タグ : 織田信長,

名将の法則―戦国十二武将の決断と人生 (新潮文庫)
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安部 龍太郎
新潮社 2011-09-28

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安部龍太郎による、戦国武将12人について語っている作品。
扱われているのは、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、武田信玄、上杉謙信、毛利元就、三好長慶、細川藤孝、藤堂高虎、伊達政宗、前田利家、島津義弘となっていて、北条氏や黒田官兵衛などを入れずに三好長慶や細川藤孝を入れているあたりが特徴的である。

背景としての戦国時代に、新兵器として普及した鉄砲の使用に不可欠な火薬の原料で、国内で産出しない硝石をどのように入手するかという貿易の話、生産が増えたことによる水運を利用した交易がもたらした影響、スペインやポルトガルによる宣教師を伴った進出によるグローバル化などにも触れていて、それぞれの戦国大名の話と密接に関連してくる。

戦ってきた13代将軍・足利義輝を追い詰めた際に体制のビジョンがないことによる三好長慶の苦悩、風見鶏的なイメージを持たれることがある細川藤孝が実はキングメーカーとして歴史を動かしていたのではないかという推察、狸おやじとされがちな家康の意外なほどの仏教的な情け深さなど、他の作家の小説などではあまり描かれることのない戦国武将の一面が書かれていて興味深い。

著者の小説は少しご無沙汰しているので、そのうちにまた読んでみようと思う。






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