読書-伝記:雨読夜話

ここでは、「読書-伝記」 に関する記事を紹介しています。


勝海舟の人生訓 (PHP文庫 ト 1-2)
勝海舟の人生訓 (PHP文庫 ト 1-2)
童門 冬二
PHP研究所 1989-08

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

関連商品
考えてみる
レクサス星が丘の奇跡
勝海舟 強い生き方 (中経の文庫)
左遷の哲学―「嵐の中でも時間はたつ」


勝海舟の事跡や残した言葉、著作などから、人生に役立ちそうなものを紹介・解説している作品。
勝は自慢話やホラに近い話もしばしばしていたらしいので、そのあたりは考慮して読んだ方がいいのかもしれない。

面白い話がいくつもあり、例えば歴史上の人物を論評しているところでは細川頼之(南北朝時代の室町幕府管領)、北条早雲、天海、松尾芭蕉などを評価している。
松尾芭蕉が近江商人を指導したとか、細川頼之が北朝の経済を発展させて南朝を圧倒したなど、広く知られているとは思えない話が紹介されているのが興味深い。

民衆を生活できるようにするのが支配者の役目で、経済を軽視する支配者は滅ぶという趣旨の話はその通りだと感じた。

低い御家人の身分から立身していったこともあり、「世間は生きている、理屈は死んでいる」と語っているようにかなり現実主義的で、イデオロギーにこだわる人物を好まないことも伝わってくる。
これは朝令暮改を気にしない横井小楠を高く評価し、水戸藩の儒者だった藤田東胡を嫌っていた話、江戸幕府滅亡後に明治政府に仕えた勝をひどく非難した福沢諭吉を「幕末は本郷に隠れていた弱い男」と評しているところなどに表れているのがいい。

柔軟ながらも筋を通し、覚悟を持って生きた勝のエピソードが分かりやすく書かれていて、興味深く読むことができた。






にほんブログ村 本ブログへ
スポンサーサイト

関連タグ : 童門冬二,

山岡鉄舟 幕末・維新の仕事人 (光文社新書)
山岡鉄舟 幕末・維新の仕事人 (光文社新書)
佐藤 寛
光文社 2002-07

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

関連商品
命もいらず名もいらず 上 幕末篇 (集英社文庫)
誰も教えてくれない 男の礼儀作法 (光文社新書)
命もいらず名もいらず 下 明治篇 (集英社文庫)
最後のサムライ山岡鐵舟
山岡鉄舟 (禅ライブラリー)
国際情勢判断・半世紀
大久保利通 (中公新書―維新前夜の群像 (190))
泥のカネ 裏金王・水谷功と権力者の饗宴


西郷隆盛や勝海舟に比べて知名度は低いが、江戸城無血開城の交渉の立役者と言ってもいい、山岡鉄舟(鉄太郎)の事跡を紹介している作品。

山岡は自身に関する記録を残すことを好まず、手柄も勝海舟など周囲の人に譲ったために、近代の人の割に分かっていないことが多いようである。

旗本の家に生まれたが両親の死で貧乏生活を強いられたり、物事を突き詰めて考える性格が合ったことから剣・書・禅の3つの分野で達人となったり、幕末の動乱時には清河八郎らと「虎尾の会」という尊皇攘夷の結社を結成したりするなどのエピソードが書かれている。

明治維新後は旧徳川家の所領となった静岡で行政官として牧の原台地の茶畑事業を推進したり、明治政府から命じられて茨城県や伊万里県(今の佐賀県)といったトラブルが続く地方の要職に就いて問題を解決したりと、八面六臂の活躍を見せている。
たびたび抵抗勢力から酒を飲ませて夜道で襲撃を受けるが、酒好きで強い山岡がことごとく返り討ちにしているのも面白い。

その後に西郷などの招聘によって宮内庁に入り、明治天皇の教育係として厳しく諌めることで成長に貢献したことが書かれている。

山岡は西郷から「命もいらず、名もいらず・・・」と評されるような人柄だったようで、普段は寡黙だがいざという時の発言や行動力は目を見張るものだったらしい。

その西郷は山岡に大きく影響を受けたようで、江戸城無血開城時の徳川慶喜への寛大な処置だけでなく、「征韓論」と呼ばれる李氏朝鮮へ使者として出かけようとした行動も山岡に感化されたためではないかと書かれている。

この1件は歪曲して伝えられているということだが、もし本当に西郷が朝鮮に行って交渉したとしても、現代でも話が通じないのにさらに事大主義に染まっていた朝鮮の王族や官僚が交渉を受け入れたかどうかは疑問ではある。

勝海舟や新撰組に関する本で少しだけ名前は知っていたが、思っていた以上にすごい人物ということが分かって少し驚いた。
折を見つけ、関連した本でも読んでみようかとも思っている。






にほんブログ村 本ブログへ

渋沢栄一 「明日の不安」を消すにはどうすればいいか? (知的生きかた文庫)渋沢栄一 「明日の不安」を消すにはどうすればいいか? (知的生きかた文庫)

大下 英治
三笠書房 2010-10-21

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


渋沢栄一の事跡をたどりながら、彼が事業を興したり運営する上で大切にしてきた『論語』の言葉とともに教訓となりうるエピソードを紹介している作品。

渋沢は武蔵の豪農の家に生まれ、尊皇攘夷の志士としての活動に挫折してから一橋家、徳川幕府、静岡藩、明治政府の大蔵省を経て、資本主義を興すべく多くの企業や団体を設立するなどの活動をしていることで知られている。

その中でも銀行、製紙、煉瓦、人口肥料、海運、紡績といった分野の企業を設立した際の苦難について多く扱われている。
明治政府の政策による逆風、スポンサーの倒産、技術の未熟さによる品質の低さ、資金繰りの行き詰まりなど、何度も経営破たんの危機に追い込まれながらも、これからの日本に必要な産業だからと断固として経営を続けた姿には感銘を受ける。

海運事業では三菱の岩崎弥太郎との確執があったり、水道事業に関する意見の相違から暴漢に襲撃されるなど、何度も大変な目にあっていることが分かり、明治の殺伐とした時代に事業を興すことがいかに困難だったかが伝わってくる。

1つのエピソードが数ページという構成で区切りよく読むことができ、分かりやすく書かれていてなかなか良かったと思う。






にほんブログ村 本ブログへ

関連タグ : 渋沢栄一, 孔子,

中国説客(ぜいかく)列伝 (徳間文庫)中国説客(ぜいかく)列伝 (徳間文庫)

守屋 洋
徳間書店 1986-09

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


中国の戦国時代に、弁舌の力で活躍した人物を紹介している作品。

主に扱われているのは張儀、蘇秦、范雎(はんしょ)、呂不韋、呉起、田単ら9名で、この時代を舞台とした漫画である『キングダム』でも登場人物や過去の人物として登場している。

彼らの出身国を見ると趙、魏、斉のように中央に近い国の出身者が多く、楚や秦のような辺境の国の出身者が少ないように見える。
これは楚や秦が大国で他国との交流が比較的少ないこと、武力に訴えがちな傾向があるなどの理由から、知略に長けた人物が育ちにくかったのかもしれない。

単純に正攻法で説得を試みると王から反発される可能性が高く、例え話や婉曲な言い回し、相手の心理状況を読み取った上での言動など、さまざまなテクニックを用いたことが伝わってくる。

この点で同時代人だった孟子は正直すぎて、同僚の説客からからかわれているシーンも書かれている。
また、呉起のように仕事熱心すぎて周囲から孤立した人物の悲劇も書かれていて、組織で活動する上での課題と捉えることもできる。

興味深かったのは蘇秦の話で、彼は『史記』は合従策の提唱者として六カ国の宰相を兼任したように書かれているが、『戦国策』などによると燕の密命を受けて斉で謀略活動をしていただけとあり、かなりスケールが小さくなってしまっている。
これは陳舜臣の『中国の歴史(二) 』にも書かれていたように、合従策を推進した人が何人もいて、その業績が蘇秦に集約されたという説が妥当なようである。

本書の元ネタはおそらく『史記』と『戦国策』がほとんどだと思われ、この2冊の関連書を読んでいたので目新しい部分が少なかったが、予備知識があまりない状態で読む分には分かりやすいのではないかと思う。





華僑の大富豪が教えてくれた「中国古典」勝者のずるい戦略: 欲しい「答え」はここにある (知的生きかた文庫)華僑の大富豪が教えてくれた「中国古典」勝者のずるい戦略: 欲しい「答え」はここにある (知的生きかた文庫)

大城 太
三笠書房 2017-01-23

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

にほんブログ村 本ブログへ

関連タグ : 守屋洋,

戦国史譚 徳川家康 (PHP文庫)戦国史譚 徳川家康 (PHP文庫)

戸部 新十郎
PHP研究所 1990-06

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


歴史作家の戸部新十郎が家康について、出身である松平氏の歴史から家康の前半生までをさまざまな史料とともに考察・解説している作品。

三河の山間部を根拠としていた松平氏が勢力を拡大しながら平地の岡崎に進出してきた経緯、祖父・清康の活躍と守山崩れによる挫折、父・広忠の時代に桜井松平の信定などの一族が離反して混乱状態が続いたことなど、家康が生まれる前の話にも多くのページが割かれていて興味深い。

家康が生まれてからも、織田と今川での人質時代、今川家一門に準じる客将としての活躍と家臣たちの盛りたて、信長と同盟を結んだ後の勢力拡大、三河一向一揆での苦難、武田信玄・勝頼父子との長い戦いと、多くのエピソードが描かれている。

家康と家臣たちが不運にめげずに運命を切り開いていったことはもちろん、著者は苦難を乗り越える先に幸運にも恵まれたことが多かったのではないかと書いていて、このくだりも面白い。
例えば三河一向一揆では家臣の半分と吉良氏などの旧勢力が一向一揆に属して家康と戦ったわけだが、この戦いに勝利したことで徳川家という組織を以前以上に統制できるようになったことなどが挙げられる。

かなり以前に書かれた作品ではあるが、家康についてそれほど扱われるわけでもない話が多く書かれていて、思っていた以上に早く読み進めることができた。






にほんブログ村 本ブログへ

関連タグ : 戸部新十郎, 徳川家康,