読書-伝記:雨読夜話

ここでは、「読書-伝記」 に関する記事を紹介しています。


春秋戦国時代 武将列伝
春秋戦国時代 武将列伝
Suniwa
双葉社 2014-08-20

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

関連商品
別冊歴史REAL春秋戦国500年の興亡 (洋泉社MOOK 別冊歴史REAL)
春秋戦国完全ビジュアルガイド 【The Quest For History】
史実で読み解く『キングダム』の世界 (SAN-EI MOOK)
キングダム 英雄立志伝 (DIA COLLECTION)
図説 地図とあらすじでわかる!「史記」
キングダム 公式ガイドブック 覇道列紀 (ヤングジャンプコミックス)
キングダム徹底考察 (COSMIC MOOK)
キングダム戦国覇伝 (英和ムック)
キングダム 公式ガイドブック 英傑列紀 (ヤングジャンプコミックス)
戦国名臣列伝 (文春文庫)


人気漫画『キングダム』に便乗して出されたと思われる、中国の春秋戦国時代の人物を紹介したコンビニ本。
メインは戦国時代の武将だが、タイトルから「春秋」を外すと日本の戦国時代と区別がつかないためか、申し訳程度に孔子や老子、墨子といった春秋時代の諸子百家も収録している。

既に事跡を知っている人物も多いが、
  • 斉の威王と宣王は、実は「威宣王」という1人の王の事跡が分かれて伝わったという説
    (日本で斎藤道三が1人ではなく、父子の2代だったという説の逆)
  • 桓齮(かんき)という秦の将軍が燕に亡命し、荊軻(けいか)による始皇帝暗殺未遂事件に登場する樊於期(はんおき)は同一人物という説
  • 『キングダム』にも軍師タイプとして登場する昌平君という楚の王族出身で秦の宰相に出世した人物が、楚の滅亡に際して楚王に擁立されて秦と戦った話
など、本書で初めて知る話もけっこうあり、興味深い。

『キングダム』に登場するが架空の人物だと思っていた麃公(ひょうこう)や龐煖(ほうけん)が史書に残る実在の人物だったらしいことにも少々驚くとともに、『キングダム』を甘く見てはいけないとも思った。

天下統一を果たした秦には記録が多く残っているだけあって商鞅、張儀、白起、王翦(おうせん)、蒙恬(もうてん)、李斯、李信と人材豊富なのは当然として、隣国で秦との戦争が多かった趙でも藺相如(りんしょうじょ)、廉頗(れんぱ)、趙奢(ちょうしゃ)、平原君、李牧とそこそこ人材がいるように見えるが、秦による離間工作や王との反目によって失脚したり非業の死を遂げる事例が多いなど、王が人材を使いこなせなかった印象が強い。

秦と国境を接していたという条件では趙と同じはずの楚や魏、韓で扱われている人数が少ないように見えるのは、楚では王族・貴族の既得権益が強くて抜擢が少なかったため、魏では戦国時代の初期だけしか有能な君主が出なくて秦で出世した范雎(はんしょ)のように人材が流出したため、韓では単純に国が弱小すぎて活躍のしようがなかったためではないかと考えている。

そして、秦から距離があって直接の合戦が少なかったと思われる燕と斉で扱われている人物が少ないようなのは、秦の記録に残らなかっただけと考えると辻褄は合う。

秦が勝者となったのは、3人に1人くらいは有能な君主が出たこと、外交や法制などの基本方針が継続できていたこと、趙や斉のようにここぞというところで壊滅的な負け方をしていないこと、外国人の登用に寛容だったことなども大きな要因なのだろう。

誤字、誤植、雑な記述があちこちに出てくるのは読んでいて非常に引っかかるが、まずまず楽しめたと思う。






にほんブログ村 本ブログへ
スポンサーサイト

織田信長 四三三年目の真実 信長脳を歴史捜査せよ!
織田信長 四三三年目の真実 信長脳を歴史捜査せよ!
明智 憲三郎
幻冬舎 2015-07-23

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

関連商品
【文庫】 本能寺の変 431年目の真実 (文芸社文庫)
「本能寺の変」は変だ! 明智光秀の子孫による歴史捜査授業
本能寺の変 四二七年目の真実
ここまでわかった! 明智光秀の謎 (新人物文庫)
明智光秀と本能寺の変 (PHP文庫)
現代語訳 信長公記 (新人物文庫)
ここまでわかった 本能寺の変と明智光秀 (歴史新書y)
家康研究の最前線 (歴史新書y)
本能寺の変 秀吉の陰謀 (祥伝社黄金文庫)
完訳フロイス日本史〈3〉安土城と本能寺の変―織田信長篇(3) (中公文庫)


明智光秀の子孫によるベストセラー『本能寺の変 431年目の真実』の続編で、信長の行動における考え方や謎解きなどを語っている作品。
本書でも史料から状況証拠を積み上げて考察する「歴史捜査」の手法が用いられている。

信長や本能寺の変については、勝者である秀吉による公式発表、それを元に書かれた講談本のフィクション、そして権威ある歴史学者がそれを受け入れてしまったことで、おかしな説が定説扱いされているとしている。

これに対して本書では信憑性の高い『信長公記』やルイス・フロイスなどの宣教師たちが書いた手紙や報告書、公家や戦国武将らの日記など、変なバイアスがかかっていない史料の記述から仮説を組み立て、各人の意図やどのように行動したのかを考察している。

まず、信長をはじめとする戦国大名たちは『孫子』や『韓非子』といった中国の兵学や政治学の書物をよく読んでいて、例えば信長が若い頃にうつけのふりをして保身を図っていたなど、どのような記述が使われていたのかを推定しているところが面白い。

桶狭間の合戦でも信長が孫子の兵法を利用していたと仮定して話を進め、敗れた今川義元は決して愚将ではなく単に信長の方が一枚上手だったということが分かる。
領国の統治や家臣の統制については、『韓非子』の教えが反映されたのではないかという話をしていて、結果からすると少しやり過ぎたのかもしれない。

他にも足利義昭や朝廷、イエズス会などとの交渉においては権威を利用するスタンスはともかく、一般的にイメージされるよりもソフトな感じの信長像が出てくるのもいい。
破天荒な信長を期待するファンは多いだろうが、実際はそんなものなのだろう。

そして後半で、信長が本能寺の変で滅びなかったらどのようなビジョンを持っていたのかという話や、本能寺の変に至る信長や光秀らの行動についての仮説を語っている。
この部分はネタバレさせるのはもったいないので具体的には書かないが、一般的な定説と大きく異なる上にそれなりに説得力を感じてしまうものとなっている。

前作に引き続いて刺激的な話がいくつも書かれていて、思っていた以上に早く読み終わった。






にほんブログ村 本ブログへ

関連タグ : 織田信長,

名将の法則―戦国十二武将の決断と人生 (新潮文庫)
名将の法則―戦国十二武将の決断と人生 (新潮文庫)
安部 龍太郎
新潮社 2011-09-28

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

関連商品
血の日本史 (新潮文庫)
生きて候(上) (集英社文庫)
葉隠物語 (日経文芸文庫)
下天を謀る〈下〉 (新潮文庫)
生きて候(下) (集英社文庫)
下天を謀る〈上〉 (新潮文庫)
風の如く 水の如く (集英社文庫)
レオン氏郷(うじさと) (PHP文芸文庫)
信長燃ゆ〈下〉 (新潮文庫)
信長燃ゆ〈上〉 (新潮文庫)


安部龍太郎による、戦国武将12人について語っている作品。
扱われているのは、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、武田信玄、上杉謙信、毛利元就、三好長慶、細川藤孝、藤堂高虎、伊達政宗、前田利家、島津義弘となっていて、北条氏や黒田官兵衛などを入れずに三好長慶や細川藤孝を入れているあたりが特徴的である。

背景としての戦国時代に、新兵器として普及した鉄砲の使用に不可欠な火薬の原料で、国内で産出しない硝石をどのように入手するかという貿易の話、生産が増えたことによる水運を利用した交易がもたらした影響、スペインやポルトガルによる宣教師を伴った進出によるグローバル化などにも触れていて、それぞれの戦国大名の話と密接に関連してくる。

戦ってきた13代将軍・足利義輝を追い詰めた際に体制のビジョンがないことによる三好長慶の苦悩、風見鶏的なイメージを持たれることがある細川藤孝が実はキングメーカーとして歴史を動かしていたのではないかという推察、狸おやじとされがちな家康の意外なほどの仏教的な情け深さなど、他の作家の小説などではあまり描かれることのない戦国武将の一面が書かれていて興味深い。

著者の小説は少しご無沙汰しているので、そのうちにまた読んでみようと思う。






にほんブログ村 本ブログへ

関連タグ : 安部龍太郎,

知れば知るほど面白い 戦国武将 (じっぴコンパクト新書)知れば知るほど面白い 戦国武将 (じっぴコンパクト新書)

二木 謙一
実業之日本社 2011-11-29

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


戦国時代の出来事を1件当たり1人の武将で代表する書き方により、それぞれ見開き2ページ~4ページの分量で解説している作品。
先日ブックオフで新書・文庫が4冊1000円というセールをやっていて、数合わせの4冊目として購入した。

企画の性質上、通説に近い記載となる傾向はあるが、最近の研究で判明した事実や、一般的な概説書ではあまり出てこないローカルな人物や合戦が扱われているところが興味深かった。

前者の例としては、浅井長政と朝倉義景は長年の同盟関係にあったとされていたが、実は長政が信長と決裂してから結ばれたらしいというものである。
長政や家臣たちが信長から恩賞をあまり貰えていないという不満が原因のようで、家康のように同盟が長続きした方が珍しいのかもしれない。

また、3代にわたって朝倉家を支え続けた朝倉宗滴の偉大さや、その死後に数々の判断ミスや優柔不断さ、幼な妻への熱中などで家を滅ぼした義景のだらしなさは印象に残る。
信長との合戦では自らは出陣せず、ここぞという場面で軍を撤退させたなどの失態が印象を悪くしている。

数代続いてきた家が滅んだ時の大名としては武田勝頼、北条氏政、今川氏真、大内義隆などがいるが、義景は勝頼や氏政より2~3ランク、氏真より1ランクほど下で、義隆と同レベルくらいの暗君だと思う。

後者のローカルな人物や合戦の例としては、長宗我部元親の土佐統一に至る一連の合戦や、島津軍との戦いにおける高橋紹運の壮烈な玉砕、前田慶次郎の最上軍との長谷堂城の合戦における奮戦などが目についた。

既に知っている話も多かったが、そこそこに楽しむことはできた。






にほんブログ村 本ブログへ

知れば知るほど面白い 黒田官兵衛 忍従と野望 (じっぴコンパクト新書)
知れば知るほど面白い 黒田官兵衛 忍従と野望 (じっぴコンパクト新書)
二木 謙一
実業之日本社 2013-09-05

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

関連商品
誰も書かなかった 黒田官兵衛の謎 (中経の文庫 わ 7-1)
黒田官兵衛その生涯 (アスカビジネス)
鬼謀の軍師 黒田官兵衛 (宝島社文庫)
黒田官兵衛のすべて
小説集 黒田官兵衛
黒田官兵衛: 智謀の戦国軍師 (平凡社新書)
黒田官兵衛 - 「天下を狙った軍師」の実像 (中公新書)
実伝 黒田官兵衛 (角川文庫)


黒田官兵衛(孝高・如水)について、生涯の出来事における8つのポイント、関係した15人の人物、15回の合戦、残した8つの名言、ゆかりの地といった構成によって解説している作品。

類書と比較して本書で特徴的なのは、まず毛利輝元が初めて大坂を訪れた際に接待役を務めた官兵衛のゆきとどいた心配りに関するエピソードの話で、小早川隆景や吉川広家といった毛利家の最高幹部たちが官兵衛と良好な関係を築いていた背景が何となく感じられて興味深い。

また、初期の青山・土器山合戦や英賀合戦のように、歴史小説などではあまり大きく触れないローカルな戦いが扱われているのもマニアックさがあっていい。

他には、関が原の合戦で官兵衛は東軍・西軍どちらが優勢になってもいいように手配していたという見方で書かれているのも、著者の見解が伝わってくる。

地図、官兵衛や秀吉のイラスト、人物関係図などを多用し、ビジュアル的に分かりやすく書かれており、興味深く読んだ。





[著者の他の作品]


にほんブログ村 本ブログへ

関連タグ : 黒田官兵衛,