井原 忠政 (著)
双葉社 (2020/4/15)
徳川家に仕える兵が出世すべく奮闘する時代小説・『三河雑兵心得 足軽仁義』のシリーズ第2巻。
遠江平定戦と、姉川の戦いが主に扱われている。
主人公の茂兵衛は本多忠勝の下で旗指足軽として辰蔵や丑松とともに仕えるようになっていて、忠勝の粗暴なキャラクターが随所に出てくるのがポイントのように思われる。
また、綾女や左馬之助のような新キャラクターも登場していて、話を盛り上げていこうとする感じが伝わってくる。
ただ、雑兵が主人公のため仕方ないのかもしれないが、家康と忠勝を除くと史実の人物があまり活躍していないのが物足りない。
あくまで私の好みによるもので、そのあたりを期待していなければそれなりに面白いのだろう。
- 著者の作品について書いた記事
- 『三河雑兵心得 足軽仁義』

井原 忠政 (著)
双葉社 (2020/2/11)
戦国時代、三河の農民の子が武士としてのし上がっていく時代小説の第1巻。
三河の植田村で生まれた茂兵衛は喧嘩から人を死なせて村にいれなくなってしまい、知人の伝手で家康の家臣である夏目吉信のもとで足軽として働くことになる。
その時期はまさに三河一向一揆が始まろうとする時期で、一向宗の熱心な信者だった吉信が一揆方についたため、茂兵衛も否応なく家康が派遣した深溝(ふこうず)松平家の伊忠(これただ)が率いる大軍に対して籠城戦をする話がメインとなっている。
ほぼ最下層の身分から武勇でのし上がろうとする話や、あまり頭が良くなさそうな主人公のキャラクターは、『キングダム』を連想させる。
槍の使い方や籠城戦のリアルな描写などがこの作品のポイントだと思われ、まあまあ面白かったので続編も読んでみようと思う。

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秋月 達郎 (著)
新潮社 (2015/12/23)
池波正太郎の小説『鬼平犯科帳』の主人公で火付盗賊改方頭として有名な長谷川平蔵宣以(のぶため)の父親で、火付盗賊改方頭から京都西町奉行になった長谷川平蔵宣雄(のぶお)を主人公とした時代小説で、3中編が収録されている。
着任の時にはお忍びで京都に入ってきたり、ふらりと茶店や商店に出かけるなど、実際は難しかったと思われる行動が出てくるのは時代小説ならではの形で、個性豊かな与力や同心たちを従えて任務に当たっている。
枡屋の隠居・茂右衛門こと、鮮やかな鶏の絵で有名な絵師・伊藤若冲が登場する作品もあり、平蔵と若冲が親しく会話しているシーンでは有名人同士でテンションが上がった。
また、京の商人で、石門進学で知られる石田梅岩の弟子に学んでいる者が出てくるなど、知っている歴史上の人物が出てくるのは楽しい。
テンポよく話が進み、ざっくばらんな話し方をする平蔵のキャラクターにも合っているので、気軽に読むことができた。

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茶坊主漫遊記 (集英社文庫) | |
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関ヶ原の戦いの34年後、老僧の長音上人と従者の腐乱坊、そして謎の芸人?彦七の3人が旅の先々で事件に遭遇するという5作の時代ミステリー連作。
この長音上人は、実は関ヶ原後に捕えられて三条河原で処刑されたはずの石田三成が落ちのびた姿であり、米沢を起点に近江、備前、天草、薩摩と西に向かって旅をしていく。
そして三代将軍・徳川家光がこのことを知って柳生十兵衛に暗殺を命じ、十兵衛は長音を各地で付け狙うも大抵取り逃がすという、お約束のパターンを繰り返す。
本書ではチェスタトンのミステリーである『ブラウン神父』シリーズやドラマ『水戸黄門』シリーズのフォーマットを使用していて、他にも随所でさまざまな小ネタを仕込んでいる。
若いころにあれほど潔癖ぶりが伝えられてきた三成が、いかに年月を経てもあれほど円熟した人格になるとも思えないなど、歴史考証が雑に感じるところもあるが、あまりこのあたりをツッコむのも野暮というものだろう。
エンターテイメントとして、気軽に読むことができた。
著者の作品は本書が初めてだったので、他も読んでみようと思う。
[著者の他の作品]

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勝小吉事件帖―喧嘩御家人 (祥伝社文庫) | |
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勝海舟の父であり、不良旗本とされながらも破天荒な生き方をした勝小吉が、座敷牢で推理をするというミステリー時代小説の連作。
小吉は自伝の中で、20代はじめの頃に悪行が過ぎて父親から3年間ほど座敷牢に入れられていたと書いており、その頃を舞台としている。
流れとしては、子分に当たる又四郎や岡っ引きの仙吉から話を聞き、生まれて間もない麟太郎(後の海舟)の仕草から推理をするという形を取っている。
不良浪人と警戒されるだけあって当然正義のためなどではなく、金儲けや座敷牢から出たいという考えからの推理だが、このあたり著者の『四十郎化け物始末』シリーズとかなり似ている。
また、推理は当たっても当初の目論見が果たされずにがっかりするところも比べることができて楽しい。
気軽に楽しめる1冊だった。
- 著者の作品について書いた記事
- 『妖かし斬り 四十郎化け物始末1』
- 『百鬼斬り 四十郎化け物始末2』
- 『幻魔斬り 四十郎化け物始末3』
- 『耳袋秘帖 赤鬼奉行根岸肥前』
- 『妖談うしろ猫―耳袋秘帖』
- 『水の城―いまだ落城せず』
- 『陳平 劉邦の命を六度救った「知謀の将」』
[本書の新装版]
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