今野 敏 (著)
実業之日本社 (2022/9/8)
気が弱いマル暴の刑事である甘糟が活躍する『マル暴甘糟』シリーズの第3作。
薬物関係のタレコミがあったために住宅街にあるジャズバーへの捜査に甘糟らが参加させられるところから始まり、そのバーで大人気の女性歌手の正体や、そのバーを乗っ取ろうと狙っているヤクザへの対応などが描かれていて面白い。
前作にも登場したソフト帽を目深にかぶったピンストライプのスーツという、麻生太郎みたいないでたちの人物も話に大きく関わっている。
また、このシリーズの本編に当たる阿岐本組シリーズの第5作である『任侠シネマ』から甘糟の上司として仙川係長が登場していたが、このシリーズでも仙川が出てきて、やはりというか甘糟の先輩に当たる郡原と相性が悪い描写や、メンツや手柄に異常にこだわるキャラクターをいじっていて、今後もかなり使われそうな感じがする。
以前よりも甘糟が郡原や本庁の刑事たちに意見をするシーンが出てくるなど、甘糟が成長しているように感じられる描写が見られるのも、シリーズものとしてうまいと思う。

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今野 敏 (著)
中央公論新社 (2022/6/21)
小さな暴力団・阿岐本組が他業種のトラブルに首を突っ込む任侠シリーズの第6作。
今回はET(イースト・トウキョウ)交響楽団という、コンサートを控えてトラブルを抱えている交響楽団から依頼を受け、日村は組長の阿岐本とともにコンサルティング会社という体で入っていくこととなる。
トラブルの内容は総指揮者がドイツの著名だが癖の強い指揮者に代わったことと、それに伴って若手とベテランの間で溝ができているという、まあ色々な組織でありがちなものとなっている。
さらに、そのドイツ人の指揮者が襲撃される事件が発生し、その指揮者が強硬に犯人を捕まえるように主張したために警視庁本庁から碓氷という刑事が送り込まれてくる。
主人公がヤクザなので身構えてしまうものの少し変わった刑事で、実は著者の別シリーズの主人公だった。
日村や阿岐本ら阿岐本組の面々や碓氷、ET交響楽団のメンバーなどのキャラクターがそれぞれ立っていて、本作も楽しく読むことができた。
楽団の女性マネージャの片岡は今後も出てくるかもしれないと思わせる描写があり、ちょっと気になる。
そして阿岐本組と付き合いが長く、マル暴刑事なのに気弱な甘糟と、彼の上司に当たる係長の仙川も登場するが今回は見せ場が少ないのが少し物足りないものの、「甘糟さんと仙川」という健一の呼び方にちょっとくすっとしてしまった。
甘糟に関しては近く発行されるスピンオフの『マル暴ディーヴァ』での活躍を期待したい。
クラシックやジャズのコンサートに行ったことがなくて伝わりにくい部分もあったが、行ってみたいという気にさせてもくれた。

池井戸 潤 (著)
文藝春秋 (2007/12/6)
改めて説明の必要がなさそうなドラマ『半沢直樹』の第1シーズンの原作となった小説。
都市銀行の西大阪支店の融資課長を務めていた半沢は、支店長の浅野がゴリ押ししてきた企業への融資をさせられたが、粉飾決算が発覚した上に倒産し、浅野は半沢に責任を押し付けようとあの手この手を使ってくる。
半沢が状況を打開するには債権を回収することしかないが、融資を受けた社長は雲隠れしていて差し押さえ可能な資産を探すのが難しい状態にある上、国税も脱税の疑いでその社長を追っていることが判明する。
そして、半沢は逃亡した社長が隠し資産を持っているとの情報を得て、部下たちとともに活躍していく。
ドラマはあまり観ていないが、及川光博が演じた半沢の同期・渡真利や上戸彩が演じた半沢の妻・花などが登場していて、ドラマとイメージが少し異なるところも面白い。
半沢の策略などによって悪党たちが徐々に追い詰められていくところの描写などは引き込ませるものがあり、人気作品になっただけのことはあると感じた。

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今野 敏 (著)
中央公論新社 (2020/5/19)
小さな組が他業種に手を出す阿岐本組シリーズの第5作。
今回も永神のオジキから話が持ち込まれるところから話が始まり、北千住の映画館が閉館を検討しているという件に首を突っ込むことになる。
その映画館についてはファンクラブがクラウドファンディングなどで存続を訴える運動がなされている一方、嫌がらせもなされていることが判明する。
また、この地域のマル暴担当刑事の甘糟(あまかす)の上司である係長が交代となり、阿岐本組に対する締め付けを強化している話も並行して描かれている。
映画がテーマに扱われているだけあり、阿岐本と日村が映画館で映画を鑑賞するシーンでは、高倉健主演の任侠もの映画が上映され、映画をあまり見ない日村も大いに影響を受けるシーンが印象に残る。
今作もまた阿岐本組の面々がそれぞれの魅力を出していて、特にテツと稔が重要なところで大活躍していて、楽しく読むことができた。
マル暴担当刑事なのにヘタレた言動が多い甘糟のキャラクターもまた、癒しになっている。
映画と言えば昨年、『任侠学園』が西島秀俊主演で実写版映画になったことを知るのが遅れて映画館で観ることができなかったので、DVDあるいはブルーレイで観てみようかと考えている。
- 阿岐本組シリーズについて書いた記事
- 『とせい』(『任侠書房』に改題)
- 『任侠学園』
- 『任侠病院』
- 『任侠浴場』

阿佐ヶ谷駅のガード下にある酒場を舞台として、発作的に妻を殺したと思い込んだり、ギャンブルで借金を重ねてヤクザに追われていたり、手ひどい失恋でやけになったなど、常連たちがある日切迫した事情があって飲みに来たところ、さまざまな誤解が誤解を生んで立てこもり事件になってしまうというスラップスティック小説。
面白いのは面白いが、それぞれのキャラクターが引き立っていないのか、場面の描写がいまいち感じが出ていないのか、やや中途半端な印象も受けた。
筒井康隆の『俗物図鑑』のようなインパクトもなく、浅田次郎の『プリズンホテル』シリーズや今野敏の阿岐本組シリーズのようにキャラクターが立っていたり笑いがそれほどあるわけでもなくと、傾向が近くて他にもっと面白い長編小説があることを知っていたらそこまで楽しめない・・・

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