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読書-小説:雨読夜話

ここでは、「読書-小説」 に関する記事を紹介しています。


任侠浴場 (単行本)
Posted with Amakuri
今野 敏
中央公論新社 2018/7/18


今野敏による、『とせい』(『任侠書房』に改題)『任侠学園』『任侠病院』に続く、阿岐本組シリーズの第4作。

主人公で代貸(ナンバーツー)を務める日村をはじめとする阿岐本組の面々は出版社、高校、病院に続き、阿岐本組長の道楽によって経営が傾いた銭湯の建て直しに手を出すことになる。

赤坂にあるその銭湯は一旦は廃業して土地を売却しようとしたが、経営者の佐田がヤクザと懇意にしていることも合ってか、赤坂署のマル暴・蛭田から執拗に妨害を受けるなど、序盤から妙な流れで話が進んでいく。

そんな中で阿岐本組長から「銭湯はどうあるべきか?」という提言から道後温泉に視察に出かけたりするなど、心配性の日村も気苦労が絶えないシーンが出てくるのがいかにもこのシリーズらしい。

また、レギュラーである阿岐本組のある綾瀬署のマル暴・甘糟も登場し、いつもの「お茶はいらないって言ってるだろう!」のセリフも楽しめる。

ベタな内容ではあるが、キャラが立っていることや話のテンポがいいので安心して楽しめる。
日村役を遠藤憲一でドラマ化したら面白いと思うが、阿岐本組長役を誰にするのがいいか?が難しい。






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関連タグ : 今野敏,

火花 (文春文庫)
火花 (文春文庫)又吉 直樹
文藝春秋 2017-02-10

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ピース・又吉直樹が芥川賞を受賞したことで知られる小説。
広く話題になった小説を読むのは久しぶりのような気がする。

主人公で語り手を務めているはコンビを組んでいる若手芸人の徳永で、あるイベントで少し先輩になる芸人の神谷と出会い、折に触れて飲みに行くなどの交友を深めていく。
神谷はお笑いに関しては天才肌で鋭い見方を示すことがある一方、芸人らしい性格というか破滅的な傾向や芸風のあくの強さもあるのか、面白いと評価はされるもののなかなかブレイクできないでいる。

徳永は神谷から「俺の伝記を書け」と意味のことを言われてコツコツ書き続けていたが、神谷の鋭さだけでなく弱さや誤解されがちな言動についても考えることが多くなっていく。

著者も売れない時代が長かったようで、自身の経験を徳永に投影しているのではないかと思ったりもするし、思われている以上に芸人の仕事は儲からなくて大変そうだというのも伝わってくる。

表では華やかな世界の裏側を描くというところでは、これまでに読んだ作家では原田宗典が近いように感じた。

芥川賞受賞作とか芸人が書いたということで注目されるという意味でハードルがかなり上がっているわけで、それを考慮すると評価が難しい。

実のところそれほど良かったとも思わなかったのだが、これは単に合う合わないの問題と、このところ私が小説をあまり読まなくなっていることと関係しているかと思う。




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動物農場 (角川文庫)
動物農場 (角川文庫)ジョージ・オーウェル (著), 高畠 文夫 (翻訳)
角川書店 1995-05

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ソ連をモデルにしたディストピアSFの『1984年』でも知られるジョージ・オーウェルによる、寓話風にソ連におけるソビエト革命がいかに腐敗して内部抗争を繰り返し、帝政だった頃よりもひどい圧制を敷くようになった有様を風刺している作品。

内容としては農場から人間を追い出して動物たちの農場とするつもりだったのが、スターリンをモデルとした豚のナポレオンが率いる一派が他の動物たちを弾圧するようになるというものである。

少し前に「戦争反対!」などと叫び声をあげて民主主義を連呼しつつも選挙による代議制をどう考えているのかよく分からない、SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)が、この作品に登場するヒツジたちを連想した。

このヒツジたちというのは、ナポレオン一派にとって都合の悪い話をする動物が出てくると、話の流れに関係なく特定のスローガンを連呼してその話を遮るという役回りを演じている。
しかも、そのスローガンが途中で変わったりする。

SEALDsは見た目が分かりやすいのでヒツジたちを連想しやすいが、「報じない自由」を濫用するマスコミ、捏造したニュースを元に国益に反するキャンペーンを張る政党などにも該当する部分が多い。

現代の日本ではインターネットの発達などによってマスコミの報道には怪しい部分が多々あることに気付いた人が増えたこともあり、以前ほどプロパガンダが機能しなくなっているところはまだましなのかもしれない。

日下公人が共産主義について「国家財産の合法的な略奪」という意味の表現をしていたのを著書の中で読み、共産国でろくに技術革新や文化が生まれないのもこのためなのかと納得した記憶がある。

日本だけではないのかもしれないが、傾向として左翼に近い感じの人々の主張からは、反対意見を認めないという感じがかなり伝わってくることや、情報を恣意的に改変するあたりが『日本共産党』を読んでいても伝わってくる。

本書に書かれている部分は当時は共産主義に対する風刺だったのだろうが、基本的には権力が腐敗する過程においては他の思想でも通じる部分が多いと思う。
70年経過している現在でも、歴史に学ぶ価値があることを思い起こさせる1冊だと思う。





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彗星物語 (文春文庫)
彗星物語 (文春文庫)
宮本 輝
文藝春秋 1998-07

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宮本輝による、冷戦が終わっていない時期のある一家にハンガリー人の留学生がホームステイをすることで話が展開する長編小説。

ハンガリー人のボラージュは父の晋太郎の意向もあって城田家で生活することになるが、晋太郎は事業に失敗、晋太郎の妹の恵は子供を連れての出戻りなど、13人もいてかなり騒がしい一家という設定となっている。
そして年をとったビーグル犬のフックもいて、物語のポイントにもなっている。

語り手というか主人公的な役割になっているのは晋太郎の妻の敦子と末っ子である恭太で、他にも祖父の福造など個性豊かな家族たちがボラージュが来たこともあってか多くの出来事を引き起こしていく。

まだヨーロッパでの東西冷戦が終わっていなかったり、インターネットや携帯電話がないあたりに時代を感じたりもするが、問題が発生して悩んだり乗り越えようとする部分は時代を越えているようにも思う。

多くの要素が詰め込まれていて、かなり印象に残っている1冊である。



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ゴミの定理 (講談社文庫)ゴミの定理 (講談社文庫)

清水 義範
講談社 2004-02

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清水義範による、12編の短編集。
著作を表現する際に多く使われる、パロディなどを意味するパスティーシュ小説が収録されている。

数学者がゴミが増える現象について考察している表題作、田舎のこれといって特徴のない村の観光ガイドの体裁を取った「鄙根村の歩き方」、文豪が自身が死んだ際の報道や扱いを異常に気にして周囲を振り回す「ニュース・ヴァリュー」、東京から帰郷した若者が村おこしのためにディナーショーを企画する「鮫島村のデナーショー」など、じわじわくる作品が多い。

作風による弱点というか「ケータイ星人」のように、スマホが普及して少々内容が古びたものがあったりもする。

「夢の話」や「泥江龍彦のイラン旅行」、「ガイドの話」などは、自身の経験を大きく反映しているようで、小説の体裁を取ったエッセイ、あるいはエッセイに近い私小説とでも取れそうである。

著者の作品の中では、そこそこという評価となる。




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