読書-小説:雨読夜話

ここでは、「読書-小説」 に関する記事を紹介しています。


動物農場 (角川文庫)
動物農場 (角川文庫)ジョージ・オーウェル (著), 高畠 文夫 (翻訳)
角川書店 1995-05

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ソ連をモデルにしたディストピアSFの『1984年』でも知られるジョージ・オーウェルによる、寓話風にソ連におけるソビエト革命がいかに腐敗して内部抗争を繰り返し、帝政だった頃よりもひどい圧制を敷くようになった有様を風刺している作品。

内容としては農場から人間を追い出して動物たちの農場とするつもりだったのが、スターリンをモデルとした豚のナポレオンが率いる一派が他の動物たちを弾圧するようになるというものである。

少し前に「戦争反対!」などと叫び声をあげて民主主義を連呼しつつも選挙による代議制をどう考えているのかよく分からない、SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)が、この作品に登場するヒツジたちを連想した。

このヒツジたちというのは、ナポレオン一派にとって都合の悪い話をする動物が出てくると、話の流れに関係なく特定のスローガンを連呼してその話を遮るという役回りを演じている。
しかも、そのスローガンが途中で変わったりする。

SEALDsは見た目が分かりやすいのでヒツジたちを連想しやすいが、「報じない自由」を濫用するマスコミ、捏造したニュースを元に国益に反するキャンペーンを張る政党などにも該当する部分が多い。

現代の日本ではインターネットの発達などによってマスコミの報道には怪しい部分が多々あることに気付いた人が増えたこともあり、以前ほどプロパガンダが機能しなくなっているところはまだましなのかもしれない。

日下公人が共産主義について「国家財産の合法的な略奪」という意味の表現をしていたのを著書の中で読み、共産国でろくに技術革新や文化が生まれないのもこのためなのかと納得した記憶がある。

日本だけではないのかもしれないが、傾向として左翼に近い感じの人々の主張からは、反対意見を認めないという感じがかなり伝わってくることや、情報を恣意的に改変するあたりが『日本共産党』を読んでいても伝わってくる。

本書に書かれている部分は当時は共産主義に対する風刺だったのだろうが、基本的には権力が腐敗する過程においては他の思想でも通じる部分が多いと思う。
70年経過している現在でも、歴史に学ぶ価値があることを思い起こさせる1冊だと思う。





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彗星物語 (文春文庫)
彗星物語 (文春文庫)
宮本 輝
文藝春秋 1998-07

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宮本輝による、冷戦が終わっていない時期のある一家にハンガリー人の留学生がホームステイをすることで話が展開する長編小説。

ハンガリー人のボラージュは父の晋太郎の意向もあって城田家で生活することになるが、晋太郎は事業に失敗、晋太郎の妹の恵は子供を連れての出戻りなど、13人もいてかなり騒がしい一家という設定となっている。
そして年をとったビーグル犬のフックもいて、物語のポイントにもなっている。

語り手というか主人公的な役割になっているのは晋太郎の妻の敦子と末っ子である恭太で、他にも祖父の福造など個性豊かな家族たちがボラージュが来たこともあってか多くの出来事を引き起こしていく。

まだヨーロッパでの東西冷戦が終わっていなかったり、インターネットや携帯電話がないあたりに時代を感じたりもするが、問題が発生して悩んだり乗り越えようとする部分は時代を越えているようにも思う。

多くの要素が詰め込まれていて、かなり印象に残っている1冊である。



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ゴミの定理 (講談社文庫)ゴミの定理 (講談社文庫)

清水 義範
講談社 2004-02

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清水義範による、12編の短編集。
著作を表現する際に多く使われる、パロディなどを意味するパスティーシュ小説が収録されている。

数学者がゴミが増える現象について考察している表題作、田舎のこれといって特徴のない村の観光ガイドの体裁を取った「鄙根村の歩き方」、文豪が自身が死んだ際の報道や扱いを異常に気にして周囲を振り回す「ニュース・ヴァリュー」、東京から帰郷した若者が村おこしのためにディナーショーを企画する「鮫島村のデナーショー」など、じわじわくる作品が多い。

作風による弱点というか「ケータイ星人」のように、スマホが普及して少々内容が古びたものがあったりもする。

「夢の話」や「泥江龍彦のイラン旅行」、「ガイドの話」などは、自身の経験を大きく反映しているようで、小説の体裁を取ったエッセイ、あるいはエッセイに近い私小説とでも取れそうである。

著者の作品の中では、そこそこという評価となる。




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関連タグ : 清水義範,

内閣官房長官・小山内和博 電光石火 (文春文庫)
内閣官房長官・小山内和博 電光石火 (文春文庫)
濱 嘉之
文藝春秋 2015-01-05

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『警視庁公安部・青山望』シリーズなど警察小説の著作が多い濱嘉之による、内閣官房長官を主人公とした小説。

主人公のの小山内和博(おさないかずひろ)は安藤政権を支える内閣官房長官で、近年少なくなった党人派で「政界の寝業師」などの評価を受けている。
そして警察庁から出向している官房長官付秘書官の大田は、情報の収集や分析を行って報告を行うなどの業務を通じ、小山内のすごさを日々感じる描写がなされている。
また、青山望警視も登場しており、今後のシリーズ間のつながりを予感させる。

沖縄での米軍基地移転問題、公務員人事、経済政策、地方創生、テロの阻止、スキャンダル対策など、実際に起きた日本の問題についての問題に取り組むところが書かれていて読みごたえがある。

「この作品は完全なるフィクションであり、・・・」と書かれてはいるものの、ここ数十年の日本政治に登場した大臣や政治家、団体などを明らかにモデルにしたということがすぐに分かるようになっていて、そのリアルさが面白い。

大田の口から日本に対しての危機意識を語るシーンが随所で書かれていて、これは著者が大田に仮託して主張しているように感じた。

さすがに青山望シリーズに比較すると小説としてはちょっと負けるような気がするが、十分に楽しむことができたと思う。
実際の政治とリンクしているようなので、そのうちに続編が出ることも期待したい。




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関連タグ : 濱嘉之, ,

スメル男 (講談社文庫)
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原田 宗典
講談社 1992-06-04

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原田宗典による長編小説。
高校の頃くらいに読み、かなり印象に残っていたので思い出しながら書く。

主人公はある時期から嗅覚がなくなり、それもあって彼女から振られたりしていたが、その後自分では分からないものの、匂いを嗅いだ人は嘔吐してしまうくらいの悪臭が体から出るという異変が起こる。
その悪臭はどんどんひどくなり、マスコミに追いかけられたり人間不信に陥るような出来事も多数発生する。

そのあたりから謎の組織に付け狙われていることが判明し、協力者となる天才少年たちとともに敵に立ち向かうはめになるなど、かなりのスケールとテンポで物語が展開していく。

友情や愛情、裏切り、謀略、マスコミの怖さなど多くの要素が詰め込まれていて、井上ひさしの『吉里吉里人』や宮本昌孝の『ふたり道三』に近い感じの読みごたえがあった。

原田宗典の小説の中では、『平成トム・ソーヤー』とともに好きな作品である。




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