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読書-対談:雨読夜話

ここでは、「読書-対談」 に関する記事を紹介しています。



戦乱と民衆 (講談社現代新書)
Posted with Amakuri
磯田 道史, 倉本 一宏, フレデリック・クレインス, 呉座 勇一
講談社


国際日本文化研究センターの歴史学者たちによるシンポジウムと、その後の座談会を収録している作品。

3部構成になっていて、1部は古代、中世、近世、近代それぞれの時代の戦乱から民衆のことを語っている。
  • 白村江の戦いでは豪族に船で連れてこられた農民が訳も分からずに戦わされたのではないかという推察
  • 応仁の乱では土一揆と足軽が同じ階層の人々によって担われていたこと
  • オランダ人やポルトガル人が見た大阪の陣では住人が疎開した町に豊臣方の浪人やその家族が入り込んだ話
  • 禁門の変では会津兵が長州兵のゲリラ戦を恐れて火をつけまくったことで京都の人々の恨みを買ったり、火災からの復興が遅れたことで明治政府の首都から脱落した説
などが扱われていて、あまり他の本で読んだことがない話が多い。

2部はシンポジウムでの討論、3部は日を改めての対談で、3部では『京都ぎらい』などの著書で知られる井上章一氏なども参加している。

戦乱と民衆というテーマだと家を焼かれたりして逃げ惑うイメージが出てきがちだが、宗教がらみの戦乱などでむしろ民衆の側が戦乱を起こす場合や、戦乱の中でも一儲けしようと活動するしたたかな民衆など、多面的な議論がなされている。
また、京都の町並みを破壊したのは米軍ではなくて町屋を壊してビルを建てた京都の民衆だったとか、京都も戦乱で大変だった話でも「伏見は京都やない!」という人がいるなど、井上氏による『京都ぎらい』ネタには他の学者たちもツッコミをいれるなど、楽しい雰囲気で話がなされている。

他にも古代史を専門とする倉本氏が、古代史は史料が限られているが誰でもある程度のところまでは似た結論になりやすいことや、後世になるほど資料が増えて研究が大変になることなど、時代によって研究の方法が異なってくるとの指摘も興味深かった。

読む前はテーマが少し地味だと感じていたが、気鋭の学者たちが担当していることや同じ所属ということで旧知の仲ということもあるのか、思っていた以上に楽しめる内容だった。






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明治維新で変わらなかった日本の核心 (PHP新書)
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猪瀬 直樹 磯田 道史
PHP研究所 2017-11-16

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元東京都知事の猪瀬直樹と、歴史学者の磯田道史による対談本。
長い歴史の中で続いてきた日本の社会システムや考え方などについて論じている。

官司請負制(国の業務を特定の氏族に委託するシステム、例えば軍事を源氏や平氏に委託するなど)や宗教卓越国家から経済卓越国家への転換、1500~1700年を「偉大なる200年」とするなど、初めて知るモデルや概念がいくつも出てきて刺激的な内容となっている。

朝廷でやっていた官(例:従三位)と職(例:三河守)のような「官職二元制原理」が現代の企業でも職位(例:課長)と資格(主事)のように続いているという話も面白い。
2人はやや批判的に見ているように思えたが、両名とも民間企業に勤めた経験がほとんどないと思われるので、どの程度的を得ている意見なのかは分からない。

「偉大な200年」の時期に中国の影響から自立したり、宗教勢力を抑えることに成功するなど、思っていた以上に着実に社会が変化していったことにも少し驚く。

江戸時代では実質的に土地を所有していて中小企業経営者に近い存在となっていた農民と、領主としての性格を失って官僚やサラリーマンに似てきた武士というコントラストで語られていて、マルクス主義史観がいかに上っ面をなぞったものだったかが分かってくる。
身分間の格差よりも身分内での格差(例えば農民では大地主と小作人)の方が大きかったという話は示唆に富む。

江戸時代は世襲による安定と抜擢による実力主義の組み合わせが絶妙だったことや、情報が意外と早く伝わっていたことなど、歴史から学べることは実に多い。

いいところも悪いところも含めた日本らしさの感じが語られていて、興味深く読むことができた。






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戦国武将の精神分析 (宝島社新書)
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中野 信子 本郷 和人
宝島社 2018-04-09

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気鋭の歴史学者と脳科学者が、史料などで伝わっている戦国武将たちの言動を、精神分析の手法であれこれ語っている対談本。

章立てで扱われているのは以下の15人で、彼らと関わりの深かった人物や、通じる部分がある人物などにも話が及んでいる。

斎藤義龍/伊達政宗/徳川家康/淀殿/武田信玄/織田信長/松永久秀/豊臣秀次/細川忠興/島津忠恒/大友宗麟/上杉謙信/豊臣秀吉/毛利元就/石田三成

サイコパス、ソシオパス、パラノイアといった類型やセロトニン、オキシトシンといった脳内で分泌される物質のような専門用語を用いて武将たちの「そうかもしれない」という心の闇を考察している。

伝わっている逸話が本当かどうかも分からないわけで、あくまで「このように考えることができる」という話として話半分くらいに楽しむのがいいのかもしれない。

本郷氏が戦国武将たちを他の歴史学者があまり使わないような独特であけすけな表現をしているところも、他の著作同様で楽しむことができる。
例えば、このような部分である。
  • 伊達政宗はプレゼンやイメージ戦略はうまかったが、肝心の合戦で快勝したことがほとんどない
  • 人質時代に尾張や駿府のような都会で育った家康は(『北斗の拳』のモヒカンみたいな)「ヒャッハー」な三河武士団のノリについていけなかった疑惑
  • 島津家はスーパーサイヤ人的な家で日本っぽくないが、バカ殿は出ない
  • 島津忠恒、伊達政宗、細川忠興、森長可の4人は戦国DQN四天王
ただ、最近の安倍政権をあてこすったところは古びやすいので余計に感じる。

脳科学の用語や概念が消化できないところもあったが、戦国武将を脳科学によるお遊びで扱っている作品と捉えればなかなか面白い作品だと思う。






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爆笑問題のニッポンの教養 生物が生物である理由 分子生物学 (爆笑問題のニッポンの教養 11)
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太田 光 田中 裕二 福岡 伸一
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NHKで放送されていた爆笑問題の教養バラエティ番組を新書化したシリーズの1作で、青山学院大学の相模原キャンパスに分子生物学が専門でベストセラーとなった『生物と無生物のあいだ』の著者でもある福岡伸一教授を訪ねた回を扱っている。

生物と無生物の違いや遺伝子といった話からシェーンハイマーが行った実験の話になり、一気に本題に入った感じとなる。
この実験はマウスのえさを分子レベルでトレースできるようにしておいて食べたものがどのように移動するのか?というものだったが、えさの分子はマウスの体中に速いスピードで広がっていくという結果となった。
これは食べ物の分子がマウスの身体を構成する分子と入れ替わったわけで、シェーンハイマーはこれを「動的平衡」と名づけている。

この話から生物は分子レベルでは常にダイナミックに入れ替えをやっているわけで、ある瞬間の自分は他のいつの自分とも異なるという形で話が進む。
太田と田中の間でも大学で知り合った頃の2人は既に死んでしまっていると表現したり、「千の風になって」の歌が分子生物学と相性がいいといった話題になったりもしていて考えさせられる。

そして太田がしばしば学者たちにぶつける哲学的な問いかけを福岡氏にもしている。
福岡氏は科学者としては文章や文体にこだわりのある人のようで、真摯に応え、科学とは一つの文体と表現しているなど興味深い話をしている。

分子が動き回っているという現象は少し常識を揺らがせる感じがあり、興味深く読むことができた。






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(032)勝ち上がりの条件 (ポプラ新書)
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半藤 一利 磯田 道史
ポプラ社 2014-05-07

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最近メディアでの露出が多い気鋭の歴史学者と、元文芸春秋の作家による歴史対談。
軍師・参謀の役割の変化や人物評などを、戦国時代あたりから大戦期に至る時代を対象として語られている。

参謀として重要なことは希望的観測ではなく冷静に事実を判断することや、最悪の事態を想定して対策を立てておくこと、極限の状態でも判断力を失わないことなど、確かにそうだと思える話がなされている。
そして参謀にありすぎてはいけないものがカリスマ性や野心で、これがあったために漢王朝の成立に貢献した韓信が粛清されたエピソードも語られている。

人物では黒田官兵衛、本多正信、松平信綱、勝海舟、大村益次郎らを高く評価している。
そして『天地人』や直江状で有名な直江兼続は前田家の処世術と比較すると大局観に欠けると評したり、家康が直江を処罰しなかったのは直江と近い立場にある毛利、島津、佐竹などの家老たちが反乱を考えないようにするためだったという文書が出たという話、高杉晋作が長生きしていたら明治政府に対して反乱を起こしていただろうという読みなど、面白い話がいくつも紹介されている。

近代のところでは半藤氏が長州嫌いという話からしなくてもいい安倍首相の悪口を言ったりして、このあたりが半藤氏の『名言で楽しむ日本史』を読んでから後は著作を読んでいない理由なのだろうと感じた。

半藤氏の説教じみた感じは相変わらずだが磯田氏の話はなかなか面白かったので、磯田氏の著作をもう少し読んでみようと思っている。






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