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読書-対談:雨読夜話

ここでは、「読書-対談」 に関する記事を紹介しています。



井上 章一 (著), 佐藤 賢一 (著)
祥伝社 (2019/11/1)


中国史でも西洋史でもない、世界史のミカタ(見方)をテーマとした対談。
『京都ぎらい』の著者で建築史が専門の井上氏と、西欧を舞台とした歴史小説を多く著している作家の佐藤氏が、『日本史のミカタ』の世界史版を意図して対談している。

まず、大航海時代で交易の主力が陸だった時代における遊牧民の役割の大きさについて語っていて、他にもキリスト教が広まった理由に教会という役所の代わりとなる機能や官僚となる人材供給源としての有用さがあったかもしれないという話、ローマ教会がゲルマン人に戦争をやめさせていたためにエネルギーが溜まって十字軍につながった説など、あまり聞いたことがない話が出てきて新鮮に感じる。

ユーラシアの東では中国で漢族の王朝は漢、宋、明の3つだけで他は遊牧民の征服王朝とし、前者が内向きで後者が外に出る傾向にあること、現在の中国共産党の政権はこれまでのパターンに当てはまらないかもしれないなど、こちらの話も興味深い。
(宋の王室である趙氏がトルコ系という説もあり、それだと漢と明だけが漢族の王朝ということになる)

近代以降の話も扱われていて、民主主義の看板を掲げる欧米でもけっこう世襲に近い人事が行われていて日本とそれほど違いがあるわけでもないことや、ナチスが実施していた大衆扇動の手法を他の先進国も実施している事例、共産主義国の方が独裁者が出やすかった傾向など、比較的あけすけな語り方をしていて面白い。

『日本史のミカタ』とは異なって学者がいない分だけ学問の話に入っていないところに少し物足りなさも感じたが、幅の広さの方が求められた対談だったと考えると、この組み合わせが良かったのだろう。
井上氏がしばしばプロレスおたくである部分を垣間見せるところも見どころである。






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橋爪 大三郎 × 大澤 真幸
講談社 (2011/5/18)


宗教も専門とする社会学者2人による、日本人が理解しづらいと思われる一神教としてのキリスト教、そしてその元となったユダヤ教について、クリスチャンだったら怖くて言えないような質問も交えて語り合っている対談本。

まず、一神教としてのキリスト教を世界で最も理解していない人々として日本人がいることを挙げていて、少し驚く。
そして仏教や儒教も一神教に通じるような考え方があるそうで、多くの神々が身近に感じて生きる日本人は世界では少数派のようである。

キリスト教とユダヤ教の違いにはイエス・キリストの存在くらいでそれ以外は共通する部分が多いとして、ユダヤ教の話から始めている。

一神教では神の言葉は預言者を通してなされるが、誰が正しい預言者で誰が偽の預言者なのか分からないために多くの人々が偽預言者とされ殺された話や、複数の福音書と呼ばれる経典でも記述に不整合がいくつもある話がなされている。

偶像崇拝は、神に祈ると見せかけて神を創造した自分たち自身を祈ることにつながるのでいけないという考え方のようで、いまひとつピンとこないところもあった。
偶像があろうとなかろうと、預言者がいようといまいと、神を創造したのは人間なのでは?と疑問を公言するのはあまり良くないようである。

そしてキリスト教の地域で近代化が進んだ背景には、ユダヤ教やイスラム教のように整った宗教法がないことを挙げている。
大航海時代になったのも、宗教改革や宗教戦争でピューリタンのように宗教的に迫害された人が大量に発生して移民・植民のニーズが生まれたからという話にはなるほどと思った。
また、教義や解釈で苦しいところがある部分も、それを埋め合わせる説明のための努力が哲学や科学につながり、近代化に貢献したようでもある。

さらに、意識してのキリスト教信仰と、意識しなくても態度や行動様式に出るキリスト教的な考え方があり、後者は無神論、自然科学、哲学、共産主義といったキリスト教と対立すると思われそうな考え方にも出ているという話が興味深い。
例えば「宗教はアヘン」と公言する共産党と教会は、組織構成ややっていることが似ているとのくだりが面白い。

他にも、日本の神道で偶像がないのは日本人が本当に拝むことが大嫌いだからで、一神教で偶像がないのはあまりに畏れ多いためと書かれていて反対の理由だからと語られているなど、以前読んだ2人の対談本『げんきな日本論』とでも見られたような刺激的な意見がいくつも出されて、大いに楽しんで読むことができたとともに、一神教についての知識も増やすことができた。






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勇敢な日本経済論 (講談社現代新書)
高橋 洋一 ぐっちーさん
講談社 2017/4/19



9月に逝去されたブロガーで実業家の「ぐっちーさん」こと山口正洋氏が2年前、元財務官僚で経済学者の高橋洋一氏と日本経済などについて語り合っている対談本。

理系で財務省(旧大蔵省)の非効率さや不合理さを改善しようと奮闘していたが色々あって追い出されたり窃盗の容疑を受けたりした経験のある高橋氏と、海外の投資銀行で活躍していたがサブプライム証券の販売を拒否してクビになったことがあるぐっちーさんの対談ということで、それぞれボトムを経験した者の凄みを感じられる話が多い。

2人はボトムを経験した意味では4回も破産したトランプ大統領や、第一次政権を辞職した後に返り咲くことは無理だと思われていた安倍首相もそうした強みを持っていると語り、ぐっちーさんはトランプ氏が資金難の頃に奔走した経験を、高橋氏は安倍氏が暇だった時期にアベノミクスにつながる話をしていたエピソードを語っていて、かなりの刺激を受ける。

ぐっちーさんが会った頃のトランプ氏は上品な英語を話していたそうで、現在のような少し品がなくて分かりやすい語り方は低所得層に受けるためにやっているキャラのようで、未だにトランプ氏を単に異常な人扱いするマスコミが書けない話をしている。

そして日本政府を企業のようにバランスシートで見れば財政は全く問題ないこと、増税は財務官僚が天下り先の費用を徴収したいためという話、金融政策は雇用のためになされるべきとの主張、役所の規制緩和や改革への救いがたい抵抗、金融やマスコミのような規制に守られた業界の腐敗しきった対応など、テレビ番組などでは話すことを許可してもらえない話が多く刺激的である。

中でも、高橋氏が第一次政権辞職後の安倍氏に金融緩和を進めた際に「左派の政策ですけどいいんですか?」と聞き、安倍氏が「全く問題ない」と答えているエピソードなどが面白い。

また、規制緩和はどれが効果が出るかはやってみて時間が経たないと分からないので、特区を設けるなどしてとにかく数多くやってみることが効果的だが、効果が分からない上に既得権益層にはダメージがすぐに分かるために理解が得られない難しさを語っているところも印象に残る。

発行されてから2年以上経過しているが、あまり古びてもおらず興味深く読むことができた。
ぐっちーさんこと山口氏が若くして逝去されたのはつくづく残念である。





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村上ファンドの創設者として浮き沈みの大きい投資家人生を送ってきた村上氏と、ギャンブルでの自身の手ひどい負けを面白おかしく描いてきた漫画家の西原氏による、投資やお金に関する対談本。

西原氏のことは他の著作で知っているが、村上氏については村上ファンドに関するゼロ年代のニュースでしか知識があまりなかったので、どのような考え方をする人で、数字や記憶力で勝負できる人ということを知ることができて興味深い。

「投資は期待値から判断するとギャンブルではない」という村上氏の勧めによって西原氏とその長男が株式投資をやってみたエピソードや、仮想通貨の話もなされている。

西原氏の子育てに関する本のイメージがあってずっと小学生くらいのイメージを持っていたが、当然成長しているわけで20歳前後になっていることには改めて時の流れを実感したりもする。

知らなかったような投資などに関する新たな話はそれほどないが、村上氏と西原氏の個性の違いによる掛け合いが面白く、楽しく読むことができた。






生涯投資家
村上 世彰
文藝春秋 2017/6/21


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米中の対立を中心に、世界各国での情勢について語っている対談本。

アメリカの政界では90年代くらいに日本から色々とむしり取ってきたハゲタカのような人々の勢力が強くなっていて、中国に対して日本にやったようなことを考えているのはいかにもありそうだと感じた。

そして親中派にはいまだにあのヘンリー・キッシンジャーが暗躍していることに驚いた。
キッシンジャーの影響力がそれくらいすごいのか、あるいは後に続く人材が不足しているのか、どちらなのだろうか?

2人の著書を読んでいるのでベースは予想とそれほど違わないが、彼らが語る表現が面白い。

まず、フランスのデモや暴動では黄色のチョッキを着ていることから「フランス版黄巾の乱」と表現していたり、奥さんのコントロールもできないマクロンが政局をコントロールできるわけないという発言には笑ってしまった。

また、韓国が期待する北朝鮮の工費が安い労働者は働かないので期待できないとか、ヨーロッパで韓国人のような嫌われ者のポジションにはアルメニア人がいるという話はあまり知らなかったので興味深い。

他にも、日本が一帯一路に協力的に見える時があるのは、中国がうまくいかなくて投げ出したプロジェクトの中でまだ見込みがありそうなものを横取りしているなど、マスコミ報道で出てこない話が多く、こうした本を時々読む必要を再認識する。

話がしばしば唐突に飛んでいるように見えるのは、本書で収録できないくらい話が盛り上がったからなのだろう。







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