FC2ブログ

読書-対談:雨読夜話

ここでは、「読書-対談」 に関する記事を紹介しています。





経済評論家の渡邉哲也と元経済ヤクザの猫組長の2人による、裏世界のリアルさを踏まえた上で現在の国債情勢や今後の見通しなどを語り合っている対談本。
渡邉氏の本は何冊か読んでいるが、猫組長のものは初めてとなる。

この猫組長の経歴だが、投資顧問会社のビジネスマンだったのがバブル崩壊で億単位の借金を背負ったことでヤクザの世界に入り、石油や金融などで荒稼ぎをしてきたらしいことが書かれていて、他の経済評論家などが書けないと思われることをストレートに語っている。

ブレグジットを山口組分裂と比較したり、償還しようとすると国家権力から抹殺される恐れがある債券が世界にけっこうある話、米英(日本も含む)VS中独のブロック対立化が進む世界情勢、北朝鮮がアメリカ寄りになりつつある影響などが語られている。

中でも、イギリス・ロンドンにある世界を代表する金融市場のシティがブレグジットによってEU内のどこかに機能を移転するとしても、パリは(革命家やテロリスト、独裁者などが留学や活動してきたことでも分かるように)治安や中立性で大きく問題があり、フランクフルト(欧州中央銀行)やブリュッセル(EU本部)も既に別の国際機関の本部があって難しいなど、結局ロンドンから移転できないか、せいぜいアイルランドのダブリンに一部を委譲するくらいしかできないのでは?という話が興味深かった。

特に猫組長はきれいごと抜きで話を進めていくので、その信ぴょう性はともかくとしてシビアさがより強く感じられる。
おそらく、やばすぎて本書で語れなかったことも沢山あると思われ、興味深い。

読んでいくと現実の重さにつらくなるかもしれないが、他の著作にも関心がある。






にほんブログ村 本ブログへ
スポンサーサイト

関連タグ : 渡邉哲也,


合戦の日本史 (文春文庫)
安部 龍太郎 伊東 潤 佐藤 賢一 葉室 麟 山本 兼一
文藝春秋 (2017-07-06)



信長、秀吉、家康・江戸時代前期、幕末・明治の4テーマについて、信長編では5人、それ以降では山本氏が逝去されて4人の歴史作家たちが語り合っている対談本。

長篠の合戦では伊勢長島の一向一揆を壊滅させたことで東国に鉄砲や弾薬が流通するルートが信長によって切断されたという話や、大航海時代の列強と戦国時代の関わり、本能寺の変に関する憶測、信長や秀吉の限界、家康が北条氏政などと違うのは信長からここぞという勝負所での行動を学んだところという説、徳川慶喜のよく分からなさなどを語り合っていてなかなか興味深い。

作家たちの個性も出ていて、会社勤めの経験があるためか現代社会との関係で理解しやすい話をする伊東氏、異説につなげたがる安部氏、カエサルやナポレオンのようなヨーロッパの歴史人物を引き合いに出して語っている佐藤氏などが分かりやすく、作家たちの考えていることの違いが面白かった。

作品を読んだことがない葉室氏も含め、作品をもっと読んでいればさらに楽しめるかもしれない。






にほんブログ村 本ブログへ

日本史のミカタ (祥伝社新書)
井上章一 本郷和人
祥伝社 2018/9/1



『京都ぎらい』などの著作で知られ建築史や社会学、日本史などを幅広く専門とする井上章一氏と、東大史料編纂所で鎌倉時代を専門として日本史に関する情報発信が多い本郷和人氏による、日本史対談。

日本史学界では中世について、京大を中心とした「権門体制」という捉え方と、東大を中心とした「東国国家」という捉え方の2つがあり、本郷氏は後者の立場なのだが研究が進むにつれて前者に有利な結果が積みあがってきたため、かなり参っていることを正直に語っている。

井上氏もあとがきで書いているように古文書解読などはしていないため、結果として空中戦のような対談になったと感じていたようで、読者からすると話があちこちに飛ぶのが面白い。

鎌倉幕府は「関東北条組」、「おねえさん京都論」、「室町幕府は絶対王政」、「明治維新はブルジョア革命」、「キンブ・オブ・下品な秀吉」など、一般的な歴史読み物では出てこない発想がいくつも出てくるのが興味深い。

AKB48ヲタであることをメディアの前でも隠さない本郷氏を井上氏がしばしばイジるシーンが出てきたり、本郷氏が時代考証を担当した大河ドラマ『平清盛』で公家や武士が標準語なのに海賊や山賊が関西弁なのは差別なのでは?と井上氏がいちゃもんをつけたり部分も出てきて、楽しく読むことができた。






考える日本史(河出新書)
本郷和人
河出書房新社 2018/11/21


にほんブログ村 本ブログへ

関連タグ : 本郷和人,




中国が抱える問題や先行きの展望を中心に語り合われた対談本。

習近平は任期の撤廃や後継者を立てない手法、反腐敗運動による政敵の排除、監視システムの導入などによる独裁体制を強めているが、これが共産党内部、そして大衆からの反発を招いていることがまず語られている。

そして習近平が自分の側近ばかりを重用していることで外交や内政に支障をきたしていて、習近平自身に外交センスがないこともあってアメリカによる貿易戦争を仕掛けられたという構図が提示されている。

あと10年くらい中国が力をつけてから野心を露にした場合はアメリカも手を出せなかった可能性があるが、数年前にそれを出してしまったことでオバマ政権の時代から制裁の動きがあり、トランプに交代してからさらにそれが強まったという話である。

一帯一路やAIIB(アジアインフラ投資銀行)の戦略も中国しか得をしないことが各国も認識したことで頓挫しつつあることや、ビジネスマンだとなめていたトランプが強硬路線を取ったことなど、誤算がいくつもあることが書かれている。

朝鮮半島や台湾、ロシアなどについても触れられていて、朝鮮半島は内ゲバ好きで周辺の大国を振り回すために中国にとっても「疫病神」であることや、台湾の国民党に由来する軍人が親中という問題、ロシア人が中国人を「キタイ」(契丹)と呼んで嫌っている話なども興味深い。

日本では左翼・反日のマスコミの問題は根深いが、徐々に変化していることも書かれていて、予断を許さないが希望もあることが分かる。
友好とか平和とかいった変なバイアスにかかっていないことがきちんと書かれていて、興味深く読むことができた。






にほんブログ村 本ブログへ


戦乱と民衆 (講談社現代新書)
Posted with Amakuri
磯田 道史, 倉本 一宏, フレデリック・クレインス, 呉座 勇一
講談社


国際日本文化研究センターの歴史学者たちによるシンポジウムと、その後の座談会を収録している作品。

3部構成になっていて、1部は古代、中世、近世、近代それぞれの時代の戦乱から民衆のことを語っている。
  • 白村江の戦いでは豪族に船で連れてこられた農民が訳も分からずに戦わされたのではないかという推察
  • 応仁の乱では土一揆と足軽が同じ階層の人々によって担われていたこと(これは戦後の学生運動で過激派と取り締まる側の階層が同じことに似ている?)
  • オランダ人やポルトガル人が見た大阪の陣では住人が疎開した町に豊臣方の浪人やその家族が入り込んだ話
  • 禁門の変では会津兵が長州兵のゲリラ戦を恐れて火をつけまくったことで京都の人々の恨みを買ったり、火災からの復興が遅れたことで明治政府の首都から脱落した説
などが扱われていて、あまり他の本で読んだことがない話が多い。

2部はシンポジウムでの討論、3部は日を改めての対談で、3部では『京都ぎらい』などの著書で知られる井上章一氏なども参加している。

戦乱と民衆というテーマだと家を焼かれたりして逃げ惑うイメージが出てきがちだが、宗教がらみの戦乱などでむしろ民衆の側が戦乱を起こす場合や、戦乱の中でも一儲けしようと活動するしたたかな民衆など、多面的な議論がなされている。
また、京都の町並みを破壊したのは米軍ではなくて町屋を壊してビルを建てた京都の民衆だったとか、京都も戦乱で大変だった話でも「伏見は京都やない!」という人がいるなど、井上氏による『京都ぎらい』ネタには他の学者たちもツッコミをいれるなど、楽しい雰囲気で話がなされている。

他にも古代史を専門とする倉本氏が、古代史は史料が限られているが誰でもある程度のところまでは似た結論になりやすいことや、後世になるほど資料が増えて研究が大変になることなど、時代によって研究の方法が異なってくるとの指摘も興味深かった。

読む前はテーマが少し地味だと感じていたが、気鋭の学者たちが担当していることや同じ所属ということで旧知の仲ということもあるのか、思っていた以上に楽しめる内容だった。






にほんブログ村 本ブログへ