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読書-警察小説:雨読夜話

ここでは、「読書-警察小説」 に関する記事を紹介しています。



今野 敏 (著)
角川春樹事務所 (2022/11/15)


今野敏による安積班シリーズの最新作。

臨海署の近くの海上で老人の他殺体が発見され、安積班・相楽班ともに殺害事件の捜査本部で捜査に当たることになる。

その人物は少し前に葛飾署管内で詐欺の容疑で逮捕されたことがあったことが分かり、葛飾署の生活経済係で当時の取り調べをしていた係長の広川も、安積が手掛ける捜査に協力していく。

それとは別に、東報新聞記者の山口が安積班の水野に、先輩に当たる定年を過ぎた記者からセクハラまがいの指導を受けていると相談を受けていて、これも話に多少影響してくる。

本作で目立つのは間延びした口調だが実際はかなり有能なことが伝わってくる広川の活躍で、こうしたゲスト的な人物が活躍するのもこのシリーズでの見どころである。
また、交通機動隊小隊長の速水も、重要なポイントで登場する。

SNSの普及や高齢化といった時代的な話を織り交ぜたり、それにふさわしいキャラクターを活躍させるなど、本作もまた楽しむことができた。





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関連タグ : 今野敏, 安積班シリーズ,


今野 敏 (著)
光文社 (2022/5/24)


渋谷署を拠点に活動する機動捜査隊のコンビである、高丸と縞長を主人公としているシリーズの第2作。

高丸と縞長が目黒駅近くのコンビニで指名手配の爆弾犯・内田を見つけたが逃走され、タクシー運転手を人質に取っての立てこもり事件に発展してしまう。

また、少し前に知り合った自動車警ら隊の隊員から内田が前科のある人物と取引をしているシーンを目撃していたことが分かり、爆弾テロの危険が高いことから特別捜査本部が設置され、SITや公安なども捜査に参加することとなる。

今野作品の警察小説だと警察組織にエリート気取りの嫌な奴が出てくることが多いが、本作ではSITに所属する増田という隊員が過去に縞長の同僚だったことから縞長をいびる言動を繰り返し、悪役としての存在感を出している。

本作でもこのシリーズの魅力が出ていて、続編が出たらぜひ読みたいと思わせてくれる。





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今野 敏 (著)
双葉社 (2020/6/17)


『確証』『真贋』に続く、捜査第三課(盗犯係)の萩原警部補と武田秋穂刑事のコンビが活躍するシリーズ第3巻。

本作では舗脇(たてわき)というIT企業を経営する資産家の家から「4億円かかった」というある物が盗まれたという被害届が出されたことから話が始まる。

なぜか盗まれたものを教えようとしない舗脇に対して繰り返し質問したところ、盗まれた物は「ソロモンの指輪」で、所持していることを知られただけでイスラム教の過激派集団「山の老人」から命を狙われるなどの荒唐無稽な話を語られて萩尾と秋穂は面食らう。
多分、このシリーズを読んできた読者もそのような印象を受けたと思う。

ここに、前作の『真贋』に登場した癖のある美術館員の音川が舗脇の友人として登場したり、オカルトものミステリーである『神々の遺品』の主人公で私立探偵の石神が舗脇から探偵兼ボディガードとして雇われるなど、個性豊かな人々が登場して話を盛り上げている。

刑事シリーズと古代文明の伝説という組み合わせは著者は好きなのだろうが、ちょっと話が荒唐無稽な感じが強く、著者の作品ではそこまで好きな方とはならなかった。
終盤の謎解きなどは面白かったと思うが、私の好みの問題なのだろう。






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今野 敏 (著)
角川春樹事務所 (2021/8/10)


今野敏による安積班シリーズ最新作となる、連作集。

『捜査組曲』にも登場していた水上安全課の吉田係長、相楽班の荒川と日野といった臨海署でそこまで登場する機会が多かったとは言えないメンバーが再登場していて、特に荒川が相楽について語るシーンが面白い。

初めて登場するキャラクターでは地域課の巡査部長を長年務め、若い頃の安積を指導していた大牟礼が活躍する回があり、荒川もそうだが渋いベテランが活躍するのは話に深みを与えていて非常にいいと感じる。

また、安積班では寡黙な若手というキャラクター以外の部分があまり見えなかった黒木や桜井の意外な一面を出していたり、何だかんだで結果を出し続ける須田の活躍などが描かれているのもいい。

嫌われ役として今回も捜査一課・殺人捜査第五係の佐治係長が2作で登場する他、強盗事件では捜査一課・強盗犯捜査第三係から井上係長と沼田警部補が佐治と似た役回りを務めていたり、井上の部下で松崎という若手刑事が安積とコンビを組むなど、警視庁本庁から登場するメンバーが増えてきている。

警察官というよりも走り屋という雰囲気が強い交通機動隊の速水と安積の掛け合いも安定していて、本作も楽しむことができた。





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古野 まほろ (著)
新潮社 (2020/5/27)


1999年を舞台にキャリアの新任警視が県警の公安課長に着任し、カルト教団との熾烈な戦いに挑む警察小説。

主人公の司馬達(しば・とおる)は警察大学校での研修を終え、愛予県の公安課長として赴任することになるが、そこはキリスト教系のカルト集団・まもなくかなたに(MN)の本拠地があり、警察はMNがテロを計画していることをつかんではいるものの証拠を固められないでいた。

警察庁の公安部門からも密命を受けた司馬だったが、引き継ぎを受ける直前に愛予県警ではMNからテロを受けてしまう。
そして、キャリアである司馬は10も20も年上の部下たちを率いることとなり、苦労しながらも活躍していくこととなる。

公安部門VSカルト教団がメインで扱われているため、お互いにスパイを送り込んだり敵組織内に内通者を作り出すなど、虚々実々の駆け引きがなされていてぐいぐい読み進んでいける。
MNがキリスト教団ということもあってか、公安内での通称に「ガブリエル」とか「ガラシャ」のようなキリスト教の聖人や殉職者の名前を使っていたり、警察内部での裏切り者は「ミツヒデ」と呼んでいるのが面白い。

普段は「・・・ぞな、もし」と方便丸出しでいかにも田舎のおじさん然とした公安の次長や課長補佐といった警部たちが徐々に凄みを出していったり、MNからの巻き返しがあったりと、多くの伏線が設定されていてしばしばページを戻って読み返したりしながら読んだ。

著者は警察の元キャリアということで、組織内の話や警察で使われていると思われる隠語など、それっぽさがリアルに感じられる一方で、必要なことは理解しつつもセリフが説明調で長いとも感じた。
このあたりは、好き嫌いが分かれるところだろう。

著者は小説の他に警察に関する本も書いているようなので、何冊か読んでみようと思った。





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