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読書-アンソロジー:雨読夜話

ここでは、「読書-アンソロジー」 に関する記事を紹介しています。



福井健太 (編集)
東京創元社 (2021/11/29)


1970年代に発表されたSF漫画を集めたアンソロジー。
手塚治虫、松本零士、石ノ森章太郎、横山光輝、諸星大二郎など、漫画やアニメで読んだことがある漫画家の作品が多い。

また、SF作家が本業である筒井康隆の「急流」も収録されていて、短編を漫画にしたものだと思っていたら、実際は漫画をオリジナルで描いていて、ネタ切れ気味の時期に漫画をノベライズしたと書かれていたのに少し驚いた。
確かに、シュールさというか馬鹿馬鹿しさは漫画の方が適した内容だと思う。

鉄腕アトムが登場するが主人公というわけでもない「アトムの最後」、人を裁くコンピュータが運用される時代を描いた松本零士の「ヤマビコ13号」、超能力を持った少年の受難を描く萩尾望都の「あそび玉」など、当時の世相を反映しているのかコンピュータに支配される世界とか、人類が滅亡したり限られた空間でしか生きられないディストピアものが多い。

諸星大二郎の「生物都市」もそれに近い感じの作品だが、以前読んだ『妖怪ハンター 地の巻』と同様の気持ち悪さがくせになりそうなタッチで、妖怪ものを扱ってもSFを扱っても同じような感じになっているのが面白い。

手塚治虫は『ブラックジャック』などで、横山光輝は『三国志』で絵柄を見慣れている一方で、それなりの割合を占めている少女漫画はあまり読んできていないためか、少し眼が慣れない感覚があった。
これらの中では水樹和佳子の「樹魔」あたりが良かった。

絵柄や設定が古びている部分があるのは当然としても、時代を超えて印象に残りそうな作品が多かった。





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阿刀田 高 (編)
講談社 (2004/2/1)


阿刀田高が選者を務めるショートショート・コンテストで入選した作品を収録したシリーズのうち、2000~2001年の67作品を扱っている作品集。

前作では編者の阿刀田高氏のコメントではいい作品が少なかったようなことが書かれていたが、本作ではそこまで辛辣でもなかった。

確かに前作よりは面白い作品があったよう感じるものの、物足りなさも一部感じるのは、20年という時間が経過したためなのかもしれない。

収録されている中では、「以心伝心」、「まばたき選手権」、「愛を叫ぶ声」、「一年の孤独」あたりが面白かった。

編者としたらプロとして厳しいコメントを出したりするところなのだろうが、いち読者としては面白い・面白くないと素直な感想を抱けばいいのだろう。





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阿刀田 高 (編)
講談社 (2003/2/1)


阿刀田高が選者を務めるショートショート・コンテストで入選した作品を収録したシリーズのうち、1999~2000年の67作品を扱っている作品集。

こう書くのもなんだが、このシリーズでは本作が最も面白い作品が少ないという印象を受けた。

阿刀田氏もあとがきと選評で、「よい作品にめぐりあえないときがある」、「こねすぎ」、「もの足りない」といったコメントをしていて、選んだ作品がいまいちと感じたというよりも、単純にこの時期に応募された作品で当たりが少なかったということだろう。
一定のレベルに達していないから選ばないということもなかなかできないだろうし、選者というのも大変そうである。

本作で面白かったり好きだったりする作品は「詐話師」、「アンドロメダの女王様」、「死ぬ前に」あたりだが、他の回であれば選んでいないと思う。
投稿者の方々には悪いが、不作回と思っている。





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阿刀田 高 (編)
講談社 (2005/2/1)


阿刀田高が選者を務めるショートショート・コンテストで入選した作品を収録したシリーズのうち、2001年の64作品を扱っている作品集。

この時期を反映しているのが、サッカーワールドカップ予選での時事ネタを使っている「絶叫」などで、そんな出来事もあったなと懐かしく思い出した。

他にまあまあ面白かったと思うのは「予知能力」、「離すな」、「死線」、「幸せの予約」、ひょうたんに住む存在の独り言である「瓢箪」、「当選者発表」、友人の上泉君が役割を果たす「あなたが好きよ光線」あたりで、短めの作品で面白かったものが多かったような気がする。

20年前の作品であるが、古びた作品・古びていない作品が分かれているのもちょっと興味深い。





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阿刀田 高 (編)
講談社 (2013/4/12)


阿刀田高が選者を務めるショートショート・コンテストで入選した作品を収録したシリーズのうち、2009年~2010年の60作品を扱っている作品集。

今月にこのシリーズを新しい順に数冊続けて読んでみたが、本作ではアッと驚くような感じの作品で好きな作品が少なく、オチが読めても好きな作品や、くだらなさがいい作品が目についた印象がある。

具体的には「適材適所」、「運命の相手」、「ラブ・ゲーム」、「捕鯨遺聞」、「主張」、「僕と彼女の事情」などで、セリフのやり取りの面白さや話の内容と状況のギャップなどを楽しむことができた。

「五秒間の真実」はコンピュータの発達前であれば面白かったのかもしれないが、読者がFXなどを思いつくと仕掛けが活かしにくく、選者が高齢ということもあって甘い評価だが、もう少し工夫が必要だったようにも感じる。

年によって作品の傾向が異なってくるのも、このシリーズの特徴なのかもしれない。





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