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読書-思想(東洋:その他、全体):雨読夜話

ここでは、「読書-思想(東洋:その他、全体)」 に関する記事を紹介しています。


『韓非子』に学ぶリーダー哲学
竹内 良雄 川崎 享
東洋経済新報社 2017/4/28




『韓非子』の言葉を翻訳し、その背景や活かし方などを解説している作品。

原作がいいのでためになるはずの内容なのだが、構成が良くないのか、文体が良くないのか、著者の解説での考え方が合わないのか判別しづらいが、あまり読みやすくなかったので半分ぐらいで読むのをやめてしまった。

「題材はいいのに構成が残念」なタイプの本、というのが私の感想となる。
合わなかったということになるのだろう。




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関連タグ : 韓非子,


岡本 光生 (著)
中経出版 (2000/9/1)


『韓非子』の思想や受け入れられ方などを分かりやすく解説している作品。

よくある解説書だと思って読み始めたのだが、著者の韓非が生きた時代や王子としての境遇から想定された考えや、思想の限界や弱点についても書かれているのが強く印象に残った。

韓非が生まれた韓王国は隣国の秦に圧迫され続けた小国で、当時の技術的な限界もあって生産や供給を増やすことができなかったことから、各人の欲望を「法」の力で抑えつける思想になったことが分かってくる。

これが韓非の師匠に当たる「性悪説」で知られる荀子では、欲望を抑えるのが各人の「礼」という話になっていて、より手っ取り早く目的を達成しようという考え方になったのだろうと感じた。

韓非が王子という立場のために視点が宮廷内のことが中心で、商工業者や論客を敵視する考えがその後の中国に悪影響を与え続けてきたと思われる話も書かれていて、これもまた中国的な思想ということなのだろう。
(意外に感じる人も多いかもしれないが、孔子や孟子は商業の役割を適切に評価できていたらしい)

また、法は西洋のように君主の暴走を抑えるためのものではなく、君主は法の適用範囲ではなく法は配下や人民を支配するためのもの、という考え方となっていることも書かれている。
このあたりが中国が「法治」の国ではなく「人治」の国だとされることにつながっているのだろう。

統治論として『韓非子』と比較されることがあるマキャベリの『君主論』の話もあり、仮にマキャベリが『韓非子』を読んだらスケールの小ささに驚いたのでは?という推察や、マキャベリと境遇が似ているのは孔子という話も面白い。





『韓非子』に学ぶリーダー哲学
竹内 良雄 川崎 享
東洋経済新報社 2017/4/28



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湯浅 邦弘 (著)
KADOKAWA (2017/1/25)


『貞観政要』からいくつかのテーマを選んで原文、読み下し文、翻訳と解説で構成されている作品。

ページ数が少ない中で原文や読み下し文もあるため、結果として扱われている話の数が少ない。
「ビギナーズ」とあるのなら、原文や読み下しを外して話の数を増やした方がいいような気がする。

また、当時の役職などの話をきちんとしすぎていて、解説するポイントが少しずれているような気もするし、原典の深読みもそれほどないのが物足りない。

『貞観政要』関連の作品では、あまりいい方ではない。





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田口 佳史 (著)
三笠書房 (2020/6/22)


『論語』、『孫子』、『荘子』、『菜根譚』、『言志四録』といった中国と日本の古典から、40代以降に特に気を付けた方がいいことを語っている言葉を解説している作品。

20代から30代に比べて仕事に慣れていたり、年下や部下が増えたり、自分だけでなく組織で仕事をする割合が増えたりと、年を取ったことで発生する変化や、若い頃は許された言動が許されにくくなるなど、周囲からの見られ方の変化などが背景になっていて、それらに対してどのように対応していくべきかが書かれている。

手柄を部下などに譲ること、後進を育てること、押してばかりではなく引くことも交えること、そしてまだまだ人生は長いので自己研鑽を怠らないことなど、まあその通りだなと思える話が多い。

常識に関する話では少し古いと感じる部分もあるが、年配の人の中にはこうしたことを気にする人も多いので気を付けた方がいいということなのだろう。





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関連タグ : 田口佳史,


呉兢 (著), 道添 進 (編訳)
日本能率協会マネジメントセンター (2020/12/22)


唐の太宗・李世民と家臣たちの問答をまとめた『貞観政要』の抄訳と、登場した言葉を解説している作品。

『貞観政要』関連の作品は下記の関連記事に記載した作品6冊を読んでいて、当然ながら重なる話も多い一方、本書で初めて読んだと思われる話もけっこう入っていて、新たに読んだ価値は十分にある。

魏徴とのやり取りが最も多くて次に房玄齢、杜如晦、王珪、長孫無忌などが登場しており、この中では魏徴と同様に元は李世民の兄の建成に仕えていた王珪という人物が印象に残った。

李世民はかつて敵方に仕えていても有能な人物を多く配下に取り込んでいて、彼らの旧主を思い出させるようなことを避けるように命じるなど、きめ細やかなケアをしてきたことも書かれている。

当初は家臣たちの意見をよく聞いてきた李世民も時間が経つと諫言に対して論破するようになって意見が出なくなったという問題も書かれていて、これに対しての諫言に耳を傾けたというのも、なかなかできることではない。

狩りに出かけて「雨が漏らないようにするのはどうしたらいいか?」という質問に「いっそ瓦で雨具をお作りになれば・・・」という回答もなかなか面白いし、異民族への政策の誤りを認めた言葉からは現代の移民政策に通じる部分を見いだせるところが多いように感じたりもする。

文章や構成も読みやすいものとなっていて、興味深く読むことができた。





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