半村 良 (著)
KADOKAWA (1979)
自衛隊の部隊が戦国時代にタイムスリップし、自身たちが転移させられた意義を考えながらも戦っていくSF作品。
本作の映画化や、さらにアレンジした映画『戦国自衛隊1549』、そして自衛隊の艦隊が太平洋戦争の時期に転移するかわぐちかいじの『ジパング』、ライトノベルでも異世界に転移させられる『ルーントルーパーズ―自衛隊漂流戦記〈1〉』のように、「自衛隊が別の場所に転移したらどうなるのか?」をテーマとした作品の源流の1つとなっている。
時代を越えた強力な武装を持つ彼らだったが、転移した隊員は30人くらいで弾薬や燃料も補給は得られず、機器も故障したらそれまで…というハンディキャップもあったものの、近代的な戦術を使用したらどれくらいやれるか?という話にもなっている。
タイムスリップした戦国時代には長尾景虎(上杉謙信)や武田信玄はいるものの、斎藤道三や信長、秀吉、家康らに該当する人物が見当たらいように微妙に異なっていて、自衛隊の面々は「とき衆」と呼ばれるなど、細かな設定がうまいと感じる。
ページ数は短めなものの、その中でタイムスリップした意義とか、上記の近代戦術が通用するか?や、どのような意図でこの事態に対応させられているのかを考えながら戦っていくところが印象に残る、いい作品だと思う。

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日和真之 (著)
Independently published (2022/9/1)
宇宙からもたらされたと思われる謎の金属と、それをめぐる人々の騒動を描いたSF長編。
舞台は現代で、高校の化学教師が隕石と思われる金属を発見することが発端となっている。それは地球上のどの物質とも異なる性質を持っていることが判明したことで、その金属の奪い合いが始まる。
ほとんど関わりのなかった同窓生からその金属が送られてきた企業の研究員である湯川は、必然的にトラブルに巻き込まれていくわけで、政府の機関も動かすことができる謎の組織から付け狙われることからストーリーが展開していく。
そしてその金属は常温核融合やニュートリノの話につながる展開を見せている。舞台は深海に移っていき、実在の大深度有人潜水調査船・しんかい6500や自衛隊の潜水艦・そうりゅうも登場している。
あれこれ詰め込みすぎたためか、ストーリー展開や登場する組織の話、人間関係のところでは、唐突さが随所に出てきて「え、いきなりそれ?」と感じてしまったりもする。
著者の科学技術分野における知見と、物語を描きたいという意欲が伝わってくる作品である。

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豊田 有恒 (著)
KADOKAWA (1979/6/1)
豊田有恒による、「人が」タイムスリップするのではなく「日本列島全体が」タイムスリップするという、なかなか強烈な設定のSF長編。かなり前に読み、SF小説の面白さを感じさせてくれた本の1つとなっている。
舞台は出版当時と思われる、1970年代頃で日米での貿易摩擦が問題になっていた時期の日本で、ある日地震が発生したと思ったら、海外からよく分からない通信文が送られて来て不審に思って調べたところ、日米戦争が起こる少し前の時期の世界に「日本全体が」タイプスリップしていたことが判明する。
この時期の日本は朝鮮半島を併合していて保護国の満州国に関東軍が進駐しているなどの事情もあり、平和ボケした感のある主人公たちと、大陸に住んでいる当時の日本軍人が会話でかみ合わないなどのシーンが出てくるのが面白い。
日本は戦争を回避しようと動くものの、日本を挑発して戦争を起こさせようと考えていたアメリカは調子が狂ったことで…といった形で話が進んでいく。
『戦国自衛隊』や『ジパング』のように自衛隊の部隊や艦隊の単位でタイムスリップしたり異世界に飛ばされたりする作品はそれなりにあるが、日本列島全体がタイムスリップする作品はその後もあまり聞いたことがない。
現代だったらインターネットのように解決しなければならない設定上の問題があるので、かえってSFとして扱いにくくなったのかもしれない。
- 著者の作品について書いた記事
- 『古代史の結論―歴史は二度、嘘をつく』
- 『古代“日本”はどう誕生したか―封印されてきた古代史の謎』

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月村 了衛 (著)
早川書房 (2010/9/22)
忍術使いが活躍する小説を、SF仕立てで描いているような小説。
無限王朝の勢力によって滅ぼされそうになった王が、嫡子と姫を同盟者の元に逃すよう、伝説の忍者組織・光牙(こうが)の1人である零牙(れいが)に依頼するところから話が始まる。
無限王朝からは骸魔六機忍と呼ばれる凄腕の忍者たちが追ってきて、零牙やその仲間たちと壮絶な忍術での戦いが繰り広げられるという話になっている。
戦い方では亜空間への移動や稲妻を飛ばす戦法、高速での移動、オーロラによる攻撃など、忍術使いが出てくる小説に出てくる道具立てをSFで表現したようなものが多い。
また、光牙の者たちは元の世界の記憶を断片的に持っていて、異世界転生もの小説のダーク版と捉えることもできる。
設定の変なところは突っ込まず、単純に楽しめばいい作品ということになる。

銅 大 (著)
早川書房 (2017/11/21)
名門を勘当された若旦那が辺境の宇宙港に流れ着き、旧知の少女とともに合成食糧による食料事情を改善しようと奮闘するスペースオペラ。
若旦那は人柄はいいものの無能と判断されたのか、名門の当主を追放されて辺境の宇宙港・デルタ3に腰を落ち着けようとする。
そして知識不足もあって栄養失調に陥って行き倒れかけたところ、かつて若旦那の家で働いていて現在は祖父が作った食堂を再興しようとしていた少女・コノミに助けられる。
この作品の設定では宇宙での食べ物は多くが合成によるもので味がひどいものが多いらしく、コノミも祖父が遺したレシピを持っているものの活用が難しい描写が多く出てくる。
一方で若旦那は当主だったころに食べていた美食の記憶があるため、料理自体はできないもののどうやったらおいしくなるかの検討ができるようで、コノミとともに研究している。
また、昔は<太母>と呼ばれるAIが人類を保護していたが、<涅槃>へ旅立って人類からすると不便なことが増えたなど、壮大な設定が後半の話に影響を与えていく。
登場する食事はあまりおいしそうに見えないし、色々とくせのある作品だと思うが、それなりに楽しめた。

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