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読書-歴史(日本:中世・近世):雨読夜話

ここでは、「読書-歴史(日本:中世・近世)」 に関する記事を紹介しています。



安藤 優一郎 (著)
日本経済新聞出版社 (2020/2/11)


江戸時代の大名や旗本の人事異動、つまり国替えや幕府内での人事について、具体的な事例からその内容を解説している作品。

国替えは関ケ原の合戦からしばらく実施されていたが、幕府権力が安定してくると財政負担が問題となり、途中からは松平家や水野家、榊原家といった譜代大名の国替えがほとんどとなる。
姫路、前橋、舘林、川越などと、一定の期間ごとに国替えがなされる藩も固定しているようである。

本書ではその中でも、磐城平(福島県)から延岡(宮崎県)という最も遠い距離の国替えを命じられた内藤家の事例が扱われていて、移動先の家や後任の家との手続き、移動にかかる莫大な費用負担、商人からの借金や農民からの年貢にまつわるトラブルなど、思っている以上に大変なことであるのが分かる。
ただ、国替えによって潤う人々もいるはずなので、そのあたりも書いてほしかったところである。

後半では松平定信、水野忠邦、大岡忠相(大岡越前)、長谷川平蔵(鬼平)が幕府組織でどのように出世したり出世しなかったりしたのかが書かれている。
嫉妬や根回し、足の引っ張り合いなどが書かれていて、現在の官庁での出世争いや、自民党の派閥争いを思わせるものがあり、時代を経てもこのあたりは変わらないのかもしれない。

終盤では国替えが反対に遭って撤回に追い込まれた話、そして明治維新で徳川家が静岡藩70万石に国替えさせられた話が収録されている。

教科書などで扱われることがあまりないと思われる話が多く出てきて、それなりに興味深く読むことができた。





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本郷 和人 (著)
KADOKAWA/角川学芸出版 (2012/11/23)


中世から近世にかけての時代を戦いの観点から、その時代を代表する人物2人の対比を用いて以下の8章で語っている作品。
  1. 平清盛と源頼朝-治承・寿永の乱
  2. 後鳥羽上皇と北条義時-承久の乱
  3. 安達泰盛と平頼綱-霜月騒動
  4. 足利尊氏と後醍醐天皇-南北朝内乱
  5. 細川勝元と山名宗全-応仁の乱
  6. 今川義元と北条氏康-駿東地域の争奪戦
  7. 三好長慶と織田信長-戦国の畿内争奪の諸相
  8. 豊臣秀吉と徳川家康-小牧・長久手の戦い

いきなり「はじめに」で、「古代史なんて、なかったら良かったのに」とか「史料なんて、なかったら良かったのに」との思いを語って読者にショックを与えているが、これは古代史や資料の多さによって簡単な捉え方をしてしまう歴史学界の傾向を危惧してのもので、あくまで歴史研究が多面的な観点からなされてほしいとの思いが書かれていて納得する。

基本的には過去に読んだ著者の作品と重なる話も多いが、武家が貴種をかくまう風習や、霜月騒動の背景にある御家人の利益(のみ)を重視するか「撫民」もするかという路線対立、畿内・中国・四国・中部の「日本A」とそれ以外の「日本B」という構図などが、2人の人物の話と関連付けて語られているのは分かりやすく感じた。

著者の作品の中でも、まとまりの良さではけっこう上位に来る良書だと思う。
著者があとがきで検討しつつも諸般の事情で先になりそうだと語っていた『九条道家』の作品が出る日を楽しみにしている。






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関連タグ : 本郷和人,


渡邊 大門 (著)
光文社 (2015/1/8)


関ケ原の合戦が発生する前の政治情勢から戦後処理に至るまでの期間について、50の疑問に答える形で関ケ原の合戦に関する現状での研究結果を紹介している作品。

著者がまえがきで書いている通り、知らなかったことが扱われていて、通り一遍の本ではないことが分かった。

まず、家康と石田三成が対立関係にあったというのは後世から見ての評価であり、前田利家死後の七将襲撃事件で三成が失脚した後も、家康が三成やその兄の正澄の屋敷に泊まったり、前田利長の謀反容疑があった時も三成と大谷吉継の兵が越前に派遣されたなど、特に仲が悪かった感じでもないように見えることに驚いた。

その一方で、毛利輝元が家康との対立をうかがわせる書状が結構あったようで、戦後に輝元や吉川広家が三成や安国寺恵瓊などに罪を押し付けたという部分が大きそうに見える。

そして、石田三成と上杉景勝の家老・直江兼続が示し合わせて関ケ原の合戦になったという話は全くの嘘のようで、三成から信濃の真田昌幸宛に、上杉家に味方になるよう伝えてほしいとの書状が紹介されているのも面白い。

上杉景勝が家康から討伐を受けるようになったのは、三成おびき出しのためではなくて旧領国の越後から年貢を持ち去られてしまって窮乏した堀氏から家康への通報が大きかったようである。

他にも、宇喜多秀家や長宗我部盛親などがお家再興のために希望を捨てずにかつどうしていたことや、伊達政宗や黒田官兵衛のように地方で戦っていた大名たちの動向なども紹介され、多彩な内容となっている。

複数の説を並列で紹介されていて、興味深く読んでいくことができた。






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応仁の乱について、背景や局面の変化、他の地方への影響、関係した人物など、項目ごとに分かりやすく解説している作品。
ベストセラーとなった呉座勇一著『応仁の乱 - 戦国時代を生んだ大乱』ももちろんまとまっていて良かったが、本書みたいに項目ごとに解説している作品があるとさらに理解を助けてもらえる。

特に、九州、中国、四国のように近畿地方以外でどのような戦いがなされたのかや、享徳の乱・長享の乱でそれどころではなかった東国の事情、活躍が目立つ登場人物の解説などが充実しているように感じている。

本書では畠山政長、畠山義就、大内政弘、朝倉孝景あたりが印象に残る一方で、土岐氏の守護代として大活躍した斎藤妙椿があまり扱われていないのがちょっと意外に感じた。

一部の勢力図が少し見づらかったところがマイナス点だが、全体的にはよくまとまってて興味深く読むことができた。






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『経済で読み解く日本史』シリーズの第2作で、信長と秀吉の時代が扱われている。

前作同様に基調は通貨の量によって世の中の景気、さらには安定するか殺伐とするかが大きく違ってくることが書かれていて、序盤では室町時代から続く明の銅銭の慢性的な不足によるデフレ、中盤では石見銀山と南米のシルバーラッシュによって国際経済において銀が基軸通貨となる話、そして日本では一部で銅銭から米への逆行が起こるなどの事象が書かれている。

後半ではスペイン・ポルトガルによるキリスト教布教を通じた侵略と、それに対応しての戦略を実施していった秀吉という構図で書かれている。
本書では国内を統一してから海外進出を考え出したのではなく、既に九州の島津などとの戦いの時点で外交的なところを考えていたことが書かれている。

著者は、日本は戦国時代の戦乱を通じて鉄砲の性能・量ともに揃えていた東アジア最強の陸軍国になっていたが、基本的には島国なので海軍をより充実させるべきところを、国内の戦争では陸軍が主体だったために秀吉は戦略ミスを犯してしまったという趣旨のことを書いている。

ではどうするのが良かったかというと、西欧列強のように海岸や港を抑える戦略が有効だったようで、当時の日本に当てはめると海軍を整備した上で台湾、ルソン、寧波など支配下に収めて貿易の主導権を握るべきだったのでは?ということが書かれているが、これを構想して実行できた可能性がある人物はいたのか?ということが問題となる。

信長は織田家のブラック企業化による弊害で滅び、秀吉はボロがでるまで長生きしてしまった、家康もまた構想力があったかどうか怪しい・・・となり、現実的にはないものねだりなのかもしれない。

面白かったが、前作ほどでもないというのが正直なところである。








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