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読書-歴史(日本:中世・近世):雨読夜話

ここでは、「読書-歴史(日本:中世・近世)」 に関する記事を紹介しています。




1月にドラマとして放送された『家康、江戸を建てる』の原作者で、『銀河鉄道の父』で直木賞を受賞した作家による、『家康、江戸を建てる』の副読本みたいな位置づけで書かれている作品。

『江戸始図でわかった「江戸城」の真実』を書いた千田嘉博教授と対談し、平和の城というイメージで江戸城を書いた後に大軍事要塞としての江戸城の一面が分かって困っていると冗談を言った話が面白かったり、小説では語れなかったことを語っていたりして、家康や江戸についてのことを知ることができる。

不明なことが多くて小説では書けなかった玉川上水や、明治以降の東京へつながる話、インフラ建設が戦争への対策か災害への対策かで重点が変わってくること、ヨーロッパの大都市みたいな旧市街が存在しない東京の特異性などにも話が及び、興味深く読むことができた。






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中世から近世にかけての銅銭という形での通貨の事情を解説している作品。

下に挙げる関連記事で紹介した本にも書いてあったが、平安時代から戦国時代にかけては日本の中央政府が通貨を発行せず、結果として通貨の供給が需要を大きく下回るデフレの状態にあったことが書かれている。
その一例として、銅銭を紐でくくった形で地中に埋めて貯蔵したものが発掘される話をしていて、これは現代で言えばタンス預金のようなものである。

平清盛や足利義満などが中国から銅銭を輸入していたことは歴史の教科書や本で出てくるが、実はこれらでも需要に対しては全然足りず、民間で中国の銅銭を模倣した銅銭やさらには刻印すらない銅銭など、後に「びた」と呼ばれる銅銭が多く製造されて普及したことが書かれている。

さまざまな民間業者が独自に銅銭を作っていたわけで、種類や品質もバラバラとなり、種類ごとに価値に差をつけて品質がいいものは受け取り、品質が悪いものは受け取りを渋ったり支払いに先に当てるといった、「撰銭」(えりぜに)がなされて交換レートが形成されている話につながっていく。

東アジア全体で見ると明が海禁で民間貿易を禁止したために密貿易が盛んに行われていたことや、銅銭の材料である銅の供給事情、国別での銅銭の価値の違いもあり、銅銭が不足しているはずの日本から琉球や東南アジアに銅銭を輸出した話も出てくるのには驚かされた。
これは、食糧不足で飢饉が発生しているのに外貨を稼ぐために食糧を輸出している国があることと似たようなものかと思う。

戦国大名たちや信長・秀吉・家康といった権力者たちもこうした銅銭の流通には手を焼いたみたいで、必ずしも一貫した法令になっていないなど、後世で思われているほど事前に計画したように経済政策を立てたわけではなく、現実にあった政策を取った結果がその後の経済につながったことが強調されている。
「皆が笑って暮らせるような世の中に」みたいなセリフは、あくまで歴史ドラマだけの話だと切って捨てていたのには笑ってしまった。

詳細な話まではついていくのが少し手間がかかるのでやや斜め読みになった部分もあるが、テーマ自体は知らない話も多く、刺激を受ける内容だったと思う。






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タイトル通り、江戸時代の文化やシステムといった良さを紹介している作品。

参勤交代は鎌倉時代以来の武家社会の習慣としての軍役という意味があって幕府が質素にするよう指示をしても大名家が見栄を張って豪華な行列にしていた話や、「鎖国」とされるポルトガルやスペインの排除は人身売買をやめさせられない宣教師を取り締まる意味合いもあったこと、循環可能な社会が実現していたなど、扱われている個別の話は興味深い。

しかし、「長州政権」と表現するように現代の日本が嫌いなことを隠さずに書いていて、明治維新以降は「江戸時代を全否定」といった主観的・独断的な表現が目立って斜め読みになってしまった。

江戸時代の知られていない面を書くのはいいとして、いい面ばかりを書きすぎていてバランスが非常に悪い。
例えば人口が2倍になったのは高く評価できるとして、中期以降に停滞したことはどう評価するのか?と思ったり、森林資源の保護をしたことが書かれているが、幕末は燃料を木材に頼ってきたツケがたまって山が荒れていた話を書いていないのはどうなの?と感じたりした。
(江戸時代の段階で石炭を燃料としての利用が普及していたらどうなっていただろう?とは時々思う。)

現代を肯定したい人は1つ前の時代を否定し、現在を否定したい人は1つ前の時代を肯定してもう1つ前の時代を否定するものなのかもしれない。
少し前に田中角栄がもてはやされたのは、現在の安倍政権を下げるための対象を時代をさかのぼって探した結果なのではないか?とも想像が及んだ。

江戸時代の良さを評価することにはやぶさかではないが、明治以降の現代を否定するために書かれている感じが強すぎて好感が持てなかったし、序盤で余談が長くてなかなか本論に入らないところもテンポが悪い。
つまるところ、この著者が合わないということなのだろう。





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信長・秀吉・家康が活躍した道を中心に11の道を、研究結果として考察したルートやその道の成り立ちや変遷などとともに解説している作品。
信長・秀吉・家康では武田信玄、上杉謙信、黒田官兵衛、明智光秀などが扱われている。

多分著者の他の作品だと思うが、別の作品で読んだ、秀吉軍が前線の姫路と本拠の長浜や信長のいる安土、京都などを結ぶ情報ルートとして、丹波から播磨の北部へ抜けるルートの話は再度読んでも面白い。

また、歴史小説で扱われることの少ない、家康と北条氏直、上杉景勝が本能寺の変後に旧武田領の甲斐・信濃・上野三国の取り合いをした天正壬午の乱の話で北条氏直の侵攻ルートが書かれているのもポイントだと思う。
氏直は上野から品の北部を経て川中島で上杉景勝と対陣し、状況がはかばかしくないので真田昌幸の諫言を無視して進路を変えて甲斐に南下し、大軍を恃んで家康軍をなめてかかったところ兵站ルートを潰されて甲斐・信濃の2カ国を家康に明け渡さざるを得なかった話を読む限り、こうした勝負どころで勝てないのが滅亡の一因なのだろうとも思った。

他にも信長が桶狭間の合戦で取ったルートについての考察や、本能寺の変で光秀軍は3つに分かれて京都に侵攻したのではないかという説、秀吉が家康に江戸を本拠とすることを勧めたのは東海地方から追い出す意図よりも要地を任せる意図の方が強かったのではないかという話などが書かれていて興味深い。

地図やルートが多く書かれていて分かりやすいのと、以前読んだ著者の作品にあったようなケアレスミスもあまりなかったようなところも好印象で、なかなか楽しめたと思う。






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近江戦国の道 (近江歴史回廊)
Posted with Amakuri
木村 至宏
淡海文化を育てる会 2006/4


近江(滋賀県)において戦国時代に歴史の舞台となった名所旧跡を、湖南から湖東、湖北というルートに沿って紹介している作品。

場所としては大津城、膳所城、宇佐山城、坂本城、堅田、観音寺城、八幡山城、安土城、佐和山城、彦根城、小谷城、長浜城、国友村と、交通の要所なだけあって一定以上の知名度があるところが多い。

歴史上の事件では信長の上洛、姉川の合戦、志賀の陣、比叡山焼き討ち、小谷城攻略戦、賤ヶ岳の合戦、関ヶ原の合戦における大津城攻めなどが有名な他、湖北、湖東、湖西で信長に対する一向一揆が盛んに発生したことも書かれている。

六角承禎、浅井長政、織田信長、明智光秀、羽柴秀吉、豊臣秀次、石田三成、井伊直政らが本拠を置いたことでも、便利な場所柄であることが伝わってくる。

具体的な地理関係を以前以上に知ることができ、例えば信長が上洛後に足利義昭から代官を置く許可を得た鉄砲製造で知られる国友村が、浅井長政の小谷城からけっこう近い場所にあることに驚いた。
国友村の鉄砲鍛冶たちが浅井領なのに信長から発注を受けたり、石田三成領なのに家康から発注を受けたりと、次の権力者を見極めて行動していたのはすごいと思う。

近江という土地から戦国時代のことが書かれているのが興味深く、刺激を受ける部分が多い1冊だった。






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