読書-歴史(日本:中世以降):雨読夜話

ここでは、「読書-歴史(日本:中世以降)」 に関する記事を紹介しています。


戦国夜話 (新潮新書)
戦国夜話 (新潮新書)
本郷 和人
新潮社 2016-04-15

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東大の史料編纂所教授による、関ヶ原の合戦の時期を中心に戦国武将たちに関するトリビアを語っている作品。
話が細切れになっているのは、週刊新潮に連載していたものを書籍化した事情による。

細川氏、前田氏、上杉氏を中心に、多くの戦国武将についてのあまり知られていない話や異説、著者の考えなどがざっくばらんに書かれている。

細川家では田辺城の開城交渉で細川幽斎が見せた深謀遠慮や広報の巧みさ(「古今伝授」って本当に重要だったのか?という疑問も含め)、細川忠興がガラシャ夫人の死(自分の意思で家臣に殺されたと美談にされているが、忠興が家臣に殺すよう指示していた可能性もある)や後継者の廃嫡(忠隆→忠利)に見られるかなりの気象の激しさなどが印象に残る。

前田家では利家夫人のまつが自ら徳川への人質になったというこれまた美談が語られがちだが、実はまつが豊臣派、息子の利長が徳川派だったのでは?と考察しているのが目を引く。
重臣の中でも村井、奥村らが豊臣派、横山、長らが徳川派だったなど、家中のまとまりの悪さが関ヶ原で活躍できなかった要因という話が興味深い。

上杉家では「直江状」や『天地人』で知名度が高い執政の直江山城守兼続の話が多い。
まず兼続の名が有名だが「重光」と改名していたことに驚かされ、一時期養子になった本多政重(本多正信の次男)の話や兼続のライバルとされる藤田信吉の話、そして安房の里見氏と『南総里見八犬伝』に脱線したりと、多くのネタが扱われている。

著者が勤める東大の史料編纂所に関して、史料を全てはネットで公開できない理由として、原本の保持者が公開を認めていないことがある(これはそれぞれの事情があるわけで尊重する)など、歴史学者としての立場からの意見が書かれているのも読みごたえがある。

気軽に読めるようにエッセイっぽく書かれている割に、充実した内容だったと思う。






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秀吉家臣団の内幕 天下人をめぐる群像劇 (SB新書)
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滝沢 弘康
SBクリエイティブ 2013-09-14

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秀吉の家臣たちの構成や推移などから、秀吉や秀吉政権の事跡をたどって解説している作品。

よく知られるように秀吉は徒手空拳からのし上がった関係から元々の家来がいなかったわけだが、自身の親族も少なかったために妻となったねね(北政所)の一族である杉原家、木下家、浅野家からも人を集めていることが分かる。
この中から補佐役・ナンバーツーとしては秀吉だけでなく日本史上屈指の存在とも言える弟の羽柴秀長がいたことが奇跡的だし、浅野長政も例外的に優秀なのは幸いだったと感じる。

その末路から低い評価をされがちとはいえ一度は後継者に選ばれた秀次も一定のレベルにはあったと思うが、それ以外が人材難だったのは出自を考えると仕方ないだろう。
無能に近い評価をされた人たちにしても必ずしも政治や軍事の世界に入りたかったわけではないだろうし、出世しすぎる親族がいると周囲も色々と大変である。

そこから尾張時代に蜂須賀小六や前野長康、美濃時代に竹中半兵衛や仙石秀久(漫画『センゴク』で有名)、近江時代に石田三成や大谷吉継、中国攻めで黒田官兵衛と、主君だった信長から与寄としてつけられたり自らスカウトするなどで人材の充実を図っていく様子が書かれている。
育成した部下としては加藤清正や福島正則らが有名だが、その一世代前にも羽柴四天王(宮田光次、神子田正治、尾藤知宣、戸田勝隆)というマイナーな武将たちがいることが書かれている。
彼らは初期の秀吉を知っていて突いていけなかった部分もあるのか、4人とも不幸な死に方をしているのが哀愁を誘う。

秀吉が天下人になるに従って石田三成のような官僚タイプの家臣が幅を利かせるようになるのは必然だと思うが、人事や賞罰が秀吉の気まぐれによって決められたことも、家臣間の対立に拍車をかけたことが書かれている。
恩賞によって家来を引っ張るやり方なのも含め、秀吉はこのやり方でなければ成功しなかったのだろうし、それ故に死後の混乱が発生したのだと思う。

秀吉が活躍した時期ごとにどのような家臣が現れてどのような活躍をしたのかが分かりやすく書かれていて、思っていた以上に読み応えのある1冊だった。






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応仁の乱 - 戦国時代を生んだ大乱 (中公新書)
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呉座 勇一
中央公論新社 2016-10-19

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知名度の割りにどのような合戦だったのかが分かりにくい、応仁の乱を丁寧に解説している作品。
大和の守護とも言える興福寺のトップを務めた、経覚と尋尊という公家出身の2人の僧侶が書いた日記を中心とした視点から書かれている。

日本史の教科書では8代将軍・足利義政の後継者問題(弟・義視と長男・義尚)をメインとして東軍に細川勝元、西軍に山名宗全を中心とした大名が戦ったという書き方をされているが、実際にはさらにさまざまな対立が絡んで発生したことが書かれている。

大和で筒井、越智、古市といった国人間の対立による内乱が発生したり、応仁の乱では畠山氏の家督争い(義就VS政長)が発端となった部分が大きかったこと、斯波氏の家督争い(義廉VS義敏)や細川氏と大内氏の貿易利権をめぐる争い、嘉吉の乱が元となった山名氏と赤松氏の対立、旧南朝勢力が復権を企てるなど、さまざまな勢力が東軍と西軍についたことで戦乱が長期化したことが分かる。

東軍は正統性や政治力、西軍は周防から大内政弘の大軍を京都に引き入れるなどの実力行使といった手段を用いるが、どちらも相手を屈服させるまでは至らない。
途中では足利義政がなんども停戦工作を試みたり、細川勝元と山名宗全が手打ちをしようとしていたが、畠山義就や大内政弘のような主戦派の大名が反対をしたため、ぐだぐだした状態で戦闘が続いていることが書かれている。

大名としては細川、畠山、斯波、山名、赤松、一色、京極、土岐、六角、武田、大内、富樫などそうそうたる顔ぶれであり、中でも政治力は高くなさそうだが軍才がある畠山義就が河内地方に独立政権を築くような動きを見せているのが目を引く。

そして斯波氏から越前の実質的な支配権を奪った朝倉孝景や土岐氏の家臣ながら戦局に大きな影響を与えた斎藤妙椿のような大名の家来たちが実権を握っていく過程も興味深い。

寺社や公家が荘園から年貢が入らなくなってさまざまな手を打つ過程や、戦争で高い役職が割に合わなくて誰もやりたがらなくなるなど、合戦以外の話も随所で語られているのも面白い。

登場人物が多くてついていくのに少し苦労するが、これはテーマとなった合戦自体が複雑なためで、本書ではむしろよくここまで丁寧に分かりやすく書かれていることがすごいと思う。
少しマイナーなテーマなのにベストセラーになっているのは不思議な気もするが、読み応えのあるしっかりした内容であることは間違いない。






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戦国武将の明暗 (新潮新書)
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本郷 和人
新潮社 2015-03-14

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新解釈 関ヶ原合戦の真実 脚色された天下分け目の戦い


東大の史料編纂所教授による、関ヶ原の合戦前後を中心として戦国武将や関係者が何をしてどのような運命をたどったかについて語っている歴史エッセイ集。
『週刊新潮』に連載したものを単行本化したものである。

まずは通説と異なる話、例えば合戦の舞台が関ヶ原になったのは西軍から家康と内通が疑われていた小早川秀秋が松尾山を占拠したことによる偶発的なものだった可能性、伝わっているよりも秀秋軍が少なかったのではないかという疑惑、「大谷吉継の茶」や黒田官兵衛にまつわるエピソードのソースとなる史料が見つからないなど、史実と思い込んでいる話には怪しいものも多いことが分かって軽くショックを受ける。

他にも毛利輝元がいとこである吉川広家の手紙で「練れた人でない(要するにバカ)」と書かれるような甘さがあったこと、島津家が活躍できなかった背景には伊集院一族の反乱があったこと、「北陸の関ヶ原」では大谷吉継による切り崩し、西軍の丹羽長重の奮戦、前田利長の冴えなさなど、『天地人』の主人公として知られる直江兼続が出羽の長谷堂城(それほど堅固でもない)を落とせなかったのはそれほど戦いに強くなかったのでは?という疑惑など、関ヶ原の合戦にまつわる興味深い話がいくつも書かれている。

関ヶ原の合戦が終わった後に家康が実施した論功行賞や戦犯の処罰では、毛利や前田、加藤清正、京極高次、井伊直政といった具体的なケースから、身内へのケチさ、婿への甘さ、政治的な判断などが考察されているのも面白い。

全体的に題材は面白いが、少し文体に安定感がないようにも感じた。
著者はまえがきで、自分の本が売れないと自虐を語って本書で軽さを意識して書いたということだったが、それによって無理した感じが出たのかもしれない。
売れ行きが良くない理由は題材の選び方ではなく、文体や構成に起因しているのでは?と思ってしまった。

題材自体は面白いので、他の著作も読んでみようと思わせてはくれた。






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信長は光秀に「本能寺で家康を討て!」と命じていた (双葉新書)
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跡部 蛮
双葉社 2011-07-06

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織田信長 四三三年目の真実 信長脳を歴史捜査せよ!


本能寺の変は元々信長が自作自演である事件を起こそうと企て、実行を命じた腹心の光秀に裏切られたのではないかという見立てで書かれている歴史読み物。

基本的にはいわゆる陰謀説で、朝廷勢力、室町幕府勢力、そして信長政権内にいる協力者などの暗躍を推定していて、荒木村重の謀反が1回目の信長暗殺計画、そして本能寺の変が信長による謀略を逆手に取った2回目の暗殺計画に成功したという構図で描かれている。

著者も参考にしたと書いているように、明智憲三郎著『本能寺の変 427年目の真実』(ということは必然的に続編の『本能寺の変 431年目の真実』も)に近い形での考察がなされていて、著者によってこのように書き方が違うものなのかというところが分かる。

史料によっては本能寺が爆発したことを示唆するものもあるようだが、少し前に読んだ『信長はイエズス会に爆殺され、家康は摩り替えられた』と比較すると、現象は同じでもそれに至る背景はかなり異なった形で捉えることができるのも興味深い。

本能寺の変はタイムマシンでも発明されるようなことでもなければ真相が解明されることはないと思うので、これもまた説のひとつとして楽しめた。

それにしても先日読んだ『秀吉ではなく家康を「天下人」にした黒田官兵衛』と同様に、誤字やケアレスミスの記述があちこちに入っているのはつくづく残念である。
歴史読み物ではしばしば見られるような気もするが、予算的な問題なのか、時間的な問題なのかとちょっと考えてしまった。






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