読書-歴史小説(日本:戦国時代):雨読夜話

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“好敵手”(Ⅱ)正信と三成 豊臣政権滅亡―「天下一統」の流れを巡る二人の確執“好敵手”(Ⅱ)正信と三成 豊臣政権滅亡―「天下一統」の流れを巡る二人の確執

島 遼作
文芸社 2015-08-01

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本多正信と石田三成をライバル関係として対比して描いた歴史小説。
2人には27歳差と世代が異なって入るものの、関ヶ原の合戦に至る家康と秀吉、そして家康と三成の戦いを背景としてそれぞれの場面を切り替えながら話を進めている。

斬新な解釈とか意外性はさほどなく、登場人物が現代語でしゃべりすぎていたり一部の事実関係が少しあやしいなどの欠点はあるものの、話の組み立てが分かりやすいのと、人物描写がはっきりしているところが面白い。

主人公では正信が謀略の魅力に取り付かれた人物として、三成が頭はいいがじっと耐えることが苦手、正義感が強い分だけ他人の心情に疎いなどのキャラクターはイメージ通りというか、カリカチュアライズされている。

三成が高禄で召し抱えた島左近は戦国の男らしい強硬手段を好む人物となっていて、正々堂々とした手段を好む三成にまどろっこしさを感じながらも三成の魅力に引かれて忠実に仕事していくところが描かれている。

そして正信が仕える家康は、本質的には参謀を必要としないくらいの知性を持ちながらも家臣に意見を求める傾向や、必要に応じて喜怒哀楽を演じ分ける狸ぶり、ここぞというところで素早い行動をする意外性といった多くの面が描かれていて、本書で最も人物描写が優れていると感じた。

本能寺の変で伊賀越えを果たした後に光秀の仇討ちをすると言いながらも本音では甲信地方にターゲットを置いたり、天正壬午の乱や小牧・長久手の戦いになる前から戦後処理として北条氏や秀吉からいかに有利な条件を引き出すかを考えていたなど、家康・正信主従が謀略をめぐらせているシーンが特に面白かった。

現代語を多く使用している分だけ読みやすく、ドキュメンタリーのような感じを受けながら読んでいった。






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家康、江戸を建てる
家康、江戸を建てる門井慶喜
祥伝社 2016-02-09

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リンゴが腐るまで 原発30km圏からの報告‐記者ノートから‐ (角川新書)


家康とその家臣たちが秀吉に命じられて国替えで江戸に入ってから、いかに江戸と関東を発展させてきたかを描いた、歴史小説の連作。

5作に分かれていて、それぞれ利根川の東遷による治水、小判の発行、井の頭公園などからの上水道の敷設、江戸城の石垣造り、黒塗りの天守閣が主流だった時代に画期的だった白塗りの天守閣建設と、各種のインフラ建設について書かれている。

特に印象に残るのは家康から代官頭に任じられた伊奈忠次とその子孫が江戸で洪水を頻繁に起こしていた利根川を浦安付近、さらには鹿島灘へと東へ付け替える工事をした第1話で、NHKで放送されていた「プロジェクトX」を連想してしまった。

また、第2話で後藤庄三郎が本家の後藤家からの嫌がらせをはねのけて家康のもとで成功した話、第5話で秀忠が家康の構想した白い天守閣の意義を探る話なども面白かった。

初めて読んだ作家の作品だったが、話の進め方やセリフの入れ方などがなかなかいいので、他の作品も読んでみようかと思っている。






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関連タグ : 徳川家康,

家康の遺言
家康の遺言仁志 耕一郎
講談社 2015-03-19

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天下 家康伝 <上>
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家康自身と、関わりの深い人物を描いた5作の歴史短編集。
下記の5作で、家康がどのようなことを考えて行動してきたのかが伝わるような書き方となっている。
  • 家康の下を逐電して秀吉に奔った石川数正の苦悩と、逐電した理由を描いた「逢坂の難関」
  • 鳥居元忠が家康の命で伏見城に立てこもるに至る話である「不死身の月」
  • 渡辺守綱が、服部正成の影を意識することが多い「二人の半蔵」
  • 豊臣秀頼に嫁いだ家康の孫娘である千姫の話である「千の貝合わせ」
  • 家康が大阪の陣が終わった後に真田信繁らの亡霊に苦しめられる表題作

この中では、あまり歴史小説の主人公にならない「槍の半蔵」こと渡辺半蔵守綱と、家康の伊賀越えで活躍したことや半蔵門の地名で有名な「鬼の半蔵」こと服部半蔵正成の特別な関係を描く「二人の半蔵」が印象に残る。
冒頭で守綱が家康から高価な茶壺をプレゼントされてその意図が分からずに悩むところなどは、はっきりした指示を与えずに家臣に考えさせる手法を多用した家康らしさが伝わってくる。
また、不器用だが勝機の風を読むことに長けた守綱のキャラクターもいい。

それぞれの人物が家康に対して抱くイメージや、家康がいかに多くの困難を乗り越えて平和な世の中を築こうとしたのかなどがうまく描かれていて、興味深く読むことができたと思う。





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関連タグ : 徳川家康,

真田太平記(一)天魔の夏 (新潮文庫)
真田太平記(一)天魔の夏 (新潮文庫)
池波 正太郎
新潮社 1987-09-30

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池波正太郎による、真田昌幸、信幸(後の信之)、信繁(幸村)の父子を中心に、真田家にまつわる多くの人々が戦国の世の中を活躍する歴史長編。
就職活動の頃に電車の中で読んでいたもので、これまでに読んだ長編小説の中でも最長となる。

ちなみにそれに次ぐのが田中芳樹の『アルスラーン戦記』(10巻くらいで読むのをやめた)、鷹見一幸の『宇宙軍士官学校』(7巻で継続中)、今野敏の『宇宙海兵隊ギガース』(全6巻)あたりとなる。

時期としては本能寺の変による混乱の時期から、大阪夏の陣の後で幕藩体制が確立されていく時期までを扱っていて、それに至るまでに徳川による上田攻め、秀吉による北条家との戦い、朝鮮出兵、関ヶ原の合戦と、多くの戦いが出てくる。

昌幸は元々は武田信玄に従っていて、武田家滅亡後は織田、徳川、北条、上杉、豊臣と多くの大大名に囲まれた中で複雑な動きをして生き延び、秀吉から「表裏比興の者」と呼ばれている。

そして家康の重臣である本多忠勝の娘を妻とした信幸、秀吉の家臣である大谷吉継の娘を妻とした信繁と立場が異なっていき、関ヶ原で敵味方に分かれることとなる。

外交や合戦だけでなく、真田忍者と徳川家に仕える甲賀忍者の戦いがあったり、信幸・信繁兄弟と親しい真田家家臣で出生に秘密がありそうな樋口角兵衛が暴れまくるなど多くの出来事が発生する。

かなり長い作品ではあるが、セリフが「うむ」とか「いかさま」のように簡潔なものが多かったり、文章やストーリー展開のテンポがいいこともあり、長さを考えるとかなり早く読み終えることができた記憶がある。

来年のNHK大河ドラマが堺雅人が真田幸村を演じる「真田丸」が放送される予定なので、読み返すのもいいかもしれないと思っている。






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天下 家康伝 <下>
天下 家康伝 <下>
火坂 雅志
日本経済新聞出版社 2015-04-25

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天下 家康伝 <上>
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常在戦場 (文春文庫)
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火坂雅志による、家康を主人公とした歴史小説の下巻。

上巻では人物描写や設定で入り込めないところもあったが、後半に入ると家康がどんどん成熟していくこともあってか、上巻で書かれた部分が伏線として活きたりして面白くなっていく。

築山殿事件、武田攻め、本能寺の変後の伊賀越え、天正壬午の乱(北条氏などとの旧武田領争奪戦)、小牧・長久手の合戦をはじめとする秀吉との駆け引きなど、後半生の出来事が活き活きと描かれている。

本多正信の策士ぶり、ワタリと縁の深い鳥居元忠の情報収集、側室の阿茶の局によるサポートなど、家康の家来たちによる活躍の他、著者の『臥龍の天』の主人公である伊達政宗や『虎の城』の藤堂高虎なども家康と密接に関わっていく。
上巻で家康に領土を奪われた今川氏真も、お調子者で蹴鞠の名手として権力者に擦り寄るダメぶりを楽しませてくれる。

家康が信長・秀吉の末路を見て権力の恐ろしさを感じるとともに、万民のためにあるべき天下の形を考えながら徐々に成熟していく姿が興味深い。
関ヶ原の合戦シーンは描かずに、天正壬午の乱や小牧・長久手の合戦について多くのページを割いているのもいい。

家康が残した、「大黒の極意」(大黒天は普段頭巾をかぶっているが、いざという時にはかなぐり捨てる)や、「天下は一人の天下にあらず、天下は天下の天下なり」という言葉も終章で紹介されているのが味わい深い。

著者は今年の2月に58歳で逝去されていて、もう次の作品を読むことができないのが残念である。
本書の上巻を読んだ時点では厳しい評価をしてしまったことをお詫びするとともに、ご冥福をお祈り申し上げます。




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