読書-歴史小説(日本:戦国時代):雨読夜話

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謙信の軍配者
謙信の軍配者富樫 倫太郎
中央公論新社 2011-07

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信玄の軍配者
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哄う合戦屋 (双葉文庫)
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『早雲の軍配者』『信玄の軍配者』に続く、軍配者三部作の完結編。

小太郎、四郎左に続き、今回は曾我冬之助が長尾景虎(上杉謙信)のもとで、宇佐美冬之助定行と名を改めた上で軍配者として活躍する。

その冬之助が仕える景虎は、軍事では天才的なひらめきで兵法の常識と異なる戦法で勝つ一方、政治や外交はほとんど関心がないなど、かなり際立ったキャラクター設定となっている。

合戦以外にはあまり関心のない冬之助は、くせの強すぎるこの主君とウマが合い、しばしばお互いを補うようなシーンが出てくる。

また、長尾氏と対立する武田氏に仕える『信玄の軍配者』の山本勘助こと四郎左も前作に続いて多く登場し、景虎とともに冬之助を食ってしまっている。
北条氏に仕える『早雲の軍配者』こと風摩小太郎も含め、友人でもありライバルでもあるという関係が随所で書かれている。

舞台として多く登場するのは老獪さを身につけた武田信玄と景虎が対立する北信濃で、川中島の合戦という形で戦いが繰り広げられる。
それに加えて景虎の奇行や関東の支配者をかけての長尾と北条の対立なども書かれていて、クライマックスである第四次川中島の合戦に向けてストーリーが進んでいく。

冬之助、四郎左、小太郎をはじめとして、景虎や信玄、そして彼らの家臣たちなど個性豊かな登場人物が話を盛り上げていく。

三部作ということでけっこう長いスパンで構成され、かなり読みごたえがあって面白かったと思う。
著者の他の作品も読んでみたい。



[著者の他の作品]

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信玄の軍配者
信玄の軍配者富樫 倫太郎
中央公論新社 2010-12

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早雲の軍配者
哄う合戦屋 (双葉文庫)
小太郎の左腕
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戦国時代の軍師たちの活躍を描いた『早雲の軍配者』の続編で、軍配者三部作の第2作に当たる歴史小説。
前作にも登場した、山本勘助こと四郎左が主人公となっている。

足利学校に続いて建仁寺でも兵法を学んだ四郎左だったが、大名家への仕官がかなわないばかりか駿河の今川家で囚われの身となってしまい、40歳過ぎまで世に出ることができなくなってしまう。

その後クーデターで今川家に軟禁されている無人斎(武田信虎)と出合ったことをきっかけに駿河を脱出し、無人斎を追放した無人斎の長男・武田晴信(信玄)の軍師になることに成功する。

若い晴信に認められた四郎左はその軍略の才を見せ、高遠氏や小笠原氏が割拠する信濃攻略に大活躍していくことになる。

武田の重臣には原虎胤、春日源五郎(後の高坂昌信)、板垣信形、海野源太左衛門(後の真田幸隆)、駒井高白斎など個性豊かな人々が登場し、ストーリーを盛り上げていく。

また、『早雲の軍配者』の主人公だった風摩小太郎、二人の友人である曾我冬之助も重要なところで顔を出し、前作と次回作とのつながりを持たせるようにしているのもいい。

前作同様、表紙のイラストがかっこいい。
次回作『謙信の軍配者』も読んでみたい。



[冬之助が主人公となる、本書の続編]
謙信の軍配者
「謙信の軍配者」
 著者:富樫 倫太郎
 出版:中央公論新社
 発売日:2011-07
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早雲の軍配者
早雲の軍配者富樫 倫太郎 (著)
中央公論新社 2010-02

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プロメテウス・トラップ (ハヤカワ・ミステリワールド)
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小太郎の左腕


北条早雲に見出された少年が、さまざまな経験を積むことで北条家の軍配者として成長していく過程を描いた歴史小説。
扱われているのが好きな戦国大名の一人である北条早雲関連で、カバーに描かれた主人公のイラストもNARUTOっぽくてかっこいいのに興味を引かれて早速読んだ。

伊豆・相模の2カ国を一代で征服した伊勢宗瑞(北条早雲)は、孫の千代丸(後の氏康)の代に補佐となりうる有望な少年を探しており、韮山の寺で雑用をこなす小太郎という少年を住職から紹介される。
その小太郎は北条家で働く忍者の遺児で、武芸や忍術よりも学問において飛びぬけた才能を示すことが分かり、軍配者となるべき下野の足利学校へ派遣されることとなる。
やがて様々な苦難や出会いを経験した小太郎は北条軍の一員となり、足利学校での学友と戦場で出会うなど多くの出来事が起こり奮闘していくこととなる。

軍配者というのは一般的にイメージされる軍師や参謀という役割の他に、易や陰陽道などの占い、気象予測、戦場での作法など範囲が多岐に渡る役職であり、特に軍事的才能のある軍配者は引っ張りだこだったことが書かれている。
以前読んだ『戦国名軍師列伝』では大友家の角隈石宗や島津家の川田義朗などが典型的な軍配者だったらしい。

本書で舞台となっているのがこれまであまり扱われていない北条氏綱の代における関東で、北条氏と扇谷上杉氏の武蔵をめぐっての合戦が描かれているのが新鮮に感じる。
小説としても、小太郎や早雲の他にも十兵衛や四郎左、冬之介など魅力的なキャラクターが多数登場して一気に読み進んでいくことができた。
一昨年ブレイクした『のぼうの城』よりも面白かったと思う。


[山本勘助が主人公として活躍する、本書の続編]
信玄の軍配者
「信玄の軍配者」
 著者:富樫 倫太郎
 出版:中央公論新社
 発売日:2010-12
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空白の桶狭間
空白の桶狭間加藤 廣 (著)
新潮社 2009-03-27

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明智左馬助の恋
謎手本忠臣蔵 下
謎手本忠臣蔵 上
秀吉の枷〈下〉 (文春文庫)
秀吉の枷 (下)


『信長の棺』に始まる加藤廣の歴史ミステリーにおける桶狭間の合戦編。

通説では桶狭間で休息していた今川軍の本営に対して織田軍が奇襲攻撃をかけて今川義元を討ち取ったとされているが、実は奇襲はなかった・・・という書き方がされている。

本書での主人公は秀吉(木下藤吉郎)で、川並衆の蜂須賀小六と前野小右衛門をたずねるところから始まる。
秀吉は『秀吉の枷』と同様に山の民の出身という設定となっており、今川軍が兵力として圧倒的に有利で、しかも武田から雇い入れた今川忍者が多数潜入しているという絶望的な状況を打開するために謀略を仕掛けていくことになる。

信長、義元、松平元信(家康)といった主要人物たちの思惑と、それらをうまく利用しつつプロジェクトを進める秀吉という構図でストーリーが進む。

設定の面白さもさることながら、信長が兵農分離や楽市楽座の政策を進めた背景には尾張の産業事情があり、商品作物の栽培が盛んで女性依存度が高くて暇な男性がいたことや、商品作物を売りさばく必要性があったことなども書かれているのが興味深い。


[本書の文庫版]
空白の桶狭間 (新潮文庫)
「空白の桶狭間 (新潮文庫)」
 著者:加藤 廣
 出版:新潮社
 発売日:2011-09-28
 価格:¥ 500
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[著者による歴史小説以外の作品]
豊かさの探求―『信長の棺』の仕事論 (新潮文庫)
「豊かさの探求―『信長の棺』の仕事論 (新潮文庫)」
 著者:加藤 廣
 出版:新潮社
 発売日:2007-09-28
 価格:¥ 420
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関連タグ : 加藤廣,

風は山河より 第一巻
風は山河より 第一巻
宮城谷 昌光
新潮社 2006-11-30

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風は山河より 第二巻
風は山河より 第三巻
風は山河より 第四巻
風は山河より〈第5巻〉
新 三河物語〈中巻〉

戦国時代、三河の豪族で松平家=徳川家に仕えた野田城主の菅沼定則(さだのり)・定村(さだすえ)・定盈(さだみつ)と、菅沼三代の生涯を描いた歴史小説。

3人が松平家の清康、広忠、家康とそれぞれほぼ同世代で重なっており、松平家を盟主とする三河の諸族が周囲の今川氏、織田氏、武田氏などに対して苦闘を続ける歴史が語られる。

野田の菅沼氏では初代の定則が三河の英雄といえる清康に従うあたりから始まり、その後松平氏を従えた形の今川義元のために心ならずも戦う定村、そして同年生まれの家康に仕えて信任を受け、野田城にて武田信玄の大軍を食い止めるという大業を成し遂げる定盈と、それぞれが活躍を繰り広げていく。

また、定則が関東から逃れてきた貴人の子と思われる少年を保護し、その少年が成長して野田四郎と名を改めて菅沼家を支え、副主人公的な位置づけとなる。

清康から始まる松平家の活動や家康の三河平定のための戦い、そして牧野や戸田、奥平など諸豪族の生きるための苦難、特に家族や家臣たちが次々と戦いの中命を落とすところや故郷を守るための意地などが情感豊かに描かれていて非常に読み応えがある。

主人公たち以外のキャラクター的には、英雄らしさあふれる清康や恩讐を忘れない家康、菅沼氏の上司に当たり水際立った指揮を見せる酒井忠次など、多彩な人物が登場して活躍する。

また、敵役で逆らった者の人質を無慈悲に処刑する今川氏真とその家臣の小原鎮実、侵略した地方の寺社を無造作に放火しながら進軍する武田信玄率いる武田軍団などについてもよく描かれており、武田信玄に対する好感度がかなり下がってしまった。

全国的に菅沼定盈は”誰それ?”的なマイナーな武将のはずで、この題材をよくここまでの大作に仕上げてあるとつくづく感心する。

少数の兵を率いて圧倒的な大軍と戦うというシチュエーションだけでいうと、現在売れまくっている『のぼうの城』(未読)に通じるものがあるので、読み比べてみるのもいいかもしれない。


のぼうの城
「のぼうの城」
 著者:和田 竜
 出版:小学館
 発売日:2007-11-28
 価格:¥ 1,575
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[本書の文庫版]

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