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読書-歴史小説(日本:戦国時代):雨読夜話

ここでは、「読書-歴史小説(日本:戦国時代)」 に関する記事を紹介しています。



柳田知怒夫 童門冬二 (著)
1979/1/1


戦国武将5人が登場するオムニバス型の「戦国の名将たち」と、ポルトガル人から種子島に鉄砲が伝来してその製法についての言い伝えを元とした「鉄砲伝来物語」の2作から構成される歴史小説。

小学生か中学生の頃に親戚からもらって自宅に置いてあったものを読んだと記憶していて、振り返ると本作が戦国武将たちに対するイメージを持つのに影響があった作品だと考えている。

「戦国武将物語」では、三好氏から圧迫されていた室町幕府13代将軍足利義輝の5人の側近たちが、それぞれ北条氏康、上杉謙信、武田信玄、今川義元、毛利元就の5人のところに派遣され、室町幕府を助けるために上洛を働きかけるというストーリーになっている。

5人が戦国武将に仕える過程でそれぞれのキャラクターが伝わってくるところが、今思うと丁寧に作り込まれた構成だったと思う。

多分本書を読んでいなかったら、後北条氏と対立した上杉氏や中国地方で毛利元就が台頭する前に勢力を誇った大内氏や尼子氏の話など、知ることが遅くなった可能性が高いような気がする。

そして「鉄砲伝来物語」は、鉄砲が伝来した種子島で領主から鉄砲の制作を命じられた職人が…という話で、印象には残っているものの、「言い伝え自体がちょっと苦しいんじゃ?」という感想を持った記憶がある。

いい作品は記憶に残ると感じたり、現在再読したとしても当時ほど面白くは読めないだろうと思ったりした。




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謙信の軍配者富樫 倫太郎
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信玄の軍配者
早雲の軍配者
哄う合戦屋 (双葉文庫)
呉越春秋 湖底の城 第二巻
北條龍虎伝 (新潮文庫)


『早雲の軍配者』『信玄の軍配者』に続く、軍配者三部作の完結編。

小太郎、四郎左に続き、今回は曾我冬之助が長尾景虎(上杉謙信)のもとで、宇佐美冬之助定行と名を改めた上で軍配者として活躍する。

その冬之助が仕える景虎は、軍事では天才的なひらめきで兵法の常識と異なる戦法で勝つ一方、政治や外交はほとんど関心がないなど、かなり際立ったキャラクター設定となっている。

合戦以外にはあまり関心のない冬之助は、くせの強すぎるこの主君とウマが合い、しばしばお互いを補うようなシーンが出てくる。

また、長尾氏と対立する武田氏に仕える『信玄の軍配者』の山本勘助こと四郎左も前作に続いて多く登場し、景虎とともに冬之助を食ってしまっている。
北条氏に仕える『早雲の軍配者』こと風摩小太郎も含め、友人でもありライバルでもあるという関係が随所で書かれている。

舞台として多く登場するのは老獪さを身につけた武田信玄と景虎が対立する北信濃で、川中島の合戦という形で戦いが繰り広げられる。
それに加えて景虎の奇行や関東の支配者をかけての長尾と北条の対立なども書かれていて、クライマックスである第四次川中島の合戦に向けてストーリーが進んでいく。

冬之助、四郎左、小太郎をはじめとして、景虎や信玄、そして彼らの家臣たちなど個性豊かな登場人物が話を盛り上げていく。

三部作ということでけっこう長いスパンで構成され、かなり読みごたえがあって面白かったと思う。
著者の他の作品も読んでみたい。




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信玄の軍配者
信玄の軍配者富樫 倫太郎
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早雲の軍配者
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戦国時代の軍師たちの活躍を描いた『早雲の軍配者』の続編で、軍配者三部作の第2作に当たる歴史小説。
前作にも登場した、山本勘助こと四郎左が主人公となっている。

足利学校に続いて建仁寺でも兵法を学んだ四郎左だったが、大名家への仕官がかなわないばかりか駿河の今川家で囚われの身となってしまい、40歳過ぎまで世に出ることができなくなってしまう。

その後クーデターで今川家に軟禁されている無人斎(武田信虎)と出合ったことをきっかけに駿河を脱出し、無人斎を追放した無人斎の長男・武田晴信(信玄)の軍師になることに成功する。

若い晴信に認められた四郎左はその軍略の才を見せ、高遠氏や小笠原氏が割拠する信濃攻略に大活躍していくことになる。

武田の重臣には原虎胤、春日源五郎(後の高坂昌信)、板垣信形、海野源太左衛門(後の真田幸隆)、駒井高白斎など個性豊かな人々が登場し、ストーリーを盛り上げていく。

また、『早雲の軍配者』の主人公だった風摩小太郎、二人の友人である曾我冬之助も重要なところで顔を出し、前作と次回作とのつながりを持たせるようにしているのもいい。

前作同様、表紙のイラストがかっこいい。
次回作『謙信の軍配者』も読んでみたい。




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早雲の軍配者
早雲の軍配者富樫 倫太郎 (著)
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叫びと祈り (ミステリ・フロンティア)
鉄の骨
小太郎の左腕


北条早雲に見出された少年が、さまざまな経験を積むことで北条家の軍配者として成長していく過程を描いた歴史小説。
扱われているのが好きな戦国大名の一人である北条早雲関連で、カバーに描かれた主人公のイラストもNARUTOっぽくてかっこいいのに興味を引かれて早速読んだ。

伊豆・相模の2カ国を一代で征服した伊勢宗瑞(北条早雲)は、孫の千代丸(後の氏康)の代に補佐となりうる有望な少年を探しており、韮山の寺で雑用をこなす小太郎という少年を住職から紹介される。
その小太郎は北条家で働く忍者の遺児で、武芸や忍術よりも学問において飛びぬけた才能を示すことが分かり、軍配者となるべき下野の足利学校へ派遣されることとなる。
やがて様々な苦難や出会いを経験した小太郎は北条軍の一員となり、足利学校での学友と戦場で出会うなど多くの出来事が起こり奮闘していくこととなる。

軍配者というのは一般的にイメージされる軍師や参謀という役割の他に、易や陰陽道などの占い、気象予測、戦場での作法など範囲が多岐に渡る役職であり、特に軍事的才能のある軍配者は引っ張りだこだったことが書かれている。
以前読んだ『戦国名軍師列伝』では大友家の角隈石宗や島津家の川田義朗などが典型的な軍配者だったらしい。

本書で舞台となっているのがこれまであまり扱われていない北条氏綱の代における関東で、北条氏と扇谷上杉氏の武蔵をめぐっての合戦が描かれているのが新鮮に感じる。
小説としても、小太郎や早雲の他にも十兵衛や四郎左、冬之介など魅力的なキャラクターが多数登場して一気に読み進んでいくことができた。
一昨年ブレイクした『のぼうの城』よりも面白かったと思う。




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空白の桶狭間
空白の桶狭間加藤 廣 (著)
新潮社 2009-03-27

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明智左馬助の恋
謎手本忠臣蔵 下
謎手本忠臣蔵 上
秀吉の枷〈下〉 (文春文庫)
秀吉の枷 (下)


『信長の棺』に始まる加藤廣の歴史ミステリーにおける桶狭間の合戦編。

通説では桶狭間で休息していた今川軍の本営に対して織田軍が奇襲攻撃をかけて今川義元を討ち取ったとされているが、実は奇襲はなかった・・・という書き方がされている。

本書での主人公は秀吉(木下藤吉郎)で、川並衆の蜂須賀小六と前野小右衛門をたずねるところから始まる。
秀吉は『秀吉の枷』と同様に山の民の出身という設定となっており、今川軍が兵力として圧倒的に有利で、しかも武田から雇い入れた今川忍者が多数潜入しているという絶望的な状況を打開するために謀略を仕掛けていくことになる。

信長、義元、松平元信(家康)といった主要人物たちの思惑と、それらをうまく利用しつつプロジェクトを進める秀吉という構図でストーリーが進む。

設定の面白さもさることながら、信長が兵農分離や楽市楽座の政策を進めた背景には尾張の産業事情があり、商品作物の栽培が盛んで女性依存度が高くて暇な男性がいたことや、商品作物を売りさばく必要性があったことなども書かれているのが興味深い。




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