童門 冬二 (著)
青春出版社 (2002/7/1)
藤堂高虎について読んだ、多分初めての歴史小説。
久しぶりに読み返した。
二番手での生きがいや、城づくりというやりたいことを実現するためにも、現在の仕事を手を抜かずに尽力することや、出世しすぎて周囲のやっかみを買わないようにするなど、サラリーマン的な感じで高虎が描かれているのが面白い。
羽柴秀長や徳川家康、本多正信、天海僧正といった周囲の人々との関係性も、多少作家の想像が行き過ぎている気がしなくもないが、そんなことを考えていたのかもしれないと思ったりもした。
分かりやすい構成や文体で書かれていて、読みやすい。

司馬 遼太郎 (著)
講談社 (2004/1/16)
司馬遼太郎による、黒田官兵衛孝高の生涯を描いた歴史小説。
中学生か高校生の頃、官兵衛について書かれた作品としては初めて読んだものである。
播磨の小寺家の新興の家老の息子に生まれ、有り余る才能を振るいたい意欲に燃えていた時期、秀吉との出会い、播磨の諸勢力が信長に離反した際に仲間たちから裏切られて有岡城で囚われた苦難の時期、そして解放後の心理的変化など、多くの場面を思い起こす。
最初に読んだのが本書だったためか、官兵衛については策謀家というイメージよりも、ちょっと山っ気のある芸術家肌の人物という印象を持つようになっている。
また、桔梗色のおしゃれな服装をしていて周囲の人々から評判になっていたシーンや、栗山善助のような家臣たちに恵まれていた話など、思い起こすと司馬作品の人物描写が良かったのだと感じる。
また読み返すかもしれない、思い出の1冊となっている。

明智光秀=天海僧正説をネタにした歴史小説。
通販で、小説ではなく歴史読み物と思い込んで購入してしまった。
この手の説について予備知識がない状態で読めばそれなりに面白かったのかもしれないが、既に『本能寺の変 生きていた光秀』のような歴史読み物を読んで予備知識がある状態からは目新しいことも少なく、斜め読みになってしまった。
・・・たまにはこんなこともある。
- 関連記事
- 『本能寺の変 生きていた光秀』
- 『天下統一の闇史―秀吉・信長・家康 戦国「炎の巻」』
- 『信長殺し、光秀ではない』
- 『謀殺―続・信長殺し、光秀ではない』
- 『光秀からの遺言: 本能寺の変436年後の発見』

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本多正信と石田三成をライバル関係として対比して描いた歴史小説。
2人には27歳差と世代が異なって入るものの、関ヶ原の合戦に至る家康と秀吉、そして家康と三成の戦いを背景としてそれぞれの場面を切り替えながら話を進めている。
斬新な解釈とか意外性はさほどなく、登場人物が現代語でしゃべりすぎていたり一部の事実関係が少しあやしいなどの欠点はあるものの、話の組み立てが分かりやすいのと、人物描写がはっきりしているところが面白い。
主人公では正信が謀略の魅力に取り付かれた人物として、三成が頭はいいがじっと耐えることが苦手、正義感が強い分だけ他人の心情に疎いなどのキャラクターはイメージ通りというか、カリカチュアライズされている。
三成が高禄で召し抱えた島左近は戦国の男らしい強硬手段を好む人物となっていて、正々堂々とした手段を好む三成にまどろっこしさを感じながらも三成の魅力に引かれて忠実に仕事していくところが描かれている。
そして正信が仕える家康は、本質的には参謀を必要としないくらいの知性を持ちながらも家臣に意見を求める傾向や、必要に応じて喜怒哀楽を演じ分ける狸ぶり、ここぞというところで素早い行動をする意外性といった多くの面が描かれていて、本書で最も人物描写が優れていると感じた。
本能寺の変で伊賀越えを果たした後に光秀の仇討ちをすると言いながらも本音では甲信地方にターゲットを置いたり、天正壬午の乱や小牧・長久手の戦いになる前から戦後処理として北条氏や秀吉からいかに有利な条件を引き出すかを考えていたなど、家康・正信主従が謀略をめぐらせているシーンが特に面白かった。
現代語を多く使用している分だけ読みやすく、ドキュメンタリーのような感じを受けながら読んでいった。

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家康の遺言 | |
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家康自身と、関わりの深い人物を描いた5作の歴史短編集。
下記の5作で、家康がどのようなことを考えて行動してきたのかが伝わるような書き方となっている。
- 家康の下を逐電して秀吉に奔った石川数正の苦悩と、逐電した理由を描いた「逢坂の難関」
- 鳥居元忠が家康の命で伏見城に立てこもるに至る話である「不死身の月」
- 渡辺守綱が、服部正成の影を意識することが多い「二人の半蔵」
- 豊臣秀頼に嫁いだ家康の孫娘である千姫の話である「千の貝合わせ」
- 家康が大阪の陣が終わった後に真田信繁らの亡霊に苦しめられる表題作
この中では、あまり歴史小説の主人公にならない「槍の半蔵」こと渡辺半蔵守綱と、家康の伊賀越えで活躍したことや半蔵門の地名で有名な「鬼の半蔵」こと服部半蔵正成の特別な関係を描く「二人の半蔵」が印象に残る。
冒頭で守綱が家康から高価な茶壺をプレゼントされてその意図が分からずに悩むところなどは、はっきりした指示を与えずに家臣に考えさせる手法を多用した家康らしさが伝わってくる。
また、不器用だが勝機の風を読むことに長けた守綱のキャラクターもいい。
それぞれの人物が家康に対して抱くイメージや、家康がいかに多くの困難を乗り越えて平和な世の中を築こうとしたのかなどがうまく描かれていて、興味深く読むことができたと思う。
