読書-伝記(世界):雨読夜話

ここでは、「読書-伝記(世界)」 に関する記事を紹介しています。


北条氏康 関東に王道楽土を築いた男 (PHP新書)
北条氏康 関東に王道楽土を築いた男 (PHP新書)
伊東 潤 板嶋 恒明
PHP研究所 2017-09-16

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戦国時代の北条氏において、勢力を伸ばすことに大きく貢献した三代目の北条氏康の事跡や関東における戦乱、北条氏の代ごとの事情などを解説している作品。
歴史ライターの板嶋氏の原稿を、歴史作家の伊東氏が分かりやすくした構成のようである。

北条氏の治世の特徴としては中間搾取を減らして年貢を安くしたり、法令や統治組織を整えるといった戦国大名の中でも特に民のことを考えた政治をやっていたことで、北条氏の後に関東を治めた家康が統治に苦労したことからもそれは伝わってくる。

そして氏康が用いていた印判には「祿壽應穩」(ろくじゅおうおん、民の財産と生命を守るという意味)と書かれていて、例えば信長の『天下布武』などと比較するとかなり印象が異なる。

北条氏が戦ってきたのは元々領土を奪ってきた山内上杉氏・扇谷上杉氏の関東管領家あたりから、古河公方足利氏、安房の里見氏、そして氏康に敗れた山内上杉憲政を保護した上杉謙信などで、河越夜戦や2度にわたる国府台の戦い、小田原城籠城戦など多くの戦いが描かれている。

そして氏康の戦い方は父・氏綱から伝えられた義のために戦うということの他、領民を苦しめないために大会戦を避けたり、できるだけ無理をしない戦い方が目立っている。
(特に、明らかにやばい上杉謙信とはできるだけ正面から戦わないようにしている)
もっとも、河越夜線のようにここぞという時は果敢な戦いもしていて、自ら剣を振るうことも多かったようである。

暗君扱いされることが多い息子の氏政にも危機管理能力に優れた慎重な人物と評価していて、もう少し思い切りが良ければ北条氏が滅ぼされることはなかったかもしれないとしている。
武田氏・今川氏との三国同盟についても、武田信玄が駿河への執着によって同盟破棄をせずに継続していたら、三氏とも滅びなかった可能性があったというIFの話も興味深い。

周囲に武田信玄、上杉謙信、今川義元、徳川家康といった目立つ戦国大名たちと領地を接していながら戦うことが多かったのは知名度が低い地方勢力だったり、華々しい滅び方をしたわけでもないこと、記録が欠落しているなどの理由があって少し地味な印象がある北条氏だが、その地域にあった政治や外交、合戦などをしてきたことが伝わってきて、思っていた以上に興味深く読むことができた。






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中国説客(ぜいかく)列伝 (徳間文庫)中国説客(ぜいかく)列伝 (徳間文庫)

守屋 洋
徳間書店 1986-09

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中国の戦国時代に、弁舌の力で活躍した人物を紹介している作品。

主に扱われているのは張儀、蘇秦、范雎(はんしょ)、呂不韋、呉起、田単ら9名で、この時代を舞台とした漫画である『キングダム』でも登場人物や過去の人物として登場している。

彼らの出身国を見ると趙、魏、斉のように中央に近い国の出身者が多く、楚や秦のような辺境の国の出身者が少ないように見える。
これは楚や秦が大国で他国との交流が比較的少ないこと、武力に訴えがちな傾向があるなどの理由から、知略に長けた人物が育ちにくかったのかもしれない。

単純に正攻法で説得を試みると王から反発される可能性が高く、例え話や婉曲な言い回し、相手の心理状況を読み取った上での言動など、さまざまなテクニックを用いたことが伝わってくる。

この点で同時代人だった孟子は正直すぎて、同僚の説客からからかわれているシーンも書かれている。
また、呉起のように仕事熱心すぎて周囲から孤立した人物の悲劇も書かれていて、組織で活動する上での課題と捉えることもできる。

興味深かったのは蘇秦の話で、彼は『史記』は合従策の提唱者として六カ国の宰相を兼任したように書かれているが、『戦国策』などによると燕の密命を受けて斉で謀略活動をしていただけとあり、かなりスケールが小さくなってしまっている。
これは陳舜臣の『中国の歴史(二) 』にも書かれていたように、合従策を推進した人が何人もいて、その業績が蘇秦に集約されたという説が妥当なようである。

本書の元ネタはおそらく『史記』と『戦国策』がほとんどだと思われ、この2冊の関連書を読んでいたので目新しい部分が少なかったが、予備知識があまりない状態で読む分には分かりやすいのではないかと思う。





華僑の大富豪が教えてくれた「中国古典」勝者のずるい戦略: 欲しい「答え」はここにある (知的生きかた文庫)華僑の大富豪が教えてくれた「中国古典」勝者のずるい戦略: 欲しい「答え」はここにある (知的生きかた文庫)

大城 太
三笠書房 2017-01-23

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関連タグ : 守屋洋,

中国知将「一日一話」―練りに練られた「知恵の宝庫」 (知的生きかた文庫)中国知将「一日一話」―練りに練られた「知恵の宝庫」 (知的生きかた文庫)

篠原 央憲
三笠書房 2005-09

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中国史上の23人における知恵や行動力などをピックアップし、『孫子』や『呉子』といった古典の言葉と関連付けて解説している作品。

管仲、無忌(信陵君)、呂不韋、張良、季布のように『史記』の列伝などで扱われている人物、曹操や諸葛孔明、司馬仲達のような『三国志』で有名な人物の話は既に知っていることが多く、あまり響くところはなかった。

ただ、(司馬遷の死後に活躍したために)『史記』で扱われていない霍光の業績や、横山光輝の漫画版『三国志』では孔明と張り合うシーンばかりが印象に残っていた周瑜の戦略などはあまり知らなかったので、興味深く読んだ。

そして西晋以後の時代における王導(東晋の宰相)、石勒(後趙国皇帝)、狄仁傑(てきじんけつ:則天武后の宰相)といった、日本での知名度が低いと思われる人物の話も面白かった。
特に、狄仁傑は多分本書で初めて知った人物だと思う。

ページ数の関係上、それぞれの人物の扱いはポイントを絞ったものとなっている。
面白い話はもっとあるはずなので、あくまで他の本を読む前の入口として読むのがいいと思う。






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春秋戦国時代 武将列伝
春秋戦国時代 武将列伝
Suniwa
双葉社 2014-08-20

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人気漫画『キングダム』に便乗して出されたと思われる、中国の春秋戦国時代の人物を紹介したコンビニ本。
メインは戦国時代の武将だが、タイトルから「春秋」を外すと日本の戦国時代と区別がつかないためか、申し訳程度に孔子や老子、墨子といった春秋時代の諸子百家も収録している。

既に事跡を知っている人物も多いが、
  • 斉の威王と宣王は、実は「威宣王」という1人の王の事跡が分かれて伝わったという説
    (日本で斎藤道三が1人ではなく、父子の2代だったという説の逆)
  • 桓齮(かんき)という秦の将軍が燕に亡命し、荊軻(けいか)による始皇帝暗殺未遂事件に登場する樊於期(はんおき)は同一人物という説
  • 『キングダム』にも軍師タイプとして登場する昌平君という楚の王族出身で秦の宰相に出世した人物が、楚の滅亡に際して楚王に擁立されて秦と戦った話
など、本書で初めて知る話もけっこうあり、興味深い。

『キングダム』に登場するが架空の人物だと思っていた麃公(ひょうこう)や龐煖(ほうけん)が史書に残る実在の人物だったらしいことにも少々驚くとともに、『キングダム』を甘く見てはいけないとも思った。

天下統一を果たした秦には記録が多く残っているだけあって商鞅、張儀、白起、王翦(おうせん)、蒙恬(もうてん)、李斯、李信と人材豊富なのは当然として、隣国で秦との戦争が多かった趙でも藺相如(りんしょうじょ)、廉頗(れんぱ)、趙奢(ちょうしゃ)、平原君、李牧とそこそこ人材がいるように見えるが、秦による離間工作や王との反目によって失脚したり非業の死を遂げる事例が多いなど、王が人材を使いこなせなかった印象が強い。

秦と国境を接していたという条件では趙と同じはずの楚や魏、韓で扱われている人数が少ないように見えるのは、楚では王族・貴族の既得権益が強くて抜擢が少なかったため、魏では戦国時代の初期だけしか有能な君主が出なくて秦で出世した范雎(はんしょ)のように人材が流出したため、韓では単純に国が弱小すぎて活躍のしようがなかったためではないかと考えている。

そして、秦から距離があって直接の合戦が少なかったと思われる燕と斉で扱われている人物が少ないようなのは、秦の記録に残らなかっただけと考えると辻褄は合う。

秦が勝者となったのは、3人に1人くらいは有能な君主が出たこと、外交や法制などの基本方針が継続できていたこと、趙や斉のようにここぞというところで壊滅的な負け方をしていないこと、外国人の登用に寛容だったことなども大きな要因なのだろう。

誤字、誤植、雑な記述があちこちに出てくるのは読んでいて非常に引っかかるが、まずまず楽しめたと思う。






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スティーブ・ジョブズ名語録 (PHP文庫)
スティーブ・ジョブズ名語録 (PHP文庫)
桑原 晃弥
PHP研究所 2010-08-02

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アップルの経営者として知られるスティーブ・ジョブズが語った言葉96を、エピソードとともに紹介している作品。

ジョブズに関してそれほど予備知識がなかったが、アップルを追放された後に『トイズ・ストーリー』がヒットしたピクサーのCEOを務めたり、アップル復帰後にマイクロソフトとの業務提携を成功させたことなど、想像していたよりもさまざまな分野で業績を上げていたことに驚く。

ジョブズが語った言葉には勇気を与えられるもの、不可能を可能にさせてくれそうなもの、絶妙な言い回しで本質を突いているものなど、強烈な個性を持っていた人物だったことが伝わってくる。

その個性の強さのために嫌われたり、一度手を組んだパートナーと決別したことも多かったようで、毒舌を吐いた言葉も多く収録されている。

デスクトップパソコン業界の97%を支配するマイクロソフトのビル・ゲイツに対し、アップルのシェアは3%しかないのに「2人を合わせるとデスクトップの100%を押さえていることになる」と自信満々に言い放ったり、ペプシコーラの役員を引き抜く際に「残る一生、砂糖水を売っていたいですか?それとも世界を変えたいですか?」という殺し文句を吐いたりしたところが印象に残る。

中には本当に考えがあったのか不明ながら「僕には妙案がある」という言葉も入っているが、これは日本のある政治家が繰り返し発言して大変な問題となった、「腹案がある」という言葉を思い出してしまうので印象が良くなかったりもする。

ジョブズには常人には見えない、こういう製品やサービスが受け入れられるというビジョンが見えていたらしく、そうした感じの言葉も多く入っている。

本書はジョブズについて読むはじめての1冊となったが、言葉やエピソードから入ることができたのでまずまず良かったのではないかと思う。
ジョブズが主導したアップルの製品が世界に大きな影響を与え、暴君ではあるが偉大な人物だということがよく分かった。






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