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読書-歴史(世界:古代):雨読夜話

ここでは、「読書-歴史(世界:古代)」 に関する記事を紹介しています。



昭文社 出版 編集部 (編集), 渡邉義浩 (監修)
昭文社 (2022/7/25)


多数の地図を用い、中国の戦国時代から秦の興亡と楚漢戦争、漢の成立までを紹介している作品。
『キングダム』人気にあやかり、登場人物のイラストなどは寄せて描かれている。

『キングダム』では女性キャラクターだが史実では普通に男性だと思われる楊端和(ようたんわ)や羌瘣(きょうかい)なども書かれていて、秦軍の攻略経路が図解されているところが印象に残る。

既に他の本で知っている話が大半だが、やはり地図上でのイメージがあるのとないのでは認識に大きな差が出てくるので、眼を通しておいて良かったと言えば良かっただろうか。




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遠藤 嘉浩 (著)
明治書院 (2000/2/1)


『キングダム』の時代のエピソード集である『戦国策』から著者が印象に残る話・現代でも参考になりそうな話を紹介している作品。

解説部での説教臭さが鼻につくと思っていたら、著者が以前読んだ『戦わない知恵「戦国策」―戦略と説得術』と同じ人だった。

『戦わない知恵…』の記事ではこんなことを書いていた。

妙に「昔の人物は偉かったが、それに比べて現代は・・・」といった感じで、日本やアメリカといった国家から政治家、企業人などをこき下ろしていることを書いていて、上から目線なところが鼻につく。

タイトルにある「戦わない知恵」というところも、本書が書かれた頃にも話題になっていた集団的自衛権や安保政策に対する不満が込められているようでもある。
そもそも『戦国策』の中では武力を背景とした脅しや抑止力があった上での説得がなされていることも多く、軍事力の裏づけのない言説ではないのではあるが。

本書の中で「蛇足」のエピソードを紹介しているが、著者の解説文がまさに「蛇足」で、本書の評価を大きく下げている。


『戦わない知恵…』は図書館で借りたもので手元にないので確認できないし取り寄せて確認する価値もないが、発行年度から推定すると『戦国策に学ぶ生き方…』を改題したのが『戦わない知恵…』なのか、多少編集したのかのどちらかだと思う。

いずれにせよ、いい材料をうまく活かせなかった作品という印象が強い。




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山口 謠司 (著)
三笠書房 (2021/7/19)


中国古代の戦国時代のエピソードが収録された古典『戦国策』から、仕事や生き方に活かせるような100のエピソードを紹介している作品。

著者名を見て『決して逃げなかった男たちの教え 戦国策伝』の著者だと分かったものの、実は改題した作品ということはすぐに気づかず、後で末尾のページに書かれていて気付いた。
せめてタイトルか副題に『戦国策』のワードは入れておいてほしい。

結局同じ内容の本を購入してしまったことになるが、前回読んだのが10年前のことで忘れていたことも多く、もう一度読む機会を得たことは悪くないことなのだろう。

再び読んで思ったのは、できるだけ固有名詞を少なくして中国古典になじみが少ない人も抵抗なく読めるように工夫されているというところである。

10年経て再び発行されるだけのいい内容の作品だと思うし、同時代を扱った漫画『キングダム』に安易にあやかろうとしていないところも好感が持てる。





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塩野 七生 (著)
新潮社 (2006/8/29)


『ローマ人の物語』シリーズの文庫版26巻で、五賢帝の3人目であるハドリアヌスの治世の後半と、4人目のアントニヌス・ピウスの治世を描いている。

帝国の各地を長い時間をかけて視察した上で防衛体制の整備を成し遂げたハドリアヌスだったが、帝都のローマに戻ってからはわがままなところや独裁的なところが多く出てきたのか、一気に評判を落としていることが書かれている。

また、パレスチナでこれまで何度も反乱を起こしてきたユダヤ人を挑発して大反乱に追い込み、ユダヤ人のエルサレムから追放という現代に続くユダヤ人離散の原因を作ってもいる。
ただ、ローマ帝国におけるユダヤ人問題はカエサルの暗殺後に何度も反乱の形で出ていて、その後この手の問題が発生しなくなったことを考えると、当時の状況では1つの解決策だったのかもしれない。

業績が大きい割に元老院などに人気がないということではティベリウスやドミティアヌスと似ていて、死後にはドミティアヌスと同じように「記録抹殺刑」を受ける可能性が高かったが、元老院を説得して神格化を実現したのが、次の皇帝となったアントニヌス・ピウスである。
(どうしても実写版『テルマエ・ロマエ』でアントニヌスを演じた宍戸開をイメージしてしまう・・・)

アントニヌス・ピウスはトライアヌスやハドリアヌスのように派手な業績はないものの、先達たちが築き上げたローマの体制を安定して運用できたのか、平和な時代が続いていたことが書かれている。
歴史としてみると退屈なのかもしれないが、その時代に暮らす分には平和が過ごしやすい人が多いのは当然のことだろう。

このシリーズを10年くらい前から少しずつ読み始めて、ついに最盛期の五賢帝時代まで来たのはちょっと感慨深い。

その次の『ローマ人の物語〈27〉すべての道はローマに通ず〈上〉』『ローマ人の物語〈28〉すべての道はローマに通ず〈下〉』も先に読んでいて、次はローマが下り坂に入っていく『終わりの始まり』となる。

次はこれを読むか、『ローマ帝国衰亡史』あたりを読むかというところだが、少しお休みすると思う。





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関連タグ : 塩野七生, ローマ人の物語,


塩野 七生 (著)
新潮社 (2006/8/29)


『ローマ人の物語』シリーズの文庫版25巻で、五賢帝の3人目であるハドリアヌスの治世の前半を描いている。

ハドリアヌスと言えば人気漫画で阿部寛主演の実写版映画にもなった『テルマエ・ロマエ』に登場する皇帝であり、演じた市村正親のイメージを強く持ってしまっている。

先代のトライアヌスが積極的に拡大志向で最大版図を実現したのに対し、ハドリアヌスは受け継いだローマの版図をいかに守り盤石にしたかというのが基本政策のようである。

トライアヌスの後を受けてすぐはパルティアとの戦争の後始末やユダヤの反乱鎮圧、そしてトライアヌスの信任が厚かったが不穏な動きをしていた将軍4人を粛正するなど、多難な始まりとなっている。
しかし、その後に人気取り政策も含めて改革を実施して支持を回復し、その上で自身がローマに常駐しなくても帝国が運営できる内閣制度を整えている。

そして、「旅する皇帝」と呼ばれることになる帝国各地の視察旅行を敢行している。
これは単なる視察ではなくて帝国の防衛体制を整えるためのもので、行った先で問題点を発見するとすぐに軍団の再編成やインフラ構築、制度の改革などを命じている。

例えば、イングランドとスコットランドの間にある有名な「ハドリアヌスの長城」もこの視察旅行で指示したものであり、こうした防衛体制の構築をもしやっていなかったら、ローマの衰亡はかなり早まったのではないかと思う。

それだけではなく、「ローマ法大全」の整備も命じていて、ハード面だけでなくソフト面での体制づくりもやっていたことが分かる。

『テルマエ・ロマエ』に登場する皇帝はかなりのやり手な人物であることに軽く驚きつつ、次の26巻も読んでみる。





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