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読書-歴史(世界:各時代):雨読夜話

ここでは、「読書-歴史(世界:各時代)」 に関する記事を紹介しています。





『ローマ人の物語』シリーズの文庫版16巻で、アウグストゥスの治世の晩期を描いている。

冷静かつ慎重に多くの政策を実施してきたアウグストゥスだが、後継者には自身の血脈にあくまでこだわり、ただ1人の娘であるユリアから生まれた孫を後継者にしようとしてユリアをアグリッパやティベリウスなどに政略結婚で嫁がせたり、男孫のルキウスやガイウスを引き立てようとしたが、ことごとく失敗している。

ルキウスとガイウスは若くして亡くなり、娘のユリア、孫娘で娘と同名のユリア、もう1人の男孫であるポストゥムスの3人も素行不良が重なって皇帝という立場上から島流しにせざるを得なかった・・・と、結局は前作で衝突して引退していたティベリウスを呼び戻して後継者にしていて、かなり迷走している様子が描かれている。

養父のカエサルを越えようという野心から始めたかもしれないエルベ川以西のゲルマニア支配でも、一旦はローマで出世しつつあったゲルマン人のアルミニウスが反乱を起こしてローマの1軍団が壊滅する被害を受けたり、東方ではアルメニアとの外交でも人事ミスもあって失策を重ねるなど、司令官として現地に赴かないスタイルのアウグストゥスの弱点が出ていて、ここでも苦悩している。

後継者人事の混迷に前任者を越えようとしての外征の失敗という事例からは、秀吉を思い起こしてしまう。

それでも一時期は対立していたティベリウスと和解し、次の皇帝として引き継ぎを行えているのはさすがアウグストゥスだとも感じる。
アウグストゥスが亡くなったことで『パクス・ロマーナ』編は終わり、ネロやカリグラのような暴君の代名詞のような皇帝も含む『悪名高き皇帝たち』シリーズに続いていくので、ぼちぼち読んでいくつもりである。






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塩野七生による『ローマ人の物語』シリーズの文庫版15作目で、アウグストゥスの治世中盤を扱っている。

少子化対策として結婚への優遇や姦通への厳しい罰則、宗教政策、税制、行政区の再編成など、さまざまな分野で政策を打ち出す一方で、自身が苦手とする軍事面でも多くのことを成し遂げている。

まず、ローマの領土拡大が進んでカエサルが構想したライン川、ドナウ川、ユーフラテス川などを境界とした勢力範囲を区切って領土拡大ではなく防衛に適した軍団の配置を行ったり、軍制改革や近衛軍団を創設するなどの改革を実施し、既成事実を積み上げていることが書かれている。

ただ、カエサルの業績を上回ろうと考えたのか、カエサルがガリア人の居住地域までを区切ったライン川を越えてゲルマン人が活動するエルベ川まで軍事行動を起こしたのは、次の16巻で問題が発生することにつながっている。

そして、アウグストゥスが不得手とした軍事を担ったアグリッパや、外交使節や広報担当として活躍し「メセナ」活動の語源となったマエケナスの業績にも触れている。
2人ともアウグストゥスの信頼に応えてきたが、それぞれアウグストゥスが50代の頃に続けて亡くなってしまう。

さらには妻の連れ子で将来を嘱望していたドゥルーススも突然死んだ上、その兄で娘婿にしていたティベリウスもアウグストゥスとの衝突や妻との不仲もあって引退してしまうなど、長生きしたことで周囲から親しい人がいなくなっていく事情が語られているのはなかなかつらいものがある。

治世が中期から後期に入るにつれて重い話が目立つようになったところで、次の16巻に話が続いていく。






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塩野七生による『ローマ人の物語』シリーズの第14作で、アウグストゥス(オクタヴィアヌス)の業績と初期の治世について書かれている。

アウグストゥスは独裁制を目指して暗殺されたカエサルを教訓に、共和制への復帰を目指す政策を打ち出しながらも別に目立たない制度を作ったりすることで、着実に帝政を成立させていく過程が書かれているのが興味深い。

元老院議員たちがやりたがらないであろうこと、例えば辺境の防衛や統治をアウグストゥスが引き受けることで好評を得ながらも実権を握るやり方は、中国の『韓非子』などで家臣が君主から実権を奪っていく話を思い出させてくれる。

アウグストゥスがトップに立ったのが30代とかなり若く、約40年にわたってこのような変革を多くの分野で少しずつ目立たないようにやったため、著者はカエサルなどと比べて書きにくかったと語っている。

本作では統治エリアの編成、税制、通貨、選挙といった政策や、エジプトやアルメニア、パルティアといった周辺諸国との外交についても書かれていて、カエサル暗殺後の内乱で中断していたローマの変革がいかに多くの分野で必要と考えられていたかが伝わってくる。

アウグストゥス自身が軍事能力があまり高くない(自らが率いての戦いで勝率が悪い)ため、アグリッパやティベリウスなどの将軍に任せたケースが多いこともあって少し派手さには欠けるが、確実に手を打っていく話を興味深く読むことができた。






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関連タグ : 塩野七生,




海運や異文化間交易、情報などの観点から、西欧諸国が近代にのし上がったプロセスを語っている作品。
世界史の教科書における記述や、ウォーラーステインの世界システム論で欠落していると思われる話を多くしている。

著者の他の作品と重なる話も多いが、多分初めて読んだ話も多くて興味深い。

著者がバルト海交易を専門としてきたこともあり、木材の調達に難がある地中海のイタリア諸都市から、木材や鉄などの資材が調達しやすいバルト海や北海の沿岸にあるオランダやイギリスに海運の主導権が移った話は分かりやすい。
また、イギリスの海運業はスウェーデンに代わってロシアから輸入した鉄が支えた話が書かれていて、イギリスのバルト海での主要貿易相手国が代わったこととバルト海の覇権が移ったのはどちらが先なのか少し気になった。

近世ではイギリス、フランス、スペイン、オーストリア、プロシアなどが戦争を繰り広げていたが、その中でスウェーデンやデンマーク、アメリカといった中立国の商船が地中海の多くの港で活動し、戦争続きながらも貿易が盛んになされていた話も面白い。

中国(清朝)との貿易で初めの頃に銀が中国に流入していたのは茶に代わる輸出品がなかったためとの説明がなされることが多いが、当時の中国で納税に銀を使用していたことと、金銀の交換比率が西欧と中国で異なったためと説明されて新鮮に感じる。

その中国との交易ではイギリスの東インド会社が有名だが、フランスやスウェーデンも東インド会社を設立して中国から茶を輸入し、イギリスに密輸出していた話は既に知っていても面白い。
これはイギリスが茶に80%を超える高い関税をかけていたことが背景にあり、フランスからの茶は高級品なので高所得者向け、スウェーデンからの茶は低級品なので低所得者向けで、イギリスの茶の消費を支えていたという。
この話は『密輸の世界史』などの本が出て扱われるようであれば読んでみたい。

他にも商人に頼ったポルトガルとインフラ整備に努めたイギリスの海洋帝国としての性質の違いや、国家間の争いでは敗れてもポルトガル商人はアジアで長いことニッチな分野でイギリス商人やオランダ商人と取引を続けていた話、電信と蒸気船の発達によって東インド会社が不要となりイギリスがインドを直接統治できるようになった話、新世界で砂糖ではなく綿花を栽培したイギリスの慧眼などが書かれていて、他の著作同様に楽しむことができる。

ここ2~3年に書かれた著作よりもタイトルや内容が少し堅めなので、著者が一般向けの作品を出していくうちに売れそうなポイントやコツをつかんでいったのではないかと思っている。






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歴史や地理、政治経済など、社会科の内容を分かりやすく解説しているシリーズの1冊で、第二次世界大戦後から冷戦終結までの世界史を扱っている。

近い時代が扱われていることもあり、アメリカやソ連、中国共産党などのえげつないやり口が目立ち、国際政治や戦争などの重さを感じさせてくれる。

著者は複数の歴史のパターンを書いているが、本書で特に印象に残ったのは、戦争や植民地支配の負の面、損失が多くてコストがかかる割にメリットがないことを経験していない国は、侵略で儲けることや勢力を誇示できるメリットばかりに目が向いてしまって拡大志向に走り、時に身の程知らずな言動をしてしまうというくだりである。
これは中国や韓国、北朝鮮、その他植民地から独立した国などで見られる傾向で、こうした国々の危険性は理解しやすい。

他にも植民地から独立した国が他の地域を併合したり侵略するなどで善と悪は単純に決めることができないこと、敵の敵は味方という思想でさらに厄介な敵が生み出される話など、特に中華人民共和国がのさばってしまったことへの問題点が伝わってくる。

著者の主張のくどさや、笑いを狙って書いたと思われる時事ネタの寒さ・痛さはこの作品でもしばしば見受けられてしまうが、一読しておく価値は十分にある。






実感する世界史 現代史
大橋 康一
ベレ出版 2018/8/13


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