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読書-サイエンス(天文・宇宙):雨読夜話

ここでは、「読書-サイエンス(天文・宇宙)」 に関する記事を紹介しています。



佐々木 貴教 (著)
岩波書店 (2021/6/1)


ジュニア向けに書かれた、地球外生命体の可能性や研究について説明されている作品。
太陽系内、太陽系外に分けて書かれている。

太陽系内では、火星、エウロパ、タイタン、エンケラドスの4つの惑星・衛星に生命が存在する可能性を語っていて、液体の状態での水が存在するかどうかというポイントが重要なようである。
今後探査機によって地中や氷で覆われた近くの奥での探査が進めば、微生物などが発見されてもおかしくないのだろう。

太陽系外の話では、系外惑星の探査の歴史や、地球と同じように水が液体として存在できるハビタブルゾーンに存在する、スーパーアース(巨大な地球)の話が多く書かれている。
アースではなくてスーパーアースの話になるのは、小さいと見つかりにくいからだと思われる。

若い研究者が書いていることもあってか、かなり分かりやすいと感じていて、ジュニア向けとしてなかなかいい作品だと思う。





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関根 康人 (著)
小学館 (2013/12/2)


宇宙探査機による調査で、土星の惑星タイタンにはメタンの海や川が存在することが判明し、地球と大きく異なる環境でも生命は存在する可能性や、存在するのであればどのようなものとなるのか?などを最近の研究も踏まえて語っている作品。

著者は執筆当時30代と気鋭の宇宙科学者で、先陣として多くの有名な科学者たちとのやり取りも紹介している。

まずは太陽系の他の惑星、例えば金星や火星あたりから話をはじめ、木星の惑星であるエウロパの表面を覆う厚い氷の下に存在が推定されている海の話や、土星の惑星エンセラダスの南極からブリュームと呼ばれる水を含んだ粒子の噴出がされている話も触れ、これらもまた生命の可能性があると語っている。

さらには、観測技術の発達によって発見が相次いでいる系外惑星の話にも及んでいて、液体の水が存在するハビタブルゾーンにある「スーパーアース」と呼ばれる惑星への考察もなされている。

読む側の化学や地学の知識が乏しくて理解できた話ばかりではないものの、スケールが大きくて魅力的な話が語られていて、興味深く読むことができた。

著者はSFも多く読んでいるようで、ヴォネガットの『タイタンの妖女』で書かれていたタイタンの話が昔の作品なのに調査結果と近いという偶然や、クラークの『2001年宇宙の旅』や『2010年宇宙の旅』といった作品にも話が及んでいるところも良かった。






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宇宙が誕生したことの仮説から、銀河、太陽系、銀河、系外惑星、地球外生命体探査などについて、カラーの宇宙望遠鏡などによる観測写真や想像図とともに解説している作品。

太陽がもう少し大きかったらその分だけ寿命が短くなることや、地球と金星の環境が大きく異なるのは水の有無で温室効果に差が出るためであること、惑星がコア・マントル・地殻の比率でさまざまに異なっていることなど、あまり知らなくて関心を持った話があった。

カラー写真が多いのもいいが、著者の文体が合わなかったのかテーマが少し難しかったのか分からないがいまひとつ入り込めず、斜め読みになった。





宇宙用語図鑑
二間瀬敏史 (著), 中村俊宏 (編集), 徳丸ゆう (イラスト)
マガジンハウス 2017/11/9


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スリランカやインド南部で赤い雨が2ヶ月くらい降る現象が発生し、赤い雨を調べたところ細胞らしい粒子が発見されたことから、生命が宇宙から飛来したというパンスペルミア説を語っている作品。

著者は先日読んだ『彗星パンスペルミア 生命の源を宇宙に探す』の監修者で、その本の著者であるチャンドラ・ウィックラマシンゲとのシンポジウムでの対談が後半に収録されている。

基本的には『彗星パンスペルミア』と同じ趣旨の内容で、生物の性質はダーウィンの進化論では説明できないことが多くてウイルスが進化させたという『ウイルス進化論』であれば説明できる部分もあること、そのウイルスがどこから来るかというと彗星や隕石によって雨や霧に混じって来ているとの仮説、伝染病が人口密度に関係なく離れたところでも発症する理由もこれで説明できるとの話などが書かれている。

有機物がウイルスの形で宇宙に満ち溢れているとの宇宙観は魅力的で面白いのだが、本書全体としては脱線が多かったり宇宙への哲学的な考え方が長々と語られている部分が評価を大きく下げている。
テーマがすごく面白いだけにそこが残念だった。






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彗星パンスペルミア
彗星パンスペルミアチャンドラ・ウィックラマシンゲ (著),
松井 孝典 (監修), 所 源亮 (翻訳)

恒星社厚生閣 2017-05-02

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生命が地球で誕生したのではなく、宇宙から飛来したというパンスペルミアという説を解説している作品。

有機物が存在しない惑星の環境から生命が生まれる確率が極めて低いという前提から、さまざまな材料を元に彗星の内部で細菌やウイルスのような微生物の形で生命が誕生し、凍結保存された状態で地球にも飛来したものが地球の生物の元となったと主張している。

細菌の中には高温や低温、真空といった他の生物では生きられない環境で生きるものも多く、例えば成層圏でも微生物が存在するかどうかの実験をして実際に採取できた事例も紹介している。

そして細菌の形で生命は持続的に地球に飛来していて、ヒトゲノムにはウイルスに由来すると思われる部分が多くを占めていることや、一時的に世界各地に流行した後に収束している伝染病、さらにはインフルエンザなども宇宙から飛来した細菌によるものではないか?という仮説など、これまであまり考えたこともない話がいくつもなされているので驚く。

そこから地球にも生命が飛来したことが正しいとすれば、太陽系の他の惑星、さらには他の太陽系でも同じことが起こっているはずだとして、地球外生命体の存在についての話にも及んでいる。

外国の学者が書いた作品ということもあって少し読みづらい部分、用語や表現が少し分かりにくい部分もあるが、論旨は明快で分かりやすい。

おそらくこの説に弱点はいくつもあるのだろうが、刺激的で魅力のある説ということは間違いない。
刺激的な内容の作品で、興味深く読むことができた。






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