多田 多恵子 (著)
誠文堂新光社 (2017/8/1)
さまざまな植物の実と種をキャラクター化し、それぞれどのように増えるための戦略を持っているのかを紹介している作品。
先日『雑草キャラクター図鑑: 物言わぬ植物たちの意外な知恵と生態が1コママンガでよくわかる』を読んで面白かったので、テーマが近い本書を読んだ。
風で種を飛ばすもの、実が破裂して種を飛ばすもの、鳥や虫、菌類を利用するものなどと多様なタイプがあり、見た目も堅い殻のものや軟らかい果肉を持つもの、毒や臭いで周囲の生物を選別しているものなどが解説されている。
これも先日読んだ本で『土偶を読む――130年間解かれなかった縄文神話の謎』の中で土偶にはクルミやトチノミを模したものがあるとの説があったが、このあたりの解説を読むとよりイメージがしやすくなったのも良かった。

稲垣 栄洋 (著)
誠文堂新光社 (2017/6/2)
身近に見られる雑草を、擬人化したキャラクターの1コマ漫画で紹介している作品。
メジャーなキャラクター、嫌われ者のヒール、ビジュアル系、個性派、お役立ち系の5種類に分けて紹介されている。
古代から生きて仙人姿のスギナ、茅葺屋根を自慢する庄屋さん風のススキ、押しの強いアメリカ人実業家のセイタカアワダチソウ、和装姿のブロンド女性のキショウブ、孤立する西洋人姿のセイヨウタンポポなど、イメージしやすい姿で描かれているのが楽しい。
コニシキソウ(砂利の場所などでよく見る赤と緑のコントラストの草)やエノコログサ(ねこじゃらし)、ジュズダマ(堅い実に糸を通せる草)のように、よく見るのに名前を知らなかった雑草の名前を知って新鮮な感じを受けたりもした。
外来生物である雑草も多く描かれていて、北米や南米、ヨーロッパなどから園芸目的で導入したのが広がったものが多く、良くも悪くも定着しているということだろう。
逆にイタドリやクズのように外国に導入されて大量発生して困っている事例も書かれている。
そして、英語で雑草に当たるウィードには「雑草魂」のようなポジティブなニュアンスはなく、雑草のたくましさへの敬意を持っているのは日本人だけなのかもしれないという話も印象に残った。
- 著者の作品について書いた記事
- 『世界史を大きく動かした植物』
- 『徳川家の家紋はなぜ三つ葉葵なのか 家康のあっぱれな植物知識』
- 『一晩置いたカレーはなぜおいしいのか-誰もが知ってる料理の知られざるサイエンス』
- 『働きアリの2割はサボっている―身近な生き物たちのサイエンス』

伊地知 英信 (著)
草思社 (2023/7/28)
外来種を一義的に悪とする傾向がある中で、そんなに単純なものではないことを語っている作品。
以前読んだフレッド・ピアス著『外来種は本当に悪者か?: 新しい野生 THE NEW WILD』と同じ草思社から出ているので、その本を意識して企画されたのかもしれないと思った。
外来種だけを駆除することは難しくて効果があるかも怪しいこと、外来種を利用していて駆除されたら困る在来種もいること、そもそも外来種の範囲は?とか、外来種の問題が意識され始めたのはそれほど昔ではないことなど、このテーマに関する論点が書かれている。
これに加え、「池の水ぜんぶ抜く」で放送されないこと、外来種として悪者にされることが多いカミツキガメの撮影の仕方に悪意があることなど、メディアの問題も取り上げている。
『外来種は本当に悪者か?』や『なぜわれわれは外来生物を受け入れる必要があるのか』、『外来種のウソ・ホントを科学する』のような読みごたえのある本をもっと読みたいのだが、本書はその点では少し物足りなかった。
情緒的な話もいいが、豊富で具体的な事例が多く書かれていて、示唆に富む内容の本を読みたい(けど少ない)ということである。
- 関連記事
- 『外来種は本当に悪者か?: 新しい野生 THE NEW WILD』
- 『なぜわれわれは外来生物を受け入れる必要があるのか』
- 『外来種のウソ・ホントを科学する』
- 『都市で進化する生物たち: ”ダーウィン”が街にやってくる』
- 『池の水ぜんぶ“は"抜くな!』

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稲垣 栄洋 (著)
扶桑社 (2022/4/28)
薬の研究をしていたことでも知られる家康をはじめとした戦国武将たちが、どのように植物を活用していたかや、家紋に使われている植物の性質などを紹介している作品。
信長が軍事用に使える植物を栽培するために伊吹山に薬草園を作った話や、多くの城で籠城戦のために食料となる樹木を植えたり建材に混ぜたりした話、梅干しや味噌がいかに役立っているかなど、植物関連の話が多く書かれている。
江戸幕府の将軍で植物好きな人物が多かったこともあってか、武士階級の間で盆栽や植物の品種改良、ガーデニングが大流行した話も面白い。
本書では書かれていないが、生類憐みの令で魚釣りがやりにくくなったことも背景にあるのかもしれない。
樋口清之著『梅干と日本刀』や、竹村公太郎著『日本史の謎は「地形」で解ける』などで読んだ話も収録されていて、改めて先人の知恵のすごさを感じることができる。
- 著者の作品について書いた記事
- 『世界史を大きく動かした植物』
- 『一晩置いたカレーはなぜおいしいのか-誰もが知ってる料理の知られざるサイエンス』
- 『働きアリの2割はサボっている―身近な生き物たちのサイエンス』

ペーター・ヴォールレーベン (著), 長谷川圭 (翻訳)
早川書房 (2018/11/6)
ドイツの森林管理官を務める人物が、意識を持たずに動かないと思われている樹木の社会的な生態を語っているエッセイ集。
ちょっとだけ、『ちびまる子ちゃん』に登場する佐々木のじいさんを連想してしまう。
弱った仲間を助けたり、音や菌糸などを通して害虫や自然災害の情報を伝達するなど、これまで想像しなかった話が多く書かれている。
読んでいて途中から飽きてきたので読了しなかったものの、この手の分野が好きな人には興味深い作品だと思う。
- 関連記事
- 『植物はヒトを操る』

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