河合 敦 (著)
ビジネス社 (2023/10/20)
日本史に出てくる人物たちが、後継者選びや育成において成功したり失敗したりした事例を紹介している作品。
家康の成功と秀吉の失敗という対比や、毛利元就の「三本の矢」のフィクションのようによく知られるエピソードの他、細川忠興の家を安泰にするためのなりふり構わないやり方、伊達政宗と長男で宇和島藩祖の秀宗との確執など、戦国武将の話が目立つ。
関ケ原の合戦で親と子で西軍と東軍に分かれる例は多いが、有名な真田家ではなく志摩の九鬼家をチョイスしているのが渋くていい。
後継者に恵まれなかったりプレッシャーに押しつぶされた例もままあり、親鸞の長男の善鸞や渋沢栄一の長男の篤二の話が書かれていて、必ずしも本人の責任だけとは言い切れないと思う部分もある。
現在は寝具の大手として知られる西川家が業態を変えて生き残ってきた話や、三菱の岩崎家が弥太郎の死後にどのように状況と戦ってきたかなど、あまり知らなかった話も多く、興味深く読むことができた。
- 著者の作品について書いた記事
- 『徳川家康と9つの危機』
- 『教科書に載せたい日本史、載らない日本史~新たな通説、知られざる偉人、不都合な歴史~』
- 『逆転した日本史~聖徳太子、坂本竜馬、鎖国が教科書から消える~』
- 『なぜ偉人たちは教科書から消えたのか 【肖像画】が語る通説破りの日本史』
- 『最強の教訓! 日本史』

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山下昌也 (著)
学研プラス (2011/8/10)
家康に仕えた65人の武将、商人、僧侶、学者、外国人など、そして松平一族の人々の紹介をしている作品。
徳川四天王や徳川十六神将に挙げられている武将たちや、本多正信、大久保長安、伊奈忠次といった参謀や行政官の役割が強い人物、天海、崇伝、林羅山、茶屋四郎次郎、後藤庄三郎、角倉了以、三浦按針(ウィリアム・アダムズ)のような家康のブレーンたちと、多様な人材に恵まれていることが分かる。
徳川四天王や成瀬正成、伊奈忠次のように、秀吉からスカウトされた人物も多かったことも理解できる。
石川家成や本多広孝、松井忠次のように、功績があったのに本書で扱われていない人物が多いのも、層の厚さによるものなのだろう。
レーベル(学研M文庫)が廃止されていなければ、「どうする家康」に関連して復刊していたかもしれない。
- 関連記事
- 『チャートと地図でわかる 徳川家康と最強家臣団』
- 『徳川十六将 伝説と実態』
- 『徳川軍団に学ぶ組織論』
- 『なぜ家康の家臣団は最強組織になったのか - 徳川幕府に学ぶ絶対勝てる組織論』
- 『徳川家臣団―組織を支えたブレーンたち』

榎本 秋 (著)
ウェッジ (2021/11/18)
鎌倉時代初期の内部抗争や承久の乱にかけて失脚したり殺害された人物を13人紹介し、その末路から現代に通じる教訓などを考察している作品。
「鎌倉殿の13人」からは北条時政、梶原景時、比企能員、和田義盛の4人、それ以外は阿野全成、源義家、畠山重忠、平賀朝雅、宇都宮頼綱、泉親衡、源実朝、後鳥羽上皇、三浦胤義の9人が扱われている。
中でも、宇都宮頼綱、泉親衡、三浦胤義あたりのチョイスは実に渋くていい。
それぞれの事績と、もし生き残れる道があったとしたら何が考えられたか?というIF、現代社会でも起こりうる派閥争いなどでどのように立ち回ることができるかなどを語っていて、歴史読み物とビジネス書の間みたいな感じになっている。
ちょっと論理が苦しい部分もあるが、歴史学者が語らなそうなことを語っているのはちょっと面白くて読みやすかった。
- 関連記事
- 『「鎌倉殿」登場! 源頼朝と北条義時たち13人』
- 『鎌倉殿と執権北条氏: 義時はいかに朝廷を乗り越えたか』
- 『史伝 北条義時: 武家政権を確立した権力者の実像』
- 『鎌倉幕府抗争史 御家人間抗争の二十七年』
- 『頼朝と義時 武家政権の誕生』

小和田哲男 (監修), 小和田泰経 (著)
ホビージャパン (2022/12/22)
家康の家臣85人を、関係図と活躍した地域の地図とともに解説している作品。
特に有名な人物は2ページ、それ以外の人物は1ページという構成になっていて読みやすく、家康の人質時代、三河平定期、五か国領有期、関東入国後と4つの時期に分けていることで、それぞれが活躍した時期も分かりやすくなっている。
徳川四天王や十六神将として知名度の高い人物の他にも、三河の国衆として三河平定に活躍した人物、今川や武田からの中途採用組として遠江・駿河・甲斐・信濃への進出で活躍した人物など、あまり知らなかった人物も多い。
また、十四松平と呼ばれる家康の親族たちも比較的多くページが割かれているのも特徴かもしれない。
かならずしも光が当たらないと思われる人物も多く紹介されていて、なかなか読みごたえがあった。

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菊地 浩之 (著)
KADOKAWA (2022/12/9)
家康の家臣として「徳川十六神将」という絵が多数存在しているが、そのチョイスについての謎を考察している作品。
十六神将として最も多い組み合わせの中で、
までの9人は、徳川四天王、幹部クラス、監査役タイプなど選ばれるだけの理由があり、著者も異論がないようである。酒井忠次、本多忠勝、榊原康政、井伊直政、大久保忠世、鳥居元忠、平岩親吉、高木清秀、内藤正成
しかし、扱いがそれほど良いとは言えない
や、そもそも誰を特定しているのかはっきりしていないのにNo.2のポジションで描かれている渡辺守綱、服部正成、大久保忠佐、蜂屋貞次、米津常春、鳥居忠広
などがなぜ選ばれているのか?そして石川家成、本多広孝、大須賀康高、酒井正親などが入っていないことを疑問に挙げている。松平甚太郎康忠
この疑問に対しては、「尾張徳川家に仕えた渡辺守綱(あるいはその関係者)が選んだから」という理由から説明していて、なるほどと思ってしまった。
紀伊徳川家バージョンや越前松平家バージョンではまた違った人選になっているようで、関係の深い人物を選んで嫌いな人物を選ばないというのは分かりやすい。
また、家康の祖父・清康が信忠の息子ではなく弟だったのではないか?という著者の考察や、松平諸家が一門扱いされなかった事情、関東入国後の扱いが秀吉からの心証・知名度によって左右されていることなどが書かれているのも興味深い。
(若くて城主になっていなかったから本多忠勝・榊原康政・井伊直政は小牧・長久手の合戦で活躍して秀吉の印象に残った一方、徳川家で序列が高かった天野康景が使いとして秀吉のところに行くと「知らない奴を寄越すな!」とキレたらしい)
そして、十六人のキャラクター解説がなされている。
酒井忠次や榊原康政の智将ぶり、派手なイメージがある本多忠勝や井伊直政が大軍を指揮する将としては疑問符が付くこと、大久保忠世が猪武者で使いどころを選ぶ必要がある人物だったこと、著者からすると『忍者ハットリくん』のモデルでもある服部半蔵の戦績がしょぼいと感じられたことなど、通説のイメージと異なる話が書かれているのも読みごたえがあった。
放送中のNHK大河ドラマ「どうする家康」に便乗した本だろうと思って気軽に読み始めたのだが、思った以上に良かった。
