宮路秀作 (著)
SBクリエイティブ (2023/8/5)
予備校での人気講師による、地理が現代史に及ぼす影響を紹介している作品。
現在ニュースになることが多いロシアによるウクライナ侵略や、イスラエルと中東諸国の複雑な関係、中国による侵略活動の他、日本でニュースになることが少ないアルメニアとアゼルバイジャンの紛争などが書かれている。
宗教や民族の分布が国境と合っていない事情や、複数の大勢力の間に挟まれていたりそこを通るしかない通商ルート上にあること、気候的に作物が取れたり取れなかったりすることで、戦争や内戦、政変が起こってきた事情が分かってくる。
さらっと読むことができる構成だが、インド、パキスタン、バングラデシュ、中国などが第二次大戦後に揉めた状況や、ナイジェリア島南部で石油が出たことでビアフラ戦争が発生したこと、フランスが原子力発電を重視するようになったのは石油の利権争いに敗れたためだったなど、これまであまり理解が十分でなかった話が多かったので興味深く読むことができた。
- 著者の作品について書いた記事
- 『経済は地理から学べ!』

ワールドフラッグス (著)
宝島社 (2019/11/1)
世界各国の国旗を擬人化したWebサイト・WORLD FLAGSを書籍化した作品。
国別の特徴やデータも掲載されている。
東京オリンピックを控えた2019年に出た作品で、現在のWebサイトにはより多くの擬人化した国旗が掲載されている。
武将や侍、陰陽師といった服装の人物に擬人化されていて、国旗の色やエンブレムが服や鎧にあしらわれているのがかっこいいし、キャラクター名がその国を代表するようなサッカーなどのスポーツ選手(例えばアイスランドだとバルセロナなどで活躍したサッカー選手のグジョンセン)の名前に漢字を当てたものとなっているのも楽しい。
国を擬人化している作品では過去に『美少女キャラでよくわかる!世界の国々』を読んだことがあるが、本作は『美少女からで・・・』の解説にあったような妙な偏見を入れていないのは大いに好感が持てる。
- 関連記事
- 『図説・ゼロからわかる 世界情勢地図の読み方』
- 『日本人が知らないヨーロッパ46ヵ国の国民性』
- 『世界国勢図会〈2014/15〉』
- 『世界のサッカーエンブレム完全解読ブック』
- 『教養としての「国名の正体」』

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宮崎 正勝 (著)
PHP研究所 (2022/8/18)
ロシアのウクライナ侵略、中国による一帯一路戦略など、地政学で言うところのハートランドの大陸勢力がなぜこのような「大陸シンドローム」と言われる行動をするのかを解説している作品。
ロシアも中国も、中央ユーラシアを支配したモンゴル帝国に支配された歴史があり、それぞれ西欧に対してはビザンツ帝国の後継、中華世界に対しては中華帝国の後継として、そしてユーラシアの草原世界に対しては遊牧民の支配者であるハンの後継として振る舞ってきた部分が共通している。
どちらも、多くの民族や勢力が存在して強権でしかまとめられなかったために欧米や日本のような形で民主国家になりづらかった、あるいはなれないかもしれないことが分かってくる。
そして北欧、東欧、中東、東南アジア、東アジアなどが大陸勢力と海洋勢力の緩衝地帯となるか、戦いの舞台になるかの歴史が繰り返されてきたことが書かれていて、アメリカや日本が取るべきなのは長期的には封じ込めしかないのかな?と考えてしまう。
テーマがかなり重いものではあるが、それだけに読みごたえもあった。

水野 一晴 (著)
KADOKAWA (2022/6/10)
先日読んだ『自然のしくみがわかる地理学入門』の姉妹作で、農業、人種、民族、言語、宗教、都市、人口、環境など、人文地理学の話が多く扱われている。
乾燥地帯にある畑はセンターピボットと呼ばれる円形のものが多いらしく、理由は地下からくみ上げた水を回転して撒くためにそうなっているという話や、タピオカの原料でもあるキャッサバが干ばつに強いものの商品作物に置き換えられたことで飢饉が深刻になっている話、ヨーロッパやその植民地の都市は広場を中心に放射状に広がる形のために一定以上の交通量だと渋滞がひどくなる傾向にあることなど、本書でも興味深い話が多く扱われている。
著者がフィールドワークや旅行で遭遇したエピソードも多く扱われていて、過去の植民地支配の影響、多国籍企業による横暴、人種差別を受けたらこんなにいやなものだったなど、人間に関する話が多いだけにかなり言いたいことが多いことが伝わってくる。
近いテーマの作品だと、予備校教師の宮路氏が書いた『経済は地理から学べ!』の方が読みやすかったという印象がある。
宮路氏の近著である『ニュースがわかる!世界が見える!おもしろすぎる地理』も読んでみたいと思っている。
- 著者の作品について書いた記事
- 『自然のしくみがわかる地理学入門』

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水野 一晴 (著)
KADOKAWA (2021/6/15)
自然地理学について、地形や気候、植生など、日本や世界のさまざまな地域における話を解説している作品。
東京で海抜が高めの新宿や池袋に高層ビルが多く、低めの渋谷や品川に高層ビルがあまりない理由や、新潟や伊吹山系、鈴鹿などで積雪量が多い理由、シーボルトが日本に来た理由の1つにヨーロッパに生えていないイチョウが日本で自生していることだったなど、興味深い話が多い。
著者が研究のためにアフリカやヨーロッパで調査をしていた頃のエピソードや、趣味の登山をしていた時に発生した話なども随所で交えているのも、話に入り込みやすい。
アフリカのナミビアのように海に近いのに砂漠が広がっているところが多いのは、寒流が流れていて海水の温度が低く、その結果水分が蒸発して雲になることが少ないから、という解説がなされているところなどに、なるほどと思った。
(多分、私の理科系の知識不足だが…)
人文地理学を扱っていると思われる、著者の『人間の営みがわかる地理学入門』も読んでみようと思う。

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