今後大発展を遂げると一部で言われている中国の裏面を述べ、遠からず崩壊すると主張している本。
歴史の積み重ねから中華文明が進歩していないこと、古来より搾取が激しくて民間の活力が失われていること、現代の共産党体制でそれが頂点に達していることを語り、こうした弊害がなくならない限り発展できないと説く。
また、中華の統一が発展をもたらすというのは大きな共同幻想であり、実は分裂状態の方が発展し生活水準も上であると言外に述べる。
秦帝国以来の歴史を考えると的確な分析がなされていると感じる。確かに諸外国が考えているほど中国の底力はないと思う。財テクの本などで必ずといっていいほど中国株ネタがでてくるが、けっこう博打だろう。
ただ、内容的にはそれなりに納得できるのだが、なんというか読んでいて引き込まれる部分が足りない。おそらくあまりに俯瞰的に述べていて人間が出てこない点かと思うが、史実を丁寧に述べようとするあまり冗長になっているような気がする。
もう少しすっきりした形で述べられていれば、もっと売れると思うのだが。

流通は進化する―日本経済の明日を読む (中公新書) | |
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2001年刊行と少し時間が経っているような気もしたが、天神のジュンク堂でおすすめの本として積んであり、好きな経済学者の本でもあったので買って読んでみた。
この本が刊行された2001年時点ではそごうは倒産していたが、マイカルはまだ倒産していなかった。個人的には大学を卒業し入社して東京に配属になり、その後転勤で九州に戻ってくるという印象深い年だった。
読んだ感想としては、おすすめに値するだけの内容のある本で、3年経過してもなお内容が古びていなかった。
戦後の高度成長期から現在のバブル崩壊後までの流通の業態の変化が、ダイエーやそごう、松下などの例を挙げて分かりやすく書いてある。
高度成長期に有効だった政策は、メーカーによる小売の系列化と地価の上昇を見越した土地買収型の経営だった。これはプラザ合意やバブル崩壊を経て有効性を失い、経営戦略の見直しを迫られている。
本書では明示されていないが、小売業の方が立場が強くなった背景の1つには冷戦の終結に伴うデフレの影響があると思う。

漢の高祖劉邦の参謀として劉邦軍の数々の戦いを兵糧を絶えず送り続けて支えた蕭何の生涯を描いた歴史小説。
戦争においては武器や戦力、戦術などが重視されがちであるが、兵糧、つまりメシがなければ戦争を遂行することなどとてもできない。この点で彼は目立たないながら劉邦が評価する通り最大の功労者だろう。何より劉邦は負けてばかりだったわけで、おそらく天下を取った中国皇帝の元勲の中で最も働かされた1人だと思う。
ただ、主役になりにくい人を主役にしたせいで、ちょっと持ち上げすぎたような気もする。普段であれば張良が前面に出るところだが、張良もあまりいい人物に描いていないが、このような見方があってもいい。
この本でも陳平の本でもそうだが、劉邦のライバルであった項羽の参謀である范増はこてこての悪役に仕立て上げられているのがちょっと笑える。なにせこの本では”白髪鬼”呼ばわり・・・

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先日読んだ『砂の器』が面白かったので、引き続いて松本清張作品として読んでみた。
売れない作家である伊庭に持ち込まれた、浦島太郎や天の羽衣伝説の取材から事件が発生していく。
タイトルは取材先の次々に関わっていくもので、あまり語るとネタバレするのでほどほどにしておくが、伝奇・伝説と地理上の関連、そして過去に起こった事件などが次々と発覚していく。
出だしからは予想できないくらい話が膨らんでいって過去の事件までに遡り、読むうちに引き込まれていく。
ただ、『砂の器』に比べると事件の流れ的にはなんというかやや強引で、いまいちだったような気もする。
読み返すことはなさそう。
