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読んだ本の感想をつづったブログです。


聖徳太子はいなかった (新潮新書)
聖徳太子はいなかった (新潮新書)
谷沢 永一
新潮社 2004-04

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タイトルにつられて買った(買ってしまった)本。

聖徳太子がいないという仮定を、どのように論証し、またその背景などを述べていくのかといったあたりを期待して読み始めたのだが、期待は見事に裏切られた。

聖徳太子の存在を述べた史料とされる日本書紀や十七条の憲法の内容を引用して、そこから聖徳太子の存在を疑っていくように思えるのだが、構成がひどい。

内容としてもタイトルにあるような部分になかなかたどり着かずしかも面白くないので、途中からまともに読むことを諦めて斜め読みしていったのだが、最後の方でほんの申し訳程度の記述があるのみである。
巻頭見開きの記載では”スリリングに検証”、”衝撃の一冊”などとあるが全然スリリングでもなければ衝撃もないという羊頭狗肉も甚だしい一冊であった。

何より文章が分かりにくい。不必要な比喩が頻出し横道にそれ、果たしてエッセイなのかと疑うような書き方である。くだけた文章を意識しているのかもしれないが、ガラではないようで俗っぽい印象しか残らない。
それに新書のように大衆向けに分かりやすく書こうとする場合は小さな見出しをつけてメリハリを出すなど工夫するものだが、本書はそのようなものはほとんどなく、漫然と書き連ねているような印象を受ける。

著者はあとがきで”老人の寝言に過ぎない”と書いているが全くその通りだと思う。
以前は多くの賞を受賞した評論家なのだろうが、ちやほやされているうちに傲慢になった上に耄碌したようである。

それ以上に、権威のある人だからといってこのような出来の良くない本を出版してしまう側にも問題はあるだろう。
大はずれ、失敗でした。




井伊直政―家康第一の功臣 (光文社時代小説文庫)
井伊直政―家康第一の功臣 (光文社時代小説文庫)
羽生 道英
光文社 2004-10

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徳川家康の家臣の中でも徳川四天王の一人として最も出世した武将、井伊直政。
彼が遠江出身で家康の代から仕えた中途採用者であるにもかかわらず、本多忠勝、榊原康政といった三河出身の譜代よりも出世したのはなぜか、それは功績もさることながら実は家康の隠し子だったからではないかという著者の仮説により描かれた歴史小説。

直政は今川氏真の家臣だった父が氏真に嫌われて殺され、流浪ののち家康に仕える。
武田氏滅亡後は武田家臣の山県昌景に倣って軍隊の装備を赤で統一し、小牧長久手の合戦で”井伊の赤鬼”と秀吉軍に恐れられるほどの活躍をした。
関ヶ原の合戦でも家康の四男松平忠吉とともに先陣を務め、島津軍と激戦をしてその怪我が元で亡くなることとなる。

この中で直政は、家康とともに明智光秀をそそのかして本能寺の変を行わせたり、その本能寺の変の後逃げる途中に武田から寝返った穴山梅雪を暗殺させたり、秀吉から気に入られて再三勧誘されつつも秀吉嫌いの面を見せて頑なに家康への忠義を貫く場面が出てくる。

徳川四天王の中では、傍から見ると本多平八郎忠勝の方が有名でかつ活躍しているような印象を受けるが、貰った領地が忠勝が桑名10万石であるのに対し、直政が18万石と評価に明らかな差がある。
これは直政が家康と男色の関係にあったとか、家康の養女を妻にしているからではないかなどといわれるが、定かではない。

著者はその疑問を、直政が家康の隠し子だったと仮説で解いている。
話としては面白いがこれは実際にはないと思う。むしろ同時代の人から家康の隠し子ではないかと言われた土井利勝の方が可能性が高いだろう。

むしろ直政が大出世した背景には、功績や人柄の他に公式文書に書けないような活躍、例えば謀略や暗殺といった徳川家の最高機密に属するような任務を行ったからではないかと思う。
本書でも直政が兵部小輔だったことから毛利の小早川隆景と並んで”天下の両兵部”と呼ばれたことから見ても、将軍としてだけでなく政治的な能力も並外れていたようである。

彼がその能力や功績の割にあまり有名でないのは、42歳と比較的若くして死んだことと何より家康の家臣だったからだろう。
彼の子孫が大老として安政の大獄を行った井伊直弼である。

本書ではまた、戦場で猪突猛進してしまう短気な部分はあるものの、知慮深く先を見通すことのできるかっこいい人物として描かれ、面白い小説だった。




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男と女の進化論―すべては勘違いから始まった (新潮文庫)
男と女の進化論―すべては勘違いから始まった (新潮文庫)
竹内 久美子 (著)
新潮社 1994-03

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女はなぜシワを恐れるのか?なぜ背の高い男がモテるのか?男はどうして若い女の子が好きなのか?などについて、動物の行動や遺伝子の切り口から斬り込んでいる。

竹内久美子の本をここのところ集中して読んできてどれもそれなりに面白かったのだが、やや飽きてきたのか、これはそれほど目新しくなくてあまり感銘は受けなかった。

各章が7~8頁程度と軽めだったためだろうか、かなり力が抜けていたように感じた。
沢野ひとしの脱力系の挿絵がそれに拍車をかけていたような気もする。




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名探偵なんか怖くない (講談社文庫 に 1-2)名探偵なんか怖くない (講談社文庫 に 1-2)

西村 京太郎 (著)
講談社 1977-08

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エラリー・クイーン、エルキュール・ポワロ、メグレ警部、明智小五郎と4人の名探偵が集い、暇な金持ちの依頼で三億円事件の再現を推理するが、そこで起こる事件とは・・・といったミステリー。

4人ともジジイになっている設定で、ポワロとメグレはもともと年寄りのイメージなのでそれほど気にならないが、クイーンと明智は颯爽としているイメージがあるだけに少しかっこ悪い。

それなりに各探偵の感じが出ていたが、ミステリーとしてトリックはそれほど意外性は感じらず、トリックの半分くらいは途中で分かってしまった。
なにしろ名探偵たちは犯人候補の中から初めから外してかかることから難易度が下がっているのでドタバタになってしまい、出来がいまひとつとなったように感じる。

やはり名探偵は1人か2人がいいのであって、大勢になればいいというものではない。二流探偵なら別に何人いても問題ないが。

続編もあるらしいが、この作品がそこまで面白くなかったのであまり読む気はしない。




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聖徳太子は蘇我入鹿である (ワニ文庫)
聖徳太子は蘇我入鹿である (ワニ文庫)
関 裕二 (著)
ベストセラーズ 1999-10

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歴史上の聖人・賢者とされる聖徳太子と、彼の子の山背大兄王を滅ぼし大化の改新で暗殺された蘇我入鹿、この一見年代的にも通常別人だと思われている二人が同一人物であったということを各種資料から論証している本。

日本古代の代表的な歴史書である日本書紀では聖徳太子や蘇我入鹿の記述があり、この記述が一般的に歴史上の定説を構成している感があるが、これは天武天皇期から数代をかけて編纂されたものであり、藤原不比等ら当時の権力者に都合のいいように曲筆がなされているらしい。

始めに本書では蘇我氏と物部氏が仏教伝来においては争ったものの、実際には系図的に近い間柄にあること、古事記では天照大神が太陽神であるものの、実際にはニギハヤヒという出雲の神が当初大和を治めていたらしいことなどから日本書紀の記載に疑問を呈し、各種記述から聖徳太子というのは蘇我馬子の息子であり仏教に造詣の深かった蘇我善徳=入鹿であったという結論に達する。

なぜ別人にする必要があったのかというと、当時も聖人であったとされる蘇我善徳(聖徳太子)を暗殺した側(中大兄皇子や藤原鎌足)が自らの悪行を隠すためである。
また、その背景として当時の天皇家が出雲系と九州系に分かれており、蘇我氏とされる出雲系が大化の改新よりしばらくして九州系に抑えられてしまったからということがあるとのことで、論証など細かい部分はやや理解しづらい部分もある。

蘇我氏については「馬子」「入鹿」など名前に動物の名が入っていて、これは明らかに記載者に悪意があって書かれたものだろう。
蘇我入鹿については鞍作というのが通称であったようで、実際日本書紀の記述でもかなり学識ある有能な人物であったということまでは認めている。

日本書紀はこれでもかとばかりに改ざんが出てきているようで、後世の人々を迷わせる一方、ミステリーのネタとしてこれ以上ないような材料を提供している観があると思う。


[本書の新書による新版]
聖徳太子は蘇我入鹿である (晋遊舎新書 S03)聖徳太子は蘇我入鹿である (晋遊舎新書 S03)

関 裕二
晋遊舎 2012-04-14

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