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読んだ本の感想をつづったブログです。


長谷川慶太郎の大局を読む―2005年 経済・政治・軍事長谷川慶太郎の大局を読む―2005年 経済・政治・軍事

長谷川 慶太郎 (著)
ビジネス社 2004-10

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長谷川慶太郎の2005年版が出ていたので買った。

アメリカの覇権は変わらないこと、小泉政権の政策は当分このままだろうなど、昨年と基調はそれほど変わっていないように感じるが、この1年にあった変化が反映されている。

今回特に書いてあることとしては、

・中国がそろそろ息切れしてくる
・原油の高騰はそれほど世界経済に深刻な影響は与えない
・日本の技術や援助がさらに求められている

などで、FTAの締結やロシアの資源開発など今年にあった変化からの分析があり、長谷川氏の見通しは相変わらず楽観的だと思う一方、これまで考えてもいかなった知識などが期待している程度に記載されており、やはり買って良かったとは思う。

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関連タグ : 長谷川慶太郎,

伊予小松藩会所日記 (集英社新書)
伊予小松藩会所日記 (集英社新書)
増川 宏一
集英社 2001-07

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四国・伊予にあった一万石の小さな藩であった小松藩で記録された行政記録の現代語訳から、江戸時代の藩の運営から武士や庶民の生活が描かれている。
藩の運営はかなり苦しいというよりほとんど破綻状態であったようで、借金に減俸、踏み倒しなど現代の中小企業とかなり似通ったことを行っている。

小さな藩であったため、窃盗事件や賭博行為、駆け落ちや情死などについても事細かな記述がなされており、かなり臨場感が伝わってくる。
窃盗事件では元盗賊と思われる目明しの半平が、これまでの経験や人脈を生かし犯人検挙や盗品の発見に活躍する姿が頻出する。時代小説にするとしたらかなりふくらみそうなのだが、淡々とした記述が逆に活躍を感じさせる。

事件は隣接する他の藩にもまたがることがあり、目明しは例えば松山藩の特殊部隊である”くらがり方”と調整・協力して事に当たるさまが出てくる。
現代と異なるのは変にいざこざを起こすと幕府に改易されてしまう恐れがあり、それなりにきちんと協力ができていることだろうか。

ちなみに本書の舞台である小松町を検索してみると、合併して西条市になったとのこと。

懸命に生きた等身大の武士や庶民の姿が伝わってきて、面白かった。
他の藩にもこうした会所日記の類があれば、訳したものを読んでみたい。




小さな藩の奇跡 伊予小松藩会所日記を読む (角川ソフィア文庫)小さな藩の奇跡 伊予小松藩会所日記を読む (角川ソフィア文庫)

増川 宏一 北村 六合光
KADOKAWA 2016-09-22

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戦国時代、天下を一時取った(取れた)者、狙えた者、強烈な個性で記憶に残っている者など脇役とされる戦国武将たちの活躍を紹介している。

出てくるのは、太田道灌、大内義隆、三好長慶、明智光秀、長宗我部元親、加藤清正、真田幸村、後藤又兵衛、前田慶次郎の9名。

それぞれ立場が異なっているが、大きく分けて
・天下を一時的に取った者:義隆、長慶、光秀
・戦国大名となった者   :元親、清正
・家臣で終わった者    :道灌、幸村、又兵衛、慶次郎
といったところか。

人物的に少し評価を加えてみる。

この中では長宗我部元親が最も優秀に見える。光秀も信長の家臣としてはパーフェクトだったし、道灌も野心を持ち行動していればそこそこの戦国大名として北条早雲と熾烈な争いを繰り広げたかもしれない。

次の集団が清正か。戦争に強く内政もでき、本書にある通り江戸時代の大名であれば名君となることができただろう。ただ、秀吉の下で育ったためか、派閥争いを越えることができなかった印象が強いのが残念。
長慶は幼少の頃父を殺され底から這い上がってきた苦労人であるものの、兄弟や家臣に支えられた印象が強く、本人の優秀さがいまいちよく分からない。
善政を布いていたのは確かなようであるが、時代の過渡期にあったことが不運だったのかもしれない。

失礼ながら幸村、又兵衛、慶次郎は、活躍する時代が遅かったせいもあるが戦士・将軍としては優秀かもしれないが、そこまでの人物で、大名とまではいかないと思う。
一番人物的には義隆がダメか。古い家だったこともあるかもしれないが、何より家を潰してしまったという一事だけで失格に値する。

全体を通すと、長慶や道灌、義隆など小説の主役に持ってくるのが難しい人物については知る機会が少ないので、それなりに学べた。




[リイド社から加筆しタイトルを変えて発行されたと思われる作品]


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黒いスイス (新潮新書)
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福原 直樹
新潮社 2004-03

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永世中立国、平和な国、美しいアルプスの山々、国民皆兵、銀行業が盛ん・・・といった憧れの美しい国というのが一般に持たれているスイスのイメージだろう。

しかしどこの国にも暗部はあり、本書では国家ぐるみでのジプシーの子供の誘拐から、第2次大戦時にナチスドイツからのユダヤ人難民を送り返していた事実、そして核兵器の計画に銀行でのマネーロンダリングといったこれまであまり触れられてこなかった部分を新聞記者の視点から描いている。

印象が強かったのはユダヤ人難民を追い返した部分である。スイス政府はユダヤ人難民の増加に苦慮したあまりナチスドイツに対してユダヤ系ドイツ人のパスポートの表紙に大きくユダヤ人を表す” J ”のスタンプを捺すように要求してこれをもとにユダヤ人難民を追い返していた。
当時の事情でやむを得ない部分があったかもしれないが、ナチスによるユダヤ人の大量虐殺を知ってもこれを続けていたわけで、やりすぎだろう。

また、この国は住民による監視や密告が盛んなことも書かれており、外国人や左寄りと見なされた人物はプライバシーなど認められないようなほど様々な情報が流出してしまう。警戒心の強い国民性のようだ。
インターネットの普及などで個人情報の流出に対して、日本では来年の4月から個人情報保護法が施行される。
スイスではこの個人情報保護法など、とても実施できないだろう。

あと、スイスの銀行ではこれまでマネーロンダリング(不法なカネの出所を分からなくする)が行われてきており、マルコスやスハルト、ミロシェビッチなど各国の独裁者や犯罪者のカネの隠し場所となってきた。
最近は9.11後のテロ対策などでだいぶ取り締まりが厳しくなってきたようだが、スイスの法律では税金の申告漏れ、つまり脱税はそれほど厳しく取り締まらず、この行為により不正に取得されたカネは今も預金され、その秘密も守られてしまっているという。

ドイツ、フランス、イタリア、オーストリアと強国に囲まれた小国なだけに、きれい事だけではやってこれなかったというわけなのだろう。




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戦国鉄砲・傭兵隊―天下人に逆らった紀州雑賀衆 (平凡社新書)
戦国鉄砲・傭兵隊―天下人に逆らった紀州雑賀衆 (平凡社新書)
鈴木 真哉
平凡社 2004-08

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戦国時代、強力な鉄砲隊に広範にわたる傭兵活動、そして信長や秀吉とも真っ向から立ち向かった雑賀衆について述べられている本。

雑賀衆は戦国時代に紀伊で活躍した武士団で、特に信長と石山本願寺との戦いでは本願寺側に主力として参戦し、本願寺の屈服までに10年を要するほど信長軍を散々に苦しめたことが有名である。

本書では、代表的な雑賀の首領であった鈴木孫一と佐武伊賀守(さたけいがのかみ)の事跡を紹介している。孫一は司馬遼太郎の小説『尻啖え孫市』でそれなりに有名だが、佐武は手記を残していたから記録としてあるだけで、あまり知られていないようである(私は知らなかった)。どちらにしてもあまり詳細な記録は残っていないらしい。

この武装集団が常時まとまっていたのかというとその反対で、しょっちゅう郷といった単位で争っていたようである。それなのに信長率いる大軍に攻められても負けなかったほどの強力さには改めて驚く。

鉄砲や傭兵活動、何より天下人に逆らったという点で際立った特色がある雑賀衆だが、本質は地方に無数にあった地侍の集団とそれほど異なる訳ではなかったようである。

子孫が先祖の業績を忘れてしまうなど、あまり歴史や先祖を重視しない点は”名をむさぼらず”という信条を持っていた、水軍集団である松浦党と共通する部分がある。
ま、これは松浦党の地元だから思った感想ではあるが、雑賀衆は強力な水軍も持っていたことから何らかの交流もあったかもしれない。




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