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読んだ本の感想をつづったブログです。


破産しない国イタリア (平凡社新書)
破産しない国イタリア (平凡社新書)
内田 洋子
平凡社 1999-11

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イタリア人の生活の実態について、13章にて具体的な人物描写にて語っている本。

誘拐産業の隆盛、コネ社会、政府や公的機関のあまりのいい加減さなど、あきれすぎて逆に半笑いしてしまうほどである。
とりあえず日本とはかなり異なった風土を持つ国であることが実感される。

政府はいい加減で公的サービスもお粗末、そして隙あらば税金をかけようとする。それに対し国民は脱税にコネなどを駆使して対抗する・・・と中国にある言葉である「上に法あれば下に対策あり」というのがこの国にも当てはまりそうである。

これほどでたらめ振りを繰り返す(と他国人には思える)割には、アルゼンチンのようにデフォルトになることもなく続いていることに対しては、庶民のしぶとさ、したたかさを感じてしまう。

でも中には日本と似ている部分もあって、それは年金問題である。
イタリアは年金生活者天国の面があり、1995年の法律改正前はうまくやれば三十代半ばで年金を受給できてしまった。
当然これは国家財政に響き、現在の日本で問題になっている年金の未納問題などイタリアでは10年以上前に問題となっていて、ある意味年金問題については日本の先を進んでいる国である。
今後イタリア政府の採る年金対策は、日本も参考になるのやらならないのやら・・・

ただ、四十歳前に楽隠居ができたのは日本の江戸時代なみで、怠け者の私としてはかなり羨ましい。



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けいざい心理学!―「気分」と「直感」で経済は動く
けいざい心理学!―「気分」と「直感」で経済は動く
日本経済新聞社 (編集)
日本経済新聞社 2004-11

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移ろいやすく、計算通りには動いてくれない微妙な人々の経済活動において見られる心理について書かれた本。

数字のトリックに社会的手抜き、国民性による経済観の違いなど、経済学でモデル化される合理的で利己的な人間像とは異なった人々の行動様式が現れてきて面白い。

例として、大型小売店のウォルマートやカルフールが欧米で過去に成功した方法を日本でも行ってみたものの結局失敗に終わったことが挙げられている。
日本人の嗜好を重視せずに欧米流を押し通したことが失敗であり、カルフールなどは日本を撤退してしまった。
そういえば、一時期もてはやされたシティバンクも撤退している。

国民性だけではなく関東と関西、名古屋など地域性によっても消費者の行動様式は異なるわけで、そうした点を踏まえることは重要だろう。

もっとも、逆に思い切った戦略がブームを巻き起こすという事例もあり、人々の行動を予測するのは難しいと感じたが、それでこそ人間だろうとも思った。

個人的にはなるようにしかならないと考えているが、少々無責任かな?



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人生うろうろ (講談社文庫)人生うろうろ (講談社文庫)

清水 義範
講談社 2002-12

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墓に出産、結婚、就職活動に単身赴任から老人介護と、人生で起こりうる場面をコミカルに描いた短編集。

通常であれば渡鬼のようなどろどろした流れとなりがちであるが、清水義範の野次馬的に面白がる描き方がされているため、笑いながらもリアルに実感できてしまう。




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関連タグ : 清水義範,

東欧チャンス (PATHFINDER (5))
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大前 研一
小学館 2005-06-15

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大前研一「新・資本論」―見えない経済大陸へ挑む
ロウアーミドルの衝撃

率直に言って大前研一の日本政治やサラリーマンに対する考え方はあまり好きではないが、国際情勢やビジネスに関する分析能力には一目置いている。

本書では反日運動で波乱含みの中国に一辺倒となるのではなく、EU拡大で注目を集める東欧諸国にスポットを当て、有望であると述べられている。

一口に東欧と言っても、バルト三国、中欧諸国、バルカン諸国、旧ソ連諸国といくつかの地域に分かれており、各国でつながりのある外国もさまざまである。
その中でもEUに加盟し比較的市場開放の進んでいる中欧のハンガリー、チェコ、ポーランドの三国にそれぞれ章を割いて、特徴と投資する上での利点が記載されている。

ハンガリーはコンピュータの発明に関わったナイマン・ヤーノシュ(フォン・ノイマン)やヘッジファンドの総帥のジョージ・ソロスのような天才と言える人材を多数輩出するエリートの国らしい。その反面エリートにありがちなプレッシャーに弱く挫折する傾向もあり、商売もあまりうまくないようである。とはいえホワイトカラー層の雇用コストが安い割に優秀、しかも語学に堪能と言うのはかなりの利点である。

チェコは工業国のイメージがある通りに物づくりに対する考え方がしっかりとしており、日本の製造業から見て安心できる国であるようだ。外資を誘致する体制も整っていて、中欧の中の中欧ともいうべき位置にあることから進出している企業も多い。

ポーランドは面積・人口ともに大きく成長の余地がある。やや特徴に欠けるところもあるが、著者は農業や畜産業、そしてそれを加工した食品産業に明るさを感じているようである。

言語的な問題もあって、日本がホワイトカラーをどのように活用できるのかはいまいちよく分からないが、製造拠点として、そしてマーケットとして有望な場所であるということはよく実感できた。
フランスやドイツにとって東欧諸国は、日本にとっての東南アジア諸国のような存在ではないかと思っている。

これまであまり知られていなかった地方について学ぶことが出来、ためになった。



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水軍の城 (文春文庫)
白石 一郎
文藝春秋 1994/10



主に海を舞台とする歴史作家のエッセイ集。

九州在住ということもあって長いこと賞に恵まれなかった苦労人であるが、候補に挙がってから8度目にしてようやく直木賞を受賞した際のエピソードなど気持ちが伝わってくる。

数学が苦手なことやSF小説が好きなことが書かれており、私もその傾向があるため同じ九州出身ということもあって親しみが持てた。

小説の取材で訪れた瀬戸内海の景色に魅了され、小説の取材がおろそかになってしまい後であわててしまうエピソードもあって、飾らない人柄が伝わってくる。
等身大の作家像が感じられるいいエッセイ集だと思った。

こうした本を読もうとする時点で、小説も面白いことは言うまでもない。




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