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読んだ本の感想をつづったブログです。


言葉使い師 (ハヤカワ文庫 JA 173)
言葉使い師 (ハヤカワ文庫 JA 173)
神林 長平 (著)
早川書房 1983-06-29

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絵が描けなくなった画家が火星の建造物と話をする「スフィンクス・マシン」、ガリバー旅行記ばりにイルカが人間を飼う時代へ飛ばされる「イルカの森」、テレパシー主流の世界で禁じられた言葉を使う「言葉使い師」など5作品からなるSF短編集。

世界の構築や登場人物の会話などでやたらと理屈をこねまわす傾向から著者は理系タイプではないかと思ったが、解説を読むと果たして機械工学科卒の理系タイプだった。
アイデアには面白いものもあるが、そうした辺りが感性に合わなかった。

この著者の評価は保留というところで、しばらく読むことはなさそう。



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「本能寺」の真相 (講談社ノベルス)「本能寺」の真相 (講談社ノベルス)

姉小路 祐 (著)
講談社 2005-04-06

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本能寺の変の際なぜ信長は少人数でいたのか、秀吉が腐っていたと思われる首を簡単に見ただけで”光秀だ”と断定したのかなど、タイトルの通り本能寺の変の新解釈に挑んだ歴史ミステリー。

光秀は小来栖の竹やぶで農民の竹槍に突かれて死んだことになっているが、メディアが未発達だった当時では落ち武者が光秀かどうか判断することは難しく、実際は光秀はその後も生きていたのではないかとしている。

そこで出てくるのが光秀イコール天海僧正(家康の参謀となった僧侶)説だが、筆跡の違いや百歳を超える長寿という点に疑問を呈して、独自の解釈を行っている。
光秀ゆかりの建物と家康ゆかりの建物の地理的な関連性などあっと思うような点が出てくるが、これ以上書いてネタばらしをするのはやめておく。

主人公の父子(父が歴史を専攻する大学院生で息子が新聞記者)は光秀の謎と現代で起こった殺人事件の両方を調べるのだが、殺人事件の方はストーリーがいまいちで、付け足しという感じを受けた。
光秀の謎が面白いので、それだけで書いた方がもっと面白かったかもしれない。



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お寺の経済学
お寺の経済学中島 隆信
東洋経済新報社 2005-02

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イラスト図解 お寺のしくみ
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おぼうさん、はじめました。
がんばれ仏教! (NHKブックス)

一般にはあまり知られていないお寺や僧侶の経済の実態を調査し、経済学の観点からお寺を分析している本。
仏教の教えとは何かから宗派の違い、檀家制度、本末制度など実態を各章で述べており、現代はコミュニティの弱体化によって檀家制度や本末制度が機能しなくなっていてお寺の経営は苦しくなっているという。

元はといえば江戸時代にキリシタン取締りの一環として檀家制度を設けたのが既得権益化して、それに安住して経営努力が足りなくなってしまっている面が大きい。
個人的には、宗教勢力が暴れるほど元気というのはそれだけ救いを求めるほど荒れている社会だと思うので、各宗教法人に保護を与えて弱体化させた上に泰平の世の中を築いた江戸幕府は偉大だったと思うが。

もっとも宗教の重要性、お寺のインフラとしての役割は認識しているつもりなので、現代檀家のたががゆるんでいるのは淘汰によって信者によりよいお寺が残り栄える過渡期といえるのかもしれない。

本書を読む前はお坊さんは税金を払わなくていいので楽そうだなと思っていたが、檀家がいないことには収入がないので信者獲得をする必要があり、これはこれでけっこう大変だなと思った。
また、本山と末寺の本末関係は思っていたほど本山の力は強くないということは意外だった。

社会で普段スポットの当たりにくい部分に関するもので地道な研究がなされており、初版から4ヶ月で第6版というのもうなずけた。



[本書の文庫版]

お寺の経済学 (ちくま文庫)お寺の経済学 (ちくま文庫)
中島 隆信

筑摩書房 2010-02-09
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深夜の弁明 (講談社文庫)
深夜の弁明 (講談社文庫)
清水 義範
講談社 1992-01

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蕎麦ときしめん (講談社文庫)
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永遠のジャック&ベティ (講談社文庫)
「続ける」技術

作家が締め切りまでに原稿を仕上げられなかった言い訳を描いた表題作の他、新聞の投書や解説、旅行記などを題材とした短編集。

パスティーシュと呼ばれる著者の、日常でありそうな風景を思い切ってデフォルメしてしまう作風は相変わらずで面白かった。

中でも一番好きな作品は「三流コピーライター養成講座」で、とんでもない投稿作品に対して評者が頭を抱えて当たり散らしてしまう場面が爆笑もので、腹を抱えて大笑いしてしまった。



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日本力 アジアを引っぱる経済・欧米が憧れる文化
日本力 アジアを引っぱる経済・欧米が憧れる文化
伊藤 洋一
講談社 2005-06-25

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TBS「がっちりマンデー」にゲストとして登場した著者が最近出したと言っていたので、買って読んでみた。

日本は不況から脱せずに先行き不安、とか中国や韓国、さらにはインドの追い上げで日本も追い抜かれてしまうのではないかなどの悲観論に真っ向から反対し、製品開発力や文化などに代表される日本力があるため、日本の先行きは過度には心配しなくてよいと主張している本。

外国のマスコミが90年代に日本は不況に苦しんでいるという観測から日本へ取材にやってきたものの都会ではそれらしき傾向が見受けられず、著者がインタビューを受けた際必ず、
”この国は本当に不況なのですか?”
という質問を受けたという話は面白かった。

他には中国や韓国、インドが成長著しいといってもその先にある大きな障害があって、日本に本当に追いつくにはまだまだかかりそうだという点や、日本にはアメリカのように失われた産業、見捨てられた産業が少なく奥行きがある点などが述べられており、楽観論について説得力ある事例が列挙されている。

方向性としては技術的な話が出てくるところは長谷川慶太郎に近いが、全体的に日本の文化の隆盛を強調して日本のマスコミの悲観論を批判している点は日下公人に似ていると感じた。楽観的に日本が描かれているのがいい。



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