仲達 | |
塚本 青史 角川グループパブリッシング 2009-01-30 Amazonで詳しく見るby G-Tools 関連商品 飛将軍 李広 王莽 (講談社文庫) 白起 (河出文庫) 呂后 (講談社文庫) 始皇帝 (講談社文庫) |
『三国志演義』などの作品では諸葛孔明のライバルとして登場し、魏の後を受けてシナを統一する晋の事実上の創始者である司馬懿仲達(しばいちゅうたつ)を描いた歴史小説。
「死せる孔明 生ける仲達を走らす」という言葉や、横山光輝の漫画で”いかん、孔明の罠だ!”というセリフを言わされることが多いなど、いまひとつ冴えない敵役というイメージを持たれているが、実際は魏の最高司令官として蜀の北伐を防ぐことに成功したわけで、それだけでも有能なことは分かると思う。
さらには呉との戦役や遼東に割拠した公孫淵の討伐、そして明帝死後の権力争いにも勝ち抜くなど、実に粘り強く老獪だったことが伝わってくる。
本書では史実の仲達の活躍に加えて、当時の名医が伝えた秘薬の謎、曹操や曹丕の急死や呉の孫権の異常な行動といった創作を加えてエンターテイメントに仕上げている。
普通の三国志とは異なる感じの作品で、なかなか面白かったと思う。
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著者の作品について書いた記事 | |
[本書の文庫版]
仲達 (角川文庫) 塚本 青史 角川書店(角川グループパブリッシング) 2012-01-25 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
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史記游侠外伝 一諾 (徳間文庫) | |
塚本 青史 (著) 徳間書店 2008-05-02 Amazonで詳しく見るby G-Tools 関連商品 呉越舷舷 (集英社文庫 (つ16-2)) 斗宿星―田釐子・成子伝 (時代小説文庫) 白起 (河出文庫) 蔡倫―紙を発明した宦官 (祥伝社文庫) 霍去病―麒麟龍彗星譚〈下〉 (河出文庫) |
前漢の時代を舞台に、遊侠(簡単に言えばヤクザ)たちの活躍を描いた歴史小説。
最初は高祖劉邦を苦しめた項羽軍の将軍であった季布が、曲阜の大親分である朱家の元にかくまわれるシーンから始まる。
やがて季布は朱家の尽力もあって罪を許され、漢帝国の武官として採用されて出世を重ね、中郎将(皇帝の親衛隊長)から河東郡の太守にまで上り詰めるが、朱家は遊侠の仁義に基づいて季布が許された後は恩着せがましく会いに出かけることはなかったという。
他にも諸侯王の反乱である呉楚七国の乱や武帝の時代における匈奴との戦い、遊侠取り締まり作戦など数々のエピソードが出てきて、登場人物も、裏社会では田仲、劇孟、郭解、季心ら、漢帝国では夏侯嬰、賈誼、周亜夫などが登場して表社会と裏社会のせめぎ合いが描かれている。
遊侠の方が経済の仕組みを理解して行動しているようなところ、表で生きられない人々を暴発させずに取り込むことなど、あまり認めるべきではないだろうが一定の役割を果たしているところが書かれている。
基本的には政治に問題が多いからではあるが。
また、一般的には名君とされていた景帝が無能に描かれ、改革官僚とされた晁錯が石田三成っぽく設定されていたのも目新しく感じたところで面白い。
ただ、タイトルにある一諾のエピソードがほとんど言及されておらず、知っている人はいいが知らない人にはピンとこないのではないかと思った。
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- 『斗宿星―田釐子・成子伝』
- 『裂果 趙襄子伝』
- 『光武帝〈上〉』
- 『光武帝(中) 』
- 『光武帝(下)』
斗宿星―田釐子・成子伝 (時代小説文庫) | |
塚本 青史 角川春樹事務所 2004-06 Amazonで詳しく見るby G-Tools 関連商品 裂果(れっか) 趙襄子伝(ちょうじょうしでん) (PHP文庫) 蔡倫―紙を発明した宦官 (祥伝社文庫) 白起 (河出文庫) 呉越舷舷 (集英社文庫 (つ16-2)) (集英社文庫 (つ16-2)) 霍去病―麒麟龍彗星譚〈上〉 (河出文庫) |
中国の春秋時代、東方の大国であった斉を後に乗っ取ることになる田乞(田釐子)と田常(成子)の親子の活躍を描いた歴史小説。
斉の大臣だった田乞は、領民に種籾を大きな升で貸し、小さな升で返してもらうという少々露骨な人気取りをする一方、出入りする商人から情報を集めるなど地道な活動を行い地歩を築いていく。
当時は晋や呉、楚などの諸侯国間の戦争だけでなく君主と大臣の反目や大臣同士の対立も激化したきな臭い時代であり、心の弱さに乗じた孔子教団が暗躍するなど複雑な政情が続いていた。
当然斉にもそれは及んでおり、田乞と跡を継ぐことになる田常は国内外の各勢力の動きを見極め、対立する者達を毒蛇で暗殺するなどえげつない謀略を次々と繰り出してのし上がっていく。
古い時代ではあるが国際謀略小説という感じが強く、ここまであくどい謀略を実行する主人公が登場する歴史小説もあまり読んだことがなく、新鮮で面白かった。
裂果 ~趙襄子伝 | |
塚本 青史 NHK出版 2004-02-27 Amazonで詳しく見るby G-Tools 関連商品 太陽王 武帝 (徳間文庫) 呉越舷舷 斗宿星―田釐子・成子伝 (時代小説文庫) 霍去病―麒麟龍彗星譚〈下〉 (河出文庫) 項羽―騅逝かず (集英社文庫) |
中国の春秋時代末期、大国晋の実力者大臣として魏氏、韓氏とともにライバルの知氏を滅ぼして晋を三分、そして戦国時代の幕を開いたとされる趙襄子(本名:趙無恤=むじゅつ)の活躍を描いた歴史小説。
趙鞅の庶子として北の辺境で生まれた無恤はある日、他の異母兄弟たちとともに父の住む都に呼び出され、後継者に指名される。趙氏は晋の大臣として隣国の衛の混乱に介入したり、政敵の中行氏や士氏を破るなど勢力を拡大していく。
しかし晋で最大の実力者は知氏で、勢力を拡大した趙氏の最大の敵として立ちはだかり、無恤は苦戦を強いられることになる。
基本的には無恤とその父趙鞅の物語だが、これに周辺諸国の衛や呉、斉などで活躍する孔子、また晋で縦穴を掘って冥界の神に祈るという、怪しげな集団の冥家の動きなどが絡んでいて、まあまあ面白かった。
ちなみに、日本で織田信長が滅ぼした浅井長政や朝倉義景の骸骨を杯にしたエピソードが知られるが、その2000年ほど前に無恤も知氏の骸骨を杯にしている。
光武帝(下) (講談社文庫) | |
塚本 青史 講談社 2006-06-15 Amazonで詳しく見るby G-Tools 関連商品 光武帝(中) (講談社文庫) 光武帝(上) (講談社文庫) 王莽 (講談社文庫) 呂后 (講談社文庫) 霍去病―麒麟龍彗星譚〈上〉 (河出文庫) |
「仕官するなら執金吾(警視総監)、妻を娶らば陰麗華」という目標を持ち、後者は望み通りになったものの、前者についてはそれを大きく超えて皇帝にまで登りつめてしまった光武帝・劉秀を描いた歴史小説の下巻。
新王朝を打倒し長安を制圧した更始帝の政権、そしてそれを倒した赤眉軍では政権獲得後のビジョンがなく、混乱が増していく。
それを横目に河北では劉秀が地方勢力とある時は結び、ある時は征伐してと平定を進めていく。その中で政略結婚した郭聖通との仲がギクシャクする一方、思い人である陰麗華とはついに結ばれるという展開を見せる。
主人公の劉秀の他、元赤眉軍の力子都や曲馬団の花形の遅昭平の波乱万丈の物語もあり、大団円を迎えることになる。
全体としては、劉秀や家来たち、そして更始帝など対立者たちのキャラクターがやや個性が薄く、ストーリーのテンポを重視するあまり、功臣として比較的有名な馬援の活躍場面が少なかったり、現在での甘粛省や四川省の平定など面白そうな場面がなかったのが少々不満だった。
ただし、通常簡単に天下を取ってしまったような感じに取られ、日本ではかなりマイナーな立場にある人物を題材にしているのは評価できる。
これと正反対の人物が、成功者にはなれなかったものの物語の主人公としては絶大な人気を誇る三国志の劉備元徳や諸葛孔明とされるということを他の本で読んだが、納得できる。
本書の主人公である劉秀や、宋の太祖趙匡胤、日本で言えば鎌倉幕府の北条義時や泰時など、良識あるタイプの人物が天下を取ると物語のネタとしては弱くなるが、万民にはその方が平和に暮らせるという好例かもしれない。