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逆説の日本史 21 幕末年代史編4 高杉晋作と維新回天の謎
逆説の日本史 21 幕末年代史編4 高杉晋作と維新回天の謎
井沢 元彦
小学館 2014-10-24

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井沢元彦の『逆説の日本史』シリーズにおける、幕末編を完結させる第4作。
1865年から明治維新の1864年に至る4年間を扱っている。

長州藩で高杉晋作率いる正義派(倒幕派)の政権奪取から始まり、薩長同盟に四境戦争(第二次長州征伐)、大政奉還、鳥羽・伏見の戦いから始まる戊辰戦争に江戸城無血開城と、短い間に多くの出来事が発生する。

薩長同盟にまつわるところでは、公式には会ったことがないとされる西郷隆盛と高杉晋作はこっそり会談していたのではないかとしていたり、薩長同盟は藩主に処刑された筑前の月形洗蔵らが進めていたもの坂本龍馬や中岡慎太郎が引き継いだという話、薩長同盟には倒幕よりも薩摩が長州を朝敵から外してもらうために努力するという内容がくどく書かれていて、木戸が西郷に対して何度も念押ししたことが伝わってくるなどのエピソードが書かれ、初めから内容が濃い。

そして四境戦争の陸戦では長州のミニエー銃が幕府軍のゲベール銃を圧倒した一方、海戦では幕府軍が圧倒的に戦力があったのに、高杉の超人的な戦術と行動、そして幕府軍の(はたから見て)不可解な行動で奇跡的に勝利したことが書かれている。
この記憶が長州兵が多数参加していた旧日本陸軍に受け継がれたのが第二次世界大戦での悲劇につながったとしていて複雑な気持ちになる。

著者が「マイナスの英雄」と評する徳川慶喜が島津久光を信じられなかったことで幕府にとっての事態をどんどん悪化させたが、その結果として明治政府の要人に人望のない慶喜と考えが古い久光が入らなかったのは良かったともしているのが興味深い。
新政府軍が錦の御旗によって慶喜が朝敵と示したことで、尊王を旨とする水戸徳川家出身の慶喜にはてきめんに効果があったとし、これによって慶喜が朝敵の汚名を晴らすためにどんな見苦しい真似をやっても生き延びようとした結果、江戸が戦火に巻き込まれずに済んだのは皮肉である。

反対に京都守護職として尊王の志士たちを取り締まってきた松平容保が武士の意地を貫いたことで会津が悲惨なことになったことを比べると、政治は結果責任であると書いているのも分からないではない。

ちょっとしたタイミングの違いで明暗が大きく分かれる事例がいくつもあり、運が良かった人としては鳥羽・伏見の戦いの後の慶喜、不運な人の代表は新政府軍の指示を受けて行動したのに情勢の変化でニセ官軍として処刑された赤報隊の相楽総三あたりがそれに当たる。

また、藩主の器量によって反主流派の扱いをどうしたかによる明暗も大きい。
そうせい公と呼ばれながらも密かに高杉や伊藤博文、井上馨らを援助していた長州の毛利敬親・広封父子や、脱藩した江藤新平を謹慎のみとして後に役立てた佐賀の鍋島直正がいい方の例で、龍馬や中岡がいたことで何とか面目を保てたが、武市半平太らを切腹させた山内容堂、佐幕派の陰謀により月形洗蔵らの筑前勤王党を処刑してしまいパッとしなかった福岡藩の黒田長溥などがダメな例である。
こうした政情がめまぐるしく変わる時代では、敵方にパイプを持つ人物を生かしておくことが重要だったのだろうと感じた。

他にも薩摩の益満休之介が脇役のポジションなのにいい場面で登場するところを著者が気に入っていそうなところや、孝明天皇が崩御された際の症状は天然痘でも発生しうるとの医師の所見、挑発やブラフが手詰まりの時に使用されるがそれなりに有効なことなど多くのことが書かれ、前作に続いてかなり速いペースで読み進んだと思う。




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