fc2ブログ
読んだ本の感想をつづったブログです。


隠された日本 九州・東北 隠れ念仏と隠し念仏 (ちくま文庫)
隠された日本 九州・東北 隠れ念仏と隠し念仏 (ちくま文庫)
五木 寛之
筑摩書房 2014-05-08

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

関連商品
隠された日本 中国・関東 サンカの民と被差別の世界 (ちくま文庫)
隠された日本 大阪・京都 宗教都市と前衛都市 (ちくま文庫)
隠された日本 加賀・大和 一向一揆共和国 まほろばの闇 (ちくま文庫)
隠された日本 博多・沖縄 わが引揚港からニライカナイへ (ちくま文庫)
風の王国 (新潮文庫)


五木寛之による日本の隠された習俗や信仰を探るシリーズの1冊で、九州の隠れ念仏や東北の隠し念仏を扱っている。

戦国時代から江戸時代にかけての九州南部では薩摩藩(島津氏)と人吉藩(相良氏)で浄土真宗が弾圧されており、門徒たちは秘密裏に講を結成して深夜に洞窟などで会合を開いていたことが書かれている。
これが「隠れ念仏」と呼ばれ、発覚した場合は過酷な拷問に遭い、リーダー格に当たる人物が殉教した話も伝えられている。

門徒たちはその中でも本山である本願寺への志納金(お布施)を命がけで届けており、「大名をふたり持っていたようなもの」と表現されているのが印象に残る。

薩摩では食糧不足から出産制限や間引きをさせられていたが、子沢山で子供好きだった蓮如の影響があるのか、隠れ門徒たちは子供たちを守る形で抵抗していたという。
抵抗のやり方としては一揆が最初に思い浮かぶが、これよりも大規模な逃散をたびたび行っていたらしく、一夜にしてある村から住民がいなくなった話が書かれている。

逃散によって移動する人がいる一方で、土地に居住し続けながら信仰していた人々もいて、その中にカヤカベと呼ばれる人々がいたことも書かれている。
これは浄土真宗と霧島の山岳信仰が結びついたもので、もはや別の宗教になっている様子が描かれている。

東北の章では、「隠し念仏」の話から始まる。
九州の「隠れ念仏」が本願寺とつながっているので浄土真宗の正統とされるのに対し、「隠し念仏」は幕藩体制と結びついた本願寺からも信仰を隠していて、専門の僧侶も持たず在家信者のみで信仰されてきた。
そのため浄土真宗の僧侶からも目の敵にされ、諸藩を通じてここでも弾圧されている。

柳田国男の『遠野物語』の舞台である遠野も隠し念仏が盛んだったと思われる地域だが、柳田は隠し念仏についてあまり書いておらず、書かれた部分もあまり好意的でないようである。
高級官僚でもあった柳田は地域の伝承につきもののエロ話もお気に召さなかったらしく、著者は遠野出身で柳田に遠野の話を語り聞かせた佐々木喜善も、柳田がエロ話を聞くといやな顔をするので話さなくなったのではないかと推察している。

他には浄土宗ではないが、宮沢賢治の日蓮宗への傾倒についても書かれている。
これはタブー視されて語られることが少ないようだが、浄土宗の檀家でもある資産家に生まれた賢治は自分が恵まれた暮らしをしているのと周囲の貧しさとの対比や近代思想に触れたことなどから日蓮宗へ転向し、父親と口論になったこともたびたびだった話などが書かれている。

全体的に重い話が多いが、弾圧や蔑視に耐えながらも信仰を守り続けた人たちの粘り強さが感じられ、色々なことを考えさせられた。
『遠野物語』を読んだことがあるかどうか記憶があいまいなので、口語訳のものでも読んでみようと思う。




にほんブログ村 本ブログへ
スポンサーサイト