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天下分け目の関ヶ原の合戦はなかった: 一次史料が伝える“通説を根底から覆す"真実とは
天下分け目の関ヶ原の合戦はなかった: 一次史料が伝える“通説を根底から覆す
乃至政彦 高橋陽介
河出書房新社 2018-04-23

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一次資料(当事者たちの手紙や命令書、同時代人の日記など)から、通説として知られているのとは大きく異なる関ヶ原の合戦に際しての大名たちの動きを推察している作品。
BS-TBSで放送されている『諸説あり』でも扱われていた内容だったので読んでみた。

まず、現在の定説は江戸時代に書かれた軍記物(今で言う歴史小説)や戦前の日本陸軍による研究資料、そして司馬遼太郎の『関ヶ原』などの歴史小説などに影響を受けた部分が多く、一次資料では見つけられないものが多いという。

そこから一次資料でこれまで見過ごされがちだった内容を集め、新たな秀吉没後から関ヶ原の合戦に至る時期の歴史を組み立てている。

いくつも驚かされる話があるが、まずは秀吉が後を五大老・五奉行ではなく家康に代行を託していて、さらには家康と淀殿の結婚話までなされていたことにインパクトがある。
これには(秀吉の指示とはいえ)淀殿や大野治長らが猛反発したらしく、家康暗殺計画につながったようである。

次に、ボンボンのイメージが強い毛利輝元は反家康の策謀を繰り返していて、関ヶ原の合戦の首謀者は石田三成ではなく、輝元、増田長盛、長束正家、揺甫恵瓊(安国寺恵瓊)あたりだったことも書かれている。
大坂城で全体の指揮を執ったらしいのが長盛で、戦場の指揮官が正家と恵瓊というのは見栄えだけでなく能力もいまいちだったみたいで、石田三成が不満を述べた書状が残しているのも分かる気がする。

さらには上杉征伐時の上杉景勝が単独で戦う気満々だったらしいことや、関ヶ原や大垣、岐阜、赤坂といった美濃に布陣していた武将たちの布陣は大きく異なること(例えば家康は赤坂にいて桃配山にはいなかった)、土壇場で寝返ったとされる小早川秀秋は早い段階で東軍として動いていたなど、通説で語られるのとは異なる歴史が語られていく。

石田三成や小早川秀秋らのキャラクターが作られていったのは、さまざまな交渉の結果として生き延びた毛利輝元を守るためだったり、死んだ人物にあれこれ押し付けるのが都合が良かったのだろうと感じられる。

確かに本書で書かれていた形で歴史小説が書かれたとしても少し盛り上がりに欠けたと思うので、現在イメージされる関ヶ原に関する定説は、300年以上かけて日本人が好まれる形に作り上げられていったのだろう。

大きく刺激を受ける1冊で、さらに研究が進んでいくことを期待している。






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