fc2ブログ
読んだ本の感想をつづったブログです。



裏がえしの自伝 (中公文庫)
梅棹 忠夫
中央公論新社 (2011-04-23)



人類学者で国立民族学博物館の設立や世界各地での学術調査、『文明の生態史観』『知的生産の技術』といった著作など多くの業績を残した梅棹忠夫による、さまざまな事情や自身の素質などでならなかった、あるいはなれなかった職業や生き方について語った、自身のIFを扱った変則的な自伝。

「ぼくは大工」、「ぼくは極地探検家」、「ぼくは芸術家」、「ぼくは映画製作者」、「ぼくはスポーツマン」、「ぼくはプレイボーイ」の6編が収録されている。

この中では南極探検隊の隊長になる話がきていた話が最も魅力的なIFなのだが、そちらに進んでいたら『モゴール族探検記』のような中央アジアの砂漠地帯での業績がなかった可能性が高く、著者が語っているように砂漠に深入りしていたのが運命の分かれ目だったということなのだろう。

一方で著者が一時期やっていた俳句があまりにもひどくて先生から破門された話も隠さずに披露していて、多才な学術界の巨人もスーパーマンではないことを知って親しみが持てる。

2012年に日本科学未来館に特別展「ウメサオタダオ展 —未来を探検する知の道具—」を観に行った時にさまざまなもののスケッチが大量に展示してあり、それが異常に上手いできばえだったことを記憶していたが、元々絵や空間認識についての素質や関心があって学術調査に活かされたことが分かって納得できた。

他にも桑原武夫や今西錦司、西堀栄三郎といったそうそうたる人物との交流や、初期から関わる機会が多かった映画やテレビの世界や業界人に対して不信や疑問を抱くようになってテレビ出演をしなくなったなど、現在のマスコミ不信につながる話が語られているのも興味深い。

本作は正規の自伝に当たると思われる『行為と妄想 わたしの履歴書』の外伝のような位置づけをされるみたいなので、『行為と妄想』にも関心を持っている。








にほんブログ村 本ブログへ
スポンサーサイト




関連タグ : 梅棹忠夫,