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読んだ本の感想をつづったブログです。



関根 康人 (著)
小学館 (2013/12/2)


宇宙探査機による調査で、土星の惑星タイタンにはメタンの海や川が存在することが判明し、地球と大きく異なる環境でも生命は存在する可能性や、存在するのであればどのようなものとなるのか?などを最近の研究も踏まえて語っている作品。

著者は執筆当時30代と気鋭の宇宙科学者で、先陣として多くの有名な科学者たちとのやり取りも紹介している。

まずは太陽系の他の惑星、例えば金星や火星あたりから話をはじめ、木星の惑星であるエウロパの表面を覆う厚い氷の下に存在が推定されている海の話や、土星の惑星エンセラダスの南極からブリュームと呼ばれる水を含んだ粒子の噴出がされている話も触れ、これらもまた生命の可能性があると語っている。

さらには、観測技術の発達によって発見が相次いでいる系外惑星の話にも及んでいて、液体の水が存在するハビタブルゾーンにある「スーパーアース」と呼ばれる惑星への考察もなされている。

読む側の化学や地学の知識が乏しくて理解できた話ばかりではないものの、スケールが大きくて魅力的な話が語られていて、興味深く読むことができた。

著者はSFも多く読んでいるようで、ヴォネガットの『タイタンの妖女』が書いたタイタンの話が昔の作品なのに調査結果と近いという偶然や、クラークの『2001年宇宙の旅』や『2010年宇宙の旅』といった作品にも話が及んでいるところも良かった。






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ホルヘ・ルイス ボルヘス, アドルフォ ビオイ=カサーレス
河出書房新社 (2018/4/6)


アルゼンチンの作家・ボルヘスとカサーレスが、古今東西の怪奇話と自分たちの短編を92作収録しているアンソロジー。

葛飾北斎が語った言葉や、『聊斎志異』などに出てきたかもしれない中国の怪奇小説、イスラム圏や西欧の話も入っているなど、多くの地域から集められていることが分かる。

それはいいのだが、読む側に教養やセンスがないのがいけないのか、面白く感じようがなかったり、そもそも意味が分からなかった話も多く、斜め読みになった。
解説を担当した朝吹真理子という人が「眠れなくなるから安眠したいならベッドサイドで読まない方がいい」みたいなことを書いているが、全く共感できなかった。






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守屋 洋 (著)
PHP研究所 (2012/11/27)


PHP研究所から出ている古典の言葉を現代語したシリーズの1冊で、『孟子』の言葉と現代語訳を右ページ、著者の解説文が左ページという見開きで構成されている。

著者の作品は解説での説教臭さが鼻につくが、本書では特にその傾向が著しいと感じた。
これはおそらく、『孟子』の言葉自体の熱さ・ウザさと、著者のウザさ・老害ぶりが相乗効果を上げているためと思われ、なかなか強烈である。

「昔は良かったが今は道徳が廃れてダメ」とか「昔はどこにでもいた、面倒見が良くて筋の通った人々はどこに行ったのだろう?」といった趣旨の言葉がいくつも出てきて、著名人がSNSでつぶやいたら炎上しそうなものが多い。

これは斉の宣王や魏の恵王との問答の雰囲気や背景などがそぎ落とされていて、言葉だけの響きだけが強く出たための可能性もあるかと思っている。

『孟子』の言葉自体は理想主義的でちょっと重いものが多いが、「賢いと余計なものまで詮索してしまう」みたいに味わい深いものも多いので、もう少し他の作品も読んだ方がいいかもしれない。






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関連タグ : 守屋洋,




『ローマ人の物語』シリーズの文庫版16巻で、アウグストゥスの治世の晩期を描いている。

冷静かつ慎重に多くの政策を実施してきたアウグストゥスだが、後継者には自身の血脈にあくまでこだわり、ただ1人の娘であるユリアから生まれた孫を後継者にしようとしてユリアをアグリッパやティベリウスなどに政略結婚で嫁がせたり、男孫のルキウスやガイウスを引き立てようとしたが、ことごとく失敗している。

ルキウスとガイウスは若くして亡くなり、娘のユリア、孫娘で娘と同名のユリア、もう1人の男孫であるポストゥムスの3人も素行不良が重なって皇帝という立場上から島流しにせざるを得なかった・・・と、結局は前作で衝突して引退していたティベリウスを呼び戻して後継者にしていて、かなり迷走している様子が描かれている。

養父のカエサルを越えようという野心から始めたかもしれないエルベ川以西のゲルマニア支配でも、一旦はローマで出世しつつあったゲルマン人のアルミニウスが反乱を起こしてローマの1軍団が壊滅する被害を受けたり、東方ではアルメニアとの外交でも人事ミスもあって失策を重ねるなど、司令官として現地に赴かないスタイルのアウグストゥスの弱点が出ていて、ここでも苦悩している。

後継者人事の混迷に前任者を越えようとしての外征の失敗という事例からは、秀吉を思い起こしてしまう。

それでも一時期は対立していたティベリウスと和解し、次の皇帝として引き継ぎを行えているのはさすがアウグストゥスだとも感じる。
アウグストゥスが亡くなったことで『パクス・ロマーナ』編は終わり、ネロやカリグラのような暴君の代名詞のような皇帝も含む『悪名高き皇帝たち』シリーズに続いていくので、ぼちぼち読んでいくつもりである。






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関連タグ : 塩野七生,




塩野七生による『ローマ人の物語』シリーズの文庫版15作目で、アウグストゥスの治世中盤を扱っている。

少子化対策として結婚への優遇や姦通への厳しい罰則、宗教政策、税制、行政区の再編成など、さまざまな分野で政策を打ち出す一方で、自身が苦手とする軍事面でも多くのことを成し遂げている。

まず、ローマの領土拡大が進んでカエサルが構想したライン川、ドナウ川、ユーフラテス川などを境界とした勢力範囲を区切って領土拡大ではなく防衛に適した軍団の配置を行ったり、軍制改革や近衛軍団を創設するなどの改革を実施し、既成事実を積み上げていることが書かれている。

ただ、カエサルの業績を上回ろうと考えたのか、カエサルがガリア人の居住地域までを区切ったライン川を越えてゲルマン人が活動するエルベ川まで軍事行動を起こしたのは、次の16巻で問題が発生することにつながっている。

そして、アウグストゥスが不得手とした軍事を担ったアグリッパや、外交使節や広報担当として活躍し「メセナ」活動の語源となったマエケナスの業績にも触れている。
2人ともアウグストゥスの信頼に応えてきたが、それぞれアウグストゥスが50代の頃に続けて亡くなってしまう。

さらには妻の連れ子で将来を嘱望していたドゥルーススも突然死んだ上、その兄で娘婿にしていたティベリウスもアウグストゥスとの衝突や妻との不仲もあって引退してしまうなど、長生きしたことで周囲から親しい人がいなくなっていく事情が語られているのはなかなかつらいものがある。

治世が中期から後期に入るにつれて重い話が目立つようになったところで、次の16巻に話が続いていく。






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関連タグ : 塩野七生,