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読んだ本の感想をつづったブログです。





『経済で読み解く日本史』シリーズの第3作で、江戸時代を扱っている。

まず、「農民は年貢の重さに苦しめられ、一方で幕府や大名家は財政難だった」みたいな薩長とマルクス主義による江戸時代を貶める歴史観で書かれた歴史教科書の矛盾点を痛烈に批判している。

中央政府に当たる幕府が財政難だったのは国内の2000万石以上あるうちの400万石程度しか税収がないことが要因としてあり、武士階級が貧しくなっていったのは石高制という米価に依存するシステムだったため、一方で搾取されていたとされる百姓(農民だけはない)米以外の商品作物を生産したり物流などにより豊かになっていったことが分かりやすく書かれている。

こうした構造的に問題があった江戸時代が200年以上続いた要因には、初期まで採掘が続いていた金銀の蓄積と貨幣の発行をしていたこと、さらに金銀の枯渇でデフレ基調になったことに対して時々経済の分かる幕府高官(荻原重秀や田沼意次など)が改鋳による金融緩和を行ったことなどを挙げている。
ただ、朱子学が主流だったこともあってこうした政策は理解を得られず、新井白石や松平定信、水野忠邦のような財政規律論者の方が多かったために継続できなかったのは残念である。

こうした朱子学的な考えは歴史教科書にも出ていて、改革で肯定的に評価されるのは上杉鷹山や山田方谷のような緊縮財政的な政策を行った人物で、荻原や田沼、水野忠成、調所広郷のような経済を分かった人物を否定的に書かれているのもいかにもという感じがする。

他にも、鎖国や贅沢禁止令みたいな政策は民衆の抑圧ではなく輸入していた生糸(絹)の代金として金銀が海外に流出するのを抑えるためだったとか、否定的な評価をされることが多い藩札が実は金銀や商品作物との兌換機能があってデフレに有効だったなど、他の歴史関連の本で読んだことがない話が多く書かれていて非常に刺激を受ける。

著者は経済を体、政治を服装に例えていて、体が大きくなったのに江戸時代の服が合わなくなったので明治維新が起こったという表現をしているのが面白い。
それまでに蓄積されてきた矛盾や不満が、開国時の為替レート設定ミスが決定打になったという。

全体的には3冊読んだこのシリーズの中で、最もインパクトのある内容だったと思う。
それと、学生時代に講義を受講したことがある教授の論文が引用されているところで、妙にテンションが上がった。







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