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井沢 元彦 (著)
小学館 (1998/12/4)


井沢元彦の『逆説の日本史』シリーズの第4巻で、平安時代中期から平氏政権の時代を扱っている。

前半が藤原氏が権力を握った過程と、敗者となった小野小町や大伴黒主、在原業平といった六歌仙、菅原道真、ライバルだった源氏などが、『古今和歌集』や北野天満宮、『源氏物語』など、神に祀ったりフィクションの世界で優遇することで怨霊が祟りをしないようにした話がなされていて、『万葉集』などを扱った前作の続きのような内容となっている。

後半が平安時代に軍隊の撤廃により、元々は私兵でしかない武士階級が出現して平将門の出現、そして院政が始まって白河上皇や鳥羽上皇のわがままにより朝廷内での対立を武士にやらせたことで保元の乱・平治の乱を経て平氏が政権を握って急に滅んだ過程が書かれている。

サブタイトルが「ケガレ思想と差別の謎」となっているのは、後半の背景に当たり、戦後の平和に関する考え方の問題点にも通じているために強調するためと思われる。
戦後に左翼勢力が唱えてきた非武装中立論がデメリットを言わない詐欺に近いものと断じていて、その背景には死のケガレに直面する軍隊もケガレたものという差別的な考え方と、平和は無条件で清らかなものという思い込み、平和の手段もまた正しいものでなければならないという考えなどが、日本人に昔から根付いていると語っている。
(戦乱の時代はそんなことを言ってられないので、あくまで比較的平和な時代の話)

これを読んでいると左翼の憲法9条論やら自衛隊解体論はGHQの洗脳とか中国や韓国などによる情報工作による部分が強いと考えてきたのだが、元々日本人が抱いてきた傾向を利用されているのだということが何となく分かってきた。

それにしても、武士はケガレた階級だから子供に父親を処刑させても問題ないという後白河天皇のやり方はひどく、江戸時代の朱子学的な史観では徳を失ったから武士の世の中になったと考えられていたのも分からないではない。
もっとも実際は、政権担当者であるべき藤原氏が占いと儀式と贅沢ばかりをやってガバナンスが機能しなかったことが直接的な原因であり、平安時代とは「ケガレたと考えたものを排除した社会がどうなるのか?」を教えてくれる時代なのだろう。

オウム真理教とか阪神大震災、司馬遼太郎の逝去といった執筆当時のトピックが多く入っているところには時代の変化を感じるものの、内容自体が古びていないのはすごいことだと思う。




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